その日(8月2日)に関する所見
その日(8月2日)に関する所見
Paul Craig Roberts
2011年6月29日
"Information Clearing House"
アメリカ人は、色々な理由で、絶望的な国民だ。理由の一つに、アメリカ人が分裂させられ、激しくいがみ合い、ワシントンで推進される暴政に反抗できずにいることがある。
例えば、州境を共有する、ジョージア、アラバマ、フロリダ州政府は、アトランタの数キロ北東にあるジョージア州ラニエ湖の水を巡り、二十年以上争っている。2009年、連邦地方裁判所の裁判官が、アトランタ州300万人住民の需要にあわせて、湖から引かれた水を得ることは違法であると裁定した。裁判官は、三州は2011年7月までに合意に達するべきであり、合意しそこねた場合、アトランタに認められるのは、人口が現在の規模の三分の一以下であった1970年代中期に得ていた量の水に限られると決定した。
明らかに、この裁定こそ、アラバマ州とフロリダ州が妥協したがらない主な動機だ。
裁判官は、この事実を全く考えなかったのか、裁判官は、300万人のアトランタ州民が、渇水状態になるであろうことに無関心だったのかのどちらかだ。
アトランタ州が水供給を断ち切られるまで、後わずか二日の、6月28日という、ぎりぎりの時点で、米連邦控訴裁判所が、連邦地方裁判所の裁判官判決は誤りだと裁定し、米工兵隊が三州に対するラニエ湖の水の配分に関する最終判断をするのに一年の猶予を与えた。
アラバマ州は、アトランタ州在住のアメリカ国民300万人に対する完璧な冷淡さをあからさまにして、この裁定に対して、上訴すると発表し、フロリダ州は“裁定を検討している”としているが、アトランタ州分の水を横取りする方法を探していることは確実だ。
この国がアメリカ「合州国」でないのは実に明白だ。かつての南部連合国でさえ、団結できないのだ。二十年以上、三州は公正な取引をするための交渉の席についていない。その代わり、彼らは、自州の利益を求め、連邦裁判所で訴訟をしているのだ。
カリフォルニアで、水は様々な方向から狙われている。豊かな大企業と投資筋が、水の支配は、生命の支配、つまり究極的権力であることに気づいたのだ。少数の権力者達は、生命を維持する物質に対する支配力を悪用すべく、規制緩和と、カリフォルニアの水道の民営化を目指して動いている。カリフォルニアの日照り続きは大いに喧伝され、激変的危機となって、小規模農家を都市の環境保護主義者と争そわせている。これは、民営化した水は、水債権に変換することが可能で、それによって、デリバティブを生み出し、投機が可能になるという事実から、騙されやすい大衆やマスコミを逸らす為の八百長芝居だ。“民営化した水道”というのは、より多くの人に給水するといった類のことと無関係だ。狙いは、投資関係者に何十億ドルもの金をもたらすことにある。
架空利益について言えば、ギリシャ国民の圧倒的反対にも関わらず、二つの組織の設立趣意書からして、いずれも違法な融資、ギリシャ政府国債を購入した海外の民間銀行に支払うための金を、“民主的”ギリシャ政府が、欧州中央銀行と国際通貨基金から借り入れする為、押しつけられた緊縮政策に合意したというニュースで、今日の株式市場は上がった。民間銀行は、適正評価を行わなかったことに対し、完全に補償されるのだ。
返済できずにいる国債を返済するための、更なる融資を得る為、ギリシャ政府が、ギリシャ経済を更に不況に追いやることに同意したのを、金融市場は、実に愚かなことに、この用語が適切かどうかわからないが、「良いニュース」と見なしている。
ギリシャ政府が受け入れるべき緊縮政策や、公有財産、つまり、水道会社、港、ギリシャの島々、国有電話会社や、国営くじの売却や、給料、職、社会福祉の削減によって、ギリシャ経済が、ドイツ、フランスと、オランダの民間銀行に返済する為の、IMFや欧州中央銀行の新たな融資に対し、債務返済を行うに必要な、収入を生み出せるようになると経済紙は考えているのだ。
ウオール街や金融部門連中、IQが100もあれば、連中全員この“救済措置”は、ギリシャを更に穴の中深く追いやり、ギリシャの支払い能力が衰退することがわかるはずだ。
街頭で抗議運動をしているギリシャ国民が充分この事実を理解しているのに、一体なぜギリシャ政府は、この全く明白な事実を理解できないのだろう? この疑問に対する唯一の回答は、ギリシャ政治家達は、借り方銀行に買収されているということだ。ギリシャ“民主主義”は、ギリシャ国民にではなく、民間の借り方銀行銀行に奉仕しているのだ。
称賛されている金融市場、理性的ではない。実際その逆だ。金融資産価格を上げるため、金融市場は、明らかに悪いニュースを良いニュースに変えてしまう。真実や事実は、金融市場にとって何の意味もない。金融市場は、資産価格を押し上げる嘘、錯覚や、妄想を基盤にしている。ウオール街に投資される際、皆様はそれに投資しているのだ。
現在、アメリカでは、オバマ大統領が“債務不履行の危機”で議会とやり合っている。ここで、アメリカ(小文字)大統領(小文字)presidentというのは、アメリカという国そのものも含め、アメリカの政治制度の空虚さを指す場合に使われる。アメリカを参戦させる前に、議会に対する大統領の説明を要求する、戦争権限法に従うことを拒否している大統領は、若干の特別利益団体向けの優遇税制措置を取り上げない限り、赤字削減の全てのコストを、アメリカの貧困層に負担させるわけには行かないと、議会に語っている。オバマは、彼同様、権益団体に買収された愚か者連中に、裕福な大企業は、たとえば、わずかの優遇税制措置の様に、何か犠牲にしなければならないと語っている。もし議会の間抜け連中が引っかかれば、オバマは、いかに金持ちに支払わせるようにさせたかを強調しながら、負担を、こっそり、貧困層と、破壊された集団、アメリカ中流階級の残党にしわよせをする。
“小文字のアメリカ最初の黒人大統領”と議会間の、債務不履行を巡る“対立”など、丸ごと詐欺だ。もしもリビア攻撃が、国益上、それほど重要なのであれば、オバマは議会に知らせる必要などない。アメリカ政府が債務不履行にならないことが、非常に重大な国益であることは極めて明白だ。
アメリカの債務不履行は、国際金融制度を破壊するだけでなく、アメリカの覇権を崩壊させる。ワシントンが債務不履行にならないこと以上の“国益”は無い。だから、もしも議会が債務限度を上げなければ、連邦準備金制度理事会は、政府が法案に支払いができるよう、財務省証券を購入し続けることは極めて明白だ。ブッシュ政権は、法曹界の保守派団体フェデラリスト協会の突撃隊員連中と共に、戦争中は、アメリカ大統領が専制君主となり、何が国益の為になるかを宣言するのは大統領のみの特権となることを、きっぱり規定してしまった。シーザー支配下のローマ議会同様、議会など不要になった。
アメリカ政府が債務不履行になる可能性など皆無だ。それでも“債務不履行の危機”は、アメリカプロパガンダ省が提供する主な話題だ。
環境問題となると、更なる荒廃がアメリカを待ち受けている。大変現実的になりつつある、洪水による核放射線の問題ではない。ずっと簡単な話だ。米土地管理局も“民営化”され、私益に尽くす政府公務員となったのだ。
土地管理局では、実際、法律の狙いや、公有地の保存を大切にする人々が、クリントンとブッシュ政権によって地位にすえられた、新規被任命者連中によって追われ、“民営化”された。そう、ご想像の通り、土地管理局の幹部には、元企業幹部連中が任命されており、その目的ため、その地位につけられた仕事を、彼らはこなしている。つまり私利の為に公有地を盗んでいる。
馬を愛する人々にとって、これは大打撃となりつつある。この問題に詳しいマリリン・ワーゴによれば、土地管理局は、ネヴァダ州、ワイオミング州、オレゴン州とコロラド州の公有地にいる野生馬の群のうち、三分の二を駆除する予定だ。
この“自由と民主主義”の国における、あらゆる物事と同様、この駆除も、国土安全保障省によって、“動物権利擁護テロリスト”という烙印を押されるであろう市民たちの強力な大衆抗議行動にも関わらず、進められている。
一体誰が利益を得るのだろう? 明らかに、野生生物から放牧権を奪い取る、蓄牛・羊飼育企業だ。ブッシュ政権の業績の一つが、公有財産を保護するべく作られた政府機関を、企業権益に引き渡すことであったことに、アメリカ人はまだ気づいていない。現代アメリカにおける、企業と政府の権益融合は、ファシスト・イタリアにおけるより完璧だ。
ファシスト国家アメリカには、自由も民主主義も政府の説明責任も存在していない。
記事原文のurl:www.informationclearinghouse.info/article28445.htm
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ファシスト国家日本には、自由も民主主義も政府の説明責任も存在していない。
筆者Paul Craig Roberts氏、レーガン大統領時代、財務長官補佐を務めた人物。
牛肉問題、他の肉類、野菜、魚、米、そして、水にまで波及しても不思議はない。3/11以降、この国、本当にゴジラ?が誕生する国になったのだろう。
数日前の金子勝教授twitterをコピーさせていただく。(レイアウトは当方が変更。)
自民党が中長期方針を発表。
- 安全対策強化で原発維持、
- 核持ち込みの容認、そして
- 子ども手当廃止して公共事業拡大です。
これまで失敗してきた政策のオンパレードで、未来を考えず、老害世代が日本を食い尽くし衰退を招いてきた政策です。どうにもなりません。
お説ごもっとも。
こういう状態を招いた連中が全く反省せずに、それを押しつけ続ける。保守回帰だという。
国でなく、企業であれば、長年失策を続けて来た経営陣が退陣し、非主流派の人々が、全く違う方向へと舵を切らなければ、衰亡する。(衰亡を選ぶ企業もあるようだが)
小選挙区導入・二大政党、失策した政党が、一つ前の政権で失策した政党に交替する完璧な制度。毎回どちらにころんでも、衰亡が待っている。
宗主国と属国の支配層、うまい汁を吸い上げられるだけ吸い上げれば良い。後は野となれ。
官庁、企業、政治、学界、司法、マスコミ、あらゆる部分に、健全な新陳代謝・方向転換を許す構造が、始めから存在しない以上、衰亡は保証済み。
この中長期衰亡方針を伝えるMSN産経ニュース末尾に、重要な項目があった。
教育については「戦後の日本教育のあり方を根本的に反省する」として、学校式典での国旗掲揚・国歌斉唱の義務化、教科書採択の改革、家庭教育の支援強化など保守色を打ち出した。
一文字違う。狂育、狂科書採択改革、家庭狂育強化。ファシズム?そこで、「勝ち目のないアフガニスタン戦争をめぐるむなしい言葉」で引用した文章を再度引用させていただく。『強い者は生き残れない』環境から考える新しい進化論 吉村仁著 新潮選書から。著者、強いもの勝ちの資主義推進には批判的でおられる。「強者」もいつかは負けてしまうと。下記は228ページからの引用。
「自由」という錦の御旗の下に、ナッシュ解を求めていったら、絶滅しかあり得ないことは、約40億年の地球の生物たちの進化史が教えてくれているのである。今、「長期的な利益」のために、「短期的な利益」の追求を控え、協同行動をとるべき時なのだ。
「強い者」は最後まで生き残れない。最後まで生き残ることができるのは、他人と共生・協力できる「共生する者」であることは「進化史」が私たちに教えてくれていることなのである。
別冊宝島「日本を脅かす原発の深い闇 東電・政治家・官僚・学者・マスコミ・文化人の大罪」を購入した。裏表紙に下記の目次要約がある。
原発は詐欺ビジネス
Part1 隠される放射能汚染
Part2 御用メディアと文化人の罪
Part3 原発利権の深い闇
Part4 原発アンダーグラウンド
Part5 原発推進の陰謀
石橋克彦編「原発を終わらせる」岩波新書も購入。素晴らしい本だ。小生の偏見と疑われる方は、せめて石橋氏の「はじめに」を立ち読みいただきたい。
ラニエ湖の水争いではないが、四国電力の伊方原発を巡る設置許可取り消し訴訟で、安全審査の杜撰さが住民側によって白日のもとに曝されたが、松山地裁は、原子力行政の僕のごとくに、訴えを退け、危険が野放しにされた。一事が万事。腰巻きにこうある。
脱原発以外に道はない。そして、それは可能だ!
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