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2011年6月 7日 (火)

国際原子力機関IAEA、チェルノブイリ以来最悪の原子力災害を取り繕う

wsws.org

William Whitlow

2011年6月4日

6月1日、国際原子力機関 (IAEA)は、福島原発災害の報告書素案を発表した。報告書は、東京電力と日本政府を非難から免れさせる取り繕いだ。報告書の当たり障りのない表現は、論議を抑圧し、原子力業界を、精査から保護しようとする企てだ。

報告書が出された時点で、更に二人の原発作業員が、最大放射線量を超えてしまっていることが判明した。一人は30代、もう一人は40代の二人の男性作業員が、日本で原子力作業従事者が法的に許容される250ミリシーベルト以上を被曝した。政府は、限度を、それまでの100ミリシーベルトというレベルから、事故後に上げた。100ミリシーベルト以上、放射能を被曝すると、癌が発生する生涯リスクが増すと考えられている。

先に、三人の作業員が、福島原発地下の冠水したトンネル中で作業した後、1000ミリシーベルト以上を被曝していたことが判明した。この新たな事実は、再び、現場の作業員が直面する危険を強く示唆している。要員の放射能被曝の全容は不明だ。復旧作業に従事している作業員達は、まだ定期検診を受けていない。事故発生以来、福島原発では、約7,800人の作業員が採用されているが、朝日新聞によれば、わずか1,800人しか放射能被曝の検査を受けていない。

最近の件の二人は、いずれも、第3号炉と第4号炉の制御室で働いていた。二人はあふれたトンネルで作業していたわけではない。二人の放射能被曝は、施設全体の高いレベルの汚染を示している。二人は、汚染された物質を呼吸、または摂取した結果、内部被曝を受けたのだ。現場は放射性のチリで覆われている。多くの労働者は現場で宿泊し、汚染されている可能性がある区域で食事をしている。防護服を着けている人々はわずかだ。現場の契約労働者の多くが、リスクの警告を受けているかどうかは疑わしい。

汚染の全容は、次第に明らかになりつつあるに過ぎない。原子力発電環境整備機構(英語を直訳すると「日本放射性廃棄物管理機構」)の研究者は、20キロの立ち入り禁止区域圏外の土壌サンプルが、チェルノブイリ周辺の“デッド・ゾーン”のものより高い汚染レベルであることを発見した。

福島原発の北西約25キロにあるある場所の土壌サンプルでは、セシウム137の放射能は、1平方メートル当たり、500万ベクレルを超えている。他のものはより低く、1平方メートル当たり148万ベクレルだ。しかし、いずれも余りに高く、土地は、居住に適さず、作物栽培や、家畜飼育にも適さないものとなっている。

チェルノブイリ事故から25年経っても、土地はいまだ安全とは言えない。チェルノブイリからの放射性降下物の80パーセントが落ちたベラルーシでは、いまだに農地の五分の一が使用できず、ベラルーシ経済は、年間7億ドルの犠牲を払っている。

人口密度がベラルーシよりも高いので、日本におけるリスクは、より大きい。ベラルーシでは、200万人が、放射性降下物の影響を受けたと考えられている。しかし、日本の人口は、ベラルーシ人口の七倍以上多いのだ。

土壌調査の結果は、危険なレベルの汚染が、日本政府が福島原発周辺に設定した公式立ち入り禁止区域を超えて広がっていることを示している。立ち入り禁止区域内部の汚染レベルは、政府の科学者しかアクセスできない為、不明だ。彼らは、いかなる土壌汚染検査結果も発表していない。

数値について、コメントを求められて、東京電力の寺澤徹哉は、土壌汚染の数値は、プルトニウムをまき散らす核実験の後に見つかるものと合致していると述べた。

これほど広い地域にわたる土壌汚染は、原子炉建屋で起きた爆発による、大気汚染の結果。同時に、水の汚染も続いている。福島原発の排水溝(トレンチ)と、地下トンネルに溢れた水は、大気に放出されたものより、さらにひどく汚染していると考えられている。

水は最大深度に達しつつあり、今後数日のうちにあふれる始めると推測されている。代替の貯蔵・処理施設は、まだ完成していない。除染プラントは、6月15日までには完成しそうもなく、地下の汚染水貯蔵施設は、8月中旬までに完成する予定だ。たとえそれが完成しても、貯蔵装置は不十分だ。現場には、既に1億500万リットルの放射能を帯びた水があるが、貯蔵タンクは、わずか1000万リットルしか収容できない。

日本が梅雨に入っているため、水位は上昇し続けている。最近この地域を通過した台風第2号は、福島原発の水位を劇的に上昇させた。“水位が排水溝の上端に達するまでには、まだあと五日から七日はありそうです”と、東京電力の広報担当者黒田光は述べた。通信社ブルームバーグは、この推定日程には懐疑的で、早くも6月6日には溢れ始める可能性があると示唆している。

溢れ出るリスクとは全く別に、放射能汚染水は依然として、海に漏れ出ている。4月5日までに、1000万リットルの汚染水が、海に捨てられた。漏れを止める取り組みは成功していない。原発沖の海にいる魚が、危険なほど高いレベルのセシウムを含んでいることが発見された。

原子力専門家達は、放射能汚染水問題に対する東京電力の対応を批判している。“原子炉燃料棒のメルトダウンが既に起きているのですから、水が溢れるリスクも深刻です”近畿大学原子力研究所所長の伊藤哲夫教授は、ブルームバーグに語っている。“東京電力は数週間前にこのリスクを認めるべきでした。何らかの緊急措置がとれていたでしょう。”

現在、現地にたまりつつある水は、ひどく汚染されている。東京での記者会見で、東京電力の松本純一は、放射能レベルは、72万テラ・ベクレルと推定されると語った。おそらくは、この膨大な数値は、現地にある水の全量についてのものなのだろうが、科学的な価値を持つほど充分に正確なものではない。

深まる危機を背景に、国際原子力機関の報告書が提示された。しかし、報告書に書かれたことは全て、社会不安を静め、状況は管理されており、福島原発の状態は安定しているという印象を与えることをねらったものだ。現実は、これとはほど遠い。

12ヶ国の事実調査チームの報告書素案を発表する際、国際原子力機関の事務次長デニス・フローリーは、福島でのこの事故後、原子力に対する国民の信頼を修復することが、一番の関心事だと語った。国際的に、新たな安全基準が必要だろうが、それは各国政府の責任となろうと、記者会見で彼は語った。

報告書は“世界が原子力安全を改善する上での教訓を学ぶことを支援すべく,調査団との情報共有及び調査団からの多数の質問への回答において非常に開かれた対応をとった。”日本政府と東京電力の率直さを称賛している。しかし、日本政府さえ、東京電力は情報を隠蔽している、といって批判している。

報告書は、福島原発から放出された放射性物質による健康への影響の記録は、これまで皆無だと強調している。“今日まで、今回の原子力事故による放射線被ばくの結果として人が健康上の影響を受けた事例は報告されていない。”と報告書は述べている。しかし、健康への影響は、数年後にならないと、はっきりしない可能性が高い。チェルノブイリ事故の影響は、過剰死亡に関しては、ようやく今になって、測定可能になりつつある。

現場の労働者達の健康は“非常に高度な専門的な後方支援”によって確保されていると報告書は主張している。更に二人の作業員が高い放射能レベルを被曝していたことが判明したという事実によって、この主張は偽りであることが示された。作業員の大多数は検査を受けていないので、現場で作業している人々の大半の被曝レベルがどのようなものかを知ることは不可能だ。

報告書の記者会見で、国際原子力機関、原子力安全保安局担当デニス・フローリー事務次長は、一つの炉の燃料が溶融していたことを認めた。報告書素案では、単に“燃料への重大な損傷”と言及していた。しかし、破壊した福島原発の所有者である東京電力は、先月、津波が原発を襲って間もなく、緊急電源装置を破壊し、三基の原子炉でメルトダウンが、起きたことを認めていた。これまで、三重メルトダウンは、他のいかなる原子力施設でも、かつて起きたことがなかった。

危機が始まってから三日後には、第2号炉の温度は2700度に至ったと考えられており、54パーセントの炉心が溶融した。保守的な業界情報源、ワールド・ニュークレア・ニューズ紙によると、3月14日までに、3号炉内の燃料の94パーセントが、原子炉格納容器の底に落ちた。1号炉では、炉心全てが溶融したと考えられている。

緊急冷却という努力の結果、現場にあふれた水で検知された高い放射能レベルは、三基の原子炉全ての損傷で説明できるだろう。

菅直人首相は、フィナンシャル・タイムズのインタビューで、東京電力が、福島でのメルトダウンのリスクを過小評価していたことを認めている。だが国際原子力機関は、同社を称賛するだけだ。国際原子力機関報告書は、福島事故の原因と、現在、存在していて、発展中の危機の程度を調査しようという、まじめな企てというよりは、取り繕いだ。

今後三ヶ月内に汚染レベルを引き下げられると期待していると東京電力は語っている。原子力専門家達はこのシナリオには懐疑的だ。米国原子力規制委員会のウイリアム・オステンドルフ委員は、米国上院環境公共事業委員会の公聴会で、成功の確率は10中、6、7と思うと語っている。

“問題は、余りに東京電力を守ることにばかり重点が置かれていて、国民を守ることに対して、不十分なことです”と元日本政府特別顧問の黒川清博士は語っている。

余り大企業批判はしないことで知られている雑誌、タイム誌は、加熱した原子炉に、ヘリコプターから水を投下しようとした試みを“実用性というよりは、広報活動として考案された”と表現した。

国際原子力機関の報告書全文は、6月末ウィーンで開かれる原子力安全に関するIAEA閣僚会議に提出される。

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2011/jun2011/fuku-j04.shtml

----------

経済産業省のウェブ、「IAEA調査団暫定的要旨について」に、原文、翻訳のpdfがある。

避難を含め,公衆を保護するための日本政府の長期的な対応は見事であり,非常に良く組織されている。

というくだりだけで、もう充分にインチキ国際組織のお里が知れる。まじめな検討に値しない取り繕い文書。閣僚会議の結論も、今から想像できそうだ。マスコミが称賛する「グローバル」やら「国際」、大半はこういう代物。

そもそも、

    • 核兵器保有国以外への核兵器拡散を防止する
  • 原子力発電を推進する

のが目的の国際組織、つまり国際「原子力村」が、自分達に不利な事実を公表することなど永久にないだろう。

七沢潔著『原発事故を問う─チェルノブイリから、もんじゅへ─』岩波新書440、原発事故についての大変素晴らしい本だ。是非、お買い上げの上、この記事の話題に関しては、下記をお読みいただきたい。

第2章 隠された事故原因

三 国際検討会議の舞台裏、の

    •  共通の利害─ソ連とIAEA という部分 131ページ~
    • 米ソの密談 という部分 142ページ~

第2章、 隠された事故原因、こういう文章で終わっている。

チェルノブイリ原発事故の事故原因をめぐる政治劇は、行き着くところ、その当事者たちはみな退場し、国も滅び、原子炉だけが不気味に生き残ることになった。

皆様、まもなく、既視感を持たれるのではあるまいか?

本書を読むと、チェルノブイリ事故対策で活躍し、ウィーン会議でも立て役者となったレガソフが、後に自殺した理由も、わかるような気がする。

チェルノブイリの損害を補償するはずだったソ連は、やがて崩壊した。

ソ連崩壊後、ロシアは、原発を稼働し続けている。

フクシマの損害を補償するはずの国家は、間もなく、大連立大政翼賛国家になる。

自民党は、属国深化と原発推進を政策主題としていたマイナス勢力。

民主党は、政権交替後、自民同様、属国深化と原発推進を継続しているマイナス勢力。

算数では、マイナスとマイナスをかけると、プラスになる。

しかし、マイナスとマイナスを足しても、マイナスの値は大きくなるばかり。

大連立政権、選挙結果を馬鹿にした、マイナスとマイナスの足し算にしか過ぎまい。そもそも、こういう馬鹿げた大政党を可能にした、「小選挙区制度、政党補助金制度」いまだに多数の皆様が復帰を熱望しておられる政治家の尽力によるもの。

放射能同様、恐ろしい「コンピュータ監視法」、民主党小宮山泰子議員の緊急動議により衆院本会議で可決したが、小宮山泰子という自民党系の世襲政治家、皆様がもてはやすその豪腕政治家氏の一新会所属。

基本政策がほとんど変わらない民主党と自民党・公明党との間でなぜ「政局騒動」が生じるのか、不思議でならないと考える先生がおられる。ご専門は都市計画、まちづくり!

2011.06.06 菅内閣不信任決議騒動は、企業国家日本の崩壊のはじまり

結局、

フクシマ原発事故の事故原因をめぐる政治劇は、行き着くところ、その当事者たちはみな退場し、国も滅び、原子炉だけが不気味に生き残ることになり、

放射能汚染不沈空母は、大連立大政翼賛政治で、原発を稼働し続け、消費税を上げ、TPPに参加し、やがて再度の原発震災で、更なる国土と国民を失い、急速に衰亡する のだろうか?

そういう方向を指し示す青森県知事選が、原子力という麻薬の患者となった国の現実。選挙の時点に存在していない、青森県外の、日本の、世界の、将来世代の人々は、何の恩恵も受けず、被害だけ強いられる。それでなくとも無辜の外国人を殺害するための基地を唯々諾々と維持する異様な不沈空母。

さしもの不沈空母も沈没、現代版エクソダス・流浪が始まるのだろうか?おトモダチ、「自己責任ですよ」といって、受け入れてはくれまい。

不沈空母というより、初の原子力航行試験中に放射能漏れを起こし、母港に帰れず、長年日本の港をさまよったあげく解体された「原子力船むつ」を思い出した。

黒澤明の映画『夢』にあるエピソード「夢之赤富士」は余りに予言的。余りに現実的。彼の知名度、更に高まるだろう。

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コメント

子供になんと説明すればよいのか
こんな時代に生んでしまってごめんなさいで済む問題ではないのです

渋谷では毎週のようにデモ行進があり若い人の参加が増えています
デモに参加する為の手引き「はじめてのデモ」手引書 http://scr.bi/hXINRs

まかせてこのまま手をこまねいて良いものなのか 、咆哮を聞くたびに出来ることはないのかと自問自答しています 。

IAEA、の事はうすうす感じていたとおりでした。
日本の事故調査委員会はどうなんでしょうか。

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