オサマ・ビン・ラディンの好都合な死
Paul Craig Roberts
2011年5月3日
"Information Clearing House"
アメリカは必ず勝つという勝利主義の匂いがプンプンするプロパガンダ記事で、AP通信の、というよりは、ホワイト・ハウス真実省の、二人の記者とされる連中、アダム・ゴールドマンとクリス・ブラミットは書いている、というか、ホワイト・ハウス、あるいはCIA報道発表を丸写ししている。“激しい銃撃戦で、海軍特殊部隊ネイビー・シールズによって殺害されたテロ首謀者のオサマ・ビン・ラディンは、最初何年も前に(強調は筆者)東欧にある秘密のCIA監獄の囚人達から探り出した情報に基づいて、追い詰められたと、当局は月曜日に発表した。”
一体何人のアメリカ人が、“報道”の第一段落が、CIA監獄と拷問を正当化していることに気づくだろう? 秘密監獄と拷問無しでは“テロ首謀者”は、2001年に腎不全で亡くなっていたにもかかわらず、自由に動き回っていただろうというのだ。
CIAとFBIだけではなく、アメリカの諜報機関16の全てを、イスラエルのモサドやNATOの諜報機関とともに打ち破り、北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)、国家安全保障会議、ペンタゴンも、統合参謀本部も、アメリカ空軍も、アメリカの空港で、同じ日の一時間の間に、セキュリティー手続きを四度も打ち破り、航空管制も敗北させ、最新式のペンタゴン防空システムを打ち破り、飛行機の操縦法を知らないパイロットを使って、三機の旅客機を、三棟の建物に突入させた、“テロ首謀者”が、ほぼ十年もの間、他の攻撃を一切やってのけていないのは一体なぜかと疑う分別を、一体何人のアメリカ人が持っているだろう? カッター・ナイフを持ったわずかな人数のサウジアラビア人に直面した際に、これほど完璧に駄目になってしまうような政府の防衛体制が、一夜にして、完全なものとして更新できると、アメリカ人は本当に信じられるのだろうか?
183回も水責めされた後で、“9/11の首謀者”であることを白状したグアンタナモの囚人ハリド・シェイク・モハメドによって、追い出された後、長らく行方不明だった“テロの首謀者”ビン・ラデンの復活に、一体何人のアメリカ人が気づくだろう?
アメリカ人は祝賀に忙しすぎて、考えることができないのだ。アメリカ人の教育では、この能力、除外されてしまっているようだ。
アメリカ人は、ビン・ラデンの死を巡って夢中になりすぎていて、一体なぜ何年も前に情報を得たのに、パキスタン陸軍士官学校の隣の、あらゆる最新の通信機器を備えた百万ドルの住宅に住んでいたとされる人物を探し出すのに、それほど長くかかったのか不思議に思えないのだ。“最重要指名手配犯”は、辺鄙な山地の隠れ家から隠れ家へと渡り歩いていたわけではなく、白昼、高級住宅街に身を隠していたのだという。ところが、見え見えの住み処にもかかわらず、CIAは、秘密監獄の囚人から、彼の居場所についての情報を得たと主張してから、彼を見つけ出すのに何年もかかった。これは無声映画時代のドタバタ警官隊喜劇キーストン・コップス新版という、CIAイメージだ。
ネイビー・シールズとCIA傭兵は、交戦規定に従い、称賛すべきやり方で行動したのに対し、砲撃が起きた際、ひきょうなビン・ラデンは女性を楯にし、陰に隠れたという発表の直後、売女マスコミ(英語はprestitute)からこう聞かされた。“アメリカ当局は、新たな攻撃のリスクがあることを認めた。テロリストは、ほぼ確実に、ビン・ラデンの死に対して報復しようとするだろうと、CIA長官レオン・パネッタはメモに記している. . . . 数時間後、国土安全保障省は、ビン・ラデンの死は、‘地元の暴力的過激派’にとって、攻撃の動機となる可能性が高いと警告した。”
ホワイト・ハウスの対テロ対策顧問、ジョン・ブレナンは、記者団に“隠れ家が、軍隊が多数存在する都市で、六年前に特注されたものである以上、テロリスト逃亡者が、パキスタン国内で支援を受けていなかったとは考えられない。”
そこで、アメリカが交戦しているわけではない、主権を有する外国における、アメリカによるビン・ラデン殺害とされるものは、国際法の下で犯罪であるのに、虫のいい可能性を三つ捻り出した。
テロリストはビン・ラデンの死に報復をするだろうと、CIAは言って、軍/防衛複合体に、儲けが流れ込み続け、権力が、責任を負わないCIAに流れ込み続けるため、偽装ヤラセ攻撃を仕込んでいる。
国土安全保障省は、国内的に警察国家を拡充し、旅客を嫌がらせ、反戦抗議デモ参加者を逮捕する。
そして、パキスタンは、ビン・ラデンを匿ったことで、侵略と奪取(もちろんインドによる)の瀬戸際にある。
米国議会におけるイスラエル・ロビーの代理人達も、即座に計略に合流した。上院軍事委員会の委員長、カール・レヴィン上院議員は、パキスタン軍と諜報機関には“場所、期間、そして、これは実際に、この施設が、実際、ビン・ラデンのために建てられたという明白な事実、そしてパキスタン軍中心部への近さを考えれば、説明すべきことが多々ある。”と言明した。
二人の記者は政府のプロパガンダには何の質問もしなかった。それどころか、二人の記者は祝賀に加わったのだ。とは言え、“ブレナンが、決して‘誰も彼の死を否定しようとする根拠をもてなくするため”の取り組みと呼ぶものの一環として、ビン・ラデンの死体を写した少なくとも一枚の写真を、公表すべきかどうか、当局は熟考した’”と二人は、うっかり漏らした。
ガーディアンやヨーロッパの新聞が暴露した様に、死亡したビン・ラデンの写真は偽物だ。遺体とされるものは、海に水葬され、残っているものと言えば、イラク大量破壊兵器やアルカイダとのつながりや、イエローケーキや、イランの核兵器について、そして何千人もの専門家によれば、9/11についても、嘘をついているアメリカ政府のセリフばかり。政府が突如、ビン・ラデンの死亡について真実を話し始めるものだろうか? 万一、読者がこれを信じられるのであれば、小生がブルックリンに持っている橋を、良い価格でお譲りしよう。
ビン・ラデンのいかさまの死に対する、小生の最初の解釈は、アメリカの財政赤字に対処するために、オバマアフガニスタン戦争と占領を終わらせる必要に迫られているというものだった。これに続いたオバマ政権幹部の声明から判断すると、狙いは、盛り上がらない国民の意欲を押し上げるべく、ちょっとした戦勝をアメリカ人に与えるためであった可能性もある。軍事/防衛複合体は、益々豊かに、強力になり、アメリカ人には、敵に対する勝利という代償としての喜びが与えられるというわけだ。
記事原文のurl:www.informationclearinghouse.info/article28016.htm
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属国日本の支配層にとっては、フクシマ記事を吹き飛ばしてくれる絶好の朗報だろう。
狙いは、盛り上がらない国民の意欲を押し上げるべく、ちょっとした戦勝を日本人にも与えるためであった可能性もある。軍事/防衛複合体は、益々豊かに、強力になり、日本人には、敵に対する勝利という代償としての喜びが与えられるというわけだ。
- 原子力発電も、
- 憲法の上にそびえる安保条約(それをもとにした米日軍事主従同盟)も、
政治家、官庁、御用学者、マスコミ、財界、こぞって「国民のためになる」という真っ赤な嘘を、言い続けてきた。ほんとうは、どちらも「支配者のためになる」が、永久に「国民のためにはならない。」
フクシマ事故で暴露されたのは、原発安全神話だけではない。
アメリカの世界侵略の為に、膨大な基地を提供し、みかじめ料を支払って、展開していただいたトモダチ作戦、いったいどれほどの効用があっただろう。侵略が本務の人々が、人を救えるはずがないだろう。存在目的、はじめから、違うのだ。
オトモダチ(核の傘すらあるかどうかわからない)など、羊の皮をかぶった人食い狼でしかないことも、暴露されたろう。津波、原発事故報道の陰で、沖縄での基地建設のための作戦は着実に進んでいる。
とうとうあのWikiLeaksまで、基地問題のインチキさ、日本の官庁が、宗主国官庁の出張所であることを暴露してくれたではないか。
国家は無法で、庶民は無力だ。しかし、あきらめてはなるまい。25年前のドイツ映画『核分裂過程』、まさに住民たちの闘いによって、権力側が譲歩し、ドイツ、バイエルン州ヴァッカースドルフの核燃料再処理工場建設が中止となった様子を記録したドキュメンタリー。
「安全性」にまつわる政治家の嘘、法を楯にした警察の暴力、住民運動の実体を報道しようとしない公共テレビなどを通して、住民たちが、正しくも体制不信に至る様子、さながらフクシマ以後の日本を想起させられる。
原子炉廃絶への過程を着実に進めるドイツと、大事故進行中でも、原発維持・推進をうたう政治家が多数当選する日本、25年という時間差だけによる民度の違いとは思えないことが残念。ヴァッカースドルフの住民たち、問題を「フランスのラ・アーグに押しつけて終わり」にしようとはしない。闘い続けている祝島の方々にも、ヴァッカースドルフのような良い結末を迎えて頂きたいもの。
続編である20年前の映画、『第八の戒律』は、ドイツ、フランス、イギリスの再処理工場を取り上げ、さらに核実験からスリーマイル、チェルノブイリまでを俯瞰し、原子力利用の歴史と意味を問うた作品。
登場する老哲学者が「我々は彼ら(原子力マフィア達)から攻撃を受けているのだ」と激烈な言葉をはく。3.11後の今、その言葉は一層リアル。あらゆる国の当局、御用学者のセリフ、判を押したようにソックリ。庶民が被害を受けるのも。
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ウサマ・ビンラディンを殺害するように指示を出しました。
この経緯については、小説仕立てにして記述しました。
”原作「エシュロンキラー」”という小説で、
アルファポリス(http://www.alphapolis.co.jp/)
の第4回ミステリー小説大賞(2011年7月1日
~31日)にエントリーしいます。
宜しかったら、アルファポリスに市民登録して、
”原作「エシュロンキラー」”を読んでください。
そして、”原作「エシュロンキラー」”に投票してください。
直リンクは、http://www.geocities.jp/internetshow2000/index.htmlです。
投稿: 名無しのコン太 | 2011年7月 3日 (日) 16時42分
武器所持を容認し、殺人を正当化する自己中心的な民族であるという証明がなされた。広島、長崎をも正当化している限り、一生、『アメリカ人』とはわかりあえないだろう。
投稿: りゅう | 2011年5月 6日 (金) 11時02分
反米左派政権の樹立‥
中南米諸国に出来て日本に出来ないと、誰が決めたのでしょう。
投稿: eggplant | 2011年5月 5日 (木) 17時04分
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投稿: rintei | 2011年5月 5日 (木) 13時05分