A Hard Rain:原子力論議の‘裏側’を扱った豪州映画
これは制作されるべくして制作されたドキュメンタリーだ! 二度、アカデミー賞(ドキュメンタリー部門)候補となり、AFI(アメリカ映画協会賞)を五回受賞した、デヴィッド・ブラッドベリー監督の最新作A Hard Rainは、原子力論議の‘裏側’を取り上げている。
各国政府や大半の大手マスコミは、今や化石燃料に対する魅力的な代替手段で、我々全員を地球温暖化から救ってくれる魔法の様な解決策だとして、原子力を売り込んでいる。チェルノブイリ・メルトダウンが起きた20年前の最悪の時期以来、原子力は、きれいで、環境にやさしいという、連中に好都合な意味あいを持つようになっている。
中国、フランス、イギリス、日本、そしてオーストラリアと五カ国を巡り、ブラッドベリー監督が以前制作した三本の原子力関連ドキュメンタリー映画(『公共の敵ナンバーワン』、『ジャビルカ』、『風に吹かれて』)から学んだことを活用し、A Hard Rainは、ウラン採掘から、原子力発電所、そして放射性廃棄物や兵器製造に至るまで、世界中の原子力産業全体を詳しく吟味している。原子力推進というオーストラリアでの最新の動きの背後にある隠された狙いを、この映画は暴露している。
カナダのロザリー・バーテル博士、イギリスのクリス・バズビー博士、オーストラリアの(元豪州科学・工業研究機構)、ニュー・サウス・ウェールズ大学・環境研究所、マーク・ディーゼンドルフ博士、オーストラリア環境保全基金理事長、イーアン・ロウ教授、モナシュ大学工学部、ギャヴィン・マッド博士等、世界最高の科学者や環境運動家達の、この話題にまつわるインタビューもある。
映画には、それぞれの国で起きていることについての真面目な協議から締め出されている古くからの所有者へのインタビューもある。
原子力を推進している諸外国の経験を検討することによって、A Hard Rainは、原子力は安全で、安価で、健康で、環境に優しく、次のチェルノブイリ事故が起きる可能性などほとんどない、といった原子力業界の神話が偽りであることを証明している。
この問題を理知的に議論し、ウラン採掘推進派の圧力団体が、マスコミや、政府や、労働党に、実に見事に植えつけた、原子力神話を打ち破るための、重要な、事実に基づいた情報を知りたいとお考えであれば、このドキュメンタリー映画は必見だ。
記事原文のurl:www.frontlinefilms.com.au/videos/hardrain.htm
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官邸での記者会見で、首相は「エネルギー基本計画」(10年6月18日に閣議決定)について、「いったん白紙に戻して議論する必要があるだろうと考えている」と発言した。至極当然。
一方では、アメリカ・日本が、モンゴルに原子力発電所を建設し、放射性廃棄物を引き受けてもらう極秘計画が明らかになった。毎日記事 重みは後者にこそあるだろう。人間の智恵では、人間が無理やり生み出した放射性廃棄物、処理不能なのだ。人類が滅亡した後も、放射能は出続ける。
日本国内に、原発ならば無理やり作れても、放射性廃棄物の永久保存施設、オンカロは作れない。今回地震で起きた大事故でわかるように、日本全土、永久保存施設を建設するには、地盤が余りに不安定なのだ。あの広大なアメリカでさえ、ユッカ・マウンテン永久保存施設計画、宙に浮いている。
トイレがつまったままでは、マンションには暮らせない。放射性廃棄物を日本の外に捨てない限り、日本の原子力発電は早晩行き詰まる。わかりやすいが、ひどい話。
ICBUW(ウラン兵器禁止を求める国際連合)広島国際大会でブラッドベリー監督が講演した記事『ウラン兵器なき世界をめざして』で、この映画の要約が見られると知った。150-153ページ。(そこには7分とあった。)この本には劣化ウラン兵器に関する小出裕章氏講演記事もある。108-110ページ。
A Hard Rainは2007年公開。オリンピック・ダム・ウラン鉱山での露天掘り採鉱過程で、ガス、粉塵が、風に吹かれて、オーストラリア中に広がる危険を扱っている。
該当ページで、約25分のA Hard Rain要約版を見ることができる。(英語)DVDも購入可能。海外ということで、郵送料は、余計にかかるが。
A Hard Rainについての、より詳しい情報は、
えこ&ピース ウラン鉱山開発に警鐘を鳴らすドキュメンタリー『A Hard Rain』にある。
『公共の敵ナンバーワン』とした映画、原題はPublic Enemy Number One。
日本敗戦直後、取材にきたが、米軍の意図に逆らい、密かに広島を訪問、原爆投下後の広島に始めて入った西欧ジャーナリストとして、45年9月5日、デイリー・エクスプレス紙に「世界への警告として、これを書く」で始まるスクープ記事を書いたオーストラリア人記者ウイリアム・バーチェットについての映画。朝鮮戦争やベトナム戦争についても、辛口記事を書いたバーチェット記者、オーストラリアでは悪者扱いされており、この映画、様々な賞を受けたにもかかわらず、テレビでは放映されていないという。
「公共の敵ナンバーワン」とは、本来FBIの凶悪指名手配犯10人リストNo. 1のこと。
デヴィッド・ブラッドベリー監督が初めて広島を訪問したのは、1981年。
ウイリアム・バーチェット記者については、下記翻訳記事が詳しい。
「隠蔽されたヒロシマ:いかにして陸軍省のタイムズ記者はピューリッツア賞を勝ち取ったか」byエイミー・グッドマン
アカデミー賞ドキュメンタリー部門候補とされたブラッドベリー監督作品は、Frontline、オーストラリア人カメラマン、ネイル・デービスの視点から捕らえたベトナム戦争を描いたものと、Chile: Hasta Quando、ピノチェト独裁を描いたもの。
『ジャビルカ』原題、Jabilca。オーストラリアのウラン鉱山開発にまつわる問題を扱ったドキュメンタリー。1997年。
『風に吹かれて』原題、Blowin' in the Wind
劣化ウラン弾兵器問題を扱った映画。ショールウォーター湾にある軍の共同訓練施設にまつわる健康問題、戦場での劣化ウラン弾使用の影響を取り上げている。
ブラッドベリ監督の日本取材については、下記ページがある。
映画『ジャビルカ』のデヴィッド・ブラッドベリ監督が人形峠と方面地区のウラン残土を取材 ウラン残土訴訟を支える会 土井淑平
土井淑平氏、小出裕章氏と、共著『人形峠ウラン公害裁判』批評社刊を書いておられる。土井淑平氏の著書には、他に『原子力神話の崩壊-ポスト・チェルノブイリの生活と思想』等ある。
映画『ジャビルカ』
小出裕章氏、この映画の日本語版制作協力者の一人でもある。
ウランなり、プルトニウムなり、こうした放射性物質、
- ウラン採掘
- 核兵器原料・原子力発電燃料用への濃縮・加工
- 世界各地での核兵器実験
- 二度の核兵器実践使用
- 原子力発電
- プルトニウム抽出再処理
- 戦場での、劣化ウラン弾使用
- 放射性物質の最終処分場
あらゆる過程で膨大な被害をもたらしつづけるのは明白。パンドラの箱。
O・J・シンプソン-プルトニウムファイル、そしてチェルノブイリ極秘で触れた、アメリカによる恐るべき実験の本「プルトニウム・ファイル」再刊して欲しいものだ。「プルトニウム・ファイル」には、水爆実験に参加したアメリカ兵士の話はあったが、現地の人々については触れていない。現地の人々の被害については、下記の本が詳しい。
『非核太平洋 被爆太平洋―新編 棄民の群島』前田哲夫 筑摩書房 1991
『隠されたヒバクシャ―検証=裁きなきビキニ水爆被災』前田哲夫編 凱風社 2005
アメリカでの化学廃棄物被害については下記が詳しい。
『環境レイシズム アメリカ「がん回廊」を行く』本田雅和、風砂子・デアンジェリス著 解放出版社 2000.7
劣化ウラン弾による各国国民の被害の様子、森住卓氏のwebで瞥見できる。
気の遠くなるような大規模施設での、気の遠くなる期間にわたる放射性廃棄物保管の試みについては、フィンランドで建設中の巨大施設オンカロ関係者のドキュメンタリー映画『100,000年後の安全』がある。
英語ページはここ
ヴァッカースドルフでの再処理工場建設を中止させた住民運動の様子を描いた映画『核分裂過程』、その後の、ドイツ、フランス、イギリスの様子を描いた『第八の戒律』も、上映が続けられている。マスコミは、住民運動によって、お上の政策がひっくり返される様子など報じない。「法はあんた方の側かもしれないが、正義は我々にある」と語る住民達を見て、「祝の島」の皆様を連想した。広瀬隆氏の『恐怖の放射性廃棄物-プルトニウム時代の終わり』集英社文庫の、第三章は「こうしてヴァッカースドルフの森は守られた」。まさに、この話題の現場で、当事者の方々に会って、書かれた記事。元々は、1994年7月、『ドイツの森番たち』という題名で刊行されたもの。すごいものだ、と当時読んだ時に思ったが、今読むと、ドイツという国のすごさがわかる。
原子力は「麻薬のようなもの」と評した学者の言葉が印象的だった。国家は、国民に、大麻や麻薬を固く禁止しながら、為政者、役人、御用学者、企業、労組、マスコミは、原子力という名のもっと危険な麻薬に、すっかりどぶ漬け。今さえ・自分さえよければよいという利己主義の極地。彼らの世界、グレッグ・パラストの書名そのもの。Armed Madhouse=武装精神病院。テレビでのコメントを見ていて、とうてい正気と思われない御用学者・政治家の皆様、早急に収容・隔離が必要かも知れない、と何度思わされたことか。
超一流と思われている大学の教授連中、大半その実態はほとんど太鼓持ち。わずか数人の助教、つまり助手の方々だけが、真実を語るという状況、北朝鮮を笑えないだろう。共産主義ロシア時代ですら、体制の意志に逆らう一流学者は存在した。日本の超一流大学、実態は、超一流幇間製造工場だったようだ。
批判いただく前に書いておこう。
赤の広場で、「スターリンは馬鹿だ」と叫んだ男、名誉棄損ではなく、国家機密漏洩罪のかどで逮捕された。という小話がソ連にはあったという。
日本で原発を推進する「政治家、役人、学者は幇間だ」と書いているメタボ、同罪だろう。
日本人監督による映画。
『ヒバクシャ―世界の終わりに』鎌仲ひとみ監督 本もある。『ヒバクシャ』
『六ヶ所村ラプソディー』鎌仲ひとみ監督 本もある。『六ヶ所村ラプソディー・ドキュメンタリー』
『ミツバチの羽音と地球の回転』鎌仲ひとみ監督
『祝の島』(ほうりのしま)纐纈あや監督
『ナージャの村』本橋成一監督
『アレクセイと泉』本橋成一監督
NHK番組:
BS<シリーズ チェルノブイリ事故 25年>
永遠のチェルノブイリ
被曝(ひばく)の森はいま
見えない敵
汚された大地で、チェルノブイリ20年後の真実
チェルノブイリ原発事故その10年後
チェルノブイリ原発事故・終わりなき人体汚染
NHK特集 調査報告 チェルノブイリ原発事故
被曝が危険か否か、という論議には、『隠された被曝』が参考になる。矢ケ崎克馬琉球大学名誉教授著、新日本出版社、2010年刊
この本については、ちきゅう座blogに、米核戦略と放射線「科学」という書評記事がある。属国のエセ学者、政治家、官僚、一人として宗主国の方針に反する意見、いえるわけがない。言えば、体制内での社会的生命はたたれるのだから。
もちろん、属国体制外で、真実の発言を続ける、本物の学者、評論家も、わずかながられ、おられる。そうした貴重な発言、ただで読んでばかりいては申し訳ないので、時々、貧者ながらも、ご著書を購入させていただいている。
しかし、フクシマ災害、一般の人々に本当のことがわかるころは、手遅れだろう。
日本の姿が時々刻々、世界に報道されている状況、リアルタイム本物の「フクシマ・トルゥーマン・ショー」、国民丸ごと「モルモット状態」、日本人による、二度とできない、人類への貢献だろう。
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ブログ主さん、
デイヴィッドの紹介をしてくださって、ありがとうございます。
彼とは2003年にハンブルグで開かれたウラニウム兵器の国際会議で会って(森住さんと初めてお会いしたのもそこ)、彼はそこでも参加者をインタビューして"Blowin' in the Wind"に使ったのですが、私もチラッと画面に出てるとこがある。(^^; この作品は、豪州ですでに「米豪合同訓練」という場で劣化ウランが使われている事実を暴きつつ、それがどんなものかを訴えている。
これが出来たあとで、私は豪州のグリーン(党)が全く信用できないことを思い知らされました。ダグ・ロッキーともども党首に「なんとか止めて!」と書いても、完全無視。そのくせアル・ゴアの嘘(温暖化人為説)では旗振り役やってるんだから。
それはさておき、"A Hard Rain"の取材旅行手配は本当に大変でしたが、日本の皆さんの素晴らしい協力で、とても助けられました。京都精華大の細川さんが色々な方と繋いでくださって、飯田哲也さんにも本当にお世話になりました。鈴木真奈美さんには何度も通訳して戴いて。美浜の松下さんとは言葉も思うようには通じないながら「まるで僕の兄貴に思える」と感動していましたし、パワーシステムの岡村さんにも電池のことをインタビューしに行きました。書ききれないほど、他にもたくさんの方々に助けられました。
彼の帰国後、各インタビューの英訳作業もやったのですが(私も一部担当)、生憎日本で取材した分は作品に載りませんでした。というのも、彼は常に観る側の限度を1時間と決めていて(集中力を持って観られる限度)、英国等で撮ったものだけで一杯になってしまったのです。(>_<) 私はものすご~~~~~く残念だったのですが、「日本で得たものは十分作品にも反映させた」と彼は言っていました。
当時、「日本でのインタビューも貴重だから、別途一枚にまとめてエキストラとしてつけようかと考えてる」と言っていました。それを、なんという奇遇、今思い出して彼にさっきメールしたところです。「あれ、どうなってる?」って。やらないならネットに載せさせてと。
#普段は州も違うし、行き来がない
『ジャビルカ』やバートレットの映画(非常に興味深い)等のことも書こうと思いましたが、すでに長くなったので、この辺で。(^^;
とにかく今は、全国の原発と核施設の全廃めざして頑張ろう!!
お邪魔致しました。
投稿: 千早 | 2011年5月19日 (木) 19時16分
>余りに残酷な犠牲でした と過去形にできる認識が理解できない。
現実がある程度でも明らかになるのは、四半世紀後のことになる。その間に被曝線量と変性疾患の罹患率との関係が大幅に見直されていくことになる。
3号機の臨界爆発に伴うアルファ線核種(超ウラン放射線同位体とプルトニウム)の揮発化による、これら非減衰(数万年以上の半減期を意味する)内部被曝源の広域拡散汚染は、セシウムやヨードら専らガンマ核種の汚染のみの議論では見えてこない。
さらに、癌罹患率を生理学的に大きく左右する体細胞・組織中のカリウム・ナトリウム比率*が世界のどの民族よりも圧倒的にナトリウム過多の日本人の癌罹患率が前例のない高水準となるのは、もはや疑うべくもなく、このことが注目されるのにも四半世紀以上の年月は必要となる。その位、人類社会は暗いのだ。
*伊達に日本人が人口比にして最高の癌死亡者数を現時点で誇っているのではないことの重みがいずれ明らかになる。過去四半世紀に日本では癌死亡者数が2倍になり、例えば米国では半減してきたことの理由が答えられる人の何と稀なことか。
「モルモット状態」と書くこの筆者は、どれだけの結果を想定しているのかは疑問で、恐らくは、その最悪想定さえ裏切られることになるだろう。
だが、我々が問題にするのは、四半世紀後には、経済体制上の理由で日本には既に統治政府が存在しておらず、その時点で、過去1700年以上の間、紛いなりにもこの高度物象化の人工民族に階級秩序の縛りを与えていた余剰中心が失われて久しく、民族が最終的な消滅に向かう解体過程に入っているということだ。(23世紀には日本語を母語とする集団は地上に存在しない。)
余りに遅きに失した、自らには決して生かされることのなかった教訓から、その他の人類社会は果たして学ぶことがあるのだろうか。
更に付言するなら、老朽原発を廃炉にするコスト負担も技術も意思もない日本が招来するのは、地震によるメルトダウンではなく、炉心破綻、即ち圧力容器の脆性自己崩壊で、これは確実にこれから十数年以内に連鎖的に起きることが約束されている(製造段階でクラック・アンダー・クラッドを有する原発だけで数基あることが判っている)。
福島の事象は、それへの最後の警鐘に過ぎない。だが、既に判っている通り、これによって日本国民は全力で原発廃止に向かうことはなく、この教訓の真の意味を知ることも生かすこともできず、福島を超える大惨事を引き起こすことになる。
それは最早、日本の問題ではなく、世界の問題で、兵器生産システムの恒常化を目的にした物を平和利用と虚飾した責任が問われることになるし、更に根本には、核保有国を中心に、それに従属し、媚び従った国際体制の正当性が問われるだろう。
フクシマは、その一連の過程の鳥羽口に過ぎないのだ。
投稿: Driyos | 2011年5月15日 (日) 19時40分
>日本人による、二度とはできない、人類への貢献だろう。
「世界で有数の工業国である日本に於いてさえ、暴走してしまった原子炉は、どうする事もできないで、2ヶ月も大勢の作業員に決死の作業をさせつづけても尚、終息の目処も立たないでいる。
その間排出された、放射性廃棄物や、放射能汚染された水は膨大な量となり、周辺の農地や海水を汚染し続けている。」という原発事故の悲惨さを、世界にアピールして、各国に原発推進を思い留まらせる為、神によって仕組まれた事故だったのではないかとさえ思ってしまいそうです。
日本で起きた原発事故の成り行きは、世界中に大変なインパクトを与えている事でしょう。
しかしながら余りに残酷な犠牲でした。
それでも尚、、原発を増やそうと言う輩が、日本にも世界にもうようよしているのですから、人間の欲とは恐ろしいものですね。
犠牲の羊に選ばれるものの辛さを考えて、これ以上の追加事故は起こさないで欲しいものですね。
投稿: | 2011年5月12日 (木) 13時29分
核廃棄物の永久保存、という発想自体が思い上がっています。
ヒマラヤ山脈の高地で珊瑚の化石が採れる意味。
静岡県の伊豆が太古、独立した島で本州に衝突して、伊豆半島となった、そういった陸地の移動、地殻変動を「想定外」の一言で片付けてしまうなら、未来に生きる人類がきっと被るであろう災厄に、どう責任をとれると言うのだろうか。現在の人類は。
投稿: eggplant | 2011年5月12日 (木) 09時27分