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2011年1月20日 (木)

ハイチ地震から一年

wsws.org

2011年1月12日

マグニチュード7.0の地震がカリブ海の貧しい国ハイチを壊滅させ、25万人のハイチ人が亡くなり、300,000人以上が負傷し、約150万人がホームレスとなって今日が一周年。

この自然災害から一年後、コレラが蔓延し、何千人もの命を奪い、百万人が、ごみごみしたテント・キャンプ場で立ち往生したまま、ハイチ国民が直面する恐怖は深まるばかり。

この悪化しつつある危機は、ハイチの労働者階級や虐げられた大衆が負わされている苦難の社会的・政治的根源を浮き彫りにしている。世界の富の最大部分を集中させているアメリカ合州国の、まさに目と鼻の先で、このような状態が広がっているという事実は、世界でも歴史的な規模の犯罪であり、自由企業制度の欠陥を示すものだ。

ハイチ現地の状況に詳しい人々が、アメリカと世界帝国主義のハイチ国民に対する無関心と無視について、愕然とするような説明をしてくれている。

“瓦礫の山はいまだに残っています。満足な一時収容施設の兆しが皆無な被災者達の窮状が、コレラが蔓延する条件を悪化させており、新たな伝染病の脅威は、日々一層恐ろしいものになりつつあります”元ジャマイカ首相で、カリブ共同体ハイチ特別代表のP.J. パターソンはそう語っている。“要するに、ハイチの大衆が苦しんでいる精神的な傷も窮状も全く軽減されてはいません。”

NGOオックスファムのハイチ代表理事Roland Van Hauwermeirenは、2010年を“ハイチ復興を保留にした”“優柔不断の一年”だと表現している。彼はさらにこうつけ加えている。“およそ百万人が、依然、テントや防水シートの中で暮らしており、しかも都市の廃墟で暮らしている別の何十万人の人々は一体いつになったら家に戻れるのかもわからないのです。”

ポルトープランスの混雑したキャンプ場で、簡易テントの中や防水シートの下で暮らしている約百万人のうち、半数以上は子供だ。

ハイチの首都は瓦礫に埋もれたままだ。瓦礫の5パーセント以下が、崩落したコンクリートや、ひしゃげた金属の山に、シャベルや素手で立ち向かったハイチ労働者によって片づけられたと推定されている。6ヶ月以上前のアメリカ軍の撤退以来、十分な台数の重機は存在していない。

最盛時、アメリカはハイチに、約22,000人の陸軍兵、海兵隊員、海軍兵と空軍兵を派兵し、ハイチの主要空港、港湾施設や他の戦略的な施設を一方的に掌握していた。アメリカ軍の最優先は、ハイチで大衆反乱の脅威が決して生じないようにすることと、ハイチ難民が、アメリカへと向かうのを防ぐために、沿岸警備隊と海軍を配備することだった。

その目的で、地震後の第一週という最も重要な時期、何十万人の負傷者の生命や四肢を救うための支援が一番必要な時に、医療援助や要員を載せた飛行機を、アメリカ軍に有用な連中のために滑走路を明けておくべく、ペンタゴンは再三追い返した。

地震から11日後、アメリカが支援するルネ・プレバル大統領のハイチ政府は捜索と救助活動を宣言し、わずか132人が瓦礫の中から救出された。十分な対応が行われないれば、更に多くの人々が救助されていただろう。この判断は、ワシントンの本部において、人道的な配慮ではなく、国家権益と利益に関する冷徹な計算に基づいて、なされたのだ。明らかに、これには、負傷したハイチ人を救援しても、資源は更に流出するだけだという計算が含まれていただろう。

対照的に、アメリカ合州国や全世界の人々の自発的な対応は、苦しむハイチの大衆との連帯だった。ドッと寄せられた未曾有の援助は、アメリカだけでも、13億ドルの寄付だが、その大部分は一般の労働者によるものだ。

ところがChronicle of Philanthropy誌調査によると、一年後、ハイチの復興と再建を支援するためには、こうした資金のわずか38パーセントしか、実際には使われていない。ハイチでは、膨大な額の資金がNGOや支援団体の金庫に流用されたという疑惑が広がっている。

政府の対応は、更にひどい。昨年3月に開催された援助資金供与者会議で、53億ドル以上が約束された。そのうち、わずか8億2400万ドルしか送金されていない。中でも、最悪だったのは、ワシントンの対応で、2010年に11.5億ドルを約束しながら、後になって、事実上2011年までの約束分の全支払いを延期すると発表したのだ。

昨年7月、オバマ政権のハイチ特使、国連ハイチ特使、更に、ハイチのジャン=マックス・ベルリーヴ首相と共に暫定ハイチ復興委員会(IHRC)共同議長を務めていた、元アメリカ大統領ビル・クリントンは、支払いの遅さに対する失望を表し、約束を履行するよう、援助資金供与者に圧力をかけると誓った。妻のヒラリー・ロダム・クリントン国務長官を含め、彼はこの尽力ではほとんど何もなしとげられなかったのは明らかだ。ハイチ再建のために好ましい唯一の道は、民間投資と、主として、アメリカに本社を置く銀行や多国籍企業のための、食料も買えないほどの低賃金に基づく、採算が取れる条件の保証にあることを、彼は再三明言していた。

地震による破壊に加えて、これら伝染病が流行し、それにより既に3,600人が亡くなり、少なくとも400,000人が感染するものと予想されている。公衆衛生専門家は病気の蔓延が、まだピークに達していないことを認めているにもかかわらず、アメリカのマスコミは、この病気による恐るべき犠牲者について、ほとんど触れようとしない。

ハイチへの国外退去再開の決定によって、ハイチ人の命に対するオバマ政権の冷淡さが浮き彫りにされた。350人のハイチ人が今月送還される予定だ。こうした人々の多くは、所内でコレラが流行しているハイチの刑務所に投獄される運命にあり、この行為は死刑にも等しいものだ。

伝染病の蔓延は、地震がもたらしたものというよりは、地震そのものによる並外れて膨大な数の死亡者と同様、帝国主義によるハイチ支配、特に過去一世紀の間、アメリカ政府とアメリカの銀行や大企業が演じた役割るよる、過酷な貧困と後進性の結果なのだ。

西半球で、ハイチは圧倒的に貧しい国だ。地震以前でさえ、都市住民の半数以下、地方住民の五分の一以下しか汚水処理施設を使えず、ハイチはコレラに脆弱なままになっていた。地震の前、ハイチ国民のほぼ四分の三は一日2ドル以下で暮らしており、公式な経済で職についているのは、わずか20パーセント、都市住民の86パーセントがスラム街で暮らしていた。

こうした条件は、1915年から1934年のアメリカ軍占領、アメリカが支持したデュバリエ王朝による、30年間の残虐な独裁政治によって作り上げられた、圧政的な政治、社会制度、そして、後に続いた、ワシントンと国際通貨基金による、いわゆる"リベラル自由市場"政策の施行と、切り離しがたいほど表裏一体のものだ。

ワシントンとハイチのわずかで、腐敗した金融エリートの犯罪的な政策を巡る、ハイチ国民の増大する失望と怒りは、ここ数カ月、最初は国連軍コレラの蔓延を巡って、次は11月28日の不正な選挙を巡って、たびたび大衆抗議が勃発している。

この大衆抗議運動は、アメリカ、そして世界中の労働者による全面的な支援を受けるに値する。ハイチに対する即座の大量支援に対する要求を掲げるべきなのだ。

しかし、現地の支配エリートや外国の銀行と大企業の権益ではなく、人間の基本的要求に基づいたハイチ国民支援とハイチ再建は、社会の社会主義的変革を目指す共通の戦いにおける、ハイチ、アメリカ、半球全体の労働者階級の団結によってのみ実現可能だ。

Bill Van Auken

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2011/jan2011/pers-j12.shtml

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阪神淡路大震災16周年の報道はかなり目についたが、ハイチ大震災1周年関連報道、ほとんど気がつかなかった。真面目に報道すれば、宗主国や国際機関の身勝手さに触れなければいけなくなるからではあるまいか?

自衛隊がハイチで、孤児の避難所を建設し、完成を祝ってアリガトウゴザイマシタと礼をした孤児たちと踊る広報番組、繰り返し見せられたことは覚えている。タイガー・マスク国際版。

国軍派兵の狙い、まさか孤児避難所建設だったはずはないだろう。避難所建設等、土木・建築作業が目的ならゼネコンを派遣すれば済んでいた話だろう。

○○○で大衆反乱の脅威が決して生じないようすることと、○○○難民が日本へと向かうのを防ぐために、海上保安庁の警備隊と海軍を配備することだった。

のだろうかと、勘繰りたくもなる。

『青空と麦穂』というブログが2010年2月7日の読売社説に触れておられる。

ハイチ自衛隊PKOは、日韓の連携を戦略的に強化する好機(読売社説)

なるほど。お上は用意周到。極めて長期な計画で、実にゆっくりとお湯を煮立ててくれるので、鍋の中のカエル、自分が煮られているのに気づかずに、すっかりゆで上がってしまうわけだ。くだんの2月7日読売社説、残念なことに見つけられない。

ハイチに最初に派遣された部隊、中央即応集団というものらしい。

2010年2月6日に派遣されたようだ。読売社説、この広報記事というわけだ。

陸上自衛隊中央即応集団(CRF)は、近代戦に特化した新設部隊で、米国海兵隊の様に、即海外派兵でき、上陸行動を行う専門部隊であるらしい。

中央即応集団、

2008年3月末に、3個部隊で発足

2009年5月18日海賊対処航空隊先遣隊が、5月28日に本隊がジブチに派遣されている。

中央即応集団については水島朝穂教授の下記文章がある。ジブチ派遣の背景がなんとなく、見えてくるような気がする。

中央即応集団(CRF)が動きだす 2009年05月25 

孤児避難所建設、素人には、いよいよ様々な実験の実態をぼかす煙幕に思えてきた。

宗主国が違法な大量殺人をする時の名目も、常に、民主主義と自由の実現。

宗主国指揮下の軍事予算も作戦も、おもいやり予算というみかじめ料同様、話題にしてはいけない聖域なのだろう。怪しい行為の真実、語るわけにゆくまい。

素人が知りたい事実を知らせてくれるものを、報道というのだろうと思うが

お上が知らせたい話をただ垂れ流すのは、広報かプロパガンダだろう

と愚考する。

毎日、美女がテレビ買い換えとアンテナ設置を説教してくれても、大本営広報拝聴のため、まだ使えるテレビを、わざわざ二台買い換え、アンテナを立てねばならないというのは、なんとも気が進まない。

大変な投資をしたところで、結果は、『消費税増税と、TPP加盟』プロパガンダをする美女やら太鼓持ちの顔を、より精細な画面でみられるようになる、というだけの話なのだから。

2012/1/12:

宜しければ下記の関連記事もお読み頂ければ幸だ。

アメリカとハイチを“結ぶ”歴史

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コメント

とても深い内容で、勉強の参考になりました。
ありがとうございます。

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