正確には、一体誰が世界を攻撃しているのだろう?
Paul Craig Roberts
2010年12月1日
"Information Clearing House"
ナイフで刺されたブタ達はキーキー悲鳴を上げている。アメリカ国務省の責任を転嫁するため、ヒラリー・クリントンは、WikiLeaksによる“外交電報”公表を“国際社会に対する攻撃”として描き出している。アメリカ政府から見れば、真実を暴露することは、世界に対する攻撃に等しいのだ。
アメリカの同盟諸国、別名、傀儡諸国に関する外交的とは言い難い25万通の電文をアメリカ外交官連中が書いたのは、WikiLeaksのせいなのだ。自国民ではなく、アメリカの利害に奉仕するように、諸外国政府を、アメリカ政府が操作する世をすねたやり口に、アメリカ政府の一員がもはや耐えられなくなり、有罪を示す証拠をWikiLeaksに渡してしまったのも、WikiLeaksのせいだ。
実際、証拠を返却し、情報漏洩者を明らかにするのが、WikiLeaksの愛国的義務だと、アメリカ政府は考えている。結局、我々は、アメリカ以外の国々に、アメリカが何をたくらんでいるかを気づかせてはならないのだ。彼等が我々の嘘を信じるのをやめかねないので。
ドイツの有力週刊誌デア・シュピーゲルは書いている。“これはまさに、アメリカ外交政策の政治的メルトダウンに他ならない。”
これは、現実というより、願望かも知れない。20世紀後半における“ソ連の脅威”が、自国の利害を、アメリカ政府の利害の下に置くような機構を、アメリカ政府が作り出すことを可能にしていた。数十年間、アメリカの指揮に従い続けてきた結果、ヨーロッパの“指導者連中”は他の行動様式を知らない。親分が自分たちに悪口を言っていたり、自分達を騙したりしてきたことに気がついたものの、それで独立精神に火がつくようなことはありそうにない。少なくとも、アメリカの経済的崩壊が一層顕著になるまでは。
問題はこうだ。マスコミは、文書について一体どれだけ我々に知らせるだろう?シュピーゲル自身、漏洩した資料に関する同紙報道に対し、少なくとも部分的には、アメリカ政府による検閲を認めたと述べている。“余りに強烈すぎるため‘NOFORN’、つまり大統領、首相やCIAと情報を共有する諜報機関を含め、外国人は読むことが許されないものに分類された”4,330件の文書の内容を国民は知ることができない可能性が高い。恐らくは“秘密”に分類された16,652通の電報の内容も国民には公表されるまい。
マスコミは、読者の関心を考慮し、諸外国の相手方に対するアメリカ人外交官によるゴシップ発言や、あからさまな発言に焦点を絞る可能性が極めて高い。お笑い種には良いだろう。また、マスコミがアメリカの政策を推進する方向に焦点を合わせるようアメリカ政府は企てるだろう。
実際、既にこれは始まっている。11月29日、ナショナル・パブリック・ラジオは、イランが、イスラム世界の中においてすら孤立していることを示す電報を強調し、イスラエルとアメリカが攻撃をしやすいようにしていた。漏洩した電報は、アメリカの傀儡たるエジプト大統領がイランを憎悪しており、サウジアラビア政府がアメリカ政府にイランを攻撃するよう、長いこと要求し続けていることが暴露していた。換言すれば、イランが世界にとって余りに危険なので、同宗信徒達さえも、イランが地表から消し去られて欲しいと願っているのだ。
ナショナル・パブリック・ラジオは、イランとイラン指導部を侮辱し、アメリカに同盟する中東諸国による、イラン爆撃の要求に抵抗しているアメリカ政府は穏健派だ、と主張する、客観性を欠いた何人かの“イラン専門家”を登場させた。ジョージ・W・ブッシュ大統領が、イランは“悪の枢軸”の一員であると宣言し、イランを攻撃すると再三脅し、オバマ大統領も脅迫を続けている事実も、アメリカ統合参謀本部議長のマイケル・マレン海軍大将が、アメリカは攻撃という選択肢を除外しているわけではないと改めて表明したことも、アメリカが穏健派などとは全く別物である目安だとは、アメリカの“イラン専門家”は見なしていない。
レバノンや、ガザや西岸で、一般市民を年中虐殺しているのは、イランではなく、イスラエルであることや、イラク、アフガニスタン、イエメンや、パキスタンの一般市民を虐殺しているのは、イランではなく、アメリカとNATOの傭兵達であることを、ナショナル・パブリック・ラジオのニュース放送は、なぜか触れなかった。
イランはどの隣国も侵略していないが、アメリカは地球の裏側の国々を侵略している。
サウジとエジプトの支配者のイラン憎悪を、“イラン専門家”は、アメリカとイスラエル政府がイランを悪魔のように描き出すことを正当化する裏付けとして論じている。イラン政府が、イスラム教徒の利益を代表しているがゆえに、そして、サウジとエジプト政府が、アメリカの利益を代表しているがゆえに、エジプトとサウジ・アラビアの専制的支配者は、イランを恐れているのだということを“イラン専門家”の誰一人指摘できずにいる。
近隣のイスラム政府が、外国覇権からの自国民の独立を守ろうと努めている中、外国の覇権に仕える為、自国民の強い願望を抑えている専制的支配者は一体どう感じるかを想像いただきたい。
明らかに専制的支配者は非常に不安になっているのだ。もしも虐げられた自国の臣民達が変な気を起こしたらどうなるだろう? サウジやエジプトの支配者達が、エジプトやサウジの臣民にとっての好ましからぬお手本たる独立志向の国家を、アメリカが抹殺して欲しいと願うのも無理はない。
外国政府を買収するのに使える十分な価値をドルが持ち続ける限り、アメリカ政府に不利な情報はさほどの影響力は持てるまい。中世フランスの哲学者・神学者アラン・ド・リールが遠い昔に喝破したごとく“金が全てなのだ。”
記事原文のurl:www.informationclearinghouse.info/article26957.htm
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アラン・ド・リールの文章英訳は下記にあり、上記発言“Money is all”もある。
Alain of Lille [Alanus de lnsulis]: The Complaint of Nature. [ d. 1202.]
アメリカの同盟国、別名、傀儡国の「武器輸出三原則」見直しも、宗主国の指示であることが、今回のWikileaksによる電文公開で明らかになった。
ビル・トッテン氏、コラムOur Worldで、こうした情報流出を防止する例の恐怖法案に触れておられる。
当ブログにも、上記コラム記事に直接関連する以下の記事翻訳がある。
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TB有難うございました。
アメリカ政府がウィキリークスを、出鱈目だと言わないのは何故かな?と疑問に思っていたのですが、逆利用しようと考えているからなのですね。
25万もあると、どんな風にでも編集できますものね。
尚、今回もTB通りませんでしたので、
「ウィキリークスに怒るクリントン長官」のURLこちらに書かせていただきます。
http://dendrodium.blog15.fc2.com/blog-entry-760.html#pagetop
投稿: 和久希世 | 2010年12月 6日 (月) 07時53分