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2010年12月24日 (金)

コソボのサチ: 臓器密売業者

Srdja Trifkovic

chronicle magazine

2010年12月16日

長年にわたり広く知られていた、KLAが運営していた精巧な臓器摘出団の詳細が、1月15日に刊行された欧州会議の報告書によって確認された。“コソボにおける、人々に対する非人間的な処遇と、違法な臓器密売”報告書は、この州で最近再選された“首相”ハシム・サチを、ヨーロッパ中での、武器、麻薬、人間や人の臓器密輸を専門にする“マフィア的”アルバニア人集団のボスだと特定している。報告書は、サチの側近達が、戦後、セルビア人を、国境を越え、アルバニアに連れ出し、彼等を殺害し、彼らの臓器を闇市場で販売していたことを暴露している。更に報告書は、サチが十年間、ヘロイン取引を巡り“暴力的な采配”を振るってきたと非難している。

意図的な証拠隠滅 ─わが読者にはおなじみの、臓器密売疑惑は、長い間、大手マスコミにより“セルビアのプロパガンダ”と片づけられ、ハーグの旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷(ICTY)元検察官カーラ・デル・ポンテが回想録で、この実情に関するあらゆる本格的捜査の開始を阻まれていたことを彼女が暴露した2008年始めまで、西欧では無視されていた。彼女はまた、旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷の現地捜査官達が、アルバニアの町Rripeの悪名高い“イエロー・ハウス”で没収した証拠の一部がハーグで破壊され、KLAや彼等を幇助した西欧の連中が、臓器密売の申し立てに対し、“証拠は無かった”と主張できるようにしてしまったことも衝撃的に暴露した。

2008年4月、デル・ポンテの暴露をきっかけに、17ヶ国の欧州議会議員が、欧州議会で疑惑を調査することを要求する決議動議に署名した。案件は欧州議会の法律問題・人権委員会に付託され、同委員会は、2008年6月、スイスの議員ディック・マーティーを報告者として任命した。彼はCIAが、ヨーロッパで、テロ容疑者を誘拐し、監禁したという告発の捜査で、国際的名声を獲得している。

“本物のテロ” 前書きの中で、マーティーは“この任務の並ならぬ困難さ”のいくつかを明らかにしている。十年前に起きたとされている行為が、対象の領土に対する管轄権を持つ、いずれの国家、国際当局によっても、適切に調査されていなかったのだ。更に、マーティーは続けている。

… コソボ紛争の事実を明らかにし、戦犯を懲罰するという努力は、一方の側は犠牲者で、もう一方の側が加害者だという暗黙の憶測に基づいて、主として一つの方向に集中していた。以下で述べる通り、現実はずっと複雑であるように思われる。コソボのアルバニア人社会の構造が依然として極めて部族指向であり、本当の市民社会というものが存在していない為、現地の情報源と接触を確立するのは極端に困難だ。これは、往々にして、正真正銘のテロと言えるほどの恐怖によって、一層悪化してしまった。我々への情報提供者の中にも、我々の調査の主題を切り出すやいなや脅された人々がいるのこの恐怖は我々も目撃している。国際機関の代表達の中にさえ、こられの真実に取り組むのをいやがっていることを隠さない人々がいた。“過去は過去だ”我々はそう言われてきた。“我々は将来に心を向けなければならない。”と。

サチの組織犯罪とのつながりは、彼のドレニツァ・グループがKLA内部で主流派となった1990年代末にまでさかのぼると報告書は書いている。1998年までに彼はアルバニア国内でも“大半の違法な犯罪的企業”を支配するようになった。サチとドレニツァ・グループのメンバー四人は、直接、暗殺、監禁や打擲の罪を犯していると名前を挙げられている。

十年以上にわたる秘密報告内容の中で、麻薬密輸と戦っている少なくとも五ヶ国の機関が、ハシム・サチや、彼のドレニツァ・グループの他のメンバーが、ヘロインや他の麻薬取引で、暴力的采配を振るっているとして、名前をあげており… サチやこうしたドレニツァ・グループのメンバーは、コソボ組織犯罪のマフィア的構造にかかわる諜報報告書の中で、終始“中心的存在”として名前をあげられている。これらの多様で、膨大な報告書を、驚愕と道徳上の憤りを感じながら、私は調査した。

国際社会はKLAによる戦争犯罪を無視することを決め込み、セルビア人や、セルビア人に協力したとして非難されたロマ人(いわゆるジプシー)や、アルバニア人に対し、サチの部隊が残忍なテロ作戦を遂行するのを可能にしたと、マーティー言及している。1999年6月12日、KFOR軍兵士の到来以後、彼等のおよそ500人が“行方不明になった。 ”約100人がアルバニア人で、残り400人の大半はセルビア人だった。こうした民間人の何人かは、KLAにより北部アルバニアの様々な場所で、秘密裏に監禁され、“最後に行方不明となる前に、冷酷で、恥ずべき扱いをうけた。”と報告書は書いている。捕虜は臨時監獄で、性、年齢、健康と出身民族に基づく、臓器取り出しの適性を“振り分けられた”。彼等は終点である、ティラナ空港に近いFushe-Kruje近傍の簡易診療所へと送られた。

移植医が仕事場について、手術準備ができていることが確認されると、捕虜は‘隠れ家’から個別に連れ出され、KLAの殺し屋により即座に処刑され、彼等の遺体は手術を行う病院へと迅速に運ばれた。

誰も手がだせないサチ─報告書は、刑務所や、そこに収容されていた人々の運命に対して、サチのドレニツァ・グループが“最大の責任を持っていた”と述べている。報告書は、サチを含めた、コソボの幹部アルバニア人の責任追及に固執せず、KLA元幹部を効果的に起訴する、という意思の欠如という点で、コソボの独立を支援した諸政府を批判している。“サチに与えられた、そのような大国による外交的、政治的支援が、サチ自身の心の中に、自分には誰も手がだせないのだという感覚”をもたらした。

“犯罪人と、幹部政治家や公務員との癒着の徴候は、無視するには余りに目に余り、深刻だ”が、“地域を担当する国際的当局は、こうした状況を詳細に調査することが必要だとは考えなかった、あるいは、余りに不完全かつ表面的に調査した。”とマーティーは結論している。

マーティーが報告書をパリの欧州会議に、12月16日に提出した後、報告書はストラスブールの欧州議会で1月25日に討議されることになっている。

マスコミの反応─マーティー報告書刊行から数日のうちに、彼の暴露を、1999年のセルビア人に対するNATOの戦争、アフガニスタンとイラクのためにこの戦争が作り出した前例、現在の“コソボ”社会の本質、といったより広範な問題と結びつける、無数の素晴らしい記事が、ヨーロッパの大手マスコミに掲載された。

ガーディアンのニール・クラークは“リベラルな介入の神話”を激しく非難している。トニー・ブレアの言う“良い”戦争どころではなく、ユーゴスラビア攻撃は、イラク侵略同様、誤りだと彼は書いている。

これは多くの左派リベラルが受け入れた作り話だったのだ。1999年、ブレアは、アメリカに借りのある、戦争挑発屋の二枚舌政治家ではなく、民族浄化に反対の態度をとる道徳的な指導者と見られていた。だが、もしも西欧がバルカン半島諸国で道徳的に行動したい、コソボの人々を保護したい、と望んでいたのであれば、セルビア人との戦争以外の解決策や、コソボ政界で最も暴力的な集団たるKLAを支援する以外の選択肢もあったのだ … そうはならず、敵意に満ちた反セルビア的な態度から、西欧は一層極端な姿勢をとり、クリントン大統領のコソボ特使ロバート・ゲルバードさえもが“全く疑問の余地がないテロ集団”だと表現した組織に加担したのだ。

1998年、ベオグラード政府との紛争がエスカレーションに至ったのは、KLAの暴力作戦ゆえであることを、クラークは指摘している。“1999年3月NATOとの戦争勃発は、セルビア政府が悪かったからだと聞かされてきた”が、イギリス国防相のギルバート卿が“ランブイエ [戦争の前に行われた国際会議]で、ミロシェビッチに突きつけられた条件は全く目に余るものだった…それは極めて意図的だった。”と認めていたことを彼は言い足している。それから、NATO占領が行われ、その下で、南コソボの推計200,000人のセルビア人や他の少数派や、自治区の首都プリシュティナのセルビア人ほぼ全員が自宅から強制退去させられた。しかしイラク戦争が信用を失ってしまったのだ。クラークはこう結論づけている。

そこで“リベラル介入主義”を支持する連中にとって、コソボは、ある意味で成功だったという話を宣伝することが一層重要となった。KLAの犯罪に関する欧州会議報告書は、そういう立場を維持するのを、ずっと困難にする。そこで、もし人々を、将来のあらゆる西欧の“リベラルな介入”に関し、より懐疑的にする役割を報告書が果たせば、それは大いに歓迎すべきことだ。

トニー・ブレアには、何人か大いに奇怪な友人がいるが、人間の臓器を商売にする怪物は、群を抜いていると、スティーブン・グローバーはデイリー・メイルで書いている。報告書により、コソボ首相は、腐敗して機能不全な国家を統轄している主要戦犯として描かれているとグローバーは言う。1999年3月、セルビア人に対する猛攻を開始し、250,000発の爆弾を投下し、推計1,500人の無辜の民間人を殺害した後、まさにこのサチと、いわゆるコソボ解放軍内の彼の仲間が、アメリカとイギリスによって権力の座に据えられたのだ。

これは、ブレアにとっての最初の大きな戦争であり、これが、それに続く西欧のイラク侵略への地ならしをしたのだ。重大な違いは、左翼全般と、とりわけ自由民主党が、サダム・フセインに対する戦争には反対だったのに対し、ビル・クリントン大統領を、セルビア人壊滅のため、ブレアに協力してくれるよう説得した際、両者ともブレアの主な応援団だったことだ。

ハシム・サチのKLAが犯した残虐行為をロンドンもワシントンも無視しがちで、“あの段階では、ブレアもクリントンも戦争を望んでいたので”セルビア人に、到底受け入れられない過酷な条件を突きつけたのだと、グローバーは結論づけている。

もちろん、それも、大半のマスコミがトニー・ブレアが悪事を働くはずなどないと見なしていた昔の話だ。1999年の軍事的成功により、イギリスは、アメリカ合州国に次ぐ世界第二の警察官の役割を果たせるし、果たすべきなのだと彼は確信した。この救世主的な調子は、2001年の労働党大会での演説に反映していた。‘万華鏡は振られたのだ。… 我々の身の回りの、この世界を整理し直おそうではないか。”と彼は熱弁を振るった…コソボで起こったことが、それに続いて起きたイラクとアフガニスタンでの出来事を方向づけるのに役立った。‘解放された’コソボが、今や破綻した、ギャング国家になったというのは、実に皮肉なことだ…ブレアの救世主的必然性から、道徳的に双極性のトニー・ブレアは、世界を‘良い子’と‘悪い子’とに分けるのがお気に入りで、自分自身をおこがましくも前者の側においていた。次から次へと戦争を生み出してきたこの人物が、あげくの果てに、自由の金メダルを、臓器売買をしていた怪物から受章する羽目になった、というのは、いかにも似つかわしい。

アメリカの被害防止対策と自己検閲─  こうした解釈は、アメリカ大手マスコミの薄弱で及び腰の報道とは、何光年もの距離にある。例えば、シカゴ・トリビューンは、欧州会議報告書そのものに関する記事を掲載するには適任ではないと判断したのだろう。代わりに、欧州連合に対し、事実上の論拠に疑念を呈し、コソボ“政府”はディック・マーティーを名誉棄損で訴える予定だという、報告書に批判的な記事を二本掲載した。十年前、サチと彼の相棒連中を利するよう、戦争をしかけたビル・クリントンの知恵やら、それが良い戦争であったという神話を今日まで永続化していることに関し、主要日刊紙一紙たりとも、一言の疑問も記事にしていない。

もちろん、サチ、別名“スネーク”が犯罪人であり戦犯でもあるというのは決して目新しいことではない。興味ある疑問は、ヨーロッパ側の一体誰が、彼の“誰も手がだせない”立場を、何故、今、終わらせたかったのだろうか?彼の主たる幇助者、教唆者であるアメリカ政府は、一体これに対し、どうするつもりなのだろう?

当然ながら、12月14日、サチの“政府”は、“根拠がなく、中傷的である”として報告書をはねつけた。同日、ハシム・サチは、オバマ大統領への電報に“リチャード・ホルブルックの逝去で友人を喪失しました。”と書いた。“スネーク”はワシントンには他にも多数友人がいる。例えば、アメリカが率いた対セルビア戦争最盛期の1999年当時“アメリカ合州国とコソボ解放軍は、全く同じ人間的価値観と理念のために戦っている … KLAのために戦うことは、人権とアメリカ的価値観のために戦うことだ。”と宣言したアメリカ上院議員(そして現在はWikiLeaksの敵)ジョセフ・リーバーマン。アメリカ高官と一緒に写ったサチの写真は、事実上、過去12年間にわたる様々な政権の紳士録だ。ビルとヒラリー・クリントン、オルブライト、ブッシュ、ライス、バイデン、ウェスリー・クラーク…

サチを幇助したアメリカ人連中や、その手先のマスコミは、超党派の被害限定対策に既に乗り出している。その二本柱は、報告書は薄弱な事実証拠に基づいているという主張と、個人的にディック・マーティーの信用を落とし、欧州会議を議論するだけで行動に移さない見当違いな委員会呼ばわりする企みだ。

著者について

外交問題専門家のスルジャ・トリフコビッチ博士は『The Sword of the Prophet』とa『Defeating Jihad』の著者。彼の最新刊は『The Krajina Chronicle: A History of the Serbs in Croatia、Slavonia and Dalmatia』。

記事原文のurl:www.chroniclesmagazine.org/2010/12/16/kosovo%E2%80%99s-thaci-human-organs-trafficker/

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コソボの戦争犯罪について、責任の検証を真面目におこなう度合いは、

ヨーロッパ>アメリカ

ということのようだ。

新聞に、ブレアの責任を追及するイギリス社会と対照的な、小泉元首相ら政治家の責任が全く問われない日本についての記事があった。当時の外務省高官の自己弁護が添えてあった。

重要戦犯達は、日本では、常に全く責任を問われずにすむ。やったもの勝ち。

『安保条約』・日米同盟は、アメリカが世界支配戦略の都合上、便利で快適で、地の利もある日本を脅して、基地を置いているだけのことだろう。新聞は、『安保条約』・日米同盟や基地は、もっぱら日本防衛の為のごときプロパガンダをテレビ・新聞で十分にしておいて、『世論調査』をして、42%は「日本防衛のため」だと思っているという回答を得て、記事にする。

ちなみに、

「米の世界戦略のため」36%とあり、

平和へ不安「感じる」72% とあった。

大衆を国家に頼らせるべく、無辜の民間人、女性、子供を攻撃せよ<グラディオ作戦>の記事を連想した。グローバル軍需産業一派によるマッチ・ポンプ。

都合が悪い投票結果がでたところ、表示をしなかったのを、機械が壊れていたと説明したという、テレビのバラエティー番組と同じようなものだろう。

ヨーロッパのコソボを巡るマスコミ記事、日本の大手マスコミの、薄弱・及び腰以前に、そもそもコソボを巡る全体像を報道しない状態とは、何十光年もの距離にある。

イラクであれアフガニスタンであれ、真面目に検証を行う度合い、永遠に

ヨーロッパ>アメリカ>日本 ということになるようだ。

政府、臆面もなく名護市への交付金16億円を止めた。属国傀儡そのもの。

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コメント

臓器売買については当事者のコソボ開放軍が最も悪いには決まっていますが、臓器を取り出して患者に移植する医師(高額な報酬目当て)、何より無辜の民を殺害して取り出したことをなかば承知で移植を受ける患者(これも当然金持ち)の存在こそさらに追及されるべき問題と思います。これは東南アジアや中国における金持ち日本人をターゲットにした臓器売買にも当てはまります。
ところで欧州で慈善事業(或いは正義の追及?)が盛んな国は、必ず裏では武器売買も盛んでそれを本気で止める気配すらないところにどうも毛唐の正義の空々しさのようなものを感じてしまうのは、「貧乏暇なし日本人」の僻み根性なのでしょうか。

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