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2010年10月29日 (金)

ノーベル平和賞:政治的冷笑の、もう一つの見本

2010年10月12日

先週金曜日の、投獄されている中国の反体制活動家、劉暁波にノーベル平和賞を授与するという発表は、アメリカとヨーロッパの諸大国になり代わり、中国における“人権”の問題をかき立てることを狙った極めて政治的な決定だ。

アメリカのオバマ大統領は、すぐさま授賞の機会をとらえて、劉の釈放を要求し、授賞は“政治改革が [経済成長に]歩調を揃えておらず、全ての男性、女性、子供の基本的人権は尊重されるべきであることを想起させた。”と宣言した。

今年の劉への平和賞授賞は、昨年のオバマに対するノーベル平和賞同様、アメリカ大統領として、アフガニスタンやパキスタンにおける新植民地戦争をエスカレートする中での。いずれも、“平和”や“民主主義”とは全く無関係だ。

2009年の授賞が、ブッシュ大統領下での緊張関係の後、ヨーロッパのエリート層は、ワシントンとの関係を修復するつもりだというサインであったのと同様、2010年の授賞は、通貨切り上げから、アメリカ戦艦による中国本土近辺海域の“航行の自由”に至るまで、様々な問題を巡る、北京に対するオバマの圧力を支持するというヨーロッパの合図だ。

予想通り、中国政権は腹立たしげな反応をし、“中国の法律に違反したかどで、中国司法当局によって、有罪を宣告されている犯罪人”を表彰するというノルウェー・ノーベル平和賞委員会の選択は、“醜悪”なことだと非難した。中国当局は、譴責するために、ノルウェー大使を呼びつけ、中国-ノルウェー関係が損なわれかねないと警告した。

劉は昨年“零八憲章”人権キャンペーンを始めたことで逮捕され、1月に“政府転覆計画を扇動した”かどで、11年間の刑で投獄された。社会的爆発を防止する手段として、限定された民主的な権利を認めるよう唱導する、中国の支配層エリートに成り代わって彼は発言しているのだ。彼の“零八憲章”は、抗議やストライキが“益々戦闘的になりつつあり、壊滅的な規模の激しい紛争がおきる可能性が高まっている。”劉の投獄は、彼個人に対して向けられたものというよりは、はるかに広範な労働者階級による政治的反対運動のはけ口を締めつけておくことにあるだろう。

こうしたこと全てが、中国が、中産階級の反体制派のみならず、何億人もの労働者の基本的な民主的権利を踏みにじる警察国家のままだという事実を浮き彫りにしている。とはいえ、劉暁波を比較的無名な状態から救い出すという決定は、中国の民主主義を助長というよりは、経済的ライバルに対し、ヨーロッパ諸大国やアメリカの権益を増進することを目指すものなのだ。

1989年の天安門広場の虐殺に対する西欧大国の対応を思い出さなければならない。劉は、労働者が加わり、自らの階級的要求を表明し始めた後に、兵士と戦車によって粉砕された学生の抗議運動を始めたリベラルな知識人の指導者の一人だった。北京や中国全土の他の都市で、数千人とは言わぬまでも、数百人が殺害され、更に多数の学生や労働者が逮捕された。

アメリカとヨーロッパの諸大国は死者に対してそら涙を流し、中国に対して、形ばかりの武器禁輸を課した。その年末、ノーベル平和賞委員会は、“人権”を巡る、北京に対する外交的侮辱として、1989年の賞をダライ・ラマに授与した。

とはいえ、西欧諸国の政府や企業が出した実際の結論は、中国にドッと流入した何千億ドルもの外国投資によって表明された。民主的な権利の侵害を懸念するどころではなく、投資家は、急速に拡大する労働者階級による、自分たちの財産や利益に対する、あらゆる脅威を抑えるために、中国政権はいかなる手段をも行使するのだという保障として、虐殺を受け止めたのだ。

“世界の低賃金労働工場”となることにより、中国は過去20年間にわたり莫大な経済成長を遂げ、中国を、1989年の世界で十番目に大きな経済から、昨年の世界で二番目へと押し上げた。2007-08年に勃発した世界的金融危機は、アメリカ合州国の相対的な衰退を目立たせ、中国の挑戦にどう対応すべきかを巡るワシントンでの論議を激化させた。

劉へのノーベル平和賞授与は、北京の経済的譲歩、特に元の切り上げを要求し、アジアや、世界において増大しつつある中国の影響力を低下させようとする、オバマ政権の攻撃的な活動キャンペーンのイデオロギー的要素に、弾みをつけている。中国における“人権”の欠如が、ビルマやスーダン等、世界の舞台における圧政的な政権に対する中国の支持を強調するのに悪用され、一方、例えば、アメリカが率いるイラクとアフガニスタンの圧政的な軍事占領に対しては、外交的沈黙を維持している。

ノーベル平和賞の発表は、割安な中国元を巡る“通貨戦争”の危険が高まるさなかに行われた。最近、アメリカ下院は、通貨を操作しているとされることに対し、ワシントンが中国に関税を課することを可能にする法案を通過させた。先週末の国際通貨基金の会合で、アメリカ財務長官ティモシー・ガイトナーは、“通貨が大幅に割安な国々”つまり中国に対し、国内消費を押し上げる対策を更に講じて、世界成長のバランスを取るよう再び呼びかけた。

昨年中、オバマ政権は、アジアにおけるアメリカの戦略的権益を、繰り返し、強力に言明していた。オバマは、これ見よがしに、ダライ・ラマと今年初め会談し、北京の抗議にもかかわらず、高度な兵器を台湾に売り、北京とワシントン間の高官同士による軍事交流を中国がやめる結果となった。7月の東南アジア諸国連合(ASEAN)サミットで、アメリカのヒラリー・クリントン国務長官は、南シナ海における中国との領土紛争に関して、ASEAN加盟国を支持した。最近、東シナ海の小島を巡って勃発した紛争という中国と日本の外交騒動で、アメリカは、それとなく日本を支持している。

オバマ政権は、公的には、劉のノーベル賞受賞をこれらの広範な経済的、戦略的問題と結びつけてはいないものの、アメリカのマスコミはそれほど控えめではない。先週金曜日の論説記事で、中国は劉の拘置を“恥じる”べきだと宣言して、ニューヨーク・タイムズは、下記のように戦闘準備を呼びかけた。“北京は、近頃、通貨、貿易、南シナ海や他の多くの問題で、幅をきかせるようになっている。非常に多数の政府や企業は恐れて反発できずにいる。威張りちらすというのは、向上心のある大国がとるべき戦略ではないことに、中国指導部内部の誰かが、やがて気がつくかもしれない。”

“中国叩き”は、アメリカが、アジアや国際的に、自らの権勢を振るうことへの支持を取り付けようと呼びかける結節点となりつつある。このイデオロギー・キャンペーンに協力することにより、ノーベル賞委員会は“平和”を推進するのではなく、究極的に本当の戦争をもたらす、通貨・貿易戦争の勢いを加速させているのだ。

John Chan

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2010/oct2010/pers-o12.shtml

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当然のことながら、日本のマスコミ報道は、100%、中国の人権運動・活動家弾圧しか報じない。

西欧・アメリカ資本の思惑など、決して解説してくれない。

昨年のオバマ大統領のノーベル賞授賞で、ノーベル賞は、その名前の由来、ノーベルの発明を受け継いで、彼が発明した道具を更に進化・活用した大量殺人を褒賞するものであることは、はっきりしている。そして、今年の授賞。

いくら色々な人々をまぜて目くらましをしても、一番低劣な受賞者が、その本質を露呈しているだろう。平和とは、ほど遠い人々が目につくではないか。ノーベル殺戮賞?

コーデル・ハル
佐藤栄作 1974年
ヘンリー・キッシンジャー
ジミー・カーター
バラク・オバマ

個人的には、佐藤栄作ノーベル賞授賞以来、この賞を疑うようになって久しい。一方、沖縄密約暴露をした西山太吉氏、本来なら、彼こそ国民的英雄だろう。今も有罪判決は変わらない。事実上は、国・マスコミに、勝利しておられるが。Wikipediaには以下記述がある。

2010年4月9日 - 密約訴訟判決。東京地裁(杉原則彦裁判長)は「国民の知る権利を蔑ろにする外務省の対応は不誠実と言わざるを得ない」[28]として外務省の非開示処分を取り消し、文書開示(本当に存在しないなら“いつ” “誰の指示で” “どの様に”処分されたのかも)と原告一人当たり10万円の損害賠償を国に命令

西山太吉氏の著作には、岩波新書に「沖縄密約」が、また新刊に「機密を開示せよ――裁かれる沖縄密約」がある。テレビ・新聞にさかれる時間、こうしたものに割かれることを切望する。 ノーベル平和賞が本物だったならば、受賞者は、たとえば佐藤栄作元総理大臣ではなく、西山太吉氏だろう。

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コメント

真剣に拝読しました。客観的で、読む価値のある文章です。
テレビで劉の住むところを見かけました、北京の高級住宅地なので、、興味があって調べた。やはり彼の家に取材したことがある外国の記者も、彼の家の中は、古代磁器など、並べていて、生活が豊かだと感心しているそうです。
劉のような職業のない人間(長年ずっと無職だった。)としては、不思議だなと思います。調べたら、本当かどうか分からないですが、彼は、米国CIA傘下の民主基金から、毎年何万ドルの支援金をもらっているそうで、牢屋にいる今でも、妻がもらってるみたい。米国は、積極的に彼らに資金を提供してます。
劉さん、もしこの賞を拒否したら、私は、これから本当に彼を尊重しますという中国人のブログ文章もあって、同感です。

かつては共産主義封じ込め?で。自由主義を標榜する西側先進国と呼ばれるグループが、封じ込め政策を行い、また、その流れが現状も引き続いて行なわれているよな構図が、現状の不安定ながらも、そのバランスをかろうじて保てている事が『我々の平和』のように私には観えます。
観点を中国サイドにかえてみたならば、10億以上の人口を抱え、それはそれは四方八方塞がれていて、東を向けば日本・台湾などが立ち塞がり?『そんな島国なんぞ沈めてしまえば・・・』と狂った妄想狂信者くらい居てもなんら不思議はないように思えます。それが日本人の私たちにとっては非常に気分の良くない、精神衛生上良くない、日本という国家の国土の地政学上?、そうシナリオを描かれ、そのように誘導され続けた結果?現状の避ける事の出来ない不安定なエリアで生存しなければならなくなったように思えます。
別に、国家の意志とは必ずしも『人民』の意志とは一致するものでは無いのは誰でも理解出来るところですので、欧米自由主義が、共産社会主義が、と、ひとくくりに決め付ける事などあってはならない事と考えますが、それでも、中国共産党の政治思想をもとにした政策には疑問を持たざるを得ないところが困ったところです。

不戦を謳う日本ではありますが、一部の人間を除いて誰だって戦争・紛争を望む人間(最前線で十字砲火を浴びる事を望む事)などいるワケありません。
それ故、反戦・平和を唱えるのは当然の事なのですが、しかし不戦をノンキに言えるほどの『強い<抑止力>防衛力』が日本にあるワケではないので、軽々しく単純な思考の不戦を唱える事は全くの絵空事のように思えてなりません。

近代オリンピックが行なわれたユーゴスラビアですらあのような戦場になったワケですから、絶対に日本は大丈夫などと盲信するのは危険な事だと私には思えてなりません。

記事を楽しく読みました
アメリカ等は、中国封じ込め政策をしている。
日本人は、アジア特に中国、朝鮮等については、排外主義的である。
特にマスコミが煽る。

これからも冷静な記事をお願いします。
以上

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