兵士殺害に対するアメリカ謝罪でも、パキスタン補給路封鎖解除は実現せず
Bill Van Auken
2010年10月8日
アメリカ軍司令官と外交官は、パキスタン国境警備隊員三人を殺害した、9月30日の越境ヘリコプター攻撃に対して、一連の正式謝罪を行った。とはいえ、ワシントンとイスラマバード間で高まる緊張を一掃するためのこの試みは、アメリカが率いるアフガニスタン駐留占領軍に対して行われている、パキスタン経由の補給封鎖の即時解除実現、あるいは、米軍補給部隊に対する一連の壊滅的な攻撃の阻止には失敗した。
カイバル峠を通る主要なトゥルハム検問所は、8日間閉鎖されたままだ。木曜日、ほぼ7,000輌の石油輸送車と他の補給トラックが、パキスタンの幹線道路で立ち往生したままになっている。内陸のアフガニスタンに駐在する152,000人のアメリカが率いる占領軍兵士向け補給の70パーセント以上が、パキスタンを経由している。
表向きは、アメリカ軍ヘリコプター襲撃と、パキスタン国境警備隊員の死を巡る大衆の激怒ゆえに、車列の治安を保障できないという懸念から、パキスタン政府は国境を超える移動を停止した。
しかし、実際上は、閉鎖によって、車列は、攻撃の無防備な的になっている。水曜日の攻撃で、多数の石油輸送車やコンテナ・トラックが破壊された。パキスタン北部のカイバル・バクトゥンクワ州のナウシェラ地区で、 武装集団が携行式ロケット弾と自動小銃を発射し、車列に火をつけ、少なくとも54輌の石油輸送とコンテナ・トラックを破壊した。
別の攻撃では、 武装集団がアフガニスタンとのデュランド・ライン国境近く、パロチスタン州の首都クエッタ郊外で、NATO石油輸送車の車列を攻撃した。運転手一人が殺害され、少なくとも、22輌の石油輸送車が激しい被害を受けた。これは検問所の閉鎖以来、六度目の攻撃だった。
アメリカが主導するアフガニスタン占領と戦っている武装集団と同盟している部族を基盤にした民兵の連合軍、テフリク-エ-タリバン・パキスタン (TTP)集団のスポークスマンは、パキスタン国境地域の北ワジリスタンにおけるCIA無人機攻撃の強化への報復として、自分たちがNATO輸送車列を標的にする攻撃を行ったと発表した。“我々に対する米無人機攻撃の強化に応じて、我々も更に攻撃を強化する”と、テフリク-エ-タリバンのスポークスマン、アザム・タリクはAPに語った。
一方、BBCは、破壊の一部は、石油輸送車が破壊される前に、パキスタンのアメリカ軍向けの燃料が売り払われた保険金詐欺の一環として、トラック所有者自身が起こしたものである可能性を推測する、パキスタンの治安担当者の発言を引用している。トラックの所有者達は、更に車両と煙と化したことになっている燃料に対する保険補償を要求できる。
9月30日のパキスタン国境前哨基地に対する攻撃に関する水曜日の謝罪は、攻撃型ヘリコプターは“自衛”のために行動していたというアメリカ軍の最初の主張とは矛盾する、NATO所見を受けたもの。
アメリカが率いる占領当局が行った声明では、“同盟軍の二機のヘリコプターが、パキスタン領空に何度か進入した。その後、ヘリコプターは、後にパキスタン国境前哨基地であることが判明した建物に、前哨基地からの砲撃に反撃し、発砲した。”国境前哨基地を、朝の5:30に攻撃した後、ヘリコプターは、午前9時頃に舞い戻り、更に7発のミサイルをパキスタン前哨基地めがけて発射した。
“近くでの交戦を聞き、ヘリコプターが近くを飛行するのを聞いて、パキスタン国境警備隊は、単に警告射撃をしたものと考えている”と米空軍のティム・ザダリス准将が声明を発表した。国境前哨基地は2005年以来あったもので、アメリカ軍は十分承知していた。
統合参謀本部議長マイケル・マレン提督は、パキスタン側の相手役アシハク・パルベス・カヤニ大将に対し書面の謝罪を行った。“9月30日に、アフガニスタンとの国境近くで殺害され、負傷した貴国軍兵士の悲しむべき犠牲者の方々に、深く心よりお悔やみ申しあげます”とアメリカ軍のトップは書いている。アメリカ軍司令官達は“このような悲劇の再発を防ぐという視点から”出来事を再調査していると、彼はつけ加えている。
アメリカの駐パキスタン大使アン・パターソンも広報補佐官を通して、同様な“お詫び”をし、パキスタンの“勇敢な治安部隊”を哀悼し、アメリカは“悲劇的な事故が将来起きることを防止するため、パキスタン政府と協力する覚悟です”と断言した。
アフガニスタン駐留アメリカ軍最高司令官、デービッド・ペトレイアス大将も、同様な発言で“殺害されたり、負傷したりした人々の家族と、パキスタン軍とパキスタン国民に対し、心より深くお悔やみ申しあげ”た。更にペトレイアスは、“こうしたことが決して再発せぬようにすべく、パキスタン軍や政府と協力する”と約束した。
こうしたお悔やみの全ての発言に、はっきり欠落しているのは、あからさまな侵略行為と、攻撃型ヘリコプターによる攻撃として行われたパキスタン主権の侵害に対する謝罪だ。それは、国境警備隊前哨基地へのミサイル攻撃の、数日前、アメリカ軍が国境のパキスタン側で50人以上の“武装反抗勢力”を殺害した攻撃で始まっていたのだ。該当地域の住民は、犠牲者は現地の部族民だったと語っている。
パキスタン前哨基地への攻撃は、不幸な出来事というよりは、9年にわたるアメリカのアフガニスタン戦争の絶えざる軍事エスカレーションの一環であり、少なくとも一因としては、パキスタン政府に北ワジリスタンを本拠地とする米占領に反対する勢力への攻撃を行うよう圧力をかけることを狙って、パキスタン国内へと拡大しているのだ。
これは、パキスタン国内の標的に対する、CIA無人機による、前例の無い回数のミサイル攻撃で、9月だけでも、記録的な22回で、今やほぼ一日一度の割で行われている。
パキスタン政府と軍は、こうした無人機攻撃に加担し、標的にかかわる諜報情報を提供し、無人操縦の飛行機を発進させるため、CIAがパキスタン国内の施設を使用することを認めて来た。しかし、こうした攻撃の強化は、大衆の怒りの激化をひき起こしつつある。
オバマ政権が始まって以来、約150回の無人機攻撃が行われており、これはジョージ・W・ブッシュ二度の四年任期における数のほぼ三倍だ。先月末の、パキスタン人研究者ジーシャウル・ハサン・ウスマニ博士の報告書によると、アメリカの無人機攻撃は、総計2,063人の民間人の命を奪い、更に514人のパキスタン人を負傷させている。“テロリストを一人殺害するには、パキスタン人を57人殺す必要がある”とウスマニ博士は言う。
パキスタンの連邦直轄部族地域(FATA)で行われた世論調査で、75パーセントのFATA住民が、無人機攻撃に反対しており、わずか16パーセントしか、攻撃が正確に“武装反抗勢力”を狙ったと思っていない。1,000人以上の調査対象者のうち、48パーセントが、攻撃の犠牲者は、主として民間人だと考えており、一方、33パーセントが民間人と、武装反抗勢力の両方を殺害したのだと考えている。
木曜日、ニュー・アメリカ財団が発表した世論調査は、“アメリカ軍に反対する声は強力だ。”と結論している。“FATA住民の、わずか十人に一人が、パキスタン軍や警察に対する自爆攻撃は、往々にして、あるいは、時には正当化できるとしているのに対し、ほぼ十人に六人が、アメリカ軍に対するこうした攻撃は正当化できると考えている。”ことが判明した。
イスラマバードが公的には、無人機攻撃を非難することを強いられてきたのは、こうした感情がパキスタン政府そのものの安定性に対する脅威だと恐れればこその結果なのだ。
“我々は、極めて強く確信している、こうした無人機攻撃は非生産的であり、より大きな戦略的権益、とりわけ武装反抗勢力やテロリストに対する我々の戦略のかなめである、人心掌握のための我々の努力という文脈では役立たない”と、木曜日、外務省スポークスマンのアブドゥル・バシトは述べた。
この発表は、北ワジリスタンで、同日早々、武装反抗勢力とされる数人を殺害した、別のミサイル攻撃の後、行われた。水曜日の二度のミサイル攻撃では、少なくとも9人を殺害し、月曜日のミサイル攻撃では、ドイツ国民とされる8人を含む10人が亡くなった。バシトは、パキスタン領土におけるこうしたアメリカ軍の行為は“正当化も理解も不可能だ”と語っている。
アメリカとパキスタン間の緊張を更に高める、オバマ政権からアメリカ議会に対する、パキスタン政府に極めて批判的な秘密報告書の漏洩だ。
最初にウオール・ストリート・ジャーナルで報じられた文書は、パキスタン軍が意図的に“アフガニスタン・タリバンや北ワジリスタンのアルカイダ勢力と、直接戦闘することとなる交戦を避けようとしている。”と非難している。報告書は、これは単に資源不足という問題ではなく、“政治的選択”だとしている。
報告書は、パキスタン大統領アースィフ・アリー・ザルダーリーが“洪水にもかかわらず、ヨーロッパ訪問を決断したこと”が、同国を荒廃させ、約800万人のパキスタン人の住むところを失わせた。報告書は、国民は政府の対応を“遅く、不十分”と見ているとも書いている。
文書はこう結論している。“こうした課題を克服しない限り、パキスタン政府が、武装反抗勢力に、自国政府の持久力に懐疑的なままでいる国民に対し、影響力を回復する機会を与えてしまいかねない危険がある。”
別の記事で、ウオール・ストリート・ジャーナルは、パキスタン統合情報局(ISI)のメンバーが、武装反抗勢力集団分子と、ハミド・カルザイ大統領のアメリカ傀儡政権との間の和平交渉を斡旋しようというアメリカの企み台無しにするため“タリバンの野戦指揮官達に、アフガニスタンにおける、アメリカとその同盟国と戦うよう強く要求している”というアメリカ当局者の発言を引用している。
ISIによる行為だとされているものは、あらゆる和平協定において“影響力”を維持し、この地域における、イスラマバードの伝統的ライバル、インドと同調するような政府が、カーブルに樹立されるのを防ぐ、というパキスタンの決意が原因だとされている。パキスタン当局者は、そうした主張を否定し、アメリカのアフガニスタンにおける戦争を見舞っている危機で、ワシントンは、ISIやパキスタン政府を身代わりにしようとたくらんでいると非難した。
イスラマバードとワシントン間の極端な緊張を更に象徴するものとして、イギリス日刊紙ガーディアンは、木曜日、パキスタンに対する無人機戦争を正当化し、益々反対を強めているアメリカ国民に、アフガニスタン戦争を売り込むために、オバマ政権は、ヨーロッパにおけるテロの恐怖をあおっていると非難する、イギリス駐在パキスタン高等弁務官ワジド・シャムスル・ハサンの発言を引用している。アメリカは、ヨーロッパ内の標的を攻撃する企みとされている主張を裏付ける諜報情報をパキスタンには伝えていないと、彼は語った。
ハサンは更に、アメリカの攻撃はパキスタンを不安定化しつつあり、一層高まる大衆の怒りをひき起こし、それがアメリカに跳ね返る可能性がある、と警告している。
“国民は嫌がらせをされていると感じています”あるパキスタン外交官人は語っている。“もしも彼等[アメリカ人]が、更に誰かを殺害すれば、彼等は報復するでしょう。3,000人程のアメリカ人要員がパキスタンに駐留しています。彼等は格好のマトとなるでしょう。”ジャコババードのパキスタン空軍基地は、このまま緊張が高まれば、攻撃にさらされかねないと、彼はつけ加えた。この基地、CIAが無人機攻撃を発進させるのに使用している施設だ。
記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2010/oct2010/paki-o08.shtml
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昨日の友は、今日の敵。
アメリカでは中間選挙とやらが近づいている。
今朝の新聞には、イラクやアフガニスタンの戦争は争点にはならず、話題はもっぱら経済問題、というようなことが書いてあった。
そして、素晴らしき二大政党の理想的結果として、今度は、共和党が増えるもののようだ。
主要国家事業である、戦争を論ずることなく、名前と雰囲気だけ別の政党が伸びても、もちろん帝国のふるまい、属国にとってやさしくなるわけではない。
大騒ぎをして大統領の皮膚の色をチェンジしたが、他に何がチェンジしただろう。
属国は、支配を容易にすべく、宗主国の仕組みを模倣させられる。
宗主国並二大政党をめざして、日々日本の政治家・マスコミは活動している。
何周か遅れの「小選挙区制」。何周か遅れの「二大政党」。
このとんでもない制度を見事に豪腕で導入した政治家が、何故、突然、庶民の救世主に変貌する(あるいは、した)のか、納得できる説明、残念ながら読んだことがない。あれば是非ご教示頂きたい。うそした説明が現れる前に、ご用済みとされるのだろうか?
クーデター騒動が起きたエクアドル、大統領は持ちこたえた。国政選挙への強力な干渉にも耐え、ベネズェラのチャベス支持勢力はかろうじて多数派を維持した。ホンジュラスでは、セラヤ大統領自国の軍隊に拉致され、アメリカ空軍基地経由で、国外追放された。対抗する党(某国と同じ、二大属国政党のようだ)の有力者ロボにとって変わられた。エクアドル、ベネズェラでは、独立を標榜する政党が与党であるのに対し、ホンジュラス与党の大統領、某国と同じく属国政党の人だった。独立を実現するには、独立を目指す政治家の有力な政党が必要なのは当然だ。それで、この国では、間もなく、比例議席を、なんとか削減、消滅させ、その可能性を、未来永劫・完全に封殺することになっている。
走狗というもの、負け犬は噛んでも、飼い主は噛まない。噛めば追い出される。
検察による証拠改ざん事件の後は、政治家がからむこうした出来事、皆、「属国策捜査」に思えてくる。
彼をおい落としたとされる美男・美女政治家諸氏、救世主だなどとは思わない。彼等とて、走狗が宗主国に逆らえば同じ運命が待ち受けていること、もう十分にご承知だろう。
笑顔のラムズフェルドがフセインと握手をしている写真を、そして、首に縄をかけられたフセインの写真を思い出すこの頃。
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「このとんでもない制度を見事に豪腕で導入した政治家が、何故、突然、庶民の救世主に変貌する(あるいは、した)のか、納得できる説明、残念ながら読んだことがない。」
この世界のほとんどすべては国際金融資本が支配しているので、彼らの利害に反する活動は粛正されます。彼らにとって役に立つ、使える政治家は、生き残りますが、反旗を翻す(した)政治家は抹殺されます。中曽根康弘、小泉純一郎は前者で、田中角栄、橋本龍太郎、中川一郎らは後者です。この前者と後者とを隔てるものを突き詰めて行くと、どの時点で彼らにとって「役に立つ、使える政治家」であるかあるいは「反旗を翻す」のかが重要です。つまり、田中角栄、橋本龍太郎、中川一郎らであっても、最初のうちは「役に立つ、使える政治家」のように振る舞っていた、あるいは見えていたのですが、あるとき「反旗を翻す」ようになっているのです。彼らの本質が、どちらかというともともと「反旗を翻す」考え方であるかどうかはわかりませんが、危険(場合によっては生命の危険)をおかしてでも、「反旗を翻す」行動にでたために抹殺されたのです。小沢氏の場合は、つい最近までは、表立って反旗をひるがえしていなかった(従って一面では反国民的)のですが、民主党が政権をとった時点で「反旗を翻す」行動に出ています。「役に立つ、使える政治家」であるかあるいは「反旗を翻す」政治家であるかの境目は突き詰めると、第三者からは表面的にはあまり明確な差にならない(すべての情報が入手できていないので)かもしれません。しかし、これだけの迫害を小沢氏が受けているという事実がなにより、国際金融資本にとって、小沢氏がじゃまもの(「反旗を翻した」)とみている証拠です。私個人の見方ですが、小沢氏は、自民党を飛出すころから、米国の属国を脱する手だてを模索していたと思います。
投稿: 室生端人 | 2010年10月10日 (日) 06時36分