エクアドル、非常事態
Ruth Collins
2010年10月1日
"New Statesman"
大統領、警察と軍の全員が支配権を求めて格闘する中、南米の国の紛争は続いている。
比較的穏やかだったラファエル・コレアの三年間の大統領職も、昨日警官による抗議デモが国を麻痺させ、大統領が負傷し、病院に収容され、まずい展開となって砕け散った。
水曜日の晩、コレア大統領が実施した緊縮政策に応え、 木曜日朝、キトーやエクアドルの他主要都市の街路に何百人もの警官が並び立ち、国中の空港や道路を封鎖した。新たな施策には、政府による支出削減の無駄な試みの一環として、メダル授与、ボーナスと昇進に影響すると言われている法案の議会承認も含まれている。同様に法律の影響を被る約300人の軍兵士も、抗議デモに加わり、キトーの主要空港を急襲し、9時間、飛行機の空港発着を阻止した。
コレア大統領が兵舎を訪問した際、事態はさらに悪化した。彼を取り囲む軍隊に向かって、演説していた大統領は叫んだ。"もし君たちが大統領を殺したいなら、私はここにいる。殺したければ殺せ。それだけ肝がすわっているなら、私を殺せ。" 少しして、彼は要求通りの結果を得て、抗議デモ参加者により物理的に攻撃され、催涙ガス弾攻撃を受けた。病院に収容された後、大統領は、数時間、院内に閉じ込められ、その間、抗議デモ参加者間の銃撃戦になり、何人かが死亡し、かなり多数が負傷したとされている。
本記事にICHが追加したビデオ
軍隊のメンバーによって、安全なカロンデレト宮殿に、彼は秘かに連れ戻された。既に非常事態を宣言していたが、救助されて以来、コレアは、抗議デモは、彼を打倒する企みだと語っている。
確かにエクアドルは、政治クーデターに馴染みがないわけではない。過去13年間に三人の大統領が追放されている。コレアは実際、昨年、二期目に再選された際、二期目を勝ち取った最初の大統領だった。ところが、いくつかの物議を醸す決断の後、彼の人気は昨年中、劇的に低下しつづけた。32億ドルの"違法な" 国際債務の支払い凍結するという彼の決断で、同国の政府債務は南米大陸で最もリスクの高いものとなり、広範な財政問題をひき起こした。2009年2月、二人のアメリカ外交官を追放するという彼の決定は、ワシントンに拒否された。今年7月、彼は、万一、民間事業者が現地の法律に従い損ねた場合、政府が油田を国有化できるようにするという、新たな石油法案を実施した。石油がエクアドルの主要なセールス・ポイントの一つであることを考えれば、そのような行動は外国投資家を阻させかねないと多くの人々が懸念した。
コレアに対する、野党からの挑戦はほとんどなかったとはいえ、他ならぬ彼の弟ファブリシオが大統領候補という、驚くべき競争相手が登場し、ここ数カ月間、兄弟間の緊張が、ラファエルの大統領職を大いに傷つけている。2009年、エクアドルの新聞ディアリオ・エクスプレソが、兄が大統領に就任して以来、ファブリシオの建設事業が、奇妙なほど、前例のない成長を遂げていることを暴露し、兄弟は汚職スキャンダルに巻き込まれた。
大統領としてのラファエルの主要目的の一つが汚職との戦いだったので、こうした主張は、結局は事実無根であったにせよ、ラファエルの政治生命を取り返しのつかないほど損なうに十分だった。評判に対するスキャンダルの衝撃を小さくしようという無駄な企みとして、その後ラファエルは公共団体がマスコミと広告契約をすることを禁じる法案に署名した。
兄弟は、当初、疑惑問題の間、お互いに助け合っていたが、関係は間もなく悪化し、ファブリシオは以来、2013年選挙に出馬したい意向を表明している。大西洋の向こうの、労働党指導者の地位を巡る、比較的穏やかなミリバンド兄弟の争いと対照的に、この兄弟の戦いは、決して友好的とは言い難いものに見える。
これは、ここ数日の出来事に対する彼の対応を巡り、ラファエルが大いに批判されているという事実とあいまって、大統領としての彼の将来を不確かなものにしている。有数のエクアドル人ジャーナリスト、ルベン・ダリオ・ブイトロンを含め、自分は軍事クーデターの犠牲者であるというラファエルの主張に、多くの人々が異議を唱え、彼は状況を、支持を喚起するのに利用しようとしていると警告している。今週の出来事が、どのように解決するのかを語ることは困難だが、これからもっとひどいことが起きるのは確実だ。
記事原文のurl:www.informationclearinghouse.info/article26492.htm
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何とも不思議なことに、この件、本当に日本の「マスコミに載らない海外記事」となっている。日本には、本当に、「宗主国を讃える大政翼賛会報道しかない」ということが証明されたようなものだ。
アメリカへの基地提供を拒否すると、下記のいずれかになることが明白になった。
- 某国の首相のように、ある日、突然退陣させられる
- エクアドル式に、国民の反対運動に見せかけたもので排除される
- ホンジュラスのセラヤ大統領のようにパジャマのまま国外追放される
この国の画期的な基地政策については以下で翻訳したことがある。属国でも、こういうことがおこり得る、のに驚かされたのだった。
記念に、マンタという、貧乏人の小生には高価すぎる時計を買おうと思っていたのだが。
宗主国大使や大統領と違い、下記のような訪問もする人だ。(戦争犯罪の当事者連中、いくら原爆投下を自分勝手に正当化しようと、さすが彼のように、自分の犯行現場には参拝できまい。)
エクアドル大統領:「原爆の悲劇二度と」 資料館見学/広島 2010年9月8日毎日記事
エクアドルのラファエル・コレア大統領が7日、広島市を初めて訪問した。原爆慰霊碑に献花後、原爆資料館を見学し、被爆証言にも耳を傾けた。外国の元首として、初めて国立広島原爆死没者追悼平和祈念館を視察した。
所詮は邯鄲の夢。
「属国というもの、宗主国の掌の上で踊るしか選択肢はない」のだろうか。
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やなぎ様
コメントを有り難うございます。
4の選択肢、書いた覚えがないので、あわてて、読み直しました。
随一の理想的属国、政治家、政党のみならず、あらゆる官庁が65年にわたり、属国化教育を受けているのですから、武力行使の必要性皆無。
ひとこと言うだけで自由に政権は変えられますから、4の選択肢は永遠にないでしょう。属国化、深化するばかり、逆の方向はありえません。
励まされて?続編?を翻訳いたしました。ご笑覧あれ。
投稿: メタボ・カモ | 2010年10月 7日 (木) 00時04分
Venceremos様
コメントを有り難うございます。励まされて?続編?を翻訳いたしました。
国民が経済的に豊かか、貧しいか、ということと、その国民の哲学?が、豊かかというのは、全く無関係では?と、いくつかの国を瞥見して思うものです。
スペイン語、本でこそ、短期間かじりましたが、エクアドル等、訪問体験がないことが残念です。
投稿: メタボ・カモ | 2010年10月 6日 (水) 23時50分
4. イラクやアフガンのように爆撃される。
と言っても、宗主国は、某属国内の政・産・財・官・学に宗主国協力体制を構築済みですから、暴力沙汰になる以前に、常に"突然の退陣"で済みそうです。その協力体制に抗してでも国民は宗主国に抵抗し続けるでしょうか。もしそんなことがあったとしても、当面はソフトパワーで幕引きを図ると思います。イラクやイランのように経済制裁するという手もあります(石油、ウラン、小麦、大豆・・・)。天然資源のない植民地の場合、労働力と技術力から生み出される富しか搾取するものはないので、戦場にはしないだろうという見方は甘いでしょうか・・・。甘いかな。
http://upsidedownworld.org/main/component/content/article/2720-report-from-ecuador-democracy-under-threat-
エクアドルのクーデターの記事(米国の対応に関しては著しく説明不足)ですが、エクアドルの有力な先住民団体や社会的組織が、普段はコレア大統領と対立・衝突しているにもかかわらず、クーデターに対して即座に強い非難声明を出したことが書かれています。「敵の敵は味方」という単純発想はせず、民主主義の精神も浸透している。これが、某属国民との違いではないでしょうか。
投稿: やなぎ | 2010年10月 5日 (火) 02時13分
詳しく書かれてますね。確かにこのニュースは日本では全く報道されてなかったっすね
僕はキューバのニュースサイトの筋で知ったのですが、彼の演説に魅了されましたw
"Si quieren matar al Presidente, aquí está;
mátenlo si tiene poder, mátenlo si tienen valor"
大統領を殺したければ、ここにいる、さあ殺してみろ!
出来るもンなら殺してみろ!
身体を張ることが中南米では評価のポイントなので日本人にはなじめない気質かもしれませんが、僕はこういう政治家に魅力を感じます。今の日本の首相と良い対極っすねwww
僕も昨日記事を書いたので興味があれば参考にしてください
http://hastasiempre.blog104.fc2.com/blog-entry-56.html
投稿: Venceremos | 2010年10月 3日 (日) 15時55分