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2010年9月 5日 (日)

オバマ、オーウェル風のダブル・スピーク戦術に訴える: 戦争の本当の代償

Paul Craig Roberts

Global Research

2010年9月3日

オバマの“イラク戦争終結”演説は、わずかながら残されていた彼に対する信頼感をも粉砕したに違いない。彼を支持する人々と、彼をイスラム教徒でマルクス主義者だと糾弾する、戦争挑発者である右翼連中との両方をなだめることを強いられて、オバマは、オーウェル風のダブル・スピーク戦術に訴えた。この戦争を始めた大統領と、この戦争を戦った兵士を称賛することで、彼はかろうじて戦争の終結を宣言することができた。しかし、今や、アメリカ人ではなくとも、大半の人間は、戦争が嘘と意図的な欺瞞に基づいていたことはしっかりと理解している。アメリカ軍兵士は嘘のために命を落としたのだ。

オバマ大統領は、アメリカがイラク解放に支払った代償について語ったが、イラクは解放されたのだろうか、それとも、イラクは、アメリカ傀儡の政治家の手中にあり、世界最大の大使館、本質的には要塞である建物から指令を受けている50,000人のアメリカ軍兵士と、200,000人の民間傭兵と“コントラクター”によって、いまだに占領されているのだろうか?

オバマ大統領は、“解放される”ためにイラク人が支払った犠牲については言及しなかった。100,000人から1,000,000人にのぼる無数のイラク人推計死亡者の大半は女性と子供なのだが、それには触れなかった。無数の孤児や不具にされた子供や、強制退去させられた400万人のイラク人、各種専門家という中流階級のイラクからの逃避、かろうじて残っていたアメリカの評判とともに破壊された、家、インフラ、村や町にも触れなかった。

破壊されたイラクを、一つのアメリカの傀儡国家にして、ワシントンの命令を聞くようにさせるため、イラクに“平和”をもたらし、イラク人をサダム・フセインから解放するのだという、オバマが描き出したイラクに対するアメリカの“約束”からは、こうした物事全てがすっかり抜け落ちている。

アメリカを大量破壊兵器やアルカイダ・テロリストから救うのに、イラク侵略が必要だったというふりを、アメリカ政府はもはやできないので、壮大な戦争犯罪のアメリカ政府による正当化は、アメリカのように、自分に反対する人々をひどく苦しめてきたサダム・フセインを、排除するためだった、ということになっている。

どうしようもなく馬鹿な狂信的超愛国主義アメリカ人の間でさえ、一体地球上の誰が、破たんしたアメリカ合州国政府が、イラクを独裁から解放するため、たった一人の人物、サダム・フセインを排除するために3兆ドルもの借金を費やしたなどと信じよう? こんな話を信じる人は正気ではない。

サダム・フセインは、もし金をやるから引退しろと言われていれば、ずっと僅かの額で引退していたろう。

アメリカ人は“イラクを独裁から救う”という口実に皮肉を感じているだろうか? イラクに対するネオコン戦争の最大の代償は、3兆ドルでも、死亡したり、不具にされたりしたアメリカ兵士や、親族を失った家族でもない。この邪悪な戦争の最大の損失は、アメリカ憲法と、アメリカの市民的自由の破壊だ。

ブッシュ/チェイニー/オバマの安全保障国家は、憲法と市民的自由を骨抜きにしてしまった。もはや何も残っていない。大統領は法の適用を受けないと裁定をするに十分な人数の連邦裁判所判事を、ファシストの共和党フェデラリスト協会が、司法制度に送り込んだ。令状無しでアメリカ国民をスパイすることについて、大統領は法律に従う必要がなくなった。大統領は、拷問に対し、アメリカ法にも国際法にも従う必要がないのだ。議会だけが宣戦布告することができると命じる憲法に、大統領は従う必要がないのだ。彼が“国家安全保障”だといって正当化する限り、大統領はやりたいことを何でも実行できる。

大統領は、政府の一部であり、責任を負わない行政府は、至高なのだ。責任を負わない行政府のどこかの誰かが、そのようなアメリカ国民を“脅威”と見なせば、大統領は、海外在住あるいは国内のアメリカ人を殺害するという彼の決定を、弾劾されることなく、宣言できるのだ。

殺戮が第一。後で責任を追求されることも無い。

司法当局からの、介入もほとんど無しで、議会の支持を得て、行政府は、一方的な、責任を負わない権力を行使して、アメリカ憲法を処分してしまった。アメリカによる自国の違法な侵略と占領に反対する外国人の反対者を、行政府は、戦時国際法にも、アメリカ刑法にも支配を受けない、従って、告訴も証拠も無しに、無期限の拷問と拘留におかれる“テロリスト”とだ宣言することができる。

これはブッシュ/チェイニー政権の遺産であり、オバマの下でこの犯罪的政権が継続している。

アメリカの“対テロ戦争”でっちあげは、中世の謎の地下牢と、マグナ・カルタ以前に主流だった、むき出しの専制政治を復活させた。

これこそが、イラク“解放”の、つまり、イラクをアメリカの権益のために自国民を裏切るようなアメリカの属国に作り替えることの、本当の代償なのだ。

一体誰が、今アメリカ人を、ブッシュ/チェイニー/ネオコン/オバマの専制から解放してくれるのだろう?

オバマ大統領はイラクにおけるアメリカの戦争犯罪は終結したと断言したが、アフガニスタンには“50人かそれ以下の”アル・カイダ構成員しか生き残っていないとCIA長官が語っている状態を支配するため、アフガニスタンに、アメリカの戦争犯罪を輸出する権限を、オバマは主張している。“50人かそれ以下の”テロリストとされる連中を追求するために、破たんしたアメリカは、更に30億ドルの借金を背負いこむことになるのだ。この途方もない借金の無駄遣いを糊塗するため、これまでのアメリカ政権の不正直な慣習に習い、オバマは、国家統一を目指す何十万人ものアフガニスタン人によって国内で成長した運動であるタリバンを、アルカイダと同一視している。

さほど金をかけずに“テロリスト”と戦う方法は、中東や中央アジアにアメリカ帝国を作り出すのをやめ、先住民にアメリカの傀儡国家を押しつけるのをやめることだろう。

優れた徳性がご自慢の、買収され、報酬を得ているヨーロッパの傀儡諸国は、ワシントンと共同歩調をとって、ポケットにドルを詰め込んでくれるアメリカというご主人様に服従している。マグナ・カルタ以来、専制政治と戦ってきた西欧が、今や自国と世界の他の国々に、専制政治を強要しているのだ。

もしヒトラーやスターリンが勝利していたら、何が違っていただろう? 裁判も証拠も無しに有罪宣告をした“国家の敵”を、KGBの慣習のように首筋ではなく、オバマ政権は、前頭部で射殺するつもりなのだろうか?

それ以外に、一体どういう違いがあるだろう?

ポール・クレーグ・ロバーツはGlobal Researchの常連寄稿者。ポール・クレーグ・ロバーツによる、Global Research記事。

記事原文のurl:www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=20874

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こういう記事を掲載してくれるGlobal Researchに、是非ご寄付を!

安全保障がらみということで、孫崎享氏の新刊『日本人のための戦略的思考入門――日米同盟を超えて』(祥伝社新書210)を読んだ。テレビ、新聞の代表選ニュース洪水とちがって、大変に勉強になる。ブログも、古代ギリシャ芝居で、解決困難になると、最後に好都合に登場し、一挙に解決してくれる「デウス・エクス・マキナ」待望の皆様が大多数。本を読むか、寝ているかしかない。水戸黄門様はテレビの中のできごとだ。
沖縄県知事選挙で、伊波洋一候補の足をひっぱる傀儡政党、トップが誰になろうと、庶民のための政治など行うはずがないだろうに。これも、宗主国の掌上の争い。

孫崎享氏、どうやら、鳩山元首相に普天間基地問題でも、ご進講?をしておられたようだ。

日米同盟の正体-迷走する安全保障』 (講談社現代新書)も素晴らしい本だったが、この本、いわばその続編。

元上司だった岡崎氏に『日米同盟の正体-迷走する安全保障』には感動したが、戦略がないと、批判されていたそうだ。それで祥伝社からの「戦略の本を書きませんか」という誘いに乗ったのだと言う。

日米一体派の論理、についての記述を一部だけ引用させていただく。

強いものにつくことが得、ないし安全であるという判断が主たる論拠であるが、この論理には、次のような問題点がある。

(一項目のみ引用させていただく。)

・「保護国」内では、従属する機構、支配体制、精神構造が形成される。「保護国」内の人間が、宗主国の意向を察知し、行動するようになるのである。今日、日本においては、政治家、経済界、官僚機構、報道界において、日米一体を主張する強固なグループが形成されている。この動きが一番深刻なのではないか。普天間問題でも、まさにこれが機能した。

代表選で、どちらを支持するマスコミも、評論家も、日米一体を主張する強固なグループであることは同じ。これはアメリカの属国・保護国である限り、機能し続けるだろう。

素人には、代表選候補のどちらの政治家も、日米一体を主張する強固なグループの一員としか思えない。そもそも、あの党の主流、旧民社党も、自民党も、新進党も、松下政経塾も、日米一体を主張する強固なグループ。

代表選にまぎれて、「アメリカのイラク戦争終結」報道がなおざりにされていると思うのは、被害妄想だろうか?

違法で理不尽な侵略、占領を真っ先に支持した小泉政権、それをあおったマスコミに対する批判の機会が、代表選によって、見事に消滅したのかも知れない。

安保条約改定50周年で、安保いや、安保よりはるかに剣呑な「日米同盟の深化」なるものの本質を検討する機会も、口蹄疫で見事に消滅させられた、かのように被害妄想している。マスコミ、もともと単なる祝賀以上の記事をかくつもりはなかったろう。記念切手まで発行されたが、独立記念であればともかく、屈辱記念?切手、購入する気力はわかない。

ま、ここは、屈辱は祝賀だ!

木村盛世氏のWill10月号記事「口蹄疫、殺処分は誤り」、あの牛・豚殺戮、不要だったという。本当であれば、一体なんの為の大騒動だったのだろう。

世の中、つくづく不思議なほど、好都合な出来事が続くものだ。

一体誰が、今日本人を、民主/自民/公明/みんなの傀儡支配から解放してくれるのだろう?

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コメント

>傀儡支配からの解放
各個人でやっていくしかないみたいですね。

にいのり様
ご丁寧に連絡を有り難うございます。これを機会に、Daily Cafeteliaに、より頻繁にお邪魔させていただきたいと思います。

はじめまして。
いつも、興味深く拝読させていただいております。
拙ブログ(Daily Cafetelia)に、記事の一部を引用させていただきました。事後になってしまいましたが、何卒、ご承諾のほど、よろしくお願いいたします。
私見は、そちらの方で述べております。
以前、トラックバックしていただきましたが、ご興味がおありでしたら、ぜひ、拙ブログもご一読ください。
今後も、貴重な記事のアップとご意見の開陳に期待しております。
それでは。

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