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2010年9月 2日 (木)

Dismantling the Empire『帝国解体』チャルマーズ・ジョンソン著 

Blowback『アメリカ帝国への報復』、The Sorrows of Empire『アメリカ帝国の悲劇』、Nemesis(翻訳なし)の三部作を書かれた、チャルマーズ・ジョンソン氏の最新著書。

最初の文章以外は、全て、Web、TomDispatchに掲載されたもの。どこかの国の政党や政治家と違って、実に「ぶれない」見本のような本だ。

Introduction Suicide Optionの7ページで、

「一例をあげれば、普天間基地など閉鎖すれば良いのだ。」とおっしゃる。

2010年5月6日のロサンゼルス・タイムズの投稿「新たな沖縄での闘い」で、普天間基地代替施設移設問題に関し“米国は傲慢ぶりをやめ、普天間のアメリカ海兵隊部隊を米本土に戻すべき”と主張されている。

PEACE PHILOSOPHY CENTERというところで、この投稿の原文英語文と、日本語が読める。

1. Blowback World  November 5, 2004

アフガニスタンの泥沼現象、アメリカが、長い時間と莫大な投資をおこなって、自ら招いた結果。大統領の秘密私兵としてのCIAの悪行が説明されている。

2. Empire v. Democracy  January 30, 2007

歴史は、国内においては民主主義を、国外においては、帝国主義をめざそうとするような国家は不安定であることを示している。基地による世界支配。もちろん、沖縄のことも語られている。沖縄県民による持続的な基地反対運動についての文章の最後を引用させていただこう。「米軍は、日本政府と共謀して、彼らを無視してきた。」

but so far the U.S. military - in collusion with the Japanese government- has ignored them.

今、ブロガーの皆様が絶賛しておられる大政治家、例外なのだろうか?基地問題について、過大な期待を抱かせそうなあいまいな発言こそしているが。

第一次湾岸戦争で、宗主国に膨大なつかみ金を献上したのは彼だ。イギリスばりのえせ二大政党導入を狙って、小選挙区制を導入したのも彼だ。二大政党導入は、すなわち、憲法破壊が目的だ。宗主国の傭兵として、先制攻撃を手伝えるように。小泉フィーバーと、どこが違うのか、さっぱりわからない。傍観者には、少なくとも、小泉フィーバー以上に恐ろしい結果が待っているだろうことだけは、手にとるようにわかる、気がする。

3. The Smash of Civilizations July 7, 2005

文明の揺籃の地イラクを、いかに組織的に破壊したかを克明に描いている。余りにひどい。アメリカの歴史学者たちが、警備を主張したにもかかわらず、石油省は完全に警備したが、博物館は全く警備せず、その結果、徹底的に略奪された。お宝の行方、杳としてしれない。

某新聞夕刊に、イラク戦争についての連載記事が載っている。これにふれた、「五十嵐仁の転成仁語」、2010/8/31 イラク戦争支持の「言論責任」はマスコミを含む全ての「言論人」に対して問われるべきだ、に同感。

新聞、中立を装って賛否両論を載せる前に、まずこの節の翻訳をこそ掲載して欲しいものだ。

4. Peddling Democracy May 2, 2006

59ページの、日本の民主主義の現状に関する表現を引用させていただこう。

Rather than developing as an independent democracy, Japan became a docile Cold War satellite of the United States-and one with an extremely inflexible political system at that.

独立した民主主義を発展させるのではなく、日本はアメリカ冷戦の従順な衛星国、それも極端に硬直的な政治システムの国になった。

日本への評価とは対照的に、韓国民主主義への評価は高い。残念ながら、真実だろう。62ページ

Unlike Amecican-installed or -supported "democracies" elsewhere, South Korea has developed into a genuine democracy.

アメリカが、あちこちで、しつらえた、あるいは、支援した「民主主義」とは異なり、韓国は、本当の民主主義が発展した。

5. Agency of Rogues July 24, 2007

CIA解体・再編論。

6 An Imperialist Comedy  January 6, 2008

愚劣な映画「チャーリー・ウイルソンの戦争」の見事な批判。 まともな評価、むしろブログ記事にある、とおっしゃっている。

「共産主義者が統治していた頃の方が、女性の自由を含め、様々な点で、現在のカルザイ政権よりも良かった」という記述もある。90ページ これは、下記翻訳記事とも符合する。

アフガニスタンにおける女性の権利 2010年8月13日

関連するRick Rozov氏記事の小生翻訳あり。

アフガニスタン: チャーリー・ウィルソンとアメリカの30年戦争

7. Warning: Mercenaries at work  July 27, 2008

戦争(軍と諜報活動)を私企業化すれば、歯止めは効かなくなる。人の不幸が、自分の儲けになるのが堂々と認められれば、傭兵企業はやりたい放題になる。なによりも、官庁の中から、仕事の本質に対する「組織的な記憶」が消滅してしまう。官庁のトップ・実力者が外注先にぞろり移ってしまえば、役所は、そうした民間を管理できなくなり、振り回される。

8. America's Empire of Bases January 15, 2004

壮大な基地。バクダッドの第82空挺師団の幹部食堂では、白いシャツ、黒いズボンのウェイターが給仕する。

あまりに大きいので、中に兵士用バス路線が9本ある基地さえある。

昔なにかの機会に横田基地を訪れた知人、その豪華さに驚いて、色々語ってくれた記憶がある。思いやり予算を注ぎ続ければ、帰っていただけるはずのものも、居すわられてしまうだろう。

9. America's Unwelcome Advances August 22, 2008

イラクに対し、約58の基地を、無期限に置かせろと、秘かに圧力をかけていることが、2008年6月暴露された。

10. Baseless Expenditures July 2, 2009

この記事、感心して下記題名で翻訳していた。「基地をおかれている国々は、土地を安く貸与することはない。せいぜい、とれるうちに、ボッタクリなさい。」というアドバイス。題名は語呂あわせだろう。「根拠のない支出」「基地のない支出」。

アメリカ基地帝国に、どう対処すべきか 駐留軍受け入れ国に対する控えめな私案

11. Going Bankrupt January 22, 2008

実は、この文章、感激して、すぐに下記のインチキ翻訳をしていた。

アメリカを衰亡させる方法:なぜ累積債務危機が、今アメリカ共和国とって最大の脅威なのか

二ヶ月後、プロの方による、きちんとした翻訳が書物として現れてびっくり。

「軍事ケインズ主義の終焉」(岩波書店『世界』2008年4月号掲載)

TUP速報751号記事(大手商業マスコミと違い、こうした真摯なプロジェクトは有り難い。)

12. The Military-Industrial Man September 14, 2004

13. We have the Money September 28, 2008

もちろん副題は、「もしも、国防予算につぎ込まなければ」だ

アメリカは、アフガニスタンでも、パキスタンでも、ヘルファイア・ミサイル、無人飛行機、特殊部隊奇襲、再三の無辜の傍観者殺害と、同一視されている。161ページ

アフガニスタンから即座に撤退すべきだ。161ページ

14. Economic Death Spiral at the Pentagon February 2, 2009

15 Dismantling the Empire  July 30, 2009

人工的国境のおかげもあって続いているパシュトゥーン族の遺伝的ともいうべきゲリラ精神。

イギリスも、ロシアも、空からの爆撃で、鎮圧をこころみて失敗している。同じ作戦をつづけるアメリカの敗北も必死だ。という、Paul Fitzgerald, Elizabeth Gouldの著書Invisible Historyからの引用が紹介されている。188ページ

悪名高い無人機で、葬儀の行列を攻撃しても、アフガニスタンの人々(日本のように)易々と属国化してはくれまい。反感こそたかまろう。189ページ

そして、日米地位協定なる悲しき不平等条約、何と世界中の国で、アメリカが導入を目指す「お手本」だそうだ。193ページ

アメリカにすれば、「日本」は言う事を聞くのに、なぜXX国は駄目なのか?ということなのだろう。

「普通の国」にしてみれば、「属国」日本を真似する義理などないのだ。

「普通の国」とは、どこぞの代表候補による定義と違って、宗主国や国連に言われて、侵略戦争のために傭兵を派兵したりしない国を言うだろう。

2001年から2008年までの間に犯罪を行った3,184人中、83%が訴追されていない。

そして、イラクの地位協定、戦後すぐの日米地位協定にそっくりだという。193ページ

クーラーもなく、連続稼働のため、一年でモーターがへたった扇風機をたよりに読み終えた。(カバーを外して、回さないとうごかなくなった。やむなく買い換えた。)本文196ページ。

クリックいただければ、TomDispatch.comでオンライン記事が読める。

しかし、やなぎ様が紹介くださったニコラス・カーの『ネット・バカ』にもある通り、オンラインで読んでは、理解の度合いが浅いのではと余計な心配をしてしまう。

さして高くない(25ドル)ので、ここは紙の本をお勧めしたい。

残念ながら、この本、Nemesis同様、日本では決して翻訳は出るまい。

『復讐の女神ネメシス: アメリカ共和国最後の日々』2007年4月 3日

「属国日本の庶民にとって有意義な書物・言論ほど埋もれる」不思議な仕組みがあるようだ。陰謀論などとは言わない。単に属国茹でガエル、茹でガエル状態を指摘する本は、いやがって読まず、全く売れないだけかもしれない。宗主国では、これだけハッキリ物言う本が、ベストセラーになる。

プロパガンダ小説は山のように翻訳され、プロパガンダ映画は吹き替えになるのに。

属国民、一日も早く英語が標準語になるのを待望するしかないのだろうか?

それ以外に「ゆで蛙集団」が自らゆで蛙である現実を知る方法はなさそうだ。

無茶な戦争をしかけ、敗戦し、属国化したのは事実で、恥じるべきことではなかろう。

属国である事実に蓋をして、「普通の国になろう」「安保理に入りたい」などという言動がまかりとおる状況を恥じるべきだろう。

アメリカ票が二票になるだけのことに賛成するまともな国などあるわけがない。

治る病気は正確に診断・治療すれば治る。

しかし、この国、病気ではないと言い張る重病人らしい。

とうてい本質的な選択肢とはいえない代表選に夢中になって、深刻な病気を忘れようとしているのだろうか?属国の末期的症状。政界も、財界も、学界も、マスコミも、そして大多数のブロガーの皆様も?

2011/12/18追記:

残念ながら、この本、Nemesis同様、日本では決して翻訳は出るまい。

という想像、嬉しいことに、誤解だったようだ。

岩波書店から『帝国解体 アメリカ最後の選択』という題名で刊行された本、この本の翻訳だ。当初、12/14発売ということだったが、2012/1/28に変わった。雨宮和子訳、2100円。

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コメント

初めまして
トラバをありがとうございました。
前にいただいたトラバにも返信したのですが、こちらからのトラバは通りましたでしょうか?
なんだか通っていないようなので、すみませんがこちらに記載させてくださいませ。
http://akiharahaduki.blog31.fc2.com/blog-entry-530.html

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