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2010年9月 7日 (火)

アメリカ、パキスタン・タリバン指導者をCIA要員殺害のかどで提訴

Tom Peters

2010年9月6日

アメリカ司法省は、先週水曜日、昨年12月パキスタン国境近くのアフガニスタンのチャップマン前進作戦基地で自爆攻撃を組織し、7人のCIA要員を殺害し、6人を負傷させたかどで、ハキムッラー・メフスードに対し、刑事訴訟を起こした。また国務省も、メフスードのテフリク-エ-タリバンを“外国のテロ組織”リストに追加し、メフスードと副司令官ワリ・ウル-レーマンの居場所に関する情報には500万ドルまでの報奨金を支払うことを確認した。

ワシントン地方裁判所がメフスード告訴した二つの訴因は、在外アメリカ国民を殺害した陰謀と、攻撃を実行したCIA連絡係が使った自家製の自爆用爆弾という“大量破壊兵器”を使用した陰謀だ。告訴は終身刑の処罰を伴っているが、アメリカ当局者は“ハキムッラーが、万一彼が生け捕りにされたら対処するつもりだ。… 他の方法で裁きが下される可能性もあり得る。それは変わっていない。”とロイターに語っている。言い換えれば、CIAとアメリカ軍は、依然として、リモート・コントロールによるプレデター無人機から発射されるミサイルを使ってのメフスード殺害を狙っているのだ。

パキスタン・タリバンとも呼ばれるテフリク-エ-タリバンは、パキスタン政府と、米-NATOによる隣国アフガニスタン占領に対する、部族とイスラム教徒のレジスタンスを統一すべく、2007年に結成された。南と北ワジリスタンの連邦直轄部族地域(FATA)に基地をおき、国境沿いのパシュトゥーン部族地域を安全な隠れ場として利用しているアフガニスタン武装反抗勢力を支援している。

この集団は、4月に6人を殺害した、ペシャワルのアメリカ領事館への持続的な攻撃を含め、パキスタン国内で無数の攻撃を実行してきた。彼等は、パキスタンの港からアメリカとNATO軍への補給品を運搬していたトラック車列への攻撃を組織した。米国民ファイサル・シャフザドによる、今年5月のニューヨークのタイムズ・スクエアでの自動車爆弾未遂事件も、これを仕組んだとして、メフスードはアメリカから非難されている。

この組織は何百人もの民間人を殺害してきた。最近では、アルジャジーラTVへの電話で、メフスードは、少なくとも33人を殺害し、更に数百人以上が負傷したラホールにおけるシーア派イスラム教徒のラマダン行列に対する先週の自爆攻撃の犯行声明を行った。パキスタン・タリバン幹部のカリ・フセインも、先週金曜日少なくとも59人が死亡し、160人が負傷した、クエッタでのシーア派集会に対する攻撃の犯行声明を行った。テフリク-エ-タリバンは、パキスタンの少数派シーア派住民を標的にするいくつかのスンナ派聖戦士集団の一つだ。

そうしたテロ攻撃は、ひたすら反動的なものだ。彼等は無辜の民間人を殺し、苦しみを与え、住民たちを、宗派間の壁で分裂させ、混乱させているだけだ。ところがメフスードに対するワシントンの告訴は、全く虫のいいしろものだ。アメリカ政府と軍は、商業マスコミに支援されて、またもや、アフガニスタン国民に対する残忍な新植民地戦争と、パキスタン国内で“対テロ戦争”という名で代理戦争を拡大することの正当化を狙っているのだ。

メフスード起訴を発表しながら、国務省のテロ対策担当無任所大使ダニエル・ベンジャミンは、テフリク-エ-タリバンを“パキスタンの部族地域に不安定化の影響をもたらし”、“おびただしい民間人の死亡と、相当な資産の損失をもたらしている”と非難した。パキスタンにおける不安定が深化している本当の原因は、オバマ政権が無人機ミサイル攻撃によって、パキスタンのFATA地域にまで拡大し、パキスタン軍にイスラム教集団に対する作戦を強化するよう要求しているアメリカが率いるアフガニスタン戦争なのだ。

2008年8月以来、アメリカのプレデター無人機からのミサイルは、パキスタン国内で、101回以上の攻撃により、およそ1,000人を虐殺し、大半はメフスード族が住むワジリスタン管区の多数の村を破壊した。2010年、ブッシュ政権下で、2004年に無人機攻撃が開始されて以来のどの年度よりも多くの人々が既に殺害されている。

チャップマン前進作戦基地の爆撃で、死亡した者のなかには、プレデター無人飛行機攻撃の目標選択に直接関与していたCIAの上級職員も含まれていた。もしもハキムッラー・メフスードが、自爆攻撃遂行に関与していたとすれば、彼の動機として一番ありうるのは、2009年8月の、彼の兄、パキスタン・タリバン前指導者バイトゥッラー・メフスード暗殺に対する報復だ。彼の家への無差別無人機攻撃は、バイトゥッラーのみならず、彼の妻の一人と、子供たちを含め、更に32人の人々を殺害した。

アメリカの無人飛行機攻撃は、民間人死傷者に対するアメリカの犯罪的無関心が特徴だが、8月中旬以来、攻撃は劇的にエスカレートしている。9月3日、北ワジリスタンの町ミランシャー近くの家屋敷にミサイルが命中して、12人が亡くなった。これは女性3人と子供4人を含む20人を殺害した同じ地域への8月23日の攻撃に続くものだ。

パキスタン当局者は、ロイターに、8月27日のクッラム部族地域でのミサイル攻撃で、更に5人が殺害され、数人が負傷したと語った。犠牲者は“過激派”だと説明されてはいるが、彼等の身元は確認されていない。8月14日、北ワジリスタンのエッソリ村で、お祈りの最中に家屋敷にミサイルが命中し、13人が殺害され、5人が負傷した。パキスタンの安全保障当局者は、殺害されたのは“過激派”だとAFPに語ったが、身元は不明だとつけ加えた。

パキスタン政府は公式にこそアメリカの無人飛行機攻撃に反対しているが、ロイターによれば“少なくとものいくつかの攻撃計画には協力してきたと両国幹部は語っている”。オバマ政権からの圧力下で、パキスタン政府は、パシュトゥーン族住民に対し、残虐な戦争をしかけてきた。昨年のスワット渓谷、バジャウル管区と南ワジリスタンに対する主要な攻勢では、何千人もの民間人を殺害し、何十万人もが住まいから追い出された。3月のオーラクザイ管区での攻勢では、更に200,000人が強制退去させられた。

アメリカ国防長官ロバート・ゲーツは、先月記者団に、軍はパキスタンに、メフスード族、アフガニスタン・タリバンや、国境の両側で活動しているパシュトゥーン族の武装反抗運動、ハッカニ・ネットワークとつながった何万人もの戦士からの激しいレジスタンスを招きかねない、北ワジリスタンに対する直接の攻撃をさせる、という圧力をかけるのはやめたと語った。

パキスタン軍は、とはいえ、ワシントンになり代わって、部族地域の住民を威嚇することを狙い、奇襲爆撃の遂行を継続している。クッラムとオーラクザイ管区の部族地域で、パキスタンのジェット戦闘機と攻撃型ヘリコプターが、過激派とされる17人の人々を殺害し、少なくとも更に10人を負傷させた同じ日に、アメリカ国務省は、メフスードに対する告訴を発表した。この攻撃はアフガニスタンへのアメリカとNATOの補給トラックの主要経路であるカイバル管区、ティラ渓谷のいくつかの村で、少なくとも60人を殺害した前日の空爆に続くものだ。

パキスタンのデイリー・タイムズ紙は、病院やモスクが破壊され、“犠牲者の親族が抗議デモを行い、部族地域出身の大臣二人にスローガンを叫んだ。彼等は事件の調査を要求している”と報じている。住民の一人、ジハド・グルは、ドーン紙に、女性と子供の少なくとも20人の死体を目撃したと語っている。

一人の当局者がデイリー・タイムズ紙に以下の通り語っただけで、パキスタン軍は、死亡については冷淡にはねつけた。“過激派は、民間人や家族を人間の盾として利用していたので、 多少の民間人死傷者はあったかも知れないが、一体何人かは承知していない”。4月、ティラ渓谷は70人以上の民間人を殺害した空爆攻撃を受けた。

先週水曜日、CIAのスポークスマン、ジョージ・リトルはマスコミにこう語った。“このテロリスト[ハキムッラー・メフスード]に、彼が行ったことの責任をとらせるための、あらゆる合法的な手段を我々は支持する”。しかしながら、何百人もの民間人を殺害しているアメリカの無人機攻撃や、ワシントンに代わってパキスタン軍が遂行している残忍な攻勢には、合法的なものなど皆無だ。

メフスード起訴の決定は、中央アジアのエネルギーが豊富な重要な地域を支配しようというアメリカの戦略的野望を追い求める、オバマ政権の犯罪的行為を正当化するための単なる偽装だ。

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2010/sep2010/paki-s06.shtml

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他国における、プレデター無人飛行機での民間人無差別殺人は正しい行為。

無差別殺人を仕事にする自国民が殺害されると、殺害当事者は訴訟対象。

この論理、全くわけがわからない。

日本の米軍基地も、ハイテク技術も、こうした理不尽な行為に貢献しているだろう。

米軍兵士に強姦されたオーストラリア女性が、事件直後、神奈川の警察に訴えたら、逆に脅された(セカンド・レイプ)ことを思い出した。

被害者の方、本を書かれている。『自由の扉―今日から思いっきり生きていこう』

防衛省、見舞金として300万円支払う方針を決めた。

加害者とされた米兵はちゃっかり帰国し除隊している。

属国が受け入れている密約のなせるわざ。

見舞金、日本の税金によるアメリカ兵士に対する「強姦の勧め」か?

強姦犯人を、逮捕、処罰してこそ、独立国家だろう。

子供の時「明治維新時の不平等条約改定に政府は苦労した」と習った記憶がある。

「敗戦時の不平等条約改定を、属国は完全に放棄している」という文章、今の教科書にきちんと載っているのだろうか?

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コメント

「他国における、プレデター無人飛行機での民間人無差別殺人は正しい行為。
無差別殺人を仕事にする自国民が殺害されると、殺害当事者は訴訟対象」

の根底にあるのは、白人にあらずば人にあらず、キリスト教徒にあらずば人に
あらず 世界の支配者(国際金融資本)でなければ 生き残る資格はない 
ではないでしょうか。このあたりの非人道的、非人権的行動を見て
いると、日本人の普通(悪いことを進んでする人はいない)の感覚では理解
しがたいものがあります。

「ワクチンを上手く使えば、人口の削減ができる」
「すべてのがんは治療可能である。しかしその情報が公開されることはない」
「ケムトレイル」「飲料水にフッ素をまぜる」「エイズ」「サーズ」
「穀物の種子支配」「地震兵器」「携帯核兵器」

邪悪な彼らに対抗するために、こちらも邪悪になるのは、きっと正しくないのだ
思います。邪悪になっては彼らと同じですから。で、どうするかは、わかりません。
(すみません)

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