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2010年8月

2010年8月28日 (土)

2010年の『ジャングル』

2010年8月26日

1906年、社会主義者の作家アプトン・シンクレアが『ジャングル』を出版した。シカゴの家畜置き場で移民労働者が直面する残酷な状況、アメリカ人の食卓用の食肉が加工される場所の汚さ、そして、精肉業界の大立て者の腐敗と貪欲さの、強烈な暴露だ。

小説は劇的な衝撃をもたらし、あっと言う間にベストセラーとなった。シンクレアの同時代人ジャック・ロンドンは書いている。『ジャングル』は“わが国の本当の姿を描いている。圧政と不正の本場、窮乏の悪夢、苦しみの灼熱地獄、人間の地獄、野獣たちの『ジャングル』を。”

一般大衆の抗議が余りに激しかったので、セオドア・ルーズベルト大統領と議会は間もなく、1906年に純正食品・医薬品法を成立させた。進歩的な時代における改革の画期的な出来事の一つだ。

労働・消費者保護規制は、労働者の虐待や、汚染食品の販売を終わらせるほど、十分に厳しいことなど決してなかった。ところが、100年以上へた今日、食品産業の利益志向に対して課されたそうした規制は、すっかり消滅してしまった。今週の卵と、スライスした冷製の調理済み肉の大量リコールで、過酷で不衛生な労働搾取工場というアメリカの食糧供給源のベールが取り払われた。

ネズミの糞で汚染された可能性の高い、サルモネラ菌に侵されているかもしれない5億個以上の卵が、現在、全米の州でリコールされている。卵はアイオワ企業二社、ライト・カゥンティ・エッグとハイランデール・ファームズが生産したものだ。

サルモネラ汚染の、1,300症例が報告されている。吐き気、嘔吐、下痢、そして影響を受けやすい人々の場合には、死亡を招く。過少報告のおかげで、実際の症例の数値は40倍はある可能性がある。

そして火曜日には、世界最大の食肉生産者タイソン・フーズが加工した、171トンのスライスした冷製の調理済み肉が、全米のウォルマート店舗からリコールされた。スライスした冷製の調理済み肉は、吐き気、頭痛、首の痛みや、死にいたる可能性もある回旋病をひき起こす可能性のあるバクテリア、リステリアに汚染している可能性があるのだ。

一週間で立て続けに事件が勃発したのは単なる事故ではない。過去三十年間にわたるアメリカ産業の着実な規制緩和の結果なのだ。ジミー・カーター以降、あらゆる民主党、共和党政権による、政府の官僚主義が資本主義“自由市場”の“見えざる手”の邪魔をするという主張が、基本的な安全、環境、金融規制法規の基準と施行の後退を促進させたのだ。

その結果がこの社会的大災害だ。大手銀行による抑制のない詐欺行為から生じた2008年に勃発した金融危機から、安全法規や環境法規を踏みにじって、生じたBPのメキシコ湾石油災害や、食糧供給における汚染まで、アメリカ国民は極めて強欲な企業権益に翻弄されている。今年には、安全、衛生法規違反で再三召喚されていたウエスト・バージニアのATマッシー炭鉱で、過去40年間で最も破壊的な炭鉱災害が起きた。

こうした出来事の全てにおいて、社会的犯罪人が労働者を容赦なく搾取し、それと知りながら、市場を不良で危険な製品であふれさせるという、企業の犯罪性が大きな役割を演じている。名目的にしか企業を規制しない政府省庁そのものとの協調関係を享受しているので、彼等は刑事免責という状態でそうしているのだ。

ここで問題になっているのは、ライト・カウンティ・エッグの所有者で、労働法、衛生法や環境法違反で長たらしい記録を有するオースティン“ジャック” デコスターだ。1996年、デコスターは、当時の労働省長官ロバート・ライシュが“私が目にした中でも、最悪の違反”だと呼んだものに対して、200万ドルを支払わざるをえなかった。アイオワ“搾取的農場”での違反には、労働者を“ネズミだらけのトレーラーに住ませ、素手で糞や死んだ鶏を処理させた。”ことも含まれているとライシュは語っている。

2001年、デコスターは、彼の会社が、11人の不法滞在のメキシコ人女性労働者を、上司による強姦や性的暴行を含む“性的に好ましくない労働環境”にさらしたという、雇用均等委員会による告訴に対し、150万ドルで和解した。デコスターはわずかな賃金しか支払わず、不法滞在移民を情け容赦もなく搾取していることで悪名が高い。

YouTubeに投稿されている、デコスターが所有する養鶏場や、他社が運営する同様な加工ラインの作業のビデオは、にわとりが腐敗した鳥の死骸と一緒に、かごの中に詰め込まれている様子を映し出している。

そうした環境は例外ではなく、お決まりなのだ。“ほとんどあらゆる畜産場を検査するという必要条件は皆無なのです。七面鳥や、鶏や、豚や牛の検査は全く必要条件ではないのです。” 家禽医でアイオワ州立大学の研究者ダレル・トランペルはフード・セフティー・ニューズに語っている。“この国における法的な要求だけの問題ではありません。”

表向き、検査が必要とされる場合でも、本気の監督や施行は、事実上無いに等しい。予算が過去十年間に半減され、今や350の食品製造施設に対して、一人の検査員という能力しかない。

保健社会福祉省 (DHS) 監察総監室 (OIG)の最新の報告で、 アメリカの全食品生産工場の半数以上が、『ジャングル』刊行の余波の中、創設された連邦政府の機関食品医薬品局(FDA)による検査を一度も受けないまま、五年もたっていることが明らかになった。FDAが違反を発見した場合ですら、違反の実績がある企業に対しても含めて、対策をとることはまれだ。

FDAは、食品汚染を発見した場合に、リコールを命じる権限さえ持っていない。“自律”という精神を踏まえ、違反している企業に対し、自発的にリコールをするよう要求することができるだけだ。

その結果が、疾病対策予防センターによると、汚染した食品を食べて、毎年約8100万人のアメリカ人が病気になり、300,000人が入院し、9,000人が死亡しているという状況だ。

何千万人もの消費者の中毒は、食品生産工場における残酷な労働条件と直接結びついている。『ジャングル』の主人公、リトアニア人移民のユルギス・ルドクスは、現代の食品工場では、何十万人ものメキシコや中米の移民労働者に置き換えられている。

多くは、鋭いナイフで、反復して斬る動作の結果として、毎年職場で、数がわからないほどの人々が怪我をし、不具になっている。こうした負傷は、通常、企業勤務の医師が隠してしまう。政府説明責任局が、2005年に指摘しているように、職業安全衛生管理局(OSHA)には“OSHAが、雇用者に対し、危険をひき起こす原因だとして引用することが可能な特定な基準もなければ”“[食肉処理] ラインが稼働すべき適切な速度を評価する”手段も無いのだ。

ところが、シンクレアの時代とは対照的に、現代の食品加工産業の恐ろしさは、マスコミやら、既成大政党のどこでも、ほとんど何の波紋も呼びはしない。最近の集団中毒によって、食品産業を管理する新たな改正を実施しようという声があがることはなかった。

オバマ政権によって最近施行された卵生産に関する新たな法規は、事態を改善するようなことは一切するまい。特に重要なのは、新法規が、イギリスでは、人のサルモネラ感染症例を95パーセント削減することが認められている対策である、鶏に対するサルモネラ予防接種という要求を除外していることだ。

現代ほど、アメリカ大企業エリートや金融エリート支配者が、これほどまで傲慢で、歯止めの利かない権力を振るったことはない。前世紀始めの数十年には存在していたような改革志向のリベラルなインテリの消滅が、社会的不平等の大幅な増大や、経済的階梯の最頂点における富の集積、そして、長く続く、加速化した、労働者階級の社会的地位の低下と連動して進行したのだ。

この過程で労働組合幹部は極めて重要な役割を果たしてきた。多数の食品労働者の闘争における、労働組合の裏切り、組合つぶし、賃金引き下げや、作業速度の加速に対する彼らの協力が、シンクレアが一世紀前に暴露した労働搾取工場状態の復活を招いたのだ。

こうした社会的な恐怖は資本主義制度そのものに根ざしている。世界中の何十億の人々が、生産、流通と消費という複雑な複雑な関係でつながっている現代の大衆社会は、経済生活の主要な手段が、私的に所有されており、金融界と、実業界の支配階級連中による莫大な資産の集積の下位に属するような制度とは、決して両立しない。

労働者が事態を掌握するまでは、また掌握することなしには、社会に対して破壊的な私企業の慣習が止むことはないのだ。労働者階級は、金融エリーの財産、特権と権力に真っ向から挑戦し、金融エリートによる社会支配を終わらせなければならない。労働者階級は、労働者による民主的管理による食料と農業関連事業の大企業国有化を含む社会主義プログラムの下で団結し、独立した政治勢力として、組織化しなければならない。

Tom EleyとBarry Grey

著者たちは下記記事もお勧めする。(英語原文)

Egg recall exposes unsafe US food supply

[2010年8月25日]

Tainted egg sicken thousands across US

[2010年8月21日]

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2010/aug2010/pers-a26.shtml

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こういうアメリカを賛美する「あんたの党」(自民党も、民主党も基本的には似たようなものだろう)が躍進する国に否応なしに暮らしているわけだ。

アプトン・シンクレアの代表作『ジャングル』松柏社から翻訳本が刊行されている。

3K労働のひどさ、労働組合に対する破壊工作、そして最近の住宅ローン破産、まるで現代の話。労働者の状況、100年たってもさほど変わっていないことが良くわかる。

ジャングル』刊行時、大本営広報部として機能するばかりのマスコミのひどさにあきれたアプトン・シンクレア、マスコミを批判する本『ブラス・チェック(邦訳題名:真鍮の貞操切符) 』を自費刊行した。

マスコミのプロパガンダ機能も、100年前から、変化する理由も皆無。

口蹄疫についてはしつこいほど報じても、アメリカの卵・肉リコールは、ほとんど報じない。

『ブラス・チェック』のごく一部を、『クリスマスの手紙』「百万長者対貧乏作家」として翻訳、ブログに掲載してある。マスコミは昔から、大企業・権力者の声を伝える拡声器のようだ。

Democracy Nowで、この話題を扱ったインタビューが見られる。(読める)
過去最大数の卵を店頭から回収 大規模農業への警戒再燃(ただし英語)

アプトン・シンクレアのもう一つの代表作『石油!』平凡社から翻訳が刊行されている。映画化もされている。

映画版『石油!』、いくつか評価を読む限り、原作から大きく逸脱した駄作のようだ。

ちなみに我が家、大いに貧しいが、家人はアメリカ産というシールのある肉も野菜も購入を避けている。(恥ずかしながら牛肉を購入できる家計ではない。)

2010年8月25日 (水)

人々が知らされないイラクの現状

Adil E. Shamoo

2010年8月23日

"FPIF"

イラクでは、失業率が25から50パーセントで、議会は機能不全で、疫病がはびこり、精神障害がまん延し、スラムが無秩序に広がっている。無辜の民間人の殺害は日常茶飯事だ。アメリカ合州国は、イラクで一体何という大惨事をひき起こしてしまったのだろう。

国連の機関の一つ、国連人間居住計画が、最近「世界の都市の状況、2010-2011」と題する218ページの報告書を発行した。報告書には世界中の諸都市の現状に関する統計と、都市の人口動態が満載されている。報告書は、スラム住民というものを、以下の一つが欠けたまま、都心で暮らしている人々として定義している。寒暖から保護してくれる丈夫な建物、十分な生活空間、水道が十分に利用できること、下水設備が利用できること、そして、追い立てられる心配がないこと。

こうした統計で、ほとんど意図的に隠蔽されているのが、都会のイラク人に関する衝撃的な一つの事実だ。過去数十年間、アメリカが2003年にイラクを侵略する前、イラクでスラムに暮らす都会の人口比率は、ずっと20パーセント以下のあたりにあった。現在、この比率は、53パーセントにまで増大した。全国民1900万人のうち、1100万人が都市住民なのだ。過去十年間、多くの国々はスラム住人の数を減らす上で進歩した。だがイラクは、急速かつ危険なまでに、反対方向に進んでしまった。

2000年のアメリカ国勢調査によれば、アメリカ合州国の国民、2億8500万人の80パーセントが都会の住人だ。スラムで生活している人々の数は、5パーセントを遥かに下回る。イラクの統計をアメリカに置き換えれば、アメリカ合州国の国民のうち、1億2100万人がスラムで暮らしていることになる。

もしもアメリカ合州国の失業率が25-50パーセントで、1億2100万人の国民がスラムで暮らしていたとすれば、暴動が起き、軍隊が権力を掌握し、民主主義など消滅するだろう。それではなぜ、アメリカ合州国の国民は、イラクの現状を懸念せず、悲しもうとしないのだろう? それは、アメリカ合州国の国民大半が、イラクで何が起きたのか、そして今何がおきつつあるのかを知らないためだ。現行政権を含め、アメリカ政権は、見て見ないふりをし、侵略後のイラクでは生活が向上したという神話を永続させている。アメリカの大手マスコミが、こうした政府のメッセージを強化している。

新政権は、アメリカは何故イラクを侵略したのか、そして今アメリカはイラクで何をしているのかについて、アメリカ国民に真実を語ってくれくだろうと、私は強く期待していた。オバマ大統領は、過去に目を向けるのではなく、前進すると約束した。とはいえ、過去の検証をこうして否定することは、特に歴史学者にとっては問題であり、大統領は少なくとも、イラクの現状をアメリカ国民に知らせるべきだろう。それなくして、アメリカ政府が適切な政策を策定してくれると、我々がどうして期待ができよう?

イラクに関するより本格的な議会聴聞会があれば、侵略前に宣伝されていたイラクに関する神話や、アメリカ侵略がイラクにもたらした損害と破壊の大きさを、我々が学ぶことが可能だっただろう。都市における貧困の激増や都市スラムの拡大について、我々は知ることができていたろう。イラクの現状に関するそうした事実は、アメリカの迅速な撤退の影響や、イラクにおける、アメリカの道義的責任がどうあるべきかについて、アメリカ国民がもっと良く理解する助けになっていただろう。

Adil E. Shamooは、Foreign Policy In Focusの上席アナリストで、University of Maryland School of Medicineの教授。倫理と公共政策について書いている。ashamoo@umaryland.eduで連絡がとれる。

記事原文のurl:www.fpif.org/articles/what_you_will_not_hear_about_iraq

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素人は、コップの中の嵐、代表選挙に大政治家が立候補するか、しないかという、大手(大本営広報)新聞の大見出し記事より、地方の「新聞」琉球新報の小さな記事の方が気になる。

飛行経路の説明誤り 辺野古・普天間代替施設案

宗主国の勝手な要求、黙って服従していると、いつまでも無限にむしりとられる。

とはいえ:

いつでも、黙って服従し、無限に献上する政党でないと与党になれない。

いつでも、黙って服従し、無限に献上する政治家でないと首相になれない。

属国の悲しさ。代表選挙の候補に関心がないのは、そのせいだと思っている。宗主国にとって、本質的に不都合な政治家、始めから、完全に排除される。万一、偶然、権力を掌握しても、宗主国が把握している不利な情報を暴露されて、失脚させられる。あの宗主国の属国の傀儡首相の行く末、判をおしたように共通なものに思える。

黙々むしりとられるか、理不尽に爆弾を雨あられと落とされるか、しか選択肢はない

のだろうか?

65年間選択肢はないのだと名門?血統家系や暗記優秀な方々決めつけておられる。

繰り返すが、皆様が大政治家に熱を上げておられる理由、本気で本当にわからない。

そこで、ギュスターブ・ル・ボン著『群衆心理』を思い出してしまう。

群衆心理操縦の恐ろしさを描いた、暑い夏に最高のスリラー。

群衆は正しい論理で説得されるわけではない。

群衆を動かすのは、ひたすら、断言・反覆・感染。

現代日本の描写。とうていフランスの古典とは思えない。

つまらなかったら、お代はお返ししたいくらいだ。

二国間にぴったりなことわざも、思い出した。

抱けばおんぶ

Give him an inch and he'll take a mile.が近いのだろうか?

しかし、もっとふさわしい、素晴らしいことわざがあるようだ。

おまえのものはおれのもの、おれのものはおれのもの

What's yours is mine, and what's mine is my own

これを世界に対して実行しているのが、宗主国。

それを「けなげに」支援しているのが、この属国。

下記の翻訳記事、この記事に関心をお持ちであれば、お読み頂きたいものの一つだ。

イラク: 高等教育における、大規模な不正行為と腐敗

2010年8月23日 (月)

パキスタン: 天災から社会的大惨事に

Snehal Shingavi

2010年8月17日

Socialist Project

パキスタンの広大な地域を壊滅させた洪水は天災かもしれないが、それに続く悪化しつつある人災は、パキスタンの腐敗した指導者達の怠慢と、アメリカによる“対テロ戦争”の影響の必然的な結果なのだ。

公式推計によれば、パキスタン史上最悪の洪水の一つによる結果として、2000万人以上が住むところを失い、1,600人が亡くなった。場所によっては、雨でインダス河の川幅が24kmにまで拡がったが、これは通常時の約25倍だ。

モンスーンの雨が、パキスタン北西部(カイバル・パクトゥンクワ州と呼ばれる)の山々を崩壊させて、洪水は始まった。水はシンド州とパンジャブ州の中を荒れ狂い、何十万の家と、約700ヘクタール以上の農地を破壊した。ナウシェラ、ムザファラバードやアボッタバードなど、いくつかの大都市も水浸しになった。洪水で破壊された地域からの脱出に成功した人々は、臨時避難所や超満員の政府庁舎に詰め込まれている。

洪水を逃れた人々は、食料、清潔な飲料水、下水設備や薬品がえられない状態にある。こうしたこと全てが危機を悪化させ、下痢や、コレラや他の病気が原因で、更に多数の人々が亡くなる可能性がある。


パキスタン地図B402bj

 

 

 

パキスタン地図と被災した地域

 

被災した地域

洪水が救援組織が必要とする多くのインフラを徹底的に破壊したため、洪水の被害を受けた多くの地域に援助物資を届けることも困難になっている。発電所は冠水し、ガス配管は破断し、穀物を貯蔵している地域もだめになってしまった。

特に愕然とさせられるのは、現在ホームレスとなってしまった人々の多くは、まさに昨年、スワット地域におけるタリバンと同盟者に対するパキスタン軍事作戦の際に、自宅から強制退去させられた人々であるという事実だ。スワットのすべての橋が破壊され、アメリカの無人機が地域を爆撃した後に再建された家の多くがまたもや破壊されてしまった。しかもパキスタンは、特に2005年の破壊的な地震の影響からまだ完全には回復していないのだ。

 

相互に関連している二つの要素が、洪水を悪化させた。第一に、パキスタンでは、極端な天候の数が、過去数年間、増加しており、これは多くの科学者達が、全球的気候変化の影響の結果だと考えている事実だ。この地域における通常の天候パターンの大きな変化の一部として、パキスタンの惨状を、中国での地滑りや、パングラデシュでの洪水に結びつけている評論家は多い。

第二に、パキスタン中に張り巡らされた巨大なダムと運河ネットワークは、国民の為ではなく、大地主や大資本家の権益のために建設されたのだ。つまり、インフラの修理と緊急救援は極端に偏っており、洪水予防ではなく、土地を所有するエリート層の権益を守るために計画されていたのだ。

モンスーンの雨は所詮毎年のことであり、1970年代以来パキスタンでは実に多くの大洪水が起きている。それなのに洪水の制御は不十分なままなのだ。

 


   
子供たちを非難させる男性

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パキスタン北西部カイバル・パクトゥンクワ州、ナウシェラでの大洪水後、腰までの深さの水の中、自分の子供を避難させる男性。REUTERS/Adrees Latif

 

 

運河ネットワーク

19世紀のイギリスによるインド占領以来、パンジャブ州とシンド州の支配者たちは、地域中に、運河ネットワークと、精巧なかんがい水路を建設することによって、乾燥した土地を、豊かな農業地帯に転換しようと務めてきた。パンジャブ州とシンド州では、洪水をひき起こしたのは雨ではなく、かんがい用ネットワーク中に、大洪水を制御する機構が存在していなかったという事実だ。

このシステムには堰(大ダム)はあるが、通常の水流を運河へとそらせるのが主な機能である低いダムも点在している。ところが、洪水の危機に備える代わりに、パキスタン政府は、このひどいインフラを支えるため、堤防を築いてきた。その結果、洪水の水は、こうした問題に対処する設備が不十分な地域へと流れ込んだ。

イスラマバードのカイデアザム大学教授ムシタク・ガーディはこう語っている。

 

“三年前、世界銀行がタウンサ堰改修プロジェクトを開始した際は、基本的に堰全体を改修、修理する予定でした。そして1億4000万ドルが割り当てられました。我々は彼等に、環境問題、特に堰の傾斜、位置、堆積の問題、そして堰の全体的環境がどのように変化するのかについて配慮するよう要求しました。流れが高くなってしまったため、今や全ての低地が一層洪水の危険にあるのです。

“この全てが無視されました。改修プロジェクトからわずか六ヶ月後、堰は水量に持ちこたえられなくなり、破損しました。ですから実際には、これほど巨大な破壊をひき起こしたのは、タウンサ堰の決壊なのです...

“自然の洪水だけでなく、作られた建造物が有害で、灌漑局による手当てがお粗末だったこと、そうしたものが、これほどの破壊をひき起こし、状況を悪化させたのです。”

更に悪いことに、資源の割り振りで、どこで、どの様に行動するかという判断を、むき出しの自己の利益が支配した。一例として、南部パンジャブのKot Mittinでは、政府が裕福な地域を守るために壁を建設した。しかしトンサ堰を守ろうとする試みの中で、貧しい近隣地域を水没させることとなった。その過程で約100,000人が家を失った。

自らの土地を救うため、運河の土手に切り込みをいれていたシンド州の地主達の行動は一層悪質だ。シンド州のグッドゥ堰を守る過程で、地主達はジャコババードの人々を水浸しにした。また、ユースフ・ラザー・ギーラーニー首相等の政治家達が、救援物資を、パキスタン国内でも最も必要としている地域から、自らの故郷へと振り向けたという報道もある。

国家的腐敗

これは、パキスタン国内において、一連の社会的、政治的結果をもたらすこととなろう。第一に、パキスタン国家が自国民に支援を提供する能力について、深刻な疑問が投げかけられているのだ。パキスタンが、経済的に破たんせずにいられる為に、莫大な国際社会の援助導入に依存しているという事実はともかく、パキスタンが受け取る国際的支援金の大半は軍の金庫へと流れ込んでいる。

アースィフ・アリー・ザルダーリー大統領を含むパキスタン政治家達が、何百万人ものパキスタン人が苦しむ中、数日間全く所在不明だったことで、泣きっ面に蜂となった。民衆が感じている高まる怒りの象徴として、パキスタン人民党所属の副大臣ヒナ・ラバニ・ヘールは、パンジャブ州の彼女の選挙区で洪水が始まってから一週間も不在にした後で、抗議デモ参加者から石を投げつけられた。

元首相ベナジール・ブットの姪ファティマ・ブットは、こう主張している。

“パキスタン上層部まるごとが、国民の金を使って、ヨーロッパとドバイを訪問したのです。ザルダーリーは訪問先の至るところで五つ星のホテルに宿泊していました。彼は専用リムジンで動き回っていたのです。彼と取り巻き用の警備員は個人的に雇われていました。

“パキスタンになんとしても必要なお金を使ったことは正当化などしようがありません。そしてもちろん、実際には、パキスタン財務省がこのとてつもなく無意味な訪問のために使った金額で、洪水被害者達が恩恵を受けられたはずなのに、洪水被害者支援金を得るために、大統領は海外に出かけねばならなかったと言うのは、ばかげた話です。”

ザルダーリーは、既に大半のパキスタン人によって、非常に腐敗しているとみなされている。彼の最近の失敗は、洪水被害者に送られた援助で、大半の面倒を見たパキスタン軍にとって有利に働く可能性が高い。

第二に、救援物資の大半は、開発プロジェクト用途のはずの資金から流用されるのだ。これはつまり、たとえ人々が今後数カ月間生き長らえたとしても(この期間は飢饉と暴動が目立ちそうな気配があるが)、彼等には実際には帰るべき生活が無いのだ。復興と再建は、はるかに遠い将来、実現するだろう。既にこれがパキスタン国家に対する大規模な怒りに発展する兆しもある。評論家の中には食糧暴動や大規模な抗議行動が起きる可能性が極めて高いと推測するむきもある。

第三に、災害が、パキスタン国内において、既に張りつめている民族間の状況を、一層悪化させるであろうことがある。過去数年間、カイバル・パクトゥンクワ州(旧北西辺境州)から強制退去させられた人々と、この避難民を、資源減少の原因で、好戦的イスラム教徒の増加に関連していると見なしている、シンド州とパンジャブ州の人々の間に、深刻な不和が生み出されている。

パキスタンにおける人災で、最悪なのは、国際援助が送られてくるのが極めて遅いという事実だ。現在までに、国際社会は、援助として、たった1億5000万ドルを提供したにすぎない。パキスタン当局者は、危機に対処するには何十億ドルも必要だろうと見積もっている。

アメリカ・マスコミのなかには、問題は“資金援助者疲労”あるいは“パキスタン疲労”だと示唆するものもある(なぜかパキスタン人の死が、他の自然災害によって起こされたものと比較して、重要度が低いと見なされていることを、ほのめかしている)。国際社会は、例えば、ハイチの地震救済には10億ドル、インドの津波救援援助金には130億ドル以上を提供した。

アメリカ帝国主義

だが本当の問題はずっと簡単なのだ。アメリカの支配者階級は、アフガニスタンにおけるアメリカの苦難はパキスタンのせいだとして、過去数年間ずっと非難し続けてきた。これは、アメリカとヨーロッパにおいて、既に蔓延しているイスラム嫌悪という醜悪な必然的結果をもたらしている。

例えば、ワシントンは、アフガニスタン国境沿いのタリバンとの戦いを支援するため、パキスタンに毎年10億ドルの供与を工面している。ところが人道的支援ということになると、アメリカはたった7000万ドルしかひねりだせなかった。

この微々たる金額の理由の一部としては、アメリカにとっては、人道的支援より、この地域におけるアメリカの地政学的狙いの方が重要だということがある。だがこれは、アフガニスタンで、アメリカがうまくゆかないのを、パキスタンのせいにしているアメリカ既成政治勢力内の保守派による政治圧力を反映したものでもある。

他の国々も、わずかな支援しか提供していない。例えば、パキスタンに対し、本格的な支援を提供するのに絶好の位置にある隣国インドは、人道的支援より政治的対立関係を重視しており、支援としてわずか500万ドルしか提供していない。インドの政治日和見主義者連中はパキスタンに対するあらゆる援助資金は“テロ集団”の手にわたると警告している。

益々多数のパキスタン人を殺害しつつあるアフガニスタン戦争と、経済をむしばんでいる腐敗した政治家たちの間で、パキスタン庶民は板挟みになっている。現在の洪水に対する、アメリカとパキスタンの対応は、両政府がパキスタン国民に本当の援助を提供しそこねている痛烈な敗北を如実に示している。

シェハル・シンガヴィは、カリフォルニア大学バークレー校准教授。彼はSocialistWorker.orgに寄稿しており、本記事は同組織により最初に公開された。

記事原文のurl:www.socialistproject.ca/bullet/402.php

2010年8月20日 (金)

イラク独立国家の破壊: 作戦ほぼ完了

エレーナ・プストヴォイトワ

2010年8月18日

Strategic Culture Foundation

イラクから撤退したアメリカ軍兵士が今後どこに行くのかについて疑問の余地はない。アフガニスタンが次の行き先であることは広く知られている。

その過程で、ワシントンは、平和に対する責任を、実証しようと務めてきた。アメリカ大統領は、イラクにおけるアメリカの任務は8月末までに“安全に”完了することが可能であると確信しており、アメリカは年末迄に撤退する予定だと、ロバート・ギブス・ホワイト・ハウス報道官は語っている。

アメリカは招待もされずにイラクに入り込んだのだが、国連の承認を求めたり、外国軍による占領が、事実上内戦をひき起こした、イラク国内に残される、イラク治安部隊と相談したりすることもせずに撤退を計画している。

イラク統合参謀本部のババカル・ゼバリ中将は、イラク軍が少なくとも今後十年はイラク国内を統制できる状況にないという事実について開けっぴろげで、アメリカ撤退は時期尚早だと語っている。7月、イラクでの死亡者数は、2008年以来、史上最高の人数だった。イラク人レジスタンスの活動の結果として、イラク国内で、100人以上が殺害された。

イラク戦争は、そう昔に始まったものではなく、2003年3月20日に開始されたイラク解放作戦の公式理由が、イラクは大量破壊兵器の備蓄を保有しているというCIAの嘘だったことは記憶に残っている。対イラクアメリカ攻撃の本当の目的は、埋蔵石油への支配権を得るためだったことは明白であり、大多数のヨーロッパの専門家達も認めている。

イラク占領に至る過程で、嘘こそが、ワシントンの主力兵器だった。

センター・フォー・アメリカン・レスポンシビリティーと、ファンド・フォー・インディペンデンス・イン・ジャーナリズムが行った研究は、2001年9月から2003年9月迄の間、アメリカ政権がイラクに関し、935件の真実ではない発言をしていることを示している。

嘘の数の多さでは、元アメリカ大統領ジョージ・ブッシュが断トツで合計260回、そのうち232回は大量破壊兵器の存在について、そして28回はイラクとアルカイダとのつながりについてだ。

元アメリカ国務長官コリン・パウエルは、イラクに関して254回も嘘をついた。2003年2月5日、国連安全保障理事会の会議で、彼はイラクで製造された炭疽菌の胞子が入ったとされるコンテナを示したが、まもなく、コンテナは捏造だったことが明らかになった。

国連安全保障理事会は、イラク侵略を祝福せず、アメリカは、国連憲章に違反してイラクに侵略した。攻撃は、世界中で厳しい批判を生み出した。

2003年、アメリカに反対する隊列には、フランス大統領ジャック・シラク、ドイツ首相ゲルハルト・シュレーダーや、ロシア大統領ウラジーミル・プーチン等も加わっていた。大規模な大衆反戦集会が、世界中、特にアメリカ国内で開催されたものの、石油の匂いと、世界の中でもアメリカにとって手が届かなかった地域に、傀儡政権を作りたいという願望が、ワシントンの政治家たちにとって、他のあらゆる問題よりも上回っていた。

現時点で、この投機的事業のコストは良く知られている。ペンタゴンは、イラク戦争のために月55億ドルを費やしており、2010年だけでも、アメリカの納税者に660億ドルという膨大な負担をかける予定だ。コスト・オブ・ワー報告によれば、イラク戦争に注ぎ込まれた一兆ドルは、21,000,000人の警官の一年分給与を支払ったり、19,000,000人の大学生、9年間分の授業料を払ったりするのに十分だという。それに加え、2010年8月9日の時点で、イラク国内で、4,417人のアメリカ軍兵士が死亡し、31,902人が負傷した....

イラクがこの戦争に対して支払ったコストはどれほどだろう?

イラク国民がこうむった死亡者数は不明のままであり、妥当な精度で、評価することすら不可能だ。存在している推計類には、何十万人もの違いがある。

オピニオン・リサーチ・ビジネスは、2007年8月までに、戦争で、733,158人から1,446,063人の間のイラク民間人の命が失われたと報じている。2008年1月、新たな証拠に基づいて、データは、946,000人から1,120,000人の間へと改訂された。

2008年末、マスコミが報じるデータのみを使用して、イラク・ボディー・カウントは、死亡者数を、89,612人から97,840人の間と推計した。イラク保健省は、2006中期以前で、104,000人から223,000人の間と推計している。上記数値に対し、アメリカ司令部は、2007年で終わる期間の戦闘中に死亡した19,000人超の人数を、控えめに加えている。

アメリカ国防長官や他の高官たちは、ラマダンのおかげで、8月31日迄に、イラクでの武力衝突が増加し、イラクにおける宗派対立が増加すると予測している。連立政権を形成するためのはずの政治党派間の闘争も、この問題に貢献しそうだ。イラク自身の治安部隊では状況を制御しきれまいということで、専門家たちは合意している。

オバマはアメリカ人にはイラクからの撤退を約束したが、イラク人には何も約束していない。8月31日以後、アメリカ軍は、イラク国内に6旅団を維持し、現在の144,000人ではなく、合計50,000人の兵士を駐留させる計画だ。安全保障支援や、イラク人警察官や兵士の訓練のような非戦闘任務には、それで十分なはずだといわれている。

総選挙後6ヶ月たっても連立政権が作れない中、イラクからの米軍撤退によって生じる真空状態にイラク人レジスタンスはつけこむまいと期待するのは無邪気に過ぎよう。

イラク内での武力紛争は増加しており、死亡者数は増加し、総員約400,000人のイラク軍と警察は、この状況に対し、さほど貢献できていないが、国民から彼等はアメリカの傀儡だと見なされているというのもその理由の一つだ。

イラクはいくつかの占領地帯に分割されている。 バグダッド、スンナ派トライアングル、北部諸州、西のアル・アンバル州(アメリカ支配下にある)、バグダッド南部のシーア派が住む地域(ポーランド、スペイン、イタリア、ウクライナと中米諸国からの兵士によって構成されている部隊の責任範囲にある地帯)、そしてバスラ周辺のイラク最南部(イギリスが責任を負う地帯) という具合で、事実上地帯同士の境界で、ばらばら状態にある。

イラク国内における、民間人対立という火を、そのまま燃え盛るにまかせたままに放置して、イラク国家を破壊することを狙った作戦が完了したとワシントンが結論するのはもっともなことではある。

記事原文のurl:http://en.fondsk.ru/article.php?id=3213

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代表的属国の二国、五万人という駐留兵士数だけは奇妙に似通っている。

「自衛隊が活動している地域が非戦闘地域だ」という属国首相の迷発言、属国マスコミは一切批判しなかった。

「イラクに残る軍隊が非戦闘部隊だ」という宗主国大統領の発言、宗主国マスコミも属国マスコミも決して批判しない。ひたすら垂れ流し。

「非戦闘部隊の軍隊」とは一体何を意味するのだろう?世の中に「戦闘しない軍隊」が存在するのだろうか。アメリカ語を話す人々にも素朴な疑問をもつ方々はいる。

What's the Difference Between Combat and Noncombat Troops?

要するに、大した違いはないだろう。

石油が支配できて、永久基地さえ維持できれば、後は野となれ山となれ。

これには身近に素晴らしい前例がある。

パスワード無しATMが無制限に利用できて、安価な永久基地が使える便利な国が。傀儡二大政党間の交代をしたので、相も変わらず従順な政権と従順な属国民。この国独自の神社やら宗教、異議など唱えず、宗主国にこそぬかずくもののようだ。

日本独立国家の破壊:作戦既に完了 というところか。宗主国笑いが止まらない。

捕虜収容所の壁新聞・放送であるマスコミによる、頓珍菅なニュースを見聞きしていると頭の中は熱中症状態。

民主党のコップの中の嵐、関心がもてない。まずいカレー・ライスと、まずいライス・カレーのどちらを選べといわれても、どちらも食べるわけにはゆくまい。

社民党では副委員長が辞表を提出。小選挙区制成立の論功褒賞で、議長が出たり、野首相が出たりした挙げ句、消滅した一連のできごとの再演。デジャブー

もはや下記記事にも驚かない。

知事選「第3の候補必要」 下地氏、普天間移設で

下地氏は同党としての対応方針は決まっていないとしつつ、仲井真、伊波両氏を念頭に「今、名前が挙がっている人になかなか期待が持てないのではないか」と指摘。

正気だろうか?本当に沖縄出身だろうか?基地反対派の足をひっぱる属国傀儡政党になかなか期待が持てないのは確実だ。

熱い中、普通の哺乳類は、ひたすら寝ころがっているのだそうだ。動き回っているのは人間だけ。それゆえ熱中症にもなるのだという話がテレビで流れた。動物園で寝ている猛獣や、鼻を巧みに使ってホースで水を浴びる象がうつった。たまにテレビもは良いことを言ってくれる。

テレビを見ず、新聞を読まず、ただ寝ころがるのが一番の熱中症予防かもしれない。

2010年8月18日 (水)

パキスタン洪水、 災害は悪化し、2000万人に影響

Vilani Peiris

2010年8月17日

最新の政府推計によれば、パキスタンの洪水災害は悪化しつつあり、2000万人、つまり国民の12パーセントが被害を受けている。日曜日のパキスタン訪問後、潘基文国連事務総長は、惨害はこれまで見たものの中で最悪だと表現した。“過去、世界中で私は多くの自然災害を目にしてきたが、これほどのものは無かった”と彼は語った。

“何千もの町や村が、ひたすら押し流されてしまった。道路、建物、橋、農作物、何百万の生活が失われてしまった。洪水に取り囲まれて、人々は小島に置き去りにされている。彼等は汚染した水を飲んでいる。彼等は泥と残骸の中で暮らしている。多くの人が家族や友人を失った。もっと多くの人々が、 子供たちや配偶者が、こうした条件では、生き残れないのではないかと恐れている”と潘事務総長は語った。

ところが、パキスタンに到着した国際支援の量は、痛ましいほど不十分だ。国連は緊急支援アピールの金額4億6000万ドルの、わずか約四分の一しか受け取れていない。イギリス副首相ニック・クレッグは、対応を“全く惨めなものだ”ときめつけたが、イギリス政府の限定された支援は擁護した。先週末の時点で、アメリカとイギリスは、それぞれ、2200万ドルと、2700万ドルの緊急支援を送り、他のG20諸国はかなり額も下がって、後に続く。オーストラリアは900万ドル; カナダは200万ドル; 中国は150万ドル、フランスは140万ドル、ドイツは240万ドル、イタリアは180万ドル、そして日本は23万ドル。

潘事務総長は記者団に語った。“この災害はまだ先が見えない。雨は降り続けており、数週間降り続くかもしれない。”政府の洪水予測部門は、週末、シンドゥ州内の二つのダムで、インダス河の水位は“異常に高い”と警告した。洪水の水がジャコババード、サッカル、ラルカナとハイデラバードの低地を水浸しにする可能性は高い。

ジャコババードの人口300,000人の内、四分の三は既に乾いた大地に逃げた。バロチスタンのジャファラバード近隣地域は、シム運河決壊後、既に水没している。パキスタンを本拠とするNews紙は報じている。“深さ1.5mの水が地域全体を覆い、子供や女性、老人を含む何十万人もの人々が家々の屋根上に取り残されている。”

洪水による推計死亡者数は、まだおよそ1,600人ではあるが、パキスタンの多くの地域には、まだ入れておらず、実際の数値は不明の可能性がある。国連は、病気と飢えによる相次ぐ死亡を警告している。

“350万人の子供が、漿液性下痢や赤痢など、水媒介性の致命的な病気に罹患する恐れがある”国連の広報担当者、マウリツィオ・ジュリアーノは、記者団にそう語っている。36,000件の下痢の症例が既に報告されており、600万人が危機に瀕していると彼は推測している。“清潔な飲料水を緊急に手配する必要があります。さもないと死亡の第二波が生じるでしょう”とジュリアーノは警告している。

医療労働者は既に、漿液性下痢と似た症状だが、非常に伝染しやすいコレラの発生に対する懸念を表明している。コレラは、適切に処置をしなければ、激しい脱水症状と死に至る可能性がある。コレラの症例は、既に、北部のスワット渓谷の主要都市ミンゴラで確認されている。致命的な伝染病の危険を最小化するため、援助活動家は、激しい漿液性下痢の症例は全て、コレラ並みの処置をしていると、ジュリアーノは語っている。

軍を含むパキスタンの救急隊は、洪水で孤立した地域に食料や他の必需品を供給するべく、既に限界まで活動している。配給はよくて大混乱状態で、食料はヘリコプターや飛行機から投下されており、必要としている人々全員に、供給が十分に届くことを保障する手段はない。パキスタンを本拠とするデイリー・ニューズ紙は、洪水に襲われた北部のカイバル・パクトゥンクワ州のコヒスタンで、昨日五人の子供が飢えで亡くなったと報じている。

洪水は農業に対し壊滅的な影響をもたらした。金曜日、記者団に対して語った世界銀行総裁ロバート・ゼーリックは、農作物の損害を10億ドルと推計している。国連食料機構は、約700,000ヘクタールの農作物、主として、米、飼料用トウモロコシ、綿花とサトウキビが損害を受けたと報じている。地域によっては、家畜の80パーセントが死亡した。パキスタン財務省によれば、食料が不足し、高価になるにつれ、洪水の損害は、パキスタンで予測されていた4.5パーセント成長率を半減させかねない。

政府支援と国際支援の不足が、既に洪水被災者の間で怒りをひき起こしている。何百人もの人々が、遅い救援物資の配布に抗議をするため、昨日、サッカル地域の主要幹線を石や生ゴミで封鎖した。抗議デモ参加者のカル・マンギアニは、マスコミがいた時に、政府職員がようやくやってきて、援助物資を手渡したとAP通信に語っている。“彼等は、まるで我々が犬であるかのように、食料の袋をほうりなげた”と彼は言った。

もう一人の抗議デモ参加者モハマッド・ライクはBBCにこう語っている。“洪水が起きてからというもの政府などないようだ。子供たちを失い、家畜を失い、我々はもうやってゆけない。ここまでたどりついたが、我々は何も貰えない。政府はどこにある? 我々はどうすればよいのだ? どこに行けばよいのだ?”

アースィフ・アリー・ザルダーリー大統領が今月初めに、ヨーロッパ訪問旅行をそのまま進めると決定したことに、何百万人もの人々の窮状に対するパキスタン政府の無関心さが要約されている。彼は、帰国後、8月12日に、洪水がおきた地域への最初の訪問を行った。抗議デモの発生を恐れて、彼のサッカル地域訪問は、国営のマスコミだけが報道を許可されるという、厳重な警備の下で実施された。

ワシントンに成り代わって、パキスタン政府が、アフガニスタンと国境を接する地域のイスラム教武装反抗勢力に対する代理戦争を行った結果、ザルダーリーは既に反対に直面していた。昨年四月から、スワット渓谷、南ワジリスタンや他の地域で、重装備の兵士が攻勢を開始して以来、何十万人もの人々が家を捨てて逃げることを余儀なくされている。国際通貨基金の命を受けて、政府が実施した緊縮政策も、広範な怒りをひき起こしている。

様々な専門家達が政府の今後に対する懸念を表明しはじめた。イギリスのチャタム・ハウスの専門家マリー・ラールはガーディアンにこう語った。“差し迫ったリスクは食糧暴動です。政府の攻勢の際に、住民が退去を強いられたスワットとカイバル・パクトゥンクワ州では、既に大変な恨みがつもっています。政府が崩壊した場合、様々な派閥、家族や民族集団が、相互に競い合って、社会不安となる脅威がある。”

マクラッチー新聞が引用したコメントの中で、フライデー・タイムズ紙の編集者ナジャム・セティはこう発言している。“権力者、つまり軍と官僚の権力集団は、[ザルダーリーのパキスタン人民党]PPPを含めた、あるいは同党を除いた、中央政権の樹立を検討している … このことが現在議論されているのは確実です。軍内部では、経済危機から脱出するには良い統治が必要なのに、現在、良い統治が存在していないと感じられている”

ネーション紙もこう報じている。“政府が危機に十分に対処しそこねていることが、積年の恨みに油を注ぐなか、ことによっては軍の介入によって、アースィフ・アリー・ザルダーリー大統領が打倒されかねないという脅威が増している。”

ザルダーリー政府に対する懸念が、アメリカが洪水災害に対応している背後にある主な要素であることは確かだ。7600万ドルの援助の約束に加え、先週金曜 2,000人の海兵隊員、ティルトローター機、輸送ヘリコプターと救援物資を載せた三隻の機動部隊がパキスタンに向かっているとペンタゴンは発表した。アメリカ軍兵士とヘリコプターは、微妙なスワット渓谷を含め、既に救助活動に関与している。

アメリカ軍のプレゼンスは、かつて抗議運動の発生を恐れる政府と軍が反対してきた、パキスタン国内での作戦拡大の先例となるだろう。圧倒的大多数のパキスタン人は、アメリカが率いるアフガニスタン占領と、パキスタン国内で代理戦争を拡大するというアメリカの要求に反対している。アメリカの救援活動が進む中でさえ、パキスタン領土内でのアメリカのミサイル攻撃がやわらぐきざしはない。日曜日、南ワジリスタンでの無人機攻撃で、13人が殺害された。

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2010/aug2010/paki-a17.shtml

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にわかに決まった陸軍ヘリコプター部隊派遣、純粋な民生支援と思い込むのはお人好しにすぎること、この記事から想像できる。おりしもホルムズ海峡では、「実に好都合な」謎のタンカー攻撃。

対テロ作戦を行う艦船への給油を名目に、海軍がイージス艦の運用演習をしたり、イラクで米軍輸送の兵站を担ったりしていた空軍と同様に、まさかスワット渓谷攻勢に関与したりはしないのだろう、と思いたい。宗主国のアフガニスタン、イラク攻撃のために、基地を供与し、思いやり予算を捧げているこの国、理不尽な攻撃をされる側からすれば、決して無害な第三者ではありえない。共犯者ではあるだろう。

宗主国命令による、人道を名目にしたこうした作戦、「事業仕分け」には決して登場しない。

朝日2010/8/18夕刊(webではなく、印刷物)には、「郵政改革めぐり米財務次官懸念」という記事がある。

訪米中の自見庄三郎金融・郵政改革担当相は17日、米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長、米財務省のブレイナード財務次官らと会談した。ブレイナード次官は、日本の郵政改革が外国企業を不利な立場におく可能性があるとして懸念を表明したという。

日米同盟という、宗主国・属国軍事同盟の下、金も人も無限にまきあげられる。米軍が、庶民の安寧を阻止する「抑止力」として機能していることだけは確実だ。

パキスタンの状況については、オバハンからの気まぐれブログを拝読している。最新記事では、直接被害にはあわない地域で生活されていても、ひしひしと影響が及びつつある状況が報告されている。

パキスタンの洪水、飢えが出始めている・・・8/17

パキスタン洪水、食品は品薄 8/15

パキスタン洪水、NWAは支援開始の方向へ・・・8/13

洪水被害は拡大 8/12

大洪水・・・  8/6

1929年来の豪雨とか 7/30

大雨 7/29

2010年8月16日 (月)

オンラインでしている全操作が!

Kevin Drum

2010年8月13日

"Mother Jones"

先週、ウオール・ストリート・ジャーナルが、"彼等が知っていること"と題する一連のぞっとする記事を掲載した。テーマは、デジタル世界での、個人的プライバシーというか、プライバシーの欠如だ。シリーズ最初の記事は、ウェブサイトが、どのように、ウェブ上で、人の行動を常時追跡(トラック)し、その過程で、ユーザーに関する実に驚くべき量の個人情報を収集しているかについて説明している。ジャーナル紙は、テスト用コンピューターを使って、50のサイトを調査し、これらのサイトは全体では、合計3,180のトラッキング・ファイルを、一サイト平均では、63のトラッキング・ファイルをインストールしたことを発見した。

この技術レベルが、益々立ち入ったものになりつつあることを、ジャーナル紙は発見した。個人がオンラインでタイプ入力した内容を記録し、そのテキストを、テキストの内容や、調子や、個人の社会的なつながりに関する手掛かりを分析する、データー収集企業に送れるトラッキング・ファイルもある。トラックされている個人が削除してしまったようなものまで、トラッキングする側で、再生できるトラッキング・ファイルさえある。

....ジャーナル紙が発見した、いくつかのトラッキング・ファイルは、余りに詳細であり、名前だけが匿名という状態にほぼ等しいものだ。これにより、データ収集企業は、最近購入したもの、好きなTV番組や映画に加え、年齢、性別、人種、郵便番号、収入、配偶者の有無や健康状態を含む個人プロフィールを構築することが可能になっている。

彼等が検証したサイトの全リストはここにある。最も押し付けがましいのは、dictionary.comと、msn.comで、それぞれ200以上のトラッキング・ファイルをインストールした。一番押し付けがましくないのは、craigslist.orgと、wikipedia.orgだった。

一体どうすべきなのだろう? 個人データの収集と利用に関しては、アメリカよりも、かなりましな規制があるヨーロッパには、オンライン・データをどれだけの期間保存すべきかに関しては、より厳しい規制がある。何といっても、現地の警察が、いつかそれを使いたくなる可能性もあるのだ。クリスチャン・サイエンス・モニター紙は、とうとう、これが反発をひき起こしていると報じている。

ヨーロッパ中で、プライベートなデータの蓄積に対する反感が高まっている。ヨーロッパ・ジャーナリスト連盟等の市民社会団体は、こうした行為を批判しており、ドイツでは、ザビーネ・ロイトホイザー=シュナレンベルガー法務大臣を含む約35,000人が、この件を巡って、自分たちの政府を訴えている。

  "現在、ヨーロッパでは、実際、問題なのです。これは、誰もが私生活に対する権利を持つとしているヨーロッパ人権条約違反です。この基本的権利は、デジタル生活にまで、拡張されるべきです" と、デジタル権利という政治要綱を掲げて選出された、何かと物議を醸している、スウェーデン海賊党の欧州議会議員クリスチャン・エングストロムは語っている。

この対立状態は、政府というものは、オンラインでの個人データ収集を制限することに、必ずしも熱心ではないことを意味している。それに加え、そうした行為を禁止したいという人々に対しては、技術的なむずかしさもあるのだ。議会が、2003年に、セールス電話禁止法を可決した際には、仕事はより容易だった。人は皆電話番号を持っているので、こうした電話番号をデータベースに入力し、勧誘業者に、こうした番号に電話をかけるなと言えばすんだのだ。だがデジタル世界には、電話番号に相当するものが存在しない。コンピューターのIDはIPアドレスだが、大半のIPアドレスは定期的に変化する。"トラックしてはいけないものの"データベースを作り、オンライン勧誘業者に対して、登録者全員には、トラッキング・ファイルを使わないように、と指示するための方法はない。

もう一つの方法として、ハーラン・ユーが最近書いているように、全く逆の方法を使うこともできる。ユーザーに登録するよう要求するのではなく、勧誘業者に登録することを要求し、業者のドメインがトラッキング・ファイルをインストールするのを防止するようブラウザ設定に任せる方法だ。残念ながら、これにも技術的な難点もあるので、ユーは、代わりに、ユーザーが見に行くあらゆるサイトに対して、トラックされたくないのだと、使っているブラウザから、通知させることを可能にするような新標準を提案している。

    ブラウザは、すべてのHTTP接続に対して、あるいはサード・パーティー・サイトへの接続に対して、あるいは、ユーザーが指定した一連のサイトへの接続に対して、x-notrackを有効にすることができる。トラックするなという信号を受信すると、そのサイトが、FTCの規制により、ユーザーの装置上に、何かずっと残るような識別子を設定したり、あるいは、ブラウザを特定し、やりとりをトラックする、他のあらゆるサイドチャネルの仕組みを利用したりできないようにするのだ。

これには、もちろん、オンライン・サイトに、x-notrackリクエストを有効と認めることを要求する法律が必要だろう。これは悪いニュースだ。良いニュースは、何が最終的な解決策になるにせよ、問題そのものが、連邦議会で、ようやく多少の注目を浴びる様になっていることだ。マーク・プライア上院議員(アーカンサス選出・民主党)が自分のオンライン・データを、消費者が更に管理できるようにすること....を目指す。まだ初期草稿段階なのだが、この法律の焦点は、消費者に対し、ウェブ上でトラックされるのを止めることが出来る能力を与えることにある" 法案を起草していると、先週Politicoが報じた。"この問題には引き続き注目いただきたい。

とりあえず、ジャーナル紙のプライバシーに関連する一連の記事はここにあり、記事はザッと目を通す価値が十分にある。そこには、ウェブ・トラッキング、携帯電話のモニターや、こうしたトラッキング・サービスが、どれだけ、あなた方のことを知っているのかや、グーグルやマイクロソフトのような大企業の役割に関する記事もあり、どのようにしてトラッキングを避けるかについての助言もある。トラッキングを完全に避けることはできないが、トラッキングを最小化するため、とれる対策はあるのだ。

記事原文のurl:motherjones.com/kevin-drum/2010/08/tracking-your-every-move

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ところで人気のiPhone、他の携帯電話以上に様々なデータが自動的に蓄積されるので、警察にも人気が高いというシカゴ・サン・タイムズ記事もある。

Cops love iPhone data trail

2010年8月13日 (金)

アフガニスタンにおける女性の権利

タリバン復活を恐れる人々は、すべからく共産主義者の復活を願うべきだろう

what's left

Stephen Gowans

2010-08-09

“アフガニスタン女性の不安定な権利が消え去りつつある”ことを巡る懸念が表明されている [1]アフガニスタン女性の権利がずっと強い時代もあったし、かつてアフガニスタンと同様の文化を持っていた、旧ソ連邦の中央アジア諸国に暮らしている女性の間では、権利はいまでも遥かにしっかりしている。アメリカのジャーナリスト連中が、起こりうるタリバンの政権復帰は、女性たちが手に入れたささやかな権利を危うくするものだといって、アメリカ軍撤退への懸念に注意を促している。しかし、因襲的なイスラム慣習の支配からアフガニスタン女性を解放しようとしたカーブルの進歩的な政府に対して戦う女性蔑視のムジャヒディンをワシントンが支援した際、女性の権利の喪失に関して、アメリカの体制派ジャーナリズムは、何の懸念も表明しなかったのだ。

以下は、ニューヨーク・タイムズの記者アリッサ・J・ルービンの文章だ。

   アフガニスタン女性の不安定な権利は消え去りつつある。女子の学校は閉鎖されつつある。働く女性は脅迫されている。女性の権利を唱導する人々は攻撃される。怯えた家族は、益々、娘たちを家に閉じ込めるようになっている。アフガニスタンと西欧の政府タリバンとの和解を探る中、待望していた平和は、タリバン政府が2001年に打倒されて以来、ようやく改善された女性の権利を犠牲にして実現するのではないかと女性たちは恐れている。[2]

ルービンの記事は、アメリカ合州国とNATO加盟国によるアフガニスタン占領継続への支持を獲得しようとして、アメリカの新聞や雑誌が繰り広げているプロパガンダ攻勢の一環だ。キャンペーンは、恐らく、7月29日号のタイム誌によって、最も露骨に大胆に描かれている。ニュース雑誌編集者の発言を引用すれば、

表紙は迫力に満ち、衝撃的で、心をかき乱すものだ。彼女を虐待していた義理の両親から逃げたかどで、鼻と両耳を切り取るべしという判決をタリバン司令官によって下された、内気な18歳のアフガニスタン人女性アリシャのポートレートだ。アイシャは写真のためにポーズをとり、世界中にここ数年間に、活躍できるようになったアフガニスタン女性に対して、タリバン復活がもたらす影響をみて欲しいのだと彼女は語っている。彼女の写真には、タリバンの敗北によって実現した自由を、アフガニスタン女性がいかに喜んで受け入れたか、彼女たちがどれほどタリバン復活を恐れているか、にまつわる、わが国のアリン・ベーカーによる迫力ある記事がつけられている。

もしもアメリカがアフガニスタンを去ったら何がおきるだろう?とタイム誌は問うている。アメリカが1980年代にムジャヒディンを支援していなければ、こういうことがおきていただろうか?と問うていたなら、このニュース雑誌編集者は、もっと優れた歴史感覚を示せていただろうに。因襲的なイスラム教の女性蔑視からの女性解放を目指した政府を転覆するために、何万人もの聖戦士を採用し、資金援助をして、ワシントンは、アフガニスタンにおけるイスラム復古主義を支援したのだ。

タリバン復活の見通しに関しては良い話は皆無だ。もしもイスラム教の過激派が権力に復帰すれば、女性の状況は実際に野蛮な水準に落ち込むだろう。だが、アメリカ外交政策立案者は、アフガニスタンの女性の状況に関して、わずかでも気にかけている、あるいは、アフガニスタン女性の権利を保障する一番確実な方法は、アメリカの軍隊をしっかり現地に駐留させておくことだというという発想は、この地域におけるアメリカ外交政策の歴史を無視しており、ービン自身が指摘している核心である、ワシントンがタリバンとの和解を探っていることも無するものだ。

ルービンが“和解”という言葉を使ったのは実に適切だ。ワシントンとタリバンとの協力関係は、パキスタンの諜報機関ISIや、サウジアラビアと協力して、CIA経由で、発生期の運動に、資金援助をし、助言をしていた1995年にまでさかのぼる。[3] ワシントンは当時、タリバンの、女性に対する野蛮な処遇に関し、何ら良心の呵責を感じてはおらず、下記に説明する理由から、恐らくは、現在も何ら良心の呵責を感じてはいるまい。ありとあらゆるタリバン職員がアメリカ政府に雇われていた1999年に至るまでずっと、国務省はスンナ派過激派と友好的関係を維持していたのだ。[4]

石油豊富なサウジアラビアが、アメリカ政府から受けている膨大な支援は、ワシントンの政策決定者にとって、原理主義イスラム教社会における女性の状況などより、はるかに重要な関心事があるという良い証拠だ。サウジ王国はワシントンにとって主要な戦略的同盟国で、アメリカの石油企業やアメリカの投資銀行にとってとてつもない収益源であり、それによって、サウジアラビアは、彼等のオイルダラーを再循環させていられるのだ。サウジアラビアの女性の待遇について、アメリカ合州国国内で語られることはほとんどないが、サウジアラビアの女性は、アフガニスタン女性に対して、タリバンが科しているのと同様に野蛮で未開の慣習に支配されている。しかし、イスラム原理主義者がパイプラインの交渉でユノカルに協力するのを拒否した際に初めて、当然受けるべき精査を受けたにすぎない慣習が、西欧世界が憤慨して、唾を吐きながら早口で言い合っている、タリバンが行っている女性に対する後進的な慣習が、毎年途轍もない石油収益を稼ぎだすアメリカ大企業幹部連中と協力しているおかげで、サウジアラビアでは堂々とまかり通っている。

中東におけるワシントンのパートナーの一国、サウジアラビアでの女性の扱いは以下の通りだ。女性は、投票も、車の運転も、男性の付き添い無しで家から外出することも認められておらず、外出する際には、男性を避け、身体の大半を覆わなくてはならない。結婚、離婚、旅行、進学、就職や、銀行口座を作りたい場合には、女性は男性親族の承認が必要なのだ。女性の居場所は、家庭内であり、女性の役割は、子供たちを育て、家庭の世話をすることなのだ。裁判所では、女性二人の証言は、男性一人の証言の重みに等しい。両性は厳しく隔離されており、大半の家や公共の建物には、男性と女性それぞれの入り口があり、公共の場には、それぞれ専用のエリアがある。マクドナルド、ピザハットや、スターバックスを含めたアメリカのレストランチェーンは、経営するレストランに、それぞれの性別に専用エリアを設けて、女性の抑圧に加担している。女子は、教師の質が劣っており、教科書も男子学校ほど頻繁には改訂されない女子だけの学校に通っている。父親は、自分の娘なら、何歳でも、嫁にやることが可能で、9歳という若さの少女が結婚している。10歳の少女が80歳の老人との結婚を強いられた例もある。個別で不平等な法律上の権利、学校、女性の移動制限といったサウジアラビアの慣習は、かつて南アフリカで行われていた一種のアパルトヘイトと何ら変わりはない。唯一の違いは、皮膚の色でなく、子宮を持っていることによって犠牲者と規定される点だけだ。[5]

サウジアラビアの女性は、投票も、車の運転も、男性の付き添い役なしに家から外出することも許されておらず、また外出する際には、男性を避け、体の大半を覆わなければならない。彼女たちが、結婚、離婚、旅行、進学、就職,あるいは、銀行口座を作りたいと思った場合、男性の親族による承認が必要なのだ。アメリカ軍のアラビア半島駐留も、こうした野蛮な慣習に終止符を打ったわけではないのだ。

 

因襲的なイスラムの反女性慣習の束縛から、女性を解放しようとしていたアフガニスタンの進歩的政権を弱体化する上で、アメリカが果たした役割こそが、海外の女性の権利に対する、ワシントンのこの上ない冷淡さに関する更なる証拠だ。1980年代、カーブルは“国際的な都市だった。芸術家やヒッピー達が首都に押し寄せていた。都市の大学では、女性が、農学、工学、経営学を学んでいた。アフガニスタン女性が政府の仕事に就いていた。” [5] 女性国会議員がおり、女性が自動車を運転し、男性の保護者に許可をえる必要なしに旅行し、デートをしていた。アフガニスタンがもはやこうした状況にないのは、アフガニスタン人民民主党が率いるカーブルの新政府と戦わせるため、イスラム教テロリストに資金を提供し、組織化することによって、“ロシア人をアフガニスタンの罠に引き入れ”、“ソビエト連邦に、ソ連版ベトナム戦争”をくれてやる、という、1979年夏、当時のアメリカ大統領ジミー・カーターと、彼の国家安全保障問題担当補佐官ズビグニュー・ブレジンスキーによってくだされた秘密の決定によるところが大きいのだ。[6]

PDPAの目標は、アフガニスタンを後進性から解放することだった。1970年代、成人のわずか12パーセントしか文字が読み書きできなかった。平均寿命は42歳で、幼児死亡率は世界最高だった。国民の半数が結核を患い、四分の一はマラリアを病んでいた。

国民の大半は、地主や裕福なムラーと呼ばれるイスラム法学者が支配する、地方で暮らしている。女性は強制結婚、婚資、児童婚、女性の隔離、男性への服従や、ベールといった因襲的なイスラム教の慣習の支配を受け、とりわけ野蛮な生活を強いられていた。[7]

アメリカ大統領ロナルド・レーガンは、ホワイト・ハウスで祝宴を開き、ムジャヒディン“自由の戦士”に敬意を表した。あらゆるタリバン職員がアメリカ政府に雇われていた時代である1999年に至るまでずっと、国務省はタリバンと友好的な関係を維持し続けていた。過去に女性に対する野蛮な家父長的支配を押しつけ、サウジアラビアでは現在も押しつけ続けている、熱狂的な信者連中と、ワシントンは同盟しているにもかかわらず、アメリカのマスコミは、アフガニスタン女性の解放はアメリカ合州国に任せることができるという矛盾した発想を宣伝している。

これとは著しい対照として、ボリシェビキは、ソ連邦の中央アジア共和国に暮らす、アフガニスタン人、タジク人、トルクメニスタン人やウズベク人同胞の生活水準を高め、因襲的イスラムの女性蔑視から、女性を解放した。女性の隔離、一夫多妻制、婚資、児童婚や強制結婚、 ベールをかぶること(ボルシェビキによって児童虐待と見なされた男児割礼と共に)は非合法化された。女性が管理職や専門職に採用され、家庭の外で働くことが奨励されていた。実際は義務づけられていた。これは、独立した収入がある場合に限って、女性は、男性の支配から解放されうるのだというフリードリッヒ・エンゲルスの考え方に沿ったものだった。[8]

1978年、PDPAが支持はしていたものの、次第に幻滅しつつあったモハメッド・ダウド政権が、人気ある一人のPDPA党員を殺害した。これが大規模デモをひき起こし、ダウドは、PDPA指導者を逮捕するという命令で対応しようとした。ところが命令が実行される前に、PDPAは、軍隊内部の支持者たちに、政府を打倒するよう命じたのだ。革命は成功し、PDPA党の強硬派指導者ヌール・ムハマッド・タラキが権力の座についた。サウル(四月)革命は、PDPA指導者を逮捕し、左翼を弾圧するというダウド政権の計画に対する自然発生的な対応であり、モスクワの黙認の下で、権力を掌握しようとしてまとめた計画の実現というわけではなかった。新政府は親ソ連派であり、アメリカが支援する地方のイスラム教超保守派を鎮圧しようという取り組みへの新政権の要求で、ソ連も間もなく、軍事的に介入はしたが、モスクワがこの権力奪取の背後にいたわけではなかった。[9]

新政府は即座に一連の改革を発表した。貧しい農民の借金は帳消しにされ、金貸しや地主による不当に高金利な融資慣習を根絶する取り組みとして、農民に対し低金利の融資を行うために、農業開発銀行が設立されることになっていた。土地所有は6ヘクタールまでに限定され、大規模な私有地は分割され、土地無しの農民に再配分された。[10]

アメリカ企業さえ儲かるのであれば、女性の抑圧に進んで結託するワシントンとは違い、ボリシェビキは、イスラム教の野蛮な因襲的慣習と彼等が考えるものの支配からソ連邦中央アジアの女性を解放した。女性の隔離、一夫多妻制、婚資、児童婚や強制結婚、ベールかぶることは違法とされ、男性からの独立を実現すべく、収入を稼ぐために、女性は家の外に出て働くことが期待されていた。

同時に、女性は因襲的なイスラム教の束縛から解放されるはずだった。婚資や、結婚適齢期の女性を、商取引で交換可能な家財同様に扱うことは、厳しく制限された。女性が結婚に同意できる年齢は、16歳に引き上げられた。また都市の学生が、男性と女性の両方に読み書きを教えるため地方に派遣された。[11]

特にPDPAへの支持が強力だったカーブルで、多少の進歩こそ実現されたものの、改革は、政府が余りにことを急ぎすぎた地方では、新政府が彼等を鎮圧する軍事力に欠けていた裕福な地主やムラーと呼ばれるイスラム法学者たちによる、断固とした反対をひき起こし、決して根付くことはなかった。[12] ワシントンは、イスラム諸国から、サウジアラビア生まれの大富豪オサマ・ビン・ラディンも含め何万人ものムジャヒディンを聖戦のために採用し、これが究極的には軍隊撤退というソ連の決断と、ソ連が立ち去った後も数年間踏みとどまったPDPA政府の最終的な崩壊に貢献した。PDPAの指導の下、アフガニスタンが現代へ向かう断固とした歩みを何歩か踏み出した後、アメリカ合州国、パキスタンとサウジアラビアに支援されたタリバンが、間もなく、アフガニスタンを再度しっかり中世に引き戻した。重要なのは、女性たちの状況を改良しようと活動したのは、ソ連邦中央アジアのボリシェビキと、マルクス-レーニン主義に鼓舞されたアフガニスタンのPDPAであり、女性に対する野蛮な家父長的支配を押しつけ、サウジアラビアで、現在も押しつけ続けている熱狂的な信者と、アメリカ合州国は同盟しているのだ。

サウジアラビアでの女性の隔離に共謀しているスターバックス、ピザハットやマクドナルドに劣らず、ワシントンにとっても収益は女性の権利より大切なのだ。共産主義者たちは、対照的に、農民を封建的な後進性から解放し、多くの女性に対する因襲的なイスラム教による支配を打ち破るという目標に鼓舞されていた。共産主義者たちは、人類の進歩と女性の権利の擁護者として活動していた。ワシントンは、帝国主義論理の虜として活動した。タリバンやサウジアラビアの女性蔑視からの女性解放は、ワシントンの仲介を通して実現することはありえまい。タリバンの復活と、その結果として、アフガニスタン女性が、ペンタゴンに支援された傀儡政権下で、かろうじてひねりだした僅かな進歩の喪失を心配する人々は、すべからく共産党員の復活を願うべきだろう。彼等には、女性の解放に仕えるという点で立派な実績があるが、ワシントンの実績、対照的に、決して確信をかき立ててくれるような代物ではない。

注:

1. アリッサ・J・ルービン“アフガニスタン女性は、ささやかな進歩を失うことを恐れている”、ニューヨーク・タイムズ 2010年7月30日記事。

2. ルービン

3. マイケル・パレンティ“アフガニスタン、もうひとつの秘話”(英語)、Michael Parenti Political Archives、2008年12月、2009年更新. http://www.michaelparenti.org/afghanistan%20story%20untold.html

4. パレンティ

5. “サウジアラビア女性の権利”(英語) Wikipedia、http://en.wikipedia.org/wiki/Women%27s_rights_in_Saudi_Arabia

サンフランシスコ・クロニクル、2001年11月17日。パレンティによる引用。

6. 1998年1月15-21日、パリ、ル・ヌーベル・オブゼルバトゥールのインタビュー、英訳、William Blum、http://www.globalresearch.ca/articles/BRZ110A.htmlで読める。

質問: 元CIA長官ロバート・ゲーツは、彼の回顧録["From the Shadows"]の中で、アメリカの諜報機関は、ソ連介入の6ヶ月前にアフガニスタンのムジャヒディン支援を開始したと語っています。この時期、あなたはカーター大統領の国家安全保障問題担当補佐官でした。したがって、あなたはこの件に関与しておられるわけですね。そう考えて宜しいですか?

ブレジンスキー: ええ。公式説明によれば、ムジャヒディンに対する、CIAの支援は1980年、つまり、1979年12月24日に、ソ連軍がアフガニスタンを侵略した後に始まったことになっている。しかし、今日まで秘かに守られてきたが、現実は全く逆なのだ。実際には、1979年7月3日に、カーター大統領は、カーブルの親ソ連政権に反対する連中に対する秘密援助の最初の命令に署名した。そしてまさにその日、この援助はソ連の軍事介入をひき起こすだろうと私は考えていると説明するメモを大統領に書いた。

質問: こうしたリスクにもかかわらず、あなたはこの秘密作戦の提唱者でした。しかし、恐らくはあなた自身ソ連がこの戦争を始めるのを期待しておられ、それを挑発すると期待しておられたのでしょう?

ブ: 全くその通りだというわけではない。我々がロシアに介入するように強要したわけではないが、連中がそうする可能性を意図的に高めたのだ。

質問: アフガニスタンにおけるアメリカ合州国による秘密の関与に対して戦うつもりだと主張して、ソ連が介入を正当化した際、人々はソ連を信じませんでした。ところが、これが真実だという根拠があったわけです。現在、あなたは何も後悔しておられませんか?

ブ: 何を後悔するのかね? あの秘密作戦は素晴らしい発想だった。ロシアをアフガニスタンという罠に引きずり込む効果があったのに後悔しろというのか? ソ連が公式に国境を越えた日、私はカーター大統領にメモを書いた。ソビエト社会主義共和国連邦に自前のベトナム戦争をくれてやる好機です、と。実際、およそ10年間、モスクワは、ソ連政府では支えきれない戦争を遂行する羽目になり、この戦争が、士気阻喪と、最終的にはソ連帝国の崩壊をひき起こした。

質問: イスラム原理主義を支持し、未来のテロリストに武器と助言を与えたことも後悔はされていませんか?

ブ: 世界史にとって何が一番重要だろう? タリバンか、ソ連帝国の崩壊か? いくばくかの熱狂したイスラム教徒連中か、中欧の解放と、冷戦の終焉か。

質問: いくばくかの熱狂したイスラム教徒連中ですって? イスラム原理主義義は、今日、世界にとっての脅威であると言われ、再三繰り返されているではありませんか。

ブ: ばかばかしい! 西欧は、イスラムに対してグローバルな政策を持っていると言われている。ばかげたことだ。グローバル・イスラム教などというものは存在しない。冷静に、デマゴギーや感情抜きに、イスラムをご覧なさい。イスラム教は、15億人の信者がいる世界における主要宗教だ。しかし、アラビア原理主義のサウジアラビア、穏健なモロッコ、軍国主義のパキスタン、親西欧派のエジプト、あるいは非宗教主義の中央アジアの間に、一体どのような共通点があるだろう? キリスト教諸国を結びつけているものと何ら違いはない。

7. Albert Szymanski、Class Struggle in Socialist Poland: With Comparisons to Yugoslavia(社会主義ポーランドにおける階級闘争: ユーゴスラビアとの比較)、Praeger、1984a.

8. Albert Szymanski、ソ連の人権、Zed Books、London、1984b.

9. Szymanski、1984a.

10. Szymanksi、1984a.

11. Szymanksi、1984a.

12. アーウィン・シルバー、アフガニスタン ? The Battle Line is Drawn、Line of March Publications、1980.

記事原文のurl:gowans.wordpress.com/2010/08/09/women%E2%80%99s-rights-in-afghanistan/

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上記、ヌーベル・オブゼルバトゥール中のインタビューを英訳しているウイリアム・ブルムの『アメリカの国家犯罪全書』(The Rogue State)益岡賢訳、作品社刊、418ページ、2000円。

暑さを我慢して読めば、恐ろしさで背筋が寒くなること請け合い。

同書47-48ページに、上記インタビューの一部(回答)が載っている。

78ページにある、注によれば、『非戦』(2001年、幻冬舎)に該当部分の全訳が収録されているという。また、このヌーベル・オブゼルバトゥールには、少なくとも二つの版があり、米国向けの版には、このインタビューは収録されていないという。

以下、毎回の余計な一言。

洪水被害救済を口実に、日本軍、アメリカの命令要請で、パキスタンにヘリコプターを派遣するという。「飛んで火にいる夏の虫」アフ・パク戦争の真っ只中に突入。

マスコミ、それにはほとんど触れず、もっぱらお気楽ハマコーやら、ホストクラブ入り浸り幼児放棄事件の報道。森のセガレも。

有名政治番組の司会をしておられた方が社内で「自殺」されたという。
普通の神経であれば、属国における政治討論の司会役、なかなかつとまるまい。何に、どこで、いつ文句をつけられるかわからない。(最近、番組への政治介入にあった、当事者の方が本を刊行された。『NHK、鉄の沈黙はだれのために  番組改変事件10年目の告白』 早速購入したが、悲しいかな、本の山に消えている。)
茶番討論の深夜番組の司会や、報道番組を装ったプロパガンダのキャスターなら、良心皆無で、ゴマスリに走ればいいのだから、誰にでもできよう。もっとも、そうした番組は、ここ数年、全く見たことがない。

民放テレビのバラエティーやら報道と称する番組、テレビをスリッパで殴りたくなる。
それをいうなら、毎夏の球児放映も、スポーツが苦手な視聴者には迷惑でしかない。

つらつら考えるに、どちらも省エネ推進番組なのだ。地デジのようにくどくど字幕がでたりしないが、言外に「馬鹿馬鹿しいのでテレビを消して節電しなさい」と語ってくれているのだ。

2010年8月11日 (水)

アフガニスタン戦争推進用の“人道主義”キャンペーン

2010年8月10日

アメリカのマスコミは、アメリカによる介入の残忍な特質を隠蔽するため、タリバンの残虐行為にまつわる一方的プロパガンダを用いて、増大しつつあるアフガニスタン戦争に対する大衆の反感を抑圧するための本格的な取り組みを開始した。タリバンである夫によって顔を切断された若い女性を載せたタイム誌の表紙から始まったマスコミ攻勢は、金曜日、北東部のバダフシャン州における、10人の医療援助活動家殺害に集中している。犠牲者10人のうち6人はアメリカ国民だった。

こうしたできごとはいずれも、確かに、人間の恐ろしい悲劇だ。しかし、この悲劇、完全な過半数の国民が今や敵意をもって戦争を見つめ、迅速なアメリカ軍の撤退を支持しているという状況の中、アメリカ人を脅して、アフガニスタン戦争の無限継続を受け入れさせようとする実に皮肉な形で利用されつつあるのだ。

“もし我々がアフガニスタンから去ったら何が起きるか”といえば、この残虐行為なのだと断言する見出しを添えて、夫のもとから去ろうとしたため、鼻と両耳を切り取られた若い女性の写真を表紙にし、タイム誌7月29日号は、公式キャンペーン開始記念号となった。政治的メッセージは明白だ。アメリカ軍の撤退を唱導する連中は、アフガニスタン女性を無用の殺生をされに追いやるようなものだ、というのだ。

編集長のリック・ステンゲルは、同誌が陰惨な写真を載せたことに憤慨する読者に対して以下の説明をして、こう書いている。“この写真は、今起きている現実についての、我々全員に影響をあたえ、巻き込んでいる戦争で、一体何が起こりうるだろうかについての、開かれた窓になると感じたのです。読者の皆様には、タリバンによる女性の扱われ方を無視するのではなく、直面していただきたいと考えます。アフガニスタンで、アメリカとその同盟諸国は何をすべきかについて、決断をされる際、読者には現実を知っておいて頂きたいと思うのです。”

だが別の質問をする方が正しかろう。タイムの編集者は一体何故、同誌の表紙にアメリカの空爆、ミサイル、大砲や迫撃砲で殺害された、誰か何千人もの無辜のアフガニスタン男性、女性や子供の写真を使わなかったのだろうか? 一輌のガソリン輸送車を爆発させたたった一度の空爆で、140人が焼かれて灰になったクンドゥスの場面を選ぶこともできたろう。あるいは若い新婦を含め、47人が爆弾やミサイルで木っ端みじんになった東部の州ナンガルハルでの結婚式。あるいはアメリカの攻撃ヘリコプターで、90人が機銃掃射された、ヘラート州の葬儀。あるいは、WikiLeaksによる最近の文書公開で詳述されている小規模な民間人殺害による何百人もの人々の誰でも。

帝国主義による、イラクとアフガニスタンにおける、こうした犠牲者の数は、アメリカのニュース雑誌を今後何十年間も飾るに十分だ。だがマスコミを支配している巨大企業、アメリカ人に、彼らの名においてなされている残虐行為について報じるのが仕事ではないのだ。彼らの任務は、金融界の特権階級や彼等を代表する議員によって決定される諸々の政策の利益になる方向に世論を操作することであり、彼等はその任務に熱心に取り組んでいるのだ。

タイム誌の表紙、別のレベルでは、また一つの嘘でもある。タリバン支配下での、女性に対するぞっとするような扱い(アメリカが支援しているカルザイ政権下でも、かなりの程度までそうだが)は、30年にもわたるアメリカによるアフガニスタン介入の産物そのものなのだ。少なくとも都会においては、女性達がかなり改善された権利、教育、社会的地位を享受していた、ソ連が支援する政権への反対を、カーターとレーガン政権は駆り集めようとしていた。イスラム世界の最右翼分子から徴用されたムジャヒディーンが、サウジアラビアによって財政支援され、CIAにテロ手法の訓練を受け、アフガニスタンに派遣されたのだ。彼らの中には、後のアルカイダ指導者オサマ・ビン・ラディンもいた。

当時、サウジの王家のようなアメリカに極めて親密なほんの一握りの同盟国を除いては、広範な支持を得ていなかったイスラム原理主義の一派を、アメリカ合州国政府は意図的に煽り、広めたのだ。ソ連撤退後、ムジャヒディーン軍閥達が内戦を開始すると、アメリカの支援を得て、パキスタン軍が、より信頼できる代替として、タリバンを助成した。かくて、タリバンはアルカイダのように、あたかも怪物フランケンシュタインのごとく、ソビエト社会主義連邦と戦う冷戦の中で育て上げられ、自分を創造した人々に敵対するようになったのだ。

バダフシャンでの医療活動家殺害事件は、いまやマスコミによる集中報道の焦点と化している。殺人犯達の党派を含め、虐殺にまつわる多くの基本的事実は不明なままだ。タリバンが犯行声明したとは言え、強盗が動機の盗賊が実際には関与していた様子もある。他の大半の非武装西欧援助活動家と武装反抗勢力部隊との出会いは、身の代金とプロパガンダ目的の拉致に終わっており、広く報道されているとはいえ、殺害で終わる場合はごく僅かしかない。

とはいえ、正確な状況が何であれ、こうした残虐行為は、外国人占領者に対して激しく敵意を抱くことで知られている部族社会に根ざす敵に対して、圧倒的な火力を装備した帝国主義国家がしかけた対反乱戦争に絶対に不可避な副産物だ。

アメリカ・マスコミ報道の大半は、当初はそれぞれの医療支援活動家たち、アフガニスタンにおける彼等の長期の活動や、彼等の家族や同僚に対する痛ましい衝撃に集中していたが、事件を戦争推進のために利用し始めた。あるニューヨークの大衆紙は、アメリカのアフガニスタン政策を、19世紀に企てられたアメリカ先住民絶滅に、故意に、あるいは無意識のうちに結びつける“野蛮人”という、巨大なたった一語の見出しのもとで、記事を報じている。

日曜日、ヒラリー・クリントン国務長官が、タリバンの“倒錯したイデオロギー”を暴露する“卑劣で理不尽な暴力行為”を非難し、今やほぼ9年目になろうとしている戦争で勝利を得るという政府の決意を再確認する声明を発表して、オバマ政権は事件から待望の政治的結論を引き出し始めた。

ウオール・ストリート・ジャーナルは、いかにもこの新聞らしく、この事件から最も露骨で反動的な結論を引きだした。“タリバン手法”という見出しの月曜日の論説では、殺害行為を“我々の敵の本性を教育する上で、特に注目に値する”と表現している。

“今回の殺害行為は、もしもアフガニスタン政府にあえて協力しようとした場合に、何千人ものアフガニスタン人が、日々直面する脅威をかいま見ることができる窓だ”ジャーナル紙は続ける。“暗殺と (耳や腕を切り落とす)損傷は、政府が諜報情報を集めたり、国民を味方に引き入れるべくサービス提供をしたりするのを困難にするように考えられた彼等の戦術なのだ。”

これは、大多数のアフガニスタン国民が、アメリカが主導するアフガニスタン占領や、カーブルの腐敗したワシントン傀儡政権に反対しているという周知の事実を無視している。更に、ペンタゴンが駆使しているハイテク兵器は、犠牲者の体にはるかに甚大な損傷を加えるが、アメリカの編集室で仕事をする高給取りの反動主義者達は決して落涙しない。

同紙はこう結論づける。“この戦争におけるアメリカの主な戦略的目的は、アルカイダの聖域を許さないという自衛なのだ。だが、我々の大義には、彼等が何千人もの無辜の人々の手足を不自由にしたり、殺害したりするのを可能にする権力をあたえてしまうことになる、イスラム教過激派の勝利を防ぐという道徳的要請も含まれている。”

これは、9/11テロ攻撃に対する報復としての戦争という、アフガニスタン侵略の元々の根拠である嘘を、アメリカのマスコミによって現在しきりに喧伝されている“道徳的”かつ“人道的”な理由づけとを結びつけたものだ。

何故タイム誌がこの表紙写真を掲載するのかという理由説明の中で、編集主幹ステンゲルは、“大いに喧伝されているWikiLeaksによる機密文書の公開は戦争にまつわる議論を既に徐々に増やしつつある”という事実に触れる吐露している。WikiLeaksに対する激しい敵意の主な理由は、この小さなインターネットを中心とする組織が、巨大企業が支配するマスコミ界が順守している自己検閲を打ち破っているためだ。

意思決定の役割を果たしている人々、主要な新聞や雑誌の編集者、主要テレビ・ネットワークの幹部、プロデューサや、ニュースキャスターは、アフガニスタン戦争の特質を十分承知している。WikiLeaksの情報など、彼等にとって決して驚くべき新事実ではない。アメリカの戦争の残虐さを、彼等が意図的に隠蔽することによって、帝国主義による犯罪を可能にする上で、彼等は重要な役割を果たしているのだ。

Patrick Martin

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2010/aug2010/pers-a10.shtml

文中で触れられているタイム誌7月29日号の表紙はこちら

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タリバンのテレビや新聞を容易に読める人はそういない。(そもそも、存在するのだろうか?Web等あったとしても、我々彼等の言葉を全く知らない。)

我々、アメリカのテレビや新聞を基にした日本語の報道しか読めない。

アメリカのテレビや新聞が報じない、WikiLeaksの情報、容易には読めない。

日本のテレビや新聞は、宗主国のそれと同様、あるいはそれ以上に、

宗主国アメリカの戦争の残虐さを、それ補助している属国の役割を、彼等が意図的に隠蔽することによって、帝国主義による犯罪を可能にする上で、日米宗主・属国同盟を推進する上で、彼等は重要な役割を果たしているのだ。

庶民がこれから何世代もひどい目にあうに決まっている基地問題や、郵政破壊や、比例議席削減問題や、WikiLeaks情報には一切触れず、庶民生活には実質的影響皆無の、行方不明高齢者、高校野球、アメリカ観光客事故だけを集中的に報道してくれる。

2010年8月 9日 (月)

ベネズエラにおけるアメリカの干渉拡大中

破られた約束

Eva Golinger

Postcards from the Revolution

2010年8月4日

オバマ大統領は、彼の政権は、ベネズエラの内政問題には介入しないと、チャベス大統領に約束したにもかかわらず、アメリカ政府が資金をだしている全米民主主義基金(NED)が、反チャベス組織に何百万ドルも注ぎ込んでいる。

外国による介入というものは軍事力を通してのみ行われるわけではない。政治的意図や、国民の“心”に対する影響力を推進するため“市民活動”組織やマスコミへの資金提供は、戦略的目標を実現するために、アメリカ政府によって広範に活用されている仕組みの一つだ。

ベネズエラにおいて、アメリカは、2002年4月に、対チャベス大統領クーデターを実行した組織を含め、反チャベス組織を8年以上にわたり支援してきた。それ以来、資金提供は大幅に増加している。全米民主主義基金によって行われているベネズエラ国内の政治団体に対する対外援助を評価する2010年5月の報告書は、年間4000万ドル以上が、主としてアメリカの諸機関から反チャベス組織に注ぎこまれていることを明らかにしている。

全米民主主義基金(NED)は、議会によって制定された法律によって、1982年11月6日に作られた。基金の使命は、反共産主義と反社会主義であり、ロナルド・レーガン大統領によって命じられた最初の任務は、サンディニスタ政府を権力から追い出すため、ニカラグア国内の反サンディニスタ組織を支援することだった。NEDは、7年後、権力を獲得した反サンディニスタ政治連合を生み出すため、10億ドル以上の資金提供をして目標を達成した。

現在、国務省の下で割り当てられているNEDの年間予算は、1億3200万ドルを超える。NEDは世界の70ヶ国以上で活動している。NEDの創始者の一人であるアレン・ウェインステインは、かつてワシントン・ポストに“今我々が行っていることは、25年前にはCIAによって秘密裏に行われていた…”ことを明らかにしたことがある。

ベネズエラ

ベネズエラは、NEDが、2009年中、反政府組織に対し、前年の倍以上、1,818,473ドルと、大量に資金提供した中南米の国家として突出している。

ベネズエラにおける資金援助の送り先を隠そうという腹黒い企みから、NEDは、年次報告の中で、資金提供を受け取っているほとんどのベネズエラ組織名を除いている。にもかかわらず、情報公開法のもとで入手したNEDの納税申告や内部メモ等の他の公式文書は、ベネズエラで、何百万ドルもの資金提供を受けている組織名を明らかにしている。

2008-2009年の間に、NEDによって、ベネズエラの組織に渡された260万ドル以上のうち、資金の大半はベネズエラ国内では比較的知られていない組織に流れている。CEDICE、Sumate、コンソルシオ・フスティシアや、CESAP等の、有名な団体のいくつかを除いては、200万ドル以上の資金提供を受けているの多くは、こうした何百万ドルもの資金を反チャベス集団に配布するための、単なる見せかけ、ルートであるように見える。

「平和と社会開発の為の指導者養成センター」等の無名な団体が、“地域の民主的なプロセスに参加するコミュニティー指導者の能力を強化する”ために、39,954ドル(2008年)から39,955ドル(2009年)の額を受け取っている。

ここ数年間、ベネズエラ国内では誰も知らない市民団体カペ・カペは、“現地コミュニティに権限を与え、人権、民主主義や、彼らを保護してくれる国際組織や仕組みに関する彼らの知識を強化する”ために、45,000ドル(2008年)から、56,875ドル(2009年)にわたる金額の助成金を受け取っている。外国による干渉のあかさらまな例として、“市民団体に対してなされた人権侵害を列挙する文書を作成し、そうした人権侵害を、国際的組織の前で非難する”ために、NED資金は使用されてきた。言い換えれば、アメリカは、ベネズエラ国内で、国際団体の前でベネズエラ政府を非難するベネズエラ人を支援するという取り組みに、資金を提供してきたのだ。

学生運動への資金提供

ベネズエラにおけるNED資金援助の大半は、“学生運動を組織し”青年の中に、アメリカの視点からものを見る、アメリカの価値観を持った“民主的な指導者を育て上げる”ために投入されてきた。これには“学生と青年の指導者の能力を強化し、コミュニティーの中で効果的に活動する能力を増進し、民主的な価値観を推進する”計画も含まれている。ウエジャス(2008年に49,950ドル、2009年に50,000ドル)とグミジャ・センター財団(63,000ドル)という二つのイエズス会団体は、この資金提供のためのルートだ。

他の団体、‘ミゲル・オテロ・シルバ文化財団(2008年に51,500ドル、2009年に60.900ドル)や無名の「司法提言協会」(2008年に30,300ドル)は、“地方の新聞、ラジオ局、携帯電話メールや、インターネット、ポスターやビラを通した、宣伝キャンペーンを行うべく”NED資金を使用している。

過去三年間、様々なアメリカやヨーロッパの機関からの資金提供によって、反政府学生/青年運動が生み出されてきた。USAID提供資金の32%以上が、例えば“若者や学生を、政治的メッセージやキャンペーンを広めるため、TwitterやFacebookなどの革新的なメディア技術を使えるように訓練する”のに使われている。

マスコミとジャーナリストへの資金提供

NEDは、ジャーナリストの訓練と、反ベネズエラ政府の政治的メッセージを考案するのを支援するため、ベネズエラのいくつかのマスコミ団体を資金援助している。そうしたものの二つの例が、報道・社会研究所(IPyS)と、エスパシオ・プブリコ(公共スペース)で、彼らはベネズエラにおける“マスコミの自由を育成するため”過去三年間で、NED、USAIDと、国務省から数百万ドルの資金提供を得ている。

こうした組織が実際に行っているのは、反チャベス・メッセージを、テレビや国際的マスコミで宣伝し、チャベス政権を否定的に描き出すべく、ベネズエラの事実や出来事を歪曲し、あやつる事なのだ。

最近ワシントン・ポストはアフガニスタンのマスコミとジャーナリストに対するUSAIDによる資金提供(ポスト、2010年8月3日火曜日)記事を掲載したが、これはアメリカの諸機関が、ベネズエラで行っていることのオウム返しだ。しかし、そうした資金提供は明白に違法であり、ジャーナリスト倫理違反だ。“独立”ジャーナリストやマスコミに対する外国政府の資金提供は、大規模な欺瞞、プロパガンダ行為であり、主権侵害だ。

アメリカによるベネズエラ国内の反政府組織やマスコミへの資金提供はベネズエラの法律に違反しているのみならず、内部抗争を煽り、ずっと昔に信頼を失っている政党にてこ入れしようという取り組みでもある。この種の破壊は、アメリカの計略を海外で推進する政治関係者の為の、事業と、主要な収入源となっている。

ひどい外交

火曜日、アメリカの駐ベネズエラ大使に指名されたラリー・パルマーのベネズエラ問題に関する発言がマスコミに漏れた。パルマーは、まだ上院によって承認されてはいないが、ベネズエラにおけるデモクラシーは“危機にひんしており”、ベネズエラの軍隊は“士気が低い”と主張し、チャベス政権に対する忠誠心に欠けることをほのめかして、外交のまずさを示した。

パルマーは更に、ベネズエラにおける“報道の自由”と“表現の自由”を“深く懸念”していると述べ、何人かの買収された実業家や裁判官の訴訟事件に触れ、それをパルマーは“政治的迫害”の象徴だと主張した。

パルマーは、今年9月の議会選挙に至るベネズエラの選挙制度への信頼性に疑念を呈し、“人権と基本的自由に対する脅威を、注意深く監視する”つもりだと語った。事実無根で、根拠のないコロンビアの主張である、ベネズエラ国内にある“テロリスト訓練キャンプ”は、ベネズエラが対応すべき“深刻で”本当の事実だと、彼は述べた。

パルマーは、ベネズエラ国内の“独裁的体制に反対する市民団体を支援するため、密接に協力”するつもりだと語り、アメリカが常に“市民団体”と読んでいる、反対勢力に対するアメリカの資金提供を継続する意図を示している。

こうした発言はベネズエラ内政問題への介入の明白な例であり、オバマには約束を守る抜く意図が皆無であることの自明の証しだ。

ここでパルマーの発言を読む。

記事原文のurl:www.chavezcode.com/2010/08/us-interference-in-venezuela-keeps.html

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今日の新聞、チャベス大統領、新駐ベネズエラ大使の着任を拒否という記事がある。

属国日本では、想像もできない快挙。米原万里の『発明マニア』文春文庫の119に、良い表現があった。

・・・日本の外交は下手である。別に外務省だけの責任ではない。そもそも実態はアメリカの属領に過ぎない国なのだから、外務省など、独立国のふりをするためのアクセサリーに過ぎないのだし。

ゴルバチョフの通訳もした彼女、通訳発注をしてくれるであろうお役所とは相当おつきあいがあったはずで、そういう人が言うのだから本当だろう。この本、通訳を引退し、癌を患っていた著者の白鳥の歌なのだろうか?これも一種の「国家機密の暴露」?WikiLeaksのアサンジュや米兵のマニングと違って、著者は、故人ゆえ、とがめることもできまい。

日本における政、官、財、学界幹部、アメリカ留学組は数知れない。なかには小田実のような例外もいるだろう。長島防衛政務官やら、小泉首相の息子を含め、大半は文中にある計画の通り、アメリカの視点からものを見る、アメリカの価値観を持った指導者になる。

日本では、まんまと導入した小選挙区エセ二大政党のもと、属国化投資の時期はとっくに終わり、パスワード不要ATM国家から、あらゆる屁理屈で、好きなだけ、金をまきあげる体制が完成している。あとは、比例区を潰して、少数政党をつぶせば100%完成。完成まで、もう間近だ。しかし日本本土で大成功を収めたこの属国化政策、なぜかベネズエラでは簡単には行かず、宗主国も苦労しているようだ。

ならず者が出てゆく移転先に、豪華な設備を作り、残る部隊には、昔から彼らが夢見ていた大永久基地を、新たに自前で建設してさしあげる夢のような属国。

日本そのものが彼らにとってディズニーランド。何があっても手放すはずがない。

しかし、属国化政策、ベネズエラのみならず、アフガニスタン、イラクも同様で、円滑に進まない。いくら搾取されても宗主国に憧れるマゾ属国、日本が例外だろう。

もっとも沖縄では属国化政策、さすがに円滑に進んでいない。当然のことだろう。

釜山観光をした際、忠烈祠に行ったことがある。壬辰倭乱(日本で言う〝文禄・慶長の役〟だろう)の時に亡くなった人々をまつる施設だ。おりしも、壬辰倭乱405年だかの式典準備中だった。巨大な横断幕にびっくりした。当然のことだろう。そんな時期でも、ハングルがなかなか読めず迷っている日本人に、駅の係員も町の人々も親切だった。

宗主国の牛肉よりも、東莱名物のチジミ、また食べたいと夢想している。

2010年8月 6日 (金)

アメリカの戦犯連中、WikiLeaksとマニング上等兵を脅迫

2010年8月5日

WikiLeaksとブラッドリー・マニング上等兵に対する弾圧と暴力の声高な呼びかけは、民主的な権利に対する重大な脅威だ。アメリカ既成政治勢力のあらゆる党派が、民主党も共和党も、リベラル派も保守派も、アフガニスタンとイラクにおけるアメリカ軍による残虐行為を暴露する人々に対して報復し、アメリカ帝国主義によるこの二つの侵略戦争を批判する人々全員を恫喝しようと狙っている。

最も大げさな言辞は極右によるものだ。ミシガン州選出の共和党下院議員マイク・ロジャーズは、下院諜報委員会の一員である元FBI職員だが、彼は、月曜日にある地方ラジオ局で もしもマニングが、軍の機密文書をWikiLeaksに漏洩した罪で有罪判決を受けるのであれば、死刑こそマニングにとってふさわしい罰だと思うと語った。

イラクの陸軍諜報部門に勤務していたマニング上等兵は、現在、バージニア州のクワンティコ海兵隊基地に監禁され、2007年にバグダッド郊外で、米軍武装ヘリコプターがイラク民間人を無差別に殺す場面の機密ビデオをWikiLeaksに提供した罪での裁判を待っている。ペンタゴン当局は、2004年から2010年の、何百人ものアフガニスタン民間人殺戮を記録している92,000件のアフガニスタンにおける作戦の機密戦闘報告漏洩の“容疑者”としてもマニングの名を挙げた。

8月2日、ラジオ局WHMIでの放送で、ロジャーズは断言した。“ここでは明白に死刑が検討されるべきだと申しあげたい。彼は明らかに敵を支援しており、アメリカ兵や、協力している人々の死を招く可能性。もしもこれが死刑に相当する罪でないのなら、一体何が死刑に相当する罪だろう。”

WikiLeaksによって公開されたファイルの中で、彼らの氏名が暴露されたなら、アメリカ軍を手助けしているアフガニスタン人密告者やスパイは、タリバンの報復対象になりかねないという、ペンタゴンのプロパガンダをオウム返ししているマスコミの主張にロジャーズは言及した。“この情報が公開されてしまったために、こうした人々が殺される可能性があるということを我々は確実に理解している”彼は更に続けた。“これは実に深刻だ。もしも政府が彼を反逆罪で告訴しないなら、彼らは彼を殺人の罪で告訴すべきだ。”

右翼の評論家連中は、アメリカ政府による、WikiLeaksに対する直接攻撃を呼びかけている。日曜日のフオックス・ニューズで、解説者で前副大統領の娘であるリズ・チェイニーは、(恐らくは)ペンタゴンのサイバー戦争能力を使って、このインターネット上の組織を閉鎖するよう、オバマ政権に要求した。

火曜日、ワシントン・ポストのコラムで、元ブッシュ・ホワイト・ハウス側近で、現在同紙に毎週寄稿している、マーク・A・ティーセンは、政府はWikiLeaksの共同創始者ジュリアン・アサンジュを拉致し、監禁すべきだと述べた。

“WikiLeaksは報道機関ではない。犯罪組織だ”とティーセンは断言している。“その存在理由は、機密の国家安全保障関連情報を入手し、それを、アメリカ合州国の敵を含む、出来るだけ広範囲に広めることにある”。“テロに対する物的支援”に関与した連中に対してCIAが行ったように“特例引き渡し”権限を活用するのに十分な先例があると、彼は主張している。

“アサンジュは、アメリカ合州国領土の外で動いているアメリカ国籍でない人物だ”彼は書いている。“これはつまり、政府には彼と対処するのに幅広い選択肢があるということだ。政府はアサンジュを処罰し、彼の犯罪的組織を廃業に追いやるためには、警察のみならず、諜報関係や軍の工作員も活用できる。”

ティーセンはこう主張する。 もしも、アイスランドや、ベルギーが彼の引き渡しを拒否したならば“アメリカ合州国は、こうした国家の承知、承認なしに、現地でアサンジュを逮捕できる。” 彼は主張している。現行のアメリカ法のもとで、“世界のどこにいようと、アサンジュや彼の共謀者を逮捕するのに許可など不要だ。”

Wikileaksを標的にした提案を携えて、リベラルな民主党議員が加わった。水曜日のニューヨーク・タイムズ記事によると、二人の民主党上院議員、ニューヨーク選出のチャールズ・シューマーと、カリフォルニア州選出のダイアン・ファインスタインは、現在、議会で審議されている記者が情報源を秘密にすることを認める法律“マスコミ・シールド”法案で、“法案による保護は、従来のニュース収集活動にのみ適用するものであり、秘密文書の大量流布用ルートとして機能するウェブ・サイトには適用しないことを明確にする”ような修正案を起草しているという。

法案は、もともとは、訴訟において、判事、検察官あるいは原告に情報源を開示することを拒否したため、記者が投獄された一連の事件を受けて起草されたものだ。WikiLeaksが、そうした記者が情報源を秘密にするのを認める法律を駆使するのを避けるため、シューマーとファインスタインは、内部告発サイトを、明確に除外したがっているのだ。

タイムズ紙は、この種の米憲法修正第1条で保障された表現の自由の権利保護を“アメリカ法に従い、編集権と、ニュースの判断という点で実績がある従来の報道機関”のために用意しておくという政策を支持する、業界団体であるアメリカ新聞協会の公益担当上級副理事長ポール・J・ボイルの言葉を引用している。言い換えれば、そのような安全装置は、アメリカ支配層エリートと資本主義国家に忠実な人々によって経営されている、大企業が支配するメディアのためだけに、とっておかれるというわけだ。

政府内部文書の漏洩が、過去そして現在のアメリカ政府幹部の戦争犯罪訴追を正当化する証拠になってしまうことが、WikiLeaksとマニング上等兵を標的にしている連中の、主な懸念なのだ。彼らは自分の保身だけをはかるため、残虐行為そのものでなしに、こうした残虐行為の暴露を、刑事罰の対象にしたいのだ。

マスコミや官界で使われている言語は、危険で恐ろしいものだ。9年間という不断の軍事侵略が、アメリカ合州国における民主的な権利に対する本格的攻撃と、一層あからさまな独裁的支配の準備の根拠となっているのは明らかだ。

9/11テロ攻撃と、“大量破壊兵器”の危険とされるものに関する計画的な嘘を基にして始められた二つの戦争は、言葉のあらゆる意味において、犯罪的だ。石油の豊富なペルシャ湾と中央アジアにおいて、アメリカ帝国主義の権益を促進させるために、数百万人が殺害され、障害者にされ、家を追われ、五千人以上のアメリカ人が亡くなった。

ニュルンベルク裁判における、ナチス告訴の核心であった、侵略戦争を始めたことから、イラクとアフガニスタン両国での、反対する人々の計画的暗殺に至るまでのあらゆる戦争犯罪のかどで、ブッシュとオバマ政権の幹部は明白に有罪だ。WikiLeaksによって立証された、アフガニスタンにおける米軍タスク・フォース373の活動という計画的暗殺行為は、ベトナム戦争でも主な戦慄的事件の一つ、ベトナム民族解放戦線支持者とされる20,000人を殺害した、CIAのフェニックス作戦の本格的再演にほかならない。

フェニックス作戦が、ペンタゴン・ペーパーの公開を含め、アメリカのメディアによって暴露されて以後、政府が主催する暗殺は、政治的に信用を失い、公的に違法とされた。“対テロ戦争”の開始までは。今やそうした手法は事実上合法化され、マスコミの擁護者連中の支援を受けて、二大政党の政治家達が、爆弾、ミサイル、あるいは直接的な至近距離での暴力を用いて、反対する人々を“抹殺する”権利を豪語するにいたっている。

卑劣で腰抜けのマスコミが実行するのを拒否していることを、つまり、アメリカ帝国主義の犯罪にまつわる真実を語ることを、彼らが行ったがゆえに、WikiLeaksとマニング上等兵が標的にされているのだ。アメリカ合州国と世界中の労働者は、WikiLeaksに対するあらゆる脅迫と告訴の撤回、内部告発者に対する政府によるいやがらせを止めさせること、ブラッドリー・マニング上等兵の即時釈放、を要求するべきだ。

Patrick Martin

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2010/aug2010/pers-a05.shtml

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マスコミは、広島での平和記念式典への国連事務総長やら、宗主国大使様参加を報じる。

宗主国の帝国主義戦争のために、「あやまちをくりかえし」思いやり予算をつけて基地をお使いいただき、理不尽で残虐なアフガニスタン侵略・支配用の警察費用?を献上し、凍結したイラク資金を宗主国の「イラク開発資金」なるものに渡したら使途不明になってしまったことは、ほとんど報じない。

属国民にとって、一番大事な話題は、関取の野球賭博であり、行方不明高齢者と異常な暑さだ。

素人にはとうていまねのできない、イラク侵略戦争の暗部を探る連載が某紙に載っている。一歩すすめて、安保・米軍基地廃棄を主張してくれたなら、チラシの包装紙という失礼な表現、すぐに撤回させていただく。

2010/8/15追記:

WikiLeaksについて、根本的疑問を呈する意見があり、それを翻訳しておられるブログがある。為清勝彦氏のBeyond 5 Senses。

題して 怪しい臭いがするウィキリークスのジュリアン・アサンジ

むしろ、こちらの意見の方が納得して読める。ならずもの帝国の情報攪乱工作、実に巧妙。

英文原題は下記の通り。

Hidden Intelligence Operation Behind the Wikileaks Release of "Secret" Documents?
The real story of Wikileaks has clearly not yet been told.

by F. William Engdahl

http://www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=20580 他に、原文あり。

2010年8月 4日 (水)

ソマリアへの更なる派兵計画をアメリカが支援

Ann Talbot

2010年8月2日

カンパラでのアフリカ連合サミットにおいて、アフリカ諸国の指導者は、イスラム教徒民兵のアル・シャバブと戦う暫定連邦政府を支援するため、ソマリアに更なる兵士を派兵す ることに同意した。

アフリカ担当国務次官補のジョニー・カーソンは、この決定を歓迎している。“更に多くの兵士を現地に派兵する必要があると確信している”と彼は語った。“我々ワシントンの人間は、既存のブルンジとウガンダ軍兵士を支援したのと同じように、現地の追加兵士を支援することを確約する。”

カーソンは、ワシントンは、アフリカ連合ソマリア・ミッションに、更なる技術的、財政的支援を行うだろうと語った。彼は、更にアフリカの三カ国がミッションへの参加に同意したと主張したが、国名をあげることは差し控えた。

追加の兵士は、ギニアとジブチから派兵されると言われている。アメリカはソマリアのイスラム教徒を懐柔するのに、キリスト教徒ではない兵士を派兵したがっている。

7月11日、ウガンダ首都カンパラでの二度の自爆攻撃後、更なる兵員を派兵するという決定が行われた。キャドンド・ラグビー・クラブと、カンパラ郊外カンバランガのエチオピア・レストランでの二回の自爆攻撃は、南アフリカでのワールド・カップ決勝戦を見ていた群衆を標的としていた。この攻撃は、これまでに85人の命を奪っている。

アル・シャバブは自爆攻撃の犯行声明を行ったが、攻撃は、ウガンダ軍のソマリア駐留にたいする反撃だという。アフリカ連合ソマリア・ミッション、AMISOMは、現在、ウガンダとブルンジ6,000人の兵士で構成されている。両国は更に兵員を増派することに同意しており、総計9,500人になる予定だ。

カーソンはAMISONに対する国際的支援を呼びかけた。これは“アメリカのプロジェクト”として見なすべきではないと彼は語り、カンパラでの自爆攻撃は、アル・シャバブが、ソマリア国外でもテロ攻撃を行えることを実証したと警告した。

自爆攻撃と悲劇的な人命の損失が、AMISOMを強化し、アメリカにとって破滅的で、ソマリアの民間人にとって一層残虐であることが分かっている介入に対する、国際的支援を誇大宣伝する理由となっている。今年早々、暫定連邦政府(TFG)とAMISOMがしかけた主要な攻勢は、首都モガディシュの民間人に対する激しい砲撃をともなっている。これは武器と訓練を提供しているアメリカとヨーロッパ同盟諸国によって資金援助を受けている。

“これはアメリカの攻勢ではない”当時カーソンはこう語った。“アメリカ軍はソマリア現地にはいない。以上終わり。”彼は補足した。“外部から関与には限界があり、この事業の為に現地購入するのに、膨大な金額が必要だろう。”

ところが、全ての攻勢はアメリカの無人偵察機によって支援されていたのだ。アメリカの特殊部隊が、ソマリアにおけるアルカイダのトップだといわれている、アル・シャバブ指導者サレフ・アリ・ナブハンを殺害した初期の作戦後、この無人機偵察が行われていた。彼の自動車は、ソマリア沿岸沖のアメリカ海軍艦船から発進したヘリコプターによって、吹き飛ばされたのだ。攻撃ヘリコプターは、死体を回収するため、一時的に着陸した。この要人殺害のテクニックは、オバマ政権下での、この地域におけるアメリカ作戦の顕著な特徴となっている。

ハイテク暗殺も、地上戦も、モガディシュ国内のTFG居留地を見つけ出すという目標には成功していない。アル・シャバブ勢力は今や国の大半を支配し、大統領官邸から300メートルの範囲に迫っている。大統領護衛官メンバーを含む数百人のTFG兵士が、武器を持って、アル・シャバブに亡命したと言われている。

AMISOM部隊は、官邸と、アメリカの兵器と弾薬が入ってくる港を守る以上のことはほとんど出来ずにいる。彼らは過去9ヶ月給料を貰っておらず、栄養失調の為に死亡したものもいると言われている。

TFGの崩壊を期待して、プントランドの半自治的地域の武装反抗勢力集団を率いるシェイク・モハメド・サイド・アトムは、最近アル・シャバブと同盟した。

AUサミット後、アメリカは次の増派を準備しているように見える。アメリカが、ソマリアの傀儡政権に押しつけようとして、再三失敗していることで批判を招いており、アメリカ戦略に関する世間の議論がより盛んになっている。必然的に、アフガニスタンとの比較がされつつあり、イエメンについての疑問が提起されている。

“西欧はアフガニスタンで対テロ戦争を戦っている。しかしテロリストは、どこか他のところにいる”とギデオン・ラックマンは、最近フィナンシャル・タイムズで語っている。彼は二つの選択肢をあげた。

“第一はアフガニスタン・モデルをソマリアに適用することだ。つまり現地に大規模介入して、テロと戦い、機能する国家の建設を支援することだ”と彼は語っている。“二つ目の選択肢は、ソマリア・モデルをアフガニスタンに適用することだ。これはつまり、外国の軍事介入は往々にして逆効果であり、人的損失は余りに大きく、国家建設は、機能しそうもなく、西欧は、戦場で打倒しようとするのではなく、テロリズムを封じ込めることに集中すべきであることを受け入れることだ。”

ラックマンの記事は、フォーリン・アフェアーズ誌を発行しているアメリカのシンクタンク、外交問題評議会(CFR)の最近の報告書と、エコノミスト誌が主催した、ロンドンのチャタム・ハウスで行われた討論を反映している。CFRのソマリア特別報告書: 新たな手法の著者ブランウイン・ブルートンは、彼女がソマリアからの“建設的撤退”と呼ぶものを主張している。

“外国はソマリアに介入すべきではないのです”とチャタム・ハウスの聴衆に向かってブルートンは語った。“国際的な取り組みは、過激派を活性化させ、ソマリアの苦難を長引かせるためです。”

“アフガニスタン同様、状況を良くするための安価な方法はありません。実行可能な対反乱作戦には、何十年もの取り組み、何十億ドル、何百人、あるいは、何千人の人命が必要です。”彼女はこう付け加えた。“武器輸出と外交的な身振りでTFGを支援するという、さほど包括的でない取り組みは、測り知れない損害をもたらし、弱体な政府と、ライバルの過激派間の危険なこう着状態に油を注ぎ、何十万人もの人々を住まいから追い出し、ソマリアを紛争でひき起こされた飢餓の寸前にまで追いやりました。”

彼女は、アル・シャバブの手中に落ちる可能性があるという理由で中止されている人道的支援の出荷を、アメリカは再開すべきだと主張している。しかし彼女はオバマ政権が要人暗殺を行うことは明確に支持している。

“アルカイダ工作員サレフ・アリ・ナブハンに対する、2009年9月の攻撃は、完璧なモデルです。辺鄙な地方で、民間人死傷者なしで、実行されたので、抗議行動の気配すらもおこしませんでした。ソマリアから、国内の紛争につけこもうとする外国の寄生虫を追い出すための賢明な国際的支援に対しては、無辜の人々が面倒なことに巻き込まれない限り、現地住民は反対しないという、断固とした手がかりです。”

この“賢明な国際的支援”というのは、パキスタンの部族地域で実践され、何百人もの民間人の死をもたらしているものと同じ戦術だ。この戦術は、実際には、アメリカ軍の威力を見せつけて、一般市民をおじけづかせるよう仕組まれたテロ戦術なのだ。

CFRの新たな手法には、人道的であったり、上品であったりするものは皆無だ。ニューヨーク・タイムズ特派員のジェフリー・ゲトルマンは、ブルートンの意見が、ある派から別の派へと続く、長期化した内戦をもたらすことを明らかにしている。

“多くの専門家が、長期的には、全ての平和維持軍兵士を撤退させ、暫定政府を倒壊させ、シャバブに国を支配させ、そして部族民兵やビジネスマンが立ち上がり、シャバブを打倒するのにまかせるほうが良いだろうと主張している”と彼は書いている。“最終的な結果は、より自然発生的で、それゆえ、その存続を外部勢力に依存している政府よりも、ずっと永続的な政府ができるだろうと、専門家は主張している。”

一般市民は、結果として起きる権力闘争の影響を負担させられることとなる。アメリカのマスコミが、ほぼ9,890,000人もの人々の未来を、こうした酷薄な言葉で論じることができるという事実が、マスコミの完璧な道徳の破綻を示している。議論は、第二次世界大戦以来、比類のないグローバル侵略戦争を受けた後、アメリカの支配層エリートの間に広がった態度を反映している。

“これより被害の少ない戦略は考えられない”とブルートンはタイムズに語っている。

ソマリアにおける状況が悪化するにつれ、政界エリート内部では、最善の方法に関し意見の相違がおきている。アメリカ国務長官ヒラリー・クリントンは、ソマリアから発するアメリカに対するテロの危険を警告する13人の民主党下院議員の書状を最近受け取った。

文書は述べている。“ソマリアで、アル・シャバブが支配する領土は世界中のテロリストにとっての安全な隠れ場となりつつある。アメリカ合州国は座視していてはならない....ソマリアにいる過激派は、既に我々に危害を加える意図を明らかにしており、もしも彼らが既に危害を加えていないのであれば、彼らは間もなく、アメリカ合州国で攻撃を実行する能力を得ようと努めるだろう。”

文書は、アル・シャバブを鎮圧するため、アフリカ軍に対する“大規模な財政、物資および兵站支援”を要求している。

一層感情的なのが、アメリカン・エンタープライズ研究所客員研究員のマーク・A・テイッセンだ。ワシントン・ポストに書いた論説記事で、“国境を越えた新たなテロリスト・ネットワークが、東アフリカで姿を現わしはじめている。この組織は、アメリカ合州国をもその視野に入れている可能性がある。”と彼は警告している。

アル・シャバブの為に戦おうとソマリア旅行を試みたノース・バージニアの男、ザカリー・アダム・Chesser起訴を指摘して、テイッセンは、約20人の若いソマリア系アメリカ人が、アル・シャバブに加わるべく、ミネソタを立ったと主張している。

“アルカイダの新たな東アフリカ支部が、アメリカ人を採用しようとしているという事実は、不吉な徴候だ。要するに、アフリカの中でだけ作戦を遂行するつもりであれば、アメリカ・パスポートを持った戦士など必要ないのだ。”

サレフ・アリ・ナブハンを、捕獲し、尋問するのではなく、殺害してしまった際、将来起きかねないアメリカ本土攻撃に関する機密情報を収集する機会を逸したとして、彼はオバマ政権を非難している。テイッセンによると、軍幹部はナブハンを生きたまま捕獲したいと考えていたが、オバマが暗殺を選んだのだ。

ブルートンにとって、対テロ作戦として、完璧なモデルは、テイッセンにとっては、責められるべき失敗なのだ。不一致の口調には激しいものがある。だが、アメリカ支配層エリート内部にある二派の本質的な差異は、即座に敵対者を処刑するのが好ましいのか、それとも彼らを秘密監獄に移し、長期間にわたって拷問するのかということなのだ。いずれの手法も、国際法の規定など抜きして、進んで違法な方法を用いようという意欲に関する、アメリカ社会上層部の意見の一致を表している。

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2010/aug2010/soma-a02.shtml

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ソマリアではないが、最近、ホルムズ海峡を航行中の商船三井のタンカーに、好都合な?事件がおきた。普天間基地移転・撤去問題の期限近くにおきた、韓国哨戒艇の沈没も、実に好都合なタイミングだった。

商船三井タンカー爆発、米第5艦隊が周辺警戒

カイロ=田尾茂樹】ホルムズ海峡を航行中の商船三井のタンカーで起きた爆発を受け、中東一帯の海域を管轄する米海軍第5艦隊司令部(バーレーン)は28日、周辺海域の警戒を強化、アラブ首長国連邦のフジャイラ港に向かったタンカーが安全に航行できるよう監視を続けるという。

と、報じられたが

商船三井タンカーにへこみ、米「攻撃情報ない」

【ワシントン=本間圭一】クローリー米国務次官補(広報担当)は28日の記者会見で、原油タンカー「M・STAR」の右舷後部がホルムズ海峡を航行中に爆発したとされることについて、「現時点でタンカーが攻撃されたことを示す情報はない」と語った。次官補は、「事故以外(の要因)を示す情報はない」とも述べた。

日本海軍が建設中の、ジブチ基地も、明らかにこうした大戦略の一環だろう。

GNP規模だけは突出していても、所詮、属国。外交・軍事・財政、アフリカ小国と大差ないことしか実行できないのだろう。

大澤真幸 THINKING 4号特集 対談ゲストが辻井喬氏というので読んでみた。もちろん、テーマである1Q84を全く読んでいないので、断定はできないが、お二人の御意見、しごくもっともに思える。

104ページの辻井喬氏発言、小生に都合の良いところだけ、転記させていただこう

 いま日本が本当に独立国家であるのか、ぼくはしばしば疑問を感じます。日本が独立国家であるということ自体虚構ではないのか。たとえば徳之島のことを考えでも、基地が来ることには反対するのは当然だと思います。

繰り返しておこう。

行方不明高齢者の年金を話題にする暇があるなら、イラク開発基金の行方不明をこそ追求したらどうだろう。行方不明高齢者という話題も実に好都合な話題。宗主国による膨大な猫ばばという極めて不都合な話題のほうが問題だろう。電気、紙、人的資源の無駄。

アフガニスタン復興支援という名目でむしられる献上金、やがて同じ目にあうのだから。

2010年8月 1日 (日)

イラクの略奪:イラク開発基金の約7600億円が行方不明

Richard Becker

PSLweb.org - 2010-07-30

商業マスコミが作り出した“略奪”の一般的なイメージは、貧しい人々が、不法侵入された店舗から、TVや靴や他の商品を持ち去るというものだ。ニューオリンズが、2005年にハリケーン・カトリーナで洪水になった際、見捨てられて、まな板の鯉になった多数の自暴自棄の住民が、大半はアフリカ系アメリカ人なのだが、閉店した食料品店から、食料を横領したかどで、“略奪者”として非難され、逮捕された。

7月27日、アメリカのイラク復興特別監察官室が、2003年、アメリカ軍がイラクを征服し、イラク政府を解体した際に差し押さえたイラク基金の、驚嘆すべき、最低91億ドルの95パーセントが、ペンタゴンで使途不明となっているという報告書を発表した。合計87億ドル(約7600億円)が“イラク開発基金”から消滅したのだ。

2003年4月のイラク占領後、事実上の独裁者として、15ヶ月間イラクを支配した、連合暫定施政当局代表だったL. ポール・ブレマーが、イラク開発基金をたちあげていた。その資金は、アメリカ合州国や他の国々において凍結したイラク資産と、当時国有化されていたイラク油田の売り上に由来する。

ブレマー、ペンタゴンや、ハリバートン等のペンタゴン取り巻き企業は、大規模略奪に関与していたのだろうか? 商業マスコミによれば、そうではない。特別監査官報告は、何らかの罪が犯されたかどうかさえも述べていない。

“管理が機能停止し、資金が不適切な使用や、見つけられない損失にあってしまった”と想像を絶する規模の窃盗を、最大限に当たり障りのない用語で、監査は述べている。

資本主義者支配層は自分自身のものを守る方法を知っている

イラク開発基金に関する報告書は極めて巨大な氷山の一角に過ぎない。企業略奪者、政府と軍の主要目的は、イラクの莫大な油田だ。

イラクは石油埋蔵量の点では、世界で三番目の国だ。1920年から1958年まで、イギリス植民地であった間、イラクの石油は、100パーセント外国の所有だった。イギリス、オランダ、フランスとアメリカの石油会社が、それぞれ23.75パーセントを所有していた。今日のBP社、シェブロン社、トータル社、シェル社等々の企業が、イラクの豊富な資源で利益を上げる一方、イラク人の圧倒的多数が極端な貧困に苦しみ、80から90パーセントが文盲で、医者にかかる機会さえほとんど無かった。

イギリスの支配を終わらせた1958年の革命後、イラクの石油は国有化された。石油収入はイラクの近代化と、国民の大部分にとっての劇的な生活向上の基礎として機能した。

2003年のアメリカ-イギリス侵略と占領がイラクを植民地状態に引き戻した。主要かつ公然と語られていた占領軍の目的は、人的損失にかかわらず、イラクの石油の非国有化と、アメリカや他の多国籍企業による際限のない経済搾取に対し、イラクを開放することだった。そして、人的損失は極めて大きかった。

推定によれば、2003年以来、120万人のイラク人が殺害され、更に数百万人が負傷したり、難民になったりしている。イラクの大半の部分において、生活環境は、経済制裁の時期や、占領前の経済封鎖時より、今の方がひどい。莫大なエネルギー資源がある国が、慢性的な燃料不足で、多くの地域では停電が絶え間ないというのは実に辛辣な皮肉だ。

4,300人以上のアメリカ軍兵士が死に、何万人もの兵士が肉体的、あるいは心理的に重い傷で苦しんでいる。戦争経費は、7000億ドル、700,000,000,000ドルを超えており、数兆ドルに達しよう。

こうした死、破壊、資源の無駄の全てが、イラクの環境と経済を略奪している石油、金融や、他の大企業犯罪者の便益のために、イラクを確保しておくためのものなのだ。

記事原文のurl:www.pslweb.org/site/News2?page=NewsArticle&id=14294&news_iv_ctrl=1261

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ちなみに、2003年8月29日のasahi.comに以下の記事がある。

旧フセイン政権の凍結資産、イラク開発基金に移管

リンクが消えるといけないので、一部を引用させていただこう。

 イラクの旧フセイン政権が日本の金融機関に持つ凍結資産約116億円が、国連安保理決議に基づき設けられた「イラク開発基金」に移されることになった。財務省が29日発表した。旧フセイン政権が日本国内の金融機関に持つ凍結資産のほぼ全額で、残りも順次移される。移された資産はイラクの石油販売収入とともに同基金の原資となり、イラクの経済復興支援に充てられる、という。

これだけの金額、些細なミスによる消滅のはずなどなく、始めからの細工だろう。

おれおれ詐欺に注意しましょうと、慈悲深いお上は下々に助言してくださる。

おれおれ詐欺、2009年の被害総額は約96億円だったという。

ほぼ同じ金額の宗主国による振り込め詐欺にあったのだ。お上自身も、しっかり注意されたほうが良いかも知れない。国民と違い、相手は特定している。おれおれ詐欺、振り込め詐欺をしてくる国は、一つしかない。

とはいえ、在日アメリカ外務省支部、在日アメリカ財務省支部では、お仲間、いや本部を取り締まるのは、やや困難かも知れない。

米長官がグアム移転費の増額要求

これも、リンク先がなくなるといけないので、一部をさせていただこう。(現実に、Exciteも、yahooも、リンク先が消滅している。素晴らしき情報管制。)

少なくとも数百億円規模の上積みを想定しているとみられる。

昔、第一次湾岸戦争で、小沢一郎幹事長が、当初90億ドル(当時の日本円で約1兆2,000億円)もの「戦費」といわれるものを献上した。(合計では135億ドル)これとて、一体何につかわれたのか、本当のところは全くわからない。

イラクやアフガニスタンに対する献金も皆同じだろう。国家による振り込め詐欺は、いちら膨大でも犯罪にならない。

抑止力なる真っ赤な嘘で、日米ならずもの同盟(=不安定の弧・先制攻撃・侵略者同盟)、安保(侵略戦争)条約、米軍基地を正当化し、思いやり予算で天国のような基地設備を維持し、郵政私営化を推進し、国民の虎の子をまきあげる、実に有り難い宗主国。

岸首相設計による、現代満州国の国民、宗主国とその走狗のマスコミ・プロパガンダには勝てない。

追記:2010/8/3

「海鳴りの島から」の「戦争がもたらすもの」によれば、『自然と人間』2010年8月号志葉玲氏による記事「イラク戦争を担う沖縄米軍」に下記の記述があるそうだ。前から言われていたことではあるが。

ファールジャが直面した最大の危機、2004年4月と同年11月に行われた米軍による大規模攻撃での中心部隊は、沖縄のキャンプ・ハンセンに拠点を置く、第31海兵遠征部隊だったのだ。

米軍基地、確かに極めて有効な「抑止力」になっていることが、良く分かる。

もちろん傀儡政治家が言う意味でなく、民衆の独立、国家の独立にたいする「抑止力」。

相撲取りの野球賭博や、墜落ヘリコプター取材で亡くなった記者の謎や、ミイラになった長寿の方や、行方不明の長寿の方のお話よりも、国家規模の振り込め詐欺・消えた「イラク開発基金」のほうが、はるかに膨大、かつ、小生のような貧乏人の懐を直撃する重大な話題だろうと思うが、商業マスコミにとっては、そうではないらしい。全く追求なし。

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