アフガニスタン会議、無期限の占領を承認
Bill Van Auken
2010年7月22日
火曜日にカーブルで開催された国際外務大臣会議は、外国軍占領が永久に続くことに同意しながら、アフガニスタン軍が、アフガニスタンの治安に対する主な責任を担う目標時期として、ハミド・カルザイ大統領が提案した2014年を、公式に承認した。
アメリカのヒラリー・クリントン国務長官は、わずか5時間しか続かなかったこの会議を、“転換点”だと主張した。とはいえ、この会議で新たに提示されたものはほとんど皆無で、ほぼ9年間の占領と戦争の後、安定した傀儡政権をしつらえ、中央アジアにおけるアメリカの覇権を拡張するというアメリカが率いるプロジェクトは危機にはまりこんでいる、という雰囲気が深まるのを一掃するようなものとて無かった。
最大の実績は、会議を、そもそもカーブルで開けたこと、のように見える。2001年以来、アフガニスタンに関するそのような会議9回の中で、アフガニスタン国内で開催される始めてのものなのだ。
武装兵士が住民を街路から追い払い、戦闘ヘリコプターが上空でホバリングし、アフガニスタンの首都は非常事態になった。これだけの治安体制を敷いてさえ、カーブル国際空港がロケット弾攻撃を浴びた後、国連潘基文事務総長を乗せた飛行機はバグラムのアメリカ空軍基地へと行き先を変更せざるを得なかった。
会議はいつものアフガニスタン政府の汚職問題を蒸し返し、カルザイ大統領は、またもや、悪を排除すると約束した。集まった外相達は、年間国際支援として、少なくとも、130億ドルの半分を、アフガニスタン政府機関経由で、アフガニスタンに注ぎ込むという提案を支持した。今に至るまで、政府チャネル経由で流れるのは、そのような支援のわずか五分の一だけだ。
カルザイは演説を行い、私は“2014年迄に、わがアフガニスタン国家安全保障部隊が、わが国全土に対する全ての軍事および警察活動をになうことを決意した。”と宣言した。
これは、アフガニスタンの不正選挙後、昨年11月の就任時に、カルザイが最初に提案したもので、提案には何ら新味はない。この提案を、ワシントンとNATOが受け入れたということは、それでも極めて重要だ。バラク・オバマ大統領が、アメリカ軍の撤退開始として発表した2011年7月という期限が、アメリカ政権によって、実際上否定されたということのもう一つの再確認に過ぎない。
2014年というカルザイの提案よりも、はるかに重要なことは、それ以前に警備を引き渡す目標時期が全く欠如していたことだ。NATO加盟国閣僚がエストニアで4月に会合した際には、今年中に、いくつかのアフガニスタンの州が、アフガニスタン軍にその警備を引き渡すべく選ばれる予定だった。ところが、そうした計画は、カルザイの演説でも、会議の公式声明でも、全く触れられていない。
水曜日にワシントン・ポストが、報じているように: “... 戦況は悪化し、デビッド・H・ペトレイアス大将が最高司令官として着任した今、最初の州がアフガニスタン支配に移行するのは、少なくとも2011年の夏だろうと幹部達は予想している。この遅延を、懐疑的な国民に進展を見せたがっているヨーロッパ諸国の一部は懸念している。他の人々にとっては、単なる現実の厳しさに過ぎない。”
この“現実”とは、一方は、反体制勢力の成長と、大半のアフガニスタン地域への広まり、そしてもう一方は、外国軍による占領に対するレジスタンスを鎮圧するのに、アフガニスタン軍と警察が無能であることの現れの二つで構成されている。
各国の大臣がカーブルで会合している間、北部アフガニスタンにおける、残虐な出来事が、有能なアフガニスタン傀儡軍を訓練するという、アメリカが率いる取り組みが直面する問題を強調した。
北部のバルフ州にある射撃練習場で、あるアフガニスタン人軍曹が、アフガニスタン軍を訓練するために派遣されている、アメリカ軍の契約業者二人に銃を向け、その二人を殺害し、もう一人を負傷させた。軍曹は、他のアメリカ人傭兵が反撃した際、近くに立っていたもう一人のアフガニスタン兵士と一緒に射殺された。
あるアメリカ軍広報担当者は、射撃事件を“一つの悲劇的な孤立した事件”と表現したが、アメリカ軍兵士は“そうしたことが決して二度と起こらぬよう、用意周到な予防措置を”とっていると付け足した
“孤立した”事件から、わずか一週間後、別のアフガニスタン兵士が、イギリス人兵士を、自動小銃とロケット推進式擲弾発射筒で砲撃し、基地司令官を含め、三人を殺害した。アフガニスタン兵士は逃亡に成功し、以後、タリバンに匿われている。彼はマスコミにインタビューし、占領軍が“無辜の人々”を殺害しているので、イギリス人教官を攻撃したのだと語った。
こうした殺害事件や、同様のこれまでの攻撃ゆえに、2009年の85,000人の兵士から、2011年10月までに、アフガニスタン軍を134,000人に拡張しようという目標で、アフガニスタン治安部隊の急速な強化を実現する企みのため、アメリカと同盟諸国が採用している手法は、疑問視されている。アフガニスタン軍とアメリカ軍の間では緊張と不信感が増大しつつあり、武装反抗勢力は、武器を獲得し、それを占領軍兵士に対して使用する機会として、傀儡軍に入隊するのではないかという懸念もある。
今年、いずれかの州を、アフガニスタンの支配下に引き渡すという計画が放棄されたのは、アフガニスタン軍は、アフガニスタンのいかなる部分においても、この課題をになえる立場にないという在アフガニスタン新アメリカ司令官、ペトレイアス大将の評価に基づいて決定されたものだと言われている。
欧州連合とノルウェー外務省が資金を提供していて、人道的支援団体に対し、アフガニスタンの治安状況に関して助言する機関、アフガニスタンNGO安全事務所(ANSO)が今週発表した報告書が、アメリカ占領が直面する危機の深さを強調している。
ANSOの季刊報告書は、アメリカの対武装抵抗戦略を失敗だと焼き印を押し、その戦略をエスカレートしても、民間人死傷者数の増大のみならず、タリバンや他の武装抵抗集団に対する支持の増加を招来すると警告している。
報告書は“対武装抵抗[COIN]手法によって、敵側が弱体化している兆しはほとんどない”と始め、昨年以来、攻撃が51パーセント増加しており、6月だけでも、反抗勢力による記録的な1,319回の攻撃を指摘している。“民間人を保護しようという様子はほとんどなく、民間人死傷者数は23パーセント増加し、民間人政府職員の暗殺がはびこっている。”
ANSO報告書は更に付け加えている。“我々は'物事は、良くなる前に、一度悪くなるものだ' ということをこれが示しているというCOINの見解を支持するものではなく、ひたすら悪くなるばかりという、この5年間の事態の傾向と一致するものと考えている。”
報告書は、南部ヘルマンド州のマルジャー周辺におけるアメリカが率いる最近の攻勢をあげ、攻勢によって“国民の治安を保障したり、強制退去させられた人々に、安全な帰国を実現したり、or取り囲まれている政府に対する信頼性を確立したりすることが未だできていない。その結果、ヘルマンドは、今やアフガニスタンの中で最も危険な州となっている。”と指摘している。
報告書は更に警告している。“カンダハルでの作戦の遅れによる、AOG(武装反抗集団) の戦闘能力に対する影響は、ごく僅かか皆無であり、民間人に対する悲惨な結果がもたらされるのは確実だ。
予定されていた、アフガニスタン第二の都市、カンダハルに対する攻勢は、パシュート語話者の地域住民を標的にする攻撃の名称として、「協力」を意味するダリ語の単語を使って、オペレーション・ハムカリというあだ名で呼ばれている。これでは、ワシントンは、パシュトゥーン族の人々に戦争をしかけているという見方を強化するだけだろう。
ANSO報告は述べている。アメリカが率いる占領軍が“全兵力のおよそ30パーセントをハムカリにさくものであり、9年にわたる戦争の中で、単一の作戦としては最大のものとなり、多くの意味で、アメリカが率いるアフガニスタン介入の'参加者一同が登場する最後の見せ場'となる可能性が高い”。
この組織は“ハムカリは、カンダハルにおける武装反抗勢力支持を本格的に増大させる可能性が高く、それにより、最終的なタリバンが支配的立場につくことを可能にするだろうと考える。”と述べている。
最終的に、報告書は、反抗勢力に対抗させるため、現地の民兵に兵器を与えようというアメリカ軍の企みに対し、痛烈な評価をしている。この戦術は、アフガニスタン大統領カルザイが、そのような集団は彼の政府を侮辱するものと見なして、いやがっているのに、受け入れるようカルザイを威嚇したと言われている、ペトレイアス大将が強力に推進しているものだ。
ANSOは述べている。こうした民兵集団を助長することは“'武力の独占' という政府の主張を蝕み、治安を崩壊させ続けることになる。”報告書は更に言う。戦術は“1963年の南ベトナム'Self Defense Corps'(民間防衛隊?)を彷彿させるが”それと同様の失態をもたらしている。
ANSOはこう指摘している。民兵集団も“同じ悪徳に見舞われており、活発な連中は、大挙して虐殺され(カンダハル)、賢明な連中は、国民と政府の補給品を搾取するため、AOGと手を組み(クンドゥス/タハール)、大胆な連中は、まさにAOGそのものとなり(パルワン)、臆病な連中は、現状を維持している(ワルダク)。”報告書は更に言う。こうした集団のいくつかは“政府が彼らに兵器を提供しそこねた場合に、AOGに加わっているが、近隣の村々を恫喝して、AOGに保護を求めるよう追いやっている連中もいる。”
この厳しい見通しと、アメリカ人の間での、反戦意識の高まりにもかかわらず、クリントン国務長官は、戦争を無限に継続するというオバマ政権の決意をあらためて表明するのに、カーブル会議を利用した。流血を継続する正当化に、過去の死傷者を利用して、クリントンは述べた。“我々の長期的ビジョンを放棄するつもりなどない。余りに多数の国々が、余りに多くの損失を被っており、この国を後戻りさせるわけには行きません。”
オバマの2011年7月というアメリカ軍撤退開始の目標期日に言及して、クリントンは言った。“この日付は新段階の開始であり、我々の関与が終了する日ではありません。”
NATO事務局長、アナス・フォー・ラスムセンは、更に無遠慮に、アメリカが率いる占領を段階的に縮小するのに、最終期限というものは存在しないと主張した。“我々の任務は、アフガニスタンが自分で治安を維持できるようになった時、唯一その時に、終わる”と彼は語った。“我々の移行は、カレンダーではなく、必要な条件を根拠にしている。”
訪韓のため、アフガニスタンを発つ前に、クリントンは二つの国を比較し、アメリカ軍の恒久的アフガニスタン占領を直接的に示唆した。韓国を“アメリカ最強の同盟国の一つ”と呼び、ワシントンの“韓国に対する長期的な深い関与”に言及して、クリントンは言った。“色々なことがあったが、8年よりも遥かに長い年月、アメリカは、そうした国々の味方でありつづけてきた。”
朝鮮戦争以来ほぼ60年間、ワシントンは約28,000人の米軍兵士を韓国内に駐留させ続けている。
記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2010/jul2010/afgh-j22.shtml
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終戦以来65年、ワシントンは約53,000人の米軍兵士を日本に駐留させ続けている。
思いやり予算について「我々は(日本の)『貢献』とみており、『負担』とは思っていない。その貢献は、アジアの安全と安定を維持するため日米両国が築いたパートナーシップの一部分だ」と指摘。「『負担』と表現することは、(同盟)関係の重要性を過小評価するものだ」と不満を述べた。
何とも身勝手な宗主国。
戦争は平和だ。自由は隷属だ。みかじめ料は貢献だ。
人類猫化計画の記事にある通り、孫崎享氏の「日本の思いやり予算があるから米軍基地は縮小できない」という主張の方が、はるかに説得力があるだろう。
「新聞は、捕虜収容所の壁新聞だ」という岩上安身氏発言に、座布団10枚!
昔、ソ連の街角で「スターリンは馬鹿だ!」どなった男、機密漏洩罪で逮捕された。というロシア小話を思い出した。
「日本の地デジ・テレビは、捕虜収容所のテレビだ」と言えるだろうか?孫崎享氏発言、朝日ニュースターの番組におけるものだが。
さしあたり今のテレビ、高い金を支払って、地デジに変える理由がみあたらない。貧しい小生、更に馬鹿になるために、お金をかける余裕はない。
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