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2010年7月10日 (土)

CNN、聖職者に関する発言を理由に中東担当編集者を解雇

David Walsh

2010年7月9日

CNNが同社の中東担当上級編集者オクタビア・ナスルを解雇したことは、右翼的かつ、卑劣な行動だ。またもや、アメリカ・マスコミにおいては、アラブ人民族主義者の大義へのいかなる共感表現も、イスラエルに対する批判も、即時解雇と排斥に値する犯罪であることを実証するものだ。

ベイルートで生まれ、教育を受けたナスルは、1990年にCNNに入社する前、レバノンの放送局で仕事を始めていた。仕事として、彼女は2006年のイスラエル侵略とレバノン爆撃報道を担当していた。

彼女は、日曜日に亡くなったレバノン人聖職者に対する尊敬の念を示すツイッター・メッセージを公開した後、今週解雇された。彼女の発言はこうだった。“[大アヤトラ]サイード・ムハンマド・フセイン・ファドララ…逝去を知って悲しく思います。ヒズボラの偉人の一人で、私は非常に尊敬しています。”

ファドララは1935年イラクのレバノン人家庭に生まれ、イラクの現首相ヌリ・カマル・アル-マリキも所属するダーワ党たちあげに助力し、ヒズボラとは近年距離をおいてはいたものの、ヒズボラの精神的指導者でもあった。ファドララは“名誉殺人”に反対する人物として有名で、家庭内暴力に対し、自らを守る女性の権利を認めていた。ニューヨーク・タイムズによると、“日曜日、彼の逝去についての話が広まると、シーア派が暮らす南ベイルートの街路で、女性たちが公然と泣いていた。”

ファドララ自爆攻撃を擁護していたと、タイムズは書いている。“また、もしイスラエルとその同盟国が高度な兵器を使用するなら、イスラム教徒は報復にいかなる武器の使用も許されると主張して、非対称戦争用他戦術も擁護していた。”

イギリスでの2002年インタビューで、パレスチナ人について、デイリー・テレグラフに彼はこう語っていた。“彼等は、土地を奪われ、一家を殺害され、家を破壊され、イスラエルは本格的な戦争にのみ使うべきであるF16戦闘機等の兵器を使用しています。パレスチナ人には、殉死作戦以外に、こうした山々を押し返す方法がありません。”

1985年に、ベイルートでファドララ暗殺がたくらまれ、80人が亡くなったが、CIAがレバノン人工作員を通して行ったものだと広く受け止められている。2006年、イスラエルは彼の自宅を爆撃したが、当時彼は自宅にいなかった。

日曜日のナスルのファドララにまつわるツイッター発言が、極右と親イスラエル圧力団体を動かした。このCNN社員が“ヒズボラのチアリーダー”で“テロリストのシンパ”だと非難し、解雇を求める、彼女を狙った組織化されたキャンペーンが開始された。

ナスルは、火曜日にブログで自分の発言を補足し、当初の発言に対し遺憾の意を表明した。“ファドララの生涯の仕事を支持するかのようなものだったので。しかし、本当はそういうわけではないのです。”“尊敬”と“悲しむ”という言葉を使ったのは、“中東の女性である私にとって、ファドララは、女性の権利について、シーア派聖職者の中でも、主流派に反対する先進的な立場だったからです。彼は‘名誉殺人’という旧習を廃止するよう求めていました。彼は、そうした慣習は、原始的で、非生産的だと言っていました。彼はイスラム教徒の男性達に、女性虐待はイスラム教に反すると警告していました。… だからといって、他に彼がしたことや、言ったことを尊敬しているということにはなりません。全く違います。”と彼女は説明した。

これはCNN幹部には不十分で、幹部はすぐさま彼女を呼びつけ解雇した。あるCNN幹部の社内メモが起きたことを明らかにしている。“オクタビアと今朝話し合いましたが、彼女は退職すべきだという判断はあなたと同じです。御承知の通り、週末の彼女のつぶやきは広範な反発をひき起こしました。彼女がCNN.comの個人ブログで述べた通り、彼女は状況を考慮せずに、あのように安易な発言をすべきではなかったことを十分認めています。とはいえ現時点では、中東担当編集者としての彼女の立場への信頼性が、もはやこれ以上続けられない程そこなわれてしまったと我々は考えます。”

一体誰に対するナスルの信頼性だろう? イスラエルのネタニヤフ政権? アメリカ国務省?

二重基準は腹立たしいほどだ。イスラエルとその行為を熱狂的に擁護するのが、アメリカ・マスコミの初期設定となっている。2006年南部レバノン大規模爆撃であれ、最近のガザに向かっていた人道支援船団に参加していた活動家の冷血な殺人であれ、あらゆる残虐行為は“自衛行動”として肯定的に扱われるのだ。

偶然にも、CNNレポーターのウルフ・ブリッツァーも1990年以来CNNで働いている。しかし彼の党派性は決して問題にされたことがないとは言え、彼の運命はナスルのそれとはいささか異なっている。

ワシントンD.C.のジョン・ホプキンス大ポール・ニッツ高等国際研究大学院卒業後、ジャーナリズムに関する大学での経験も、それ以前の興味もなかったにもかかわらずブリッツァーは、テルアビブのロイターで働いた。彼は更に、あるエルサレム・ポスト編集者の“目にとまり”、同新聞のワシントン編集者として採用された。1990年まで彼はこの親ユダヤ主義新聞で働いていた。

それ以前、1970年代中期には、ブリッツァーは、悪名高い圧力団体アメリカ・イスラエル公共問題委員会で、この団体の月刊社内報ニア・イースト・リポート編集者として働いていた。

CNNの有名人ブリッツァーは、彼の番組“シチュエーションルーム(危機管理室)”イスラエル高官と、定期的にインタビューを行い、ベンヤミン・ネタニヤフ首相との 2009年9月22日のインタビューの様に、プロパガンダ工作や、アメリカの既成政治勢力に圧力をかける足場を提供している。

WSWSは、2006年7月、イスラエルによるレバノンのカナ村における多数の民間人虐殺の直後、CNNのブリッツァーの番組“遅版”は“イスラエルという国とその作戦の無料広告に過ぎないと書いた。レバノンにいる特派員と話しながら、ブリッツァーはカナに関する彼の立場を明確にした。民間人自身に責任があったのだと。‘イスラエルはチラシを投下して、そこに暮らしている人々全員に十分警告したと言っています” (英語原文“アメリカ・マスコミがカナ虐殺のアリバイ作り”参照)。

ところが彼は“信頼がおける”人物なのだ。ブリッツァーは、ガザで戦争犯罪を行ったネタニヤフ、あるいは破廉恥な人種差別主義者のイスラエル外務大臣アヴィグドール・リバーマンに対する“尊敬”を表明したことで首になるだろうか。

ナスル解雇は、アメリカ・マスコミ、とりわけCNNにおける絶え間ない右傾化の一部だ。このケーブル・ニュース放送局は、近年フォックス・ニュースによって、右翼性が出し抜かれないようにする努力が目立っていた。この二つの放送局は細かい二次的な特徴を除けば、多くの点でほとんど見分けがつかない。

CNNが極右に降伏した事件として以下もある。

  • 2005年2月、CNNは、副社長のイーソン・ジョーダンがイラクでアメリカ軍が意図的にジャーナリストを標的にしているとポロリと発言した後、彼を追い出した。ブッシュ政権を擁護する連中が右翼キャンペーンを仕組み、ジョーダンを辞任させるようにしたのだ。
  • 大物政治家や退役軍人団体の支援を得て、ペンタゴンは、1999年、1970年にラオスにおける作戦で、アメリカ軍がサリン・ガスを使用したことを暴露する“死の谷”の話を語った後、ベテランCNNレポーター、ピーター・アネットを首にさせるキャンペーンに成功した。番組のプロデューサー、ジャック・スミスとエープリル・オリバーも、CNNによって地位を追われた。

反ユダヤ主義発言の結果として、ベテラン・ホワイト・ハウス記者ヘレン・トーマスが追放されてから、一ヶ月もたたないうちに、オクタビア・ナスルが解雇された。アメリカ・マスコミの、社会的に退化し、意気地ない性格をうまく捕らえた言葉を見つけるのは容易なことではない。

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2010/jul2010/nasr-j09.shtml

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Newsweek Japanには下記がある。放送以外ならまともな意見がでることもあるようだ。

CNN「ならず者」称賛で記者クビの不毛

宗主国のテレビがそれほど厳格に管理されているのであれば、属国のテレビ、まして厳しい管理下にあるだろう。そうでなれば、属国日本テレビ報道のレベル、説明がつくまい。

こうした管理のもとで、個人的「良心や勇気」など出る幕はありえまい。

選挙、本当に、彼等の党(ハンドラーに褒められたのだから、もう本物の彼等の党)が多くの議席を得るのだろうか?民主・彼等の党連立となるのだろうか?

新聞の選挙記事は読む気分にならず、テレビでも選挙関連になると消している。

森田実の言わねばならぬ」、毎回拝読している。2010/7/9には
民主・自民の連立という魔の属国政治が待ち構えているというI氏説が書かれている。
選挙が近づくにつれて、日々憂鬱に感じている理由がわかったような気がする。

オカルト政党支持者の知人、いつもの通り投票依頼にやってきた。
「はい」と答えたものの、もちろんあの党には決して投票しない。
全く付き合いがない人が、選挙の時だけやってきて「お願いします」と言うと、本当にその党に投票する人がいるのだろうか?毎回、不思議に思っている。

追記:2010/7/12

『NHK、鉄の沈黙はだれのために』永田浩三著 柏書房 2,000円

「良心や勇気」のあるジャーナリストが、この国で、本気で番組を作るとどうなるかが、良く分かる素晴らしい本だ。こういう本こそ、ベストセラーになって欲しいものだ。テレビ視聴者にとって、この本、必読だろう。「テレビ試聴リテラシー試験」など導入してはいかがだろう?本書の読解力を測定し、一定レベルに達しない人には、ライセンスを発行せず、そのライセンスICチップをテレビに差し込まないと、テレビが見えないようになると素晴らしい、かも。

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コメント

日本は米国案件になると、報道が歪んだりシャットダウンしたり、します。
直近では、天安沈没が普天間絡みで米国案件となり、首相退陣に利用されました。
その昔の「日本の黒い霧事件」以来、麻薬絡みの拉致問題とか典型ですね。
森田実さんの「自民党も民主党も一緒」説は、一見反米に見えてソノ実は日本人が政治に絶望すればジャパンハンドラーが遣りたい放題出来て好都合だから、見逃されてるのでしょ。
因みに、イランが「米国海軍12隻の船団がホルムズ海峡に!」と今マサに注意喚起した所です。

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