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2010年5月23日 (日)

ソ連邦からの独立宣言後20年、ラトビアの緊縮政策は世界の労働者階級への警告

Niall Green

2010年5月4日

20年前の今日、1990年5月4日、ラトビア共和国運営評議会はソビエト社会主義共和国連邦からの独立を宣言した。モスクワのスターリン主義官僚が軍事力によって支配を維持しようとしており、ソ連から正式に離脱するには更に16カ月かかった。

大半が旧エリート官僚出身の新興資本主義者階級によって、国家の独立と資本主義の復興が“自由”を獲得し、経済停滞を克服する唯一の手段だとして喧伝される中、20年後のラトビアは、他の旧ソ連共和国同様、経済崩壊に直面している。ラトビア国民は世界金融資本と結託した政府が遂行する厳しい緊縮政策にさらされている。

ラトビア経済は、2008年にアメリカ合州国で勃発した経済危機により、ひどい打撃を受けた。ラトビアは、ひどい金融投機、特に不動産への投機にさらされ、2008年と2009年、世界経済の危険な地域からの、金融資本による大規模引き上げに苦しんだ。ラトビア経済は昨年18パーセント縮小し、2010年末までに更に4パーセント縮小するものと予想されている。

この危機を穴埋めするため、ラトビアの首都リガの政府は、世界で実施されたものの中で、最も厳しい支出削減の一つを断行した。2008年以来、ラトビアの公共部門の給与は25パーセント低下したが、さらに低下するだろう。民間部門の給与は最大30パーセントも削減された。公式失業率は23パーセントで、欧州連合の中では最高だ。

小売りは、2009年の最終四半期には、2008年の同時期と比較して、30パーセント以上縮小したが、これは失業と賃金引き下げの、生活水準に対する壊滅的影響のあらわれだ。

2009年と2010年の連結政府予算で、公共投資は国内総生産(GDP)9パーセントにまで縮小された。これはアメリカ合州国でいえば、公共投資を1.3兆ドルも止めるのに等しい。

ラトビア緊縮政策の一挙手一投足が欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)によって指示されていた。リガ政府は、世界の金融投機家連中のためにブリュッセルとワシントンで行われる決定の現地執行機関なのだ。

右派の新時代党出身のエイナルス・レプシェ蔵相は、国家歳出削減を熱心に支援した。3月に蔵相の地位につくと、レプシェは“強硬策を実施するには強硬な人々が必要だ”と述べ、赤字を縮小すべく更なる“改革”を約束した。2002年から2004年まで首相だったレプシェは最近、国家年金を30パーセント削減しようとしたが、この動きには最高裁判所で、待ったがかけられた。

残忍な削減のおかげで、ラトビアの財政赤字は、2007-2008年のGDPの12パーセント(ギリシャと同じ財政赤字比率)が、現在の8パーセントという数値にまで低下した。とはいえ政府と国際金融エリート連中は、この数値をGDPの3パーセントにまで落とすよう要求している。これは、賃金、社会福祉給付、年金や公共サービスへの更なる攻撃によって実現されよう。

こうした施策と引き換えに、EU、IMF、世界銀行や近隣諸国は、わずか220万人の国民しかいない規模の国家にしては巨額の75億ドルという緊急援助をラトビアに与えた。

2009年1月に緊急援助が発表された時点で、金融機関はオーバーナイト・ローンに対し、不当に高い33パーセントの金利を要求しており、ラトビア政府は事実上、市中で金を借りることができない状態だった。

緊急援助資金の大半は、そのまま直接、北欧諸国の資本、特にスウェーデンによって支配されている金融部門に向けられた。この援助は、銀行間融資を促進すべく、金融機関の資本構成を改めるのに使われた。IMF-EU介入は、その可能性が、銀行間金利を更に上昇させた、通貨ラトの大幅切り下げ回避にも功があったと評価されている。

リガ政府による緊縮政策の実施に対するいかなる反対あるいは躊躇のきざしも、緊急援助資金が止められてしまうと威嚇された。とはいえ、IMF、EUと銀行はラトビア支配層エリートが、社会支出の壊滅的な削減を進んで実行しようとしていることに気がついた。

2009年1月、緊縮政策反対の大規模抗議に直面し、ラトビア連立政権は、抗議デモ参加者と対決する機動隊を派遣して対応した。同時に、IMF-EUの絶対的命令を推し進めようとする姿勢をはっきりと見せている。その後の政府要員の交代も、ラトビア労働者の運命には大した違いはもたらさない。

自分たちの投機で世界金融危機をひき起こした、まさにその当事者で、緊急援助と労働者階級に対する緊縮政策で利益を得ている金融略奪者連中が、同じく新時代党のヴァルディス・ドンブロフスキス首相を称賛している。“少なくとも国際投資家の視点からすれば、彼の実績は目を見張らせるものだ”とJPモルガン・チェースのエコノミスト、ヤーキン・セベチは語っている。

2月、格付け会社のスタンダード&プアーズは、ラトビアのBB-格付けを、極めて弱いBBに上げた。もう一つの大手格付け会社、ムーディーズは、ラトビアは依然として“イベント・リスクの影響を非常に受けやすく”“更に大幅で、より痛みを伴う調整を避けるため、地域経済の回復と、ヨーロッパの金融制度に依存している”と警告した。

多くの経済評論家は、過去18カ月の大幅な削減にもかかわらず、金融資本が融資に対し、より高い利子支払いを要求しかねず、ラトビア経済は更に危機が深まりかねないと語ってはいるが、ラトビアが債務契約支払いを凍結しない方に賭けている。言い換えれば、既にギリシャを襲い、現在ポルトガルを襲いつつあるのと同じ運命に、ラトビアも見舞われかねないのだ。

ユーロに対して固定された、通貨ラトの価値を維持しようとする試みにもかかわらず、レプシェや他のラトビア・エリート層の主要人物たちは、ラトビアの輸出を後押しするため、デフレ政策を好んでいるように見える。ラトの切り下げは輸入品のコストを引き上げ、貯蓄の価値を下げ、労働者にとって一層壊滅的な結果をもたらすだろう。

隣接するエストニアとリトアニアの経済も同じようなものであり、通貨ラトの切り下げは、これらの国々にそれぞれの通貨の対ユーロ固定廃止を強いて、東欧のEU加盟諸国中に、平価切り下げ競争の連鎖反応をひき起こしかねない。

ラトビアで実施された反労働者階級施策が、フィナンシャル・タイムズによれば“ギリシャや他のヨーロッパ諸国に対するお手本としてもてはやされてきた”。1100億ドルのEU-IMF緊急援助を得るため、ギリシャ政府は更なる緊縮政策を発表した。

わずか二年前、他のバルト海沿岸諸国と共に、ラトビアは、東欧における、耐乏ではなく、繁栄の手本だとしてもてはやされた。その高い成長率ゆえに、ラトビアは、いわゆる“バルト海沿岸のタイガー”の一つとされ、2006年から2007年まで、主にリガ不動産市場への投機によって加速され、ラトビア経済は10パーセント以上成長した。同様な成長を見せたラトビアや隣接するバルト海沿岸諸国は、“自由市場”と、EU拡張の成功の証しだとされていた。

ところが、こうした高い成長率には、地域の大半の労働者にとり、益々不安定な状態がともなっていたのだ。戦後のソ連時代に築き上げられた医療や社会保障等の公共サービスや教育施設は資金が底をついた。西欧水準のほんのわずかでしかない給与と、EU加盟以来の価格急騰のため、何十万人もの労働者、特に職人、看護士や医師が、EU内の他の国で仕事を見つけようと、ラトビアから去った。

旧ソ連圏全域で起きたと同様に、資本主義の復興は、スターリン主義官僚にとって、裕福な資産家層へと変身して、自らの特権を具体化させる手段の役割を果たした。ラトビア、あるいは他の国々で新たに形成された資本家階級は、世界資本への直接かつ従属的な関係を確立するために、独立国家の創造を利用したのだ。

二十年前には、ラトビアや他のバルト海沿岸共和国の民族主義者と親資本主義勢力は、1940年代、ソ連支配下で行われた集団強制退去や処刑、及び、“一国社会主義”の構築という公式スターリン主義政策にともなったロシア愛国主義を含むスターリン主義の犯罪を利用して、ラトビア独立を、国家への圧迫に対する、前向きの解決策として提示することができた。

現在ラトビアで労働者階級が直面している大変な苦境が、国家の独立やら、資本主義の復興、あるいはEU加盟というプロジェクトには、何ら進歩的な中身などなかったことを証明している。

ラトビア、バルト海沿岸諸国、全EU、そして旧ソビエト連邦の労働者たちは、世界の金融貴族連中と、政府に巣くう彼らの腐敗した手先という、同一の階級の敵に直面している。保守派、社会民主主義者、あるいは旧スターリン主義者など、あらゆる既成政党は、資本主義をてこ入れするため、労働者階級の生活水準に対する同様な攻撃を遂行している。この攻撃において、連中は、時に過激そうに聞こえる言説をまくしたてながらも、利潤制度や既存政治体制に反対する、本当に独立した労働者階級の運動には、ひどく敵対的な労働組合や様々な旧左翼組織によって、支援され、助長されている。国家エリートや欧州の銀行連合に対抗して、ラトビアとヨーロッパの労働者は、社会主義インターナショナリズムを目指す戦いにおいて団結しなければならない。

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2010/may2010/latv-m04.shtml

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翻訳が間に合わず、5月4日から、かなり遅れた。以下は、毎回の蛇足。

現在、沖縄県民が直面している大変な苦境が、安保条約や沖縄返還、あるいは米軍再編等のプロジェクトには、何ら進歩的な中身などなかったことを証明している。

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いつもこのぺージと藤永先生のブログを見るのを楽しみにしています。
日本の現在のメディアのあり方には日本を誤った方向に導こうとしています。
このホームページを運営している人がどのような人か存じませんが頑張ってください。

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