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2010年5月 1日 (土)

アメリカの戦争の隠された犠牲者: 毎日18人の退役軍人が自殺

Bill Van Auken

2010年4月28日

オバマ政権とペンタゴンが、ワシントンの侵略戦争に駆られている自殺のまん延に関して、益々防御的になる中で、毎日平均18人のアメリカ退役軍人が自殺をしている。

アメリカ退役軍人省当局者の発言を引用した驚くべき数値が、先週ミリタリー・タイムズによって報じられた。

退役軍人省は、省による治療を受けている退役軍人の自殺企図が毎月950件あると推計している。このうち、7パーセントは自殺に成功し、11パーセントが、9カ月以内に再度自殺を試みる。

自殺が一番増えているのは、イラクとアフガニスタン戦争の退役軍人たちのもので、9月30日に終わる2009年度で、1,868件の自殺企図があった。このうち約100人が自殺に成功している。

兵士の自殺の“増加”と、イラクとアフガニスタンで継続している戦争との関係は否定できない。同等の(年齢と性別を補正した)一般市民の間での自殺率は、横ばい状態のままであるにもかかわらず、軍内部の自殺率は、2001年と2006年の間で倍増した。しかも、この数値は着実に増え続けている。2009年には、160人の現役勤務の軍人が自殺したが、2008年には、140人、そして2003年には、77人だった。

自殺が増大するのは、いわゆる“対テロ戦争”が10年目を迎えようとしており、およそ200,000人の米兵がアフガニスタンとイラクに派兵されている中、全員が志願兵であるアメリカ軍の軍人であれば否応なしにあじあわされる、繰り返される戦地派兵が原因だとする人々は多い。

繰り返される派兵の効果が、イラクとアフガニスタンでの戦地勤務の間の、アメリカ本土の基地で過ごす合間、つまり、いわゆる“滞留時間”の短さによって更に悪化する。二つの戦争では、大半の場合、要員不足のおかげでこの期間は、わずか一年に限定されている。現在では、二年に近くなっているが、派兵されていた時期に味わった心理的なストレスを改善するには、少なくとも、三年必要であることが、心理学的研究によって判明している。

軍司令部は、この二つの関連を曖昧にしようと務めてきた。 先月、例えば軍医総監エリック・シューメーカー中将は、上院委員会で、兵士の自殺において、最よくある因子は“何らかの形の壊れた人間関係”だと語った。だが明らかに、複数回の派兵と、それが兵士に対して及ぼす心理的衝撃が、人間関係の断絶に到るような、破綻した結婚生活や、精神衛生上の問題の主要因なのだ。

自殺に関し、ペンタゴンに助言をしている元空軍将校で、テキサス州大学精神分析医のクレイグ・ブライアンは、現象を軍自身が行っている訓練と結びつけている。

“制御された暴力・攻撃を使用するよう、困難に直面した際の強い情緒的反応を抑えるよう、肉体的、精神的苦痛に耐えるよう、怪我や死の恐怖を克服するように、わが戦士を我々は訓練しています”と彼は今月早々タイム誌に語っている。こうした項目は、兵士が、疑わずに人を殺せるようにさせるべく設計されており、“自殺のリスク上昇とも関連しています”と彼は述べた。こうした心理的特性は“わが軍の戦闘能力に、悪影響を与えることなしに”変更することはできないと、彼は補足した。単刀直入に言うと、ブライアンによれば、自殺は一種の職業災害なのだ。“端的に言えば、軍人は兵士訓練のおかげで、自殺する能力が強化されるのです”と彼は言う。

まさにその訓練が、イラクとアフガニスタンでのトラウマ的経験とあいまって、市民社会に再度溶け込もうとしている、二つの戦争に出征した退役軍人たちの多くに対し、重度の困難さをもたらしているのだ。自殺というのは、こうした問題の、最も目につく悲劇的な指標だが、問題は他にも色々ある。

先月、イラクとアフガニスタンからの退役軍人の失業率は、14.7パーセントに達したが、アメリカの公式失業率より50パーセントほど高い。

最近の退役軍人省による推計の一つによれば、154,000人のアメリカ退役軍人が、ホームレスで、彼らの多くは道路で暮らしている。こうしたホームレス軍団の人数は、イラクとアフガニスタンから帰国する人々で、次第に膨れ上がりつつある。

軍医総監シューメーカー中将は、月曜日、精神的問題との戦いから復帰しつつある兵士に対する軍の対応の一つが“過剰投薬”だと認めざるを得なかった。

“我々は過剰投薬を懸念していると申しあげることができる”と中将は語り“使われている薬剤の満艦飾と、種類を我々は大いに懸念している。”と補足した。

ミリタリー・タイムズによる先月の報道によれば、アメリカ軍兵士の6人に1人が何らかの向精神薬を服用しており、兵士の15パーセントが、前月に処方薬を乱用したことを認めている。

シューメーカーのこの発言は、ニューヨーク・タイムズが日曜日に掲載した、コロラド州のフォート・カーソンの、いわゆる“傷病兵士療養部隊”を暴露する記事に答えて、開催された記者会見でなされたものだ。記事は、この施設や同様の施設を“'病んだ退役軍人の男女が人目につかぬ様に隔離され、処方された薬品を山の様に与えられ、下士官に厳しく扱われる絶望の倉庫”と呼んでいる。

記事の中でインタビューをされた兵士たちは、鎮痛剤を処方されたが、睡眠薬や他の薬剤と同様、その依存症になってしまったし、アルコールやヘロインは兵舎内で、簡単に手に入ると語った。ところが、ごくわずか、あるいは全く治療されていないのだ。

2007年以来、フォート・カーソンの部隊に配属された兵士の少なくとも四人がそこで自殺した。

4月16日、元陸軍参謀長で退役軍人省長官のエリック・シンセキは、退役軍人の自殺に関し、連邦議会で証言し、同様に多くを物語る数値を提示した。ホットラインは、月に退役軍人の自殺10,000通話の相談を処理していると彼は説明したのだ。

シンセキは、議会委員会で、アメリカ軍要員の二つのイメージに悩まされていると語った。一つ目は“我々のあらゆる期待をしのぐ偉大な若者たち”である新兵のイメージだ。

二つ目は、“アメリカのホームレス、失業、精神衛生(問題)、鬱病患者、薬物乱用者、自殺、の不釣り合いな割合”を占める退役軍人のイメージだ。

途中で“何かが起きたのです”シンセキは語っている。“そして我々は、それが何であるのかを解明しようとしています。”

それは、偉大なる謎などというものではない。こうした“偉大な若者たち”は、侵略戦争と植民地型占領の中に投げ込まれ、そこで恐ろしい暴力にさらされ、全国民の征服に従事させられ、必然的に民間人の男性、女性や子供を殺害することになる。こうした条件から生じた精神的、情緒的トラウマがあることを認めた人々は、のけ者、弱虫として扱われるのだ。

シンセキがワシントンで証言をしたまさにその日、イラク戦争の退役軍人で、心的外傷後ストレス障害の治療を受けていた27歳のジェシー・ハフは、オハイオ州デイトンにある退役軍人省医療施設の外で自殺した。イラクで道端に仕掛けられた爆弾によって負傷していたハフは、(アメリカ南北戦争の)北軍兵士像の足元で、自動小銃で頭を二発撃って自殺した。いとこの一人は、AP通信社に、イラクから帰還してからというもの“彼は別人のようでした”と語り、若者と一緒に暮らしていた父親は、ハフは“本当に苦しんでいました”と語った。

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2010/apr2010/mili-a28.shtml

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2009年11月、テキサス州フォートフッド米陸軍基地で、退役軍人に対応していた精神科軍医が、アフガニスタンへの派遣命令を受け、13人を射殺した事件の背景にも、warrior transition unit(傷病兵士療養部隊=訳が見つからないので適宜訳した)があった。

この事件については、ブログ「薔薇、または陽だまりの猫」をお読みいただきたい。[TUP-Bulletin] 速報848号 米軍基地銃乱射事件:イラク帰還兵に深まる心の闇

「希望は戦争」という言葉が、昔、話題になった。今は廃刊になった雑誌に2007年1月に載った論文の題名だったようだ。

文章に驚いたが、すかさず反論した人々が、見当はずれだと揶揄されたことに、もっと驚いた。

文章をみると、「戦争が起きれば社会は流動化する」や「国民全員が苦しむ平等を」という文章がある。ごく一部、引用させていただこう。

もちろん、戦時においては前線や銃後を問わず、死と隣り合わせではあるものの、それは国民のほぼすべてが同様である。国民全体に降り注ぐ生と死のギャンブルである戦争状態と、一部の弱者だけが屈辱を味わう平和。そのどちらが弱者にとって望ましいかなど、考えるまでもない。

 持つ者は戦争によってそれを失うことにおびえを抱くが、持たざる者は戦争によって何かを得ることを望む。持つ者と持たざる者がハッキリと分かれ、そこに流動性が存在しない格差社会においては、もはや戦争はタブーではない。それどころか、反戦平和というスローガンこそが、我々を一生貧困の中に押しとどめる「持つ者」の傲慢であると受け止められるのである。

宗主国アメリカ、長いこと永久戦争をしているが、社会は流動化しているのだろうか?格差は縮小しているだろうか?国民全員が苦しんでいるのだろうか?持たざる者が、戦争によって得るものは一体なんだろう?

砲弾の餌食を生み出そうという大本営宣伝部隊プロパガンダ、着々進行中。

『戦争における「人殺し」の心理学』(ちくま学芸文庫) という本を大分前に購入しては見たが、人殺し訓練の説明?読む気になれず、行方不明。ベトナム退役軍人の、こうした問題も詳しく書かれていた(ように思う。)

藤永茂氏のブログで知ったシルコーというネイティブ・アメリカン作家の『悲しきインディアン』は、第二次大戦時、フィリピンで戦って、やはり神経症になったネイティブ・アメリカン、タヨの話。

この主題と直接関連する下記ビデオがDemocracy Now! Japanにある。
番組そのものは英語だが、日本語字幕がある。24分 2009年7月

戦争の地獄を持ち帰る者たち イラク帰還兵による殺人、自殺、誘拐

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