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2010年4月17日 (土)

ワシントン核サミット、アメリカの対イラン・北朝鮮キャンペーンを推進

Patrick Martin

2010年4月13日

月曜日、ワシントンで、バラク・オバマ大統領が、軍備縮小の促進と、テロ反対を装って、イランと北朝鮮を、孤立化させ、圧力を加え、最終的には政権を打倒しようという、アメリカの作戦に対する国際的支持を獲得する狙いで、二日にわたるイベント、核保安サミットを開催する。

前のブッシュ政権による攻撃的なやり方から断絶するどころではなく、オバマの政策は、アメリカ軍による、中東、中央アジアと世界の支配を、違う言葉と、多少手口を変えた戦術を用いて、同じ目的を実現しようという企みだ。

ブッシュ、チェイニーや、ラムズフェルドらの挑戦的な姿勢の代わりに、オバマ政権は、国連を創設した、1945年のサンフランシスコ会議以来、最多の各国首脳を集めた会議を、多国間主義とグローバル・サミットという仕掛けとして、アメリカ本土で開催した。

しかし狙いは変わっていない。対イラン経済制裁を強化し、北朝鮮によるミサイルと核技術の不法取引とされるものに対して報復すると、北朝鮮を威嚇し、通常兵器であれ、核兵器であれ、中国やロシアを含めた、より手強い大国からの、潜在的な挑戦に対するアメリカ軍の覇権を維持するための条件を作り出すことだ。

サミットは、アメリカと世界の世論を、アメリカ軍による、あからさまな対イラン攻撃、あるいは、きわめて厳格で、実質は経済戦争に等しいような経済制裁を課するかの、いずれかの方向に準備させるための、オバマ政権による計画的な取り組みの一環だ。そのような経済制裁は、イランの反撃を引き起こし、イスラエル、サウジアラビアや、この地域の他のアメリカ同盟国を守るふりをして、アメリカが攻撃を偽装できるようになりかねない。

会議は、丸ごと、醜悪なダブル・スタンダードの下で行われている。アメリカ政府は、敵対的と見なされている三カ国、イラン、北朝鮮とシリア政府を、彼らは核拡散防止条約(NPT)違反だからと主張し、招待することを、これみよがしに拒否した。

この主張は、国際法の下では、有効ではない。イランもシリアも、共にNPT調印国であり、NPT順守を監視する役目の国連組織、国際原子力機関が行う査察に協力している。北朝鮮は、過去はNPTの調印国だったが、条約で認められている通り、2006年に脱退した。

対照的に、オバマ政権は、あからさまにNPTに逆らい、大規模な核兵器開発計画を成功させている三カ国、イスラエル、パキスタンと、インドを招待した。この国々いずれもが、主要なアメリカ同盟国だからだ。

パキスタンとインドは、ワシントンの会議に、政府のトップを出席させた。アラブ諸国が、サミットの中で、イスラエルの核兵器備蓄問題を持ち出す予定だという噂のさなか、当初出席する予定だったイスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフは、突然方針を変え、代わりに、副首相を派遣した。

ホワイト・ハウスと国務省によって綿密に計画された、サミット議題は、人類が直面している主要な核の危機、つまり、アメリカ合州国とロシアが保有している、 未だに地球上の全員を消滅させるのに十分すぎる、膨大な核兵器備蓄に関する、あらゆる実質的な討論を排除している。同様、イギリス、フランス、中国と、NPT非調印三カ国、イスラエル、パキスタンとインドによる、大量の核兵器備蓄も、問われることがない。

そうではなく、アルカイダのような“非国家主体”が、核物質にアクセスできるようにするのを防ぐことに、あらゆる焦点が向けられている。良く知られている通り、アルカイダが、イランのシーア派聖職者政権に対して敵意を抱いているにもかかわらず、核武装した“テロ”の危険性が、アメリカが率いる対テヘラン作戦の口実、カモフラージュとして利用されているのだ。

信じがたいほどの偽善だ。ワシントン会議に出席した核兵器保有国、および核保有能力がある国は、120,000発の核兵器を製造し、地球を繰り返し何千回も破壊するのに十分な、推計2,100トンの核物質を持っている。

ところが、狙いは、核兵器を破棄するどころではなく、現在そうした兵器を所有している国家の手中に、こうした大量虐殺の手段の独占を維持することにある。1945年、広島と長崎を焼き尽くすのに、戦争で核兵器を使用した唯一の国、アメリカ合州国が、その内の最大部分を支配しているのだ。

大半の国際サミット同様、火曜日に行われる実際の討議は、見世物なのだ。採択されるべき公式声明は、既に起草され、主要大国に回覧されている。それは、高濃縮ウランとプルトニウムの密輸を厳格に取り締まること、自国の備蓄に対する警備対策の強化を今後四年間で実施すべきこと、そして、個々の国による、そのような物質の自発的廃棄を、要求している。

サミット開会時に、チリとウクライナが、高濃縮ウラン備蓄を廃棄すると発表した。両国とも、ワシントンから、かなりの経済報酬を期待している行動だ。

しかしながら、火曜日の討議より重要なのは、会議の前と、会議の間に行われた、一連の二国間会談だ。オバマとの一対一の会談に参加した人々の中には、中国、パキスタン、インド、南アフリカ、カザフスタン、ナイジェリアと、ヨルダンの首脳がいた。

ワシントン・サミットの、基本的な前提は、オバマが宣言した通り、短期的にも、中・長期的にも、アメリカの安全保障にとって、最大の脅威は、テロ組織が核兵器を入手する可能性だ”。しかし、人類にとって“最大の脅威”は、彼らの反動的野望が何にせよ、アルカイダではなく、既に相当な核兵器備蓄を保有している資本主義国家が関与する、新しい帝国主義戦争の危険性だ。

オバマが、核兵器のない世界に関する曖昧な演説をまくしたてる一方、その最高位の国家安全保障補佐官である、国務長官ヒラリー・クリントンと、国防長官ロバート・ゲーツは、日曜日のテレビ対談番組に出演して回り、アメリカ合州国の軍事力と、強固な核戦力を自慢している。

クリントンは、アメリカに敵対する、名前を上げない国々を、あきらかに、イランと北朝鮮をほのめかして、核攻撃の可能性があると脅迫した。ペンタゴンが先週発表した核戦争ドクトリンは、余りに制限がきつすぎると主張した共和党議員による批判を、彼女は、はねつけた。

“有事の場合用に、アメリカは十分な余地を残してある”と彼女は語った。“もしも、生物兵器攻撃がアメリカを攻撃した国に由来することを、我々が証明できれば、白紙に戻るのだ。”

なぜイランと北朝鮮は、例外と見なされるのかと質問されて、ゲーツも同じ言葉を使った。“彼らは、核拡散防止条約を順守していないからだ。だから、両国については白紙に戻す。あらゆる選択肢があるのだ。”

アメリカのより広範な核計画は、来月予定されている会議、国連での核拡散防止条約第八回再検討会議に向けられている。1970年、NPTが最初に批准された際、非核保有国による、同様な兵器を開発しないという同意と引き換えに、核武装国は、核備蓄を削減し、最終的に廃絶する、と約束した。

40年たった今、ほとんど全ての非核保有国は、条約を順守したが、核兵器保有国が、自分たちの兵器システムを廃棄しそうな気配は皆無だ。そうではなく、定期的な五年毎の査察は、アメリカ合州国にとって敵対的と見なす政権に対し、実力行使を示唆する機会となっている。過去には、サダム・フセインのイラクと、ムアマル・カダフィのリビヤ。現在は、イランと北朝鮮だ。

今度のNPT再検討会議では、国際原子力機関を、概してアメリカ合州国の道具だと考えている多くのNPT調印国にとって、受けるのがあまり気の進まない核開発計画に対する査察を、一層立ち入ったものにしようという、アメリカの要求が焦点になるものと予想されている。

アメリカは、全ての国に対し、核燃料製造を含めた、全サイクルの民生核開発計画を行う権利を撤廃するため、NPTを修正する可能性も提起している。これは、現在のアメリカの対イラン・キャンペーンに対する、法律的カモフラージュとなるだろう。

イランと北朝鮮に対する、差し迫った取り組みに加え、オバマ政権は、核不拡散体制を、もう一つの狙いを持って、支持している。それは、アメリカが現在享受している、アメリカ核兵器備蓄の規模と技術的洗練という圧倒的優位を確定することだ。

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2010/apr2010/nucl-a13.shtml

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会議に関するマスコミ報道を見聞きしている限り、首相と大統領が、ワーキング・ランチでどんな話をしたかは書かれていても、会議そのものが、一体どういうものなのか、良くわからない。関連記事を読んでいない怠慢かも知れない。

ところで、前回の記事に、膨大なアクセスを頂いている。

それ以前の記事をお読みでない方は、お時間とご興味があれば、クリス・ヘッジズの記事翻訳「情報スーパー下水」を紹介させていただきたい。あるいは、何かご参考になるかも知れない。

「情報スーパー下水」で触れられていたJaron Lanierの"You are not a gadget"を入手して、所々拾い読みをしている。たとえば「群衆の真実」。なかなか面白い。この本も、ご一読をお勧めしたい。

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