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2010年4月 1日 (木)

オバマ訪問、アフガニスタンにおけるアメリカの危機を浮き彫りに

Bill Van Auken

2010年3月30日

日曜日、夜の闇に乗じて、カーブルに、こっそり忍び込み、こっそり抜け出した、バラク・オバマ大統領のアフガニスタン訪問は、戦争がエスカレートする中、アメリカが直面している危機を浮き彫りにするものでしかない。

ジョージ・W・ブッシュ元大統領やディック・チェイニー元副大統領が演じた、これとよく似たアメリカ占領下のイラクやアフガニスタン訪問と同様に、オバマのカーブルへの飛行は、表向き、アフガニスタン統治者とされている、アフガニスタンのハミド・カルザイ大統領ですら、ぎりぎり最後の瞬間まで、訪問のことを知らされないという、極秘状態のもとで準備された。

飛行機に搭乗させられた同行記者団は、飛行機が離陸するまで、目的地を告げられず、携帯電話も没収されていた。離陸前、権限のないアメリカ軍要員が、大統領の出発に気がつくのを防ぐべく、大統領専用機は、閉鎖された格納庫内で、搭乗をおこなった。

アフガニスタンに到着した後の、現地に到着するのに必要な飛行時間の半分以下という、オバマの6時間の訪問先は、厳重に防備を固めたアメリカのバグラム空軍基地と、ヘリコプターで訪れたカーブルのアフガニスタン大統領官邸とに限られていた。

こうした予防措置の根底にあるのは、戦争を始めてから8年半後になっても、カルザイ政権も、120,000人のアメリカが率いる占領軍兵士も、首都を含めアフガニスタンのどこでも、安全など保証できないという現実だ。

アメリカ・マスコミは、アフガニスタン訪問を、概して、オバマが歓迎するために集められた兵士と海兵隊員という厳選された聴衆を相手に、アメリカ軍兵士の士気を高め、官僚の腐敗と統治手法の問題で、カルザイに頭ごなしに命令するものとして扱っている。

ニューヨーク・タイムズは、訪問は“オバマ大統領にとって、国内で医療法案への署名という目ざましい勝利を達成した注目を浴びる週…をしめくくる”ものだと報じた。同紙は、この国内法案を達成した今、アメリカ大統領は、その注意を、彼の主要な海外政策案、つまり、アフガニスタンに、更に30,000人のアメリカ軍兵士を派兵する軍隊“増派”に向ける立場にあるのだと、示唆している。

現実は、オバマによるアメリカのアフガニスタン介入の理由説明は、医療“改革”に関する彼の主張と同様、欺瞞に過ぎない。この両方の根底にあるのは、深化するアメリカ資本主義の危機と、それを海外での侵略戦争と、国内での労働者階級への大規模攻撃に基づいて、解決しようという、たくらみだ。

兵士たちへの演説で、オバマは、その場に似合わない、異様な“イエス・ウイー・キャン”の繰り返しとともに、アフガニスタンにおけるアメリカの狙いの簡単な説明を大声で行った。“我々は、アルカイダと、その過激派仲間を、崩壊させ、解体し、打ち負かし、粉砕する”と彼は述べた。オバマは更に続けた。“それが我々の任務だ。そして、この目標を実現するための、アフガニスタンにおける我々の目標も明確だ。我々はアルカイダの安全な隠れ場を否定するのだ。我々はタリバンの勢いを覆す。我々は、アフガニスタン治安軍とアフガニスタン政府の能力を強化し、彼等が責任を担い、アフガニスタン国民からの信頼を得られるようにする。”

彼の前任者が、アメリカの戦争の為についた正当化の嘘を、ほとんど一字一句彼は繰り返し、(アメリカ軍の司令官たちが、アフガニスタンにいる勢力はわずか100人程度に過ぎないと推定している)アルカイダと戦うために、100,000人の兵士がアフガニスタンに派兵されるのだと主張した。

戦争は“絶対に必要であり、アメリカの安全と安全保障にとって、絶対に不可欠である”と主張し、“本国の皆は、君たちを頼りにしている。”とつけ加えた。

アフガニスタン“増派”を宣言した、昨年12月に陸軍士官学校で行ったものを含め、彼の以前の演説と異なり、オバマは、2011年7月に軍撤退を開始する計画には全く触れなかった。逆に彼は、アメリカのアフガニスタン占領は、無限に続くと強調した。

“アメリカ合州国は、何かことを始めた際には、あきらめはしない”彼は兵士たちに語った。“君たちはあきらめない、アメリカ軍はあきらめない、我々は根気よく続ける、我々のパートナーと共に我々はやり抜き、我々が最終的な勝者になる。”

およそ4カ月前の演説で、アメリカの撤回を開始する時期は“アメリカは、アフガニスタンで果てしない戦争を戦うことには興味がない”ことを実証する上で不可欠だと、オバマは主張した。彼が、現場にいる兵士たちに、それを言い損ねていることは、アメリカの支配層エリートには、アフガニスタンを去る意図が皆無であることを強く示唆している。

アフガニスタン南部のカンダハル州で、アメリカ軍兵士を、人口900,000人の密集都市カンダハルでの都市型戦闘に参加させるであろう次の残忍な攻撃を、アメリカ軍が準備している最中、アメリカ大統領訪問が行われたのだ。

“軍幹部”の言葉を引用して、AP通信は、月曜日、タリバンを、タリバン時代の首都カンダハル市から追い出すという目的で、アメリカが率いる軍隊は、イスラム教の聖なる月ラマダンが八月に始まる前、6月に攻撃を開始すると報じた。

この攻撃の前でさえ、占領軍兵士の死傷率は急増している。今年に入って最初の二ヶ月で、アフガニスタンで死んだアメリカ兵士の人数は、57人にのぼり、28人が死んだ2009年の1月と2月の人数の倍だ。

負傷者数も急増し、2010年の最初の二ヶ月で、381人に達し、昨年の同時期の85人と比べて、ほぼ350パーセントもの増加だ。今月最初の6日間だけで、44人のアメリカ兵士が負傷したが、平均して、一日に7人だ。これと比較して、昨年3月全体で、アメリカ兵と海兵隊員の負傷者は、50人だ。

予定されているカンダハル攻撃と、夏に行われる戦闘の、いつもの急増とによって、エスカレートしている死傷率は更に急増するものと予想されている。

アメリカのマスコミは、政権幹部の発言を引用し、概して、オバマとカルザイの会談を、カーブル傀儡政権内部における積年の腐敗に対するアメリカのいらだちが基本にある、きつい言葉のやりとりとして、描き出しているが、それ以上に差し迫った懸念があった、濃厚な可能性がある。

特に、カルザイの最近のイランと中国への歴訪を、アメリカのアフガニスタン支配に対する、挑戦と見なして巡って、ワシントン内部が怒っている。

ニューヨーク・タイムズは、ヨーロッパの高位外交官の“彼は西欧から逃げ出しつつある”という言葉を引用している。

オバマがアフガニスタンに着陸する前の週末、カルザイは、テヘランで、マフムード・アフマディネジャド大統領とともに、イランの新年を祝っていた。訪問中、彼はイランの最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイとも会見した。この後、カルザイは、アフマディネジャドに、イラン指導者による、今月早々のカーブル公式訪問を歓迎するとした。

ワシントンが、イランに対し、益々好戦的な政策を推し進め、経済制裁の強化を要求し、軍事侵略の脅迫を次第に激しくしている状態下での、アメリカ属国アフガニスタン政権と、テヘランとのこの関係改善は、オバマ政権に対する侮辱だ。

今月早々、アフガニスタン訪問の際に、アメリカ国防長官ロバート・ゲーツは、イランが、アメリカが率いる占領に抵抗するアフガニスタン勢力に、詳細不明の支援を行い、アメリカに報復すると脅していると、根拠のない疑惑を言い立てた 。

同様な懸案事項は、カルザイが先週行った三日間の中国旅行だ。アフガニスタンの天然資源開発や、アフガニスタン経済の他分野への中国投資を巡り、ワシントンは怒りをあらわしている。アフガニスタンでのアメリカ軍作戦支援を北京が拒否しているので、ワシントンは、中国によるこうした取り組みを、いささか違法なものと見なしているのだ。

3月25日に掲載された“アフガニスタン・ジレンマにおける中国の役割”と題する論説で、カルザイの北京訪問の直前に、国営英字紙チャイナ・デイリー(中国日報)は、軍事駐留とテロと戦うふりとを利用して、アフガニスタンと、その経済を支配し、中国の権益を脅かしていると、ワシントンを非難する正反対の立場を苦々しげに表明している

“アメリカは、アフガニスタンに、アメリカの支援プロジェクトの安全を守る膨大な人数の兵士を置いている”と同紙は言う。“アメリカは、ハミド・カルザイ政府に‘保護’を与えているために、プロジェクト選定で、優先されている。アメリカの経済投資は、軍事作戦の代金を支払うことを狙ったものだ。対照的に、中国企業は、アフガニスタン再建のため働くにあたって、多大なリスクに直面し、契約獲得には、厳しい国際入札を経ている。アメリカとは異なり、中国の投資は、主に道路、病院や学校であり、他の条件はつけていない。”

論説はこう続く。“アメリカは、攻撃的な対テロ戦略をとっており、その中で、アフガニスタンを、アメリカの世界的優位性の維持と、競争相手を締め出すのに役立つ、将棋の駒として利用している。一方、中国は、受け身の国防政策を行っており、アフガニスタンの隣人として、良い関係を望んでいる。”

誤解の余地がない警告として、論説は言う。“中国は、アフガニスタン問題を気に留めずにいるわけには行かない。アフガニスタンでの戦争によってひき起こされた混乱は、中国の北西地域の安全保障にとって、脅威なのだ。”

USAトゥデー紙は、オバマの訪問に対するアフガニスタン人の、啓蒙的な一連のインタビューを掲載し、彼等が、アメリカの地政学的権益と、この地域のライバル国との紛争という、プリズムを通して、見ていることを示している。

同紙は、土木技師マジブ・ラーマンの言葉を引用しているが、彼は、オバマは“軍隊がこの国に長期間駐留することを見せたかったのです。彼はそのプレゼンスを、イラン、中国、ロシアに見せつけ、この地域における自分たちの優勢を示したかったのです。”と言っている。

同様に、アフガニスタン国会議員、モハマッド・カーンは、USAトゥデーに、“最近のイラン、パキスタンと中国歴訪について、カルザイを叱りつけるために。”オバマはやって来たのだと語っている。

“非公式会談で、(オバマ)は、こうした問題をたたみかけたに違いありません”と彼は言う。“二つの戦略を同時に維持することは不可能です。(アメリカ人と)友好を維持しながら、アメリカの敵と策謀をたくらむことは”

また、占領期間中アメリカ軍に燃料を販売していた、50歳のシャムスッディン・ファゼリは、アメリカ軍がアフガニスタンにいるのは、テロと戦う為でなく、地域におけるアメリカの権益を擁護するためだと言う。

“タリバンは小さな集団です。もしもオバマと国際社会が、本当に平和を望むなら、二ヶ月で実現できるはずです”とファゼリは言う。“彼等は(元イラク大統領)サダム・フセインを、砂漠の地下で見つけたではありませんか。なのにどうして、オサマ・ビン・ラディンや、(タリバン指導者) ムラー・オマルを見つけられないのでしょう? つまり連中は、本気で平和を考えていないのです。彼等は、アフガニスタンを他の国々に対して攻撃をするための戦場に変えたいのです。”

現在9年目に入った、アメリカのアフガニスタン戦争は、明らかに、ずっと大規模な地政学的緊張をかき立て、遥かに残虐で大規模な戦争となりうるものの種を蒔いているのだ。オバマの突然のカーブル訪問は、彼による軍事“増派”や、アメリカ兵士の相次ぐ犠牲にもかかわらず、アメリカ帝国主義は、アフガニスタンにおける、着実に悪化しつつある状況に直面しており、究極的には支配権をライバルに奪われかねないという懸念によって、少なからず突き動かされている。

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2010/mar2010/afgh-m30.shtml

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