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2010年4月19日 (月)

ハミド・カルザイよ、安らかに:一つの予言

Justin Raimondo

2010年4月12日

"AntiWar"

ジョージ・W・ブッシュが始め、バラク・オバマが勝利すると誓った、アフガニスタン戦争は終わった。そして我々は敗北したのだ。誰もまだこのことに気がついてはいないが、時間を与えよう。既に、アメリカ敗北の果実は、 紛れもなく、あふれつつある。その理由は、わずか二語で、うまく要約できる。ハミド・カルザイ。

ブッシュ政権によって、アフガニスタンの救世主として喧伝された、おしゃれな人物が、アメリカに対する最も辛辣な批判者へと変わりつつある。アメリカが、自分たちの靴下製の指人形を有利にする為に、前回のアフガニスタン選挙を操作しようとしたという、極めて信頼でき主張をしてみたり、タリバンと協力する用意があるなどと宣言したりして、カルザイ大統領は波風を立て、ワシントンの目利き連中から、彼は"信頼できないパートナー"だという難癖、侮蔑の一斉射撃を浴びている。普通の言語に翻訳すれば、これはつまり、彼は、ワシントンの気まぐれに、こびへつらうのを止め、自分自身の目標を追求するようになったということだ。衝撃的ではないか?

かつてのわが "パートナー"への不満を、ワシントンが極めてあからさまにした理由は何だろう? そう、ご存じのように、どのような関係においても、いつだって、ごく些細なことで離婚に至るようになるのだ。自分は家を出て行くつもりだと宣言してみたり、それだけでなく、夫婦の、元最悪の敵と手を組むと脅したりするようなことだ。ただ、それも口先だけのことだ。軽い冗談で、実際、主導権を握ろうとして、夫婦が年中論争しているような類のことだ。少なくとも、皆様が、エドワード・オールビー芝居の登場人物であれば、我慢できるし、楽しむことさえ可能な類のことだ。

しかし、公の場では、出会うことがないせりふ、最終的に、離婚裁判所に行き着きたいとでも思っていない限り、決して部外者には打ち明けない、ある種の話題が、常にある。『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』では、ジョージとマーサ夫婦間の想像上の息子という秘密だった。『タリバンなんかこわくない』では、現実には、カーブルの都心以外には到底存在しているなどとは言えない、カルザイの、想像上の "政府" という秘密だ。妻のマーサが、ジョージに言ったように。"この、ろくでなし!"

納税者からの何十億ドルものお金が、あらゆる意図、目的にもかかわらず実際には存在していない団体であるアフガニスタン政府を支援するために使われている。実在しているのは、組織図上の名前、アメリカ-NATO占領地域中にある、いくつかの事務所、国連の議席のみで、それにつきる。部族指導者軍閥による本当の権力構造の上に重ねられただけの、金で雇われた宣伝係、アメリカで教育を受けた靴下製の腕人形の、このクモの糸のようなネットワークは、いつ何時、破たんしかねない、か細い糸のようなものだ。カルザイ以上に、この実情を熟知している人物などおらず、そこで彼は、自分の政治的、肉体的サバイバルを確保すべく、新しいやり方を採用したのだ。最大限に"歪曲"しても、ロンドンのタイムズ紙の下記記事、アメリカ-NATOの、戦争に勝利しようという努力を、あからさまに破壊するものとしか解釈しようがあるまい。

"アフガニスタン大統領ハミド・カルザイは、南部の州カンダハルでNATOが計画している、戦闘の為に10,000人以上の米軍兵士を注ぎ込む、夏の対タリバン攻勢を巡る疑念を投げかけたのだ。

"カルザイの故郷の州カンダハルに、安全ではなく、対立をもたらすだろうと主張する長老たちと直面した後、カルザイは、9年間の戦争で、最大の作戦の一つを、遅らせたり、中止さえしたりすると脅した

"先週、攻勢に対する支持を得ようと訪問した際、大統領は、それどころではなく、腐敗と悪政に対する苦情の集中攻撃に圧倒された。1,500人の部族指導者や長老の評議会、シューラーでやじり倒され、彼は参加者達に、軍事行動を巡って、拒否権を行使すると約束したように見える。"実行が予定されている作戦に、皆様は、満足ですか、ご不満ですか?"と、彼は尋ねた。

"長老たちは怒鳴り返した。‘わしらは不満じゃ。

"それでは皆さんが満足だとおっしゃるまで作戦は行いません"とカルザイは答えた。

"彼の背後に座っていたNATO司令官スタンリー・マクリスタル大将は、実に心配げな表情に見えた。"

彼がそうするのも無理はない。カルザイは、態度を変えなければ、なにかの"事故"の犠牲となって終わるだろう。軍事クーデターも、あり得なくはない。もしも私がCIA支局長だったなら、カルザイがハシシのパイプをくゆらしている写真を公表していたろう。そして、もしも私がカルザイだったら、グッチに履歴書を送り、町からさっさと立ち去るだろう。何故なら"世界で最もシックな男" も、バグラム拘置所では好成績は収められまいから。

弱虫連中とはそういうものだが、カルザイが、自己の存在を主張しようとする時は、いつも、自分の重要性を強調しようとしているのに過ぎない。彼がカンダハル攻撃を止められる機会など皆無であり、評議会シューラーの参加者たちを含め、誰もがそれは分かっている。とはいえ、この行為の意味は、発表された"掃討し、確保し、建設する"というアメリカ戦略を、こてんぱんにやっつけることにある。現時点で、正しいのは、我々は、正確には、一体何を築こうとしているのか、つまり、ワシントンを非難することでしか、大衆の支持を得ることが期待できない、カルザイ率いるほとんど想像上の国民"政府"を築こうとしているのか、と問うことだ。

安定した、あるいは、そもそも信用できるアフガニスタン政府を建設するのではなく、デーヴィッド・ペトレイアス大将や、新アメリカ安全保障センターなどで熟考している連中によって提唱された、新たな反乱鎮圧ドクトリンで、ぴしゃりとやろうなどとしても、アメリカの必然的敗北の条件を作り出すに過ぎない。オバマ支持者連中が、カルザイを抱えこんでいる限り、ペトレイアス・ドクトリンの有効性を証明するはずの実験は、結局、せいぜいのところ、怪物フランケンシュタインの創生、つまりアメリカ軍駐留に対して戦う勢力そのものを養成する結果となるに過ぎない。だから、カルザイが意外に早く大統領官邸から出て行くのを予言するのに、我々はノストラダムスである必要はない。

悲しいかな、アメリカ当局は、カルザイをとばして、現地の部族指導者を相手にすることができるなどと言っている。ところが、まさにこの部族指導者たちは、少なくともカンダハルの連中に限って、アメリカ占領には、決して乗り気ではない。アフガニスタンで、我々が今後克服しなければならない大問題は、アフガニスタン国民の大多数が、アメリカのジャーナリストたちが"タリバン"と、怠慢にも呼んでいる連中、実際は、占領に対する軍事的主力抵抗勢力として、ムラー・オマルの旧タリバン指導部の立場を追い越した、現地の武装反抗勢力に、明らかに共鳴していることだ。タリバン戦闘部隊も、確実に、アルカイダも、とうの昔にパキスタンへと逃亡し、更に先へと向かっている。アメリカがアフガニスタンで戦っている相手は、ほぼ10年間という絶えざる戦争の惨禍の中で育った、新たな闘士たちの一群だ。

戦争というものは、政府のあらゆる[.pdf] 計画と同類だ。戦争の擁護者と、受益者たちは(同一の人々であることが非常に多いのだが)もともとの論拠が、無関係とされ、および/または、好都合にも忘れ去られたずっと後も、戦争を引き延ばそうとする。アフガニスタンの例は、うってつけの見本だ。

アフガニスタン国内のアルカイダ細胞居住者を、崩壊し、粉砕するという、オバマ大統領の声明にあるとおり、アメリカのアフガニスタン戦争の狙いは、当の昔に達成済みの目標だ。現在、アフガニスタンには、アルカイダなど、ほとんど存在しておらず、タリバン残滓についても同じことが言える。賢明な戦争支持者たちは、これを認めている。連中が、ビン・ラディンが潜伏していると強力にほのめかしている、パキスタンこそが本当の問題だと、彼らは主張している。(ヒラリー・クリントンは、どうやら、これを信じている。)

パキスタン政府はこれを否定しており、ヒラリーが怒鳴りつけるようなヒステリーを起こそうと、アメリカが拘留しているより、はるか多くの人数のアルカイダ幹部を連れ出し、実際逮捕し、拘束しているのは、パキスタンだ。もしも、ビン・ラディンと/または、彼の高弟たちがパキスタンにいて、ISIがそれを知っていれば、ペンタゴンが、パキスタン領土で遂行している、さほど秘密とも言えない"秘密戦争"を、アメリカに止めさせるためにも、彼らがそうした連中を突き出すだろうことを疑う人などいるだろうか?

アメリカ政府が発表した戦争目的など、ジョージとマーサの想像上の息子と同じようなものだ。 "進歩"と文明の名において、アメリカが、ある国を、奴隷にし、拷問し、荒廃させながら、どうにか、アメリカ国民が、自分たちを安心させ、気分を良くし、高貴にさえ感じられるよう、アメリカ人が、自らに語って聞かせる、私的談話の一部なのだ。

だから、もし、アメリカの本当の目標など存在せず、もし、全てが作り話なのであれば、世界のあの部分を荒廃させている本当の理由は、一体何だろう?

答えは、政治、経済や、国際問題のいかなる理論にも、見いだすことはできず、なおざりにされている人間心理の分野、つまり政治大国と、そうした国を支配する人々の心理にあるのではないかと、私は恐れている。

ジャスティン・レイモンドは、Antiwar.comの論説員。彼の著作には下記のものがある。国家の敵:マレー・N・ロスバードの生涯(Prometheus Books、2000)、アメリカ右派の復活: 保守派運動の失われた遺産(ISI、2008)、および、ボスニアの泥沼:アメリカのバルカン半島介入に対する反論(1996)。

彼は、American Conservative誌の寄稿編集者、ランドルフ・ボーン研究所の上級研究員で、ルートヴィヒ・フォン・ミーゼス研究所の非常勤研究員である。彼は、Chronicles: A Magazine of American Cultureに、しばしば寄稿している。

ジャスティン・レイモンドによる他の記事

    * Back to Kyrgyzstan  2010年4月8日

    * Just Another Atrocity 2010年4月6日

    * Rachel Maddow, McCarthyite 2010年4月4日

    * Frum’s Karma ? 2010年4月日

Copyright c Antiwar.com 2010

記事原文のurl:original.antiwar.com/justin/2010/04/11/hamid-karzai-r-i-p/

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題名、原文では、R.I.P.とある。rest in peace。

お時間があれば、お手許の辞書をご覧頂きたい。

他にも、下記のように、同様趣旨の、より詳細な記事がある

Alfred W. McCoy: America and the Dictators: From Ngo Dinh Diem to Hamid Karzai

ところで、今日の新聞論説、「もっとPKOに参加せよ」という趣旨。びっくりして、思わず読んでしまった。

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