アメリカの司法に関する真実
Yvonne Ridley
2010年2月6日
"Information Clearing House"
アーフィア・シディキ博士に対して下された有罪の評決を巡って、私たちの多くは、依然として、ショック状態にある。
パキスタン国民の反応は、予想通りの、圧倒的なもので、彼らの自発的な行動に、私は敬意を表したい。
ペシャワルから、イスラマバード、カラチ、ラホールに至るまで、そして更に他都市でも、何千人ものパキスタン人が、アーフィアの帰国を要求して、デモ行進した。
アメリカ・マスコミの中にさえ、陪審員達が下した評決を巡って、不快感を現しているものがある … 何かおかしいと、全員が感じていたのだ。
過去二年間、アーフィア博士と彼女の支持者への反対論を語り続けてきた、いつもは口数の多いアメリカ大使アン・パターソンを除いた全員に、言いたいことがあったのだ。
このアン・パターソンという人物は、2008年7月に、私がパキスタン・テフリーク・エ・インサフ(正義行動党)議長イムラン・カーンとともに記者会見を行い、バグラムの、グレー・レディーと呼ばれている女性囚の窮状を明らかにした際に、私を夢想家呼ばわりした、まさにその女性だ。彼女は、私がたわごとをいっているのであり、私が“650”と呼んだ囚人など存在していないと断言した。
月末には、彼女は言い分を変え、女性囚はいたが、彼女は絶対にアーフィア・シディキ博士ではなかったと言った。
そのころ、アーフィアは、十数人のアメリカ兵、FBI職員とアフガニスタン警官で満員のアフガニスタンの監房で、事実上の至近距離から撃ち倒されていた。
大使閣下は、囚人が、M4銃を兵士の一人から奪い取り、二発発砲したため、力づくで鎮圧するしかなかったと、マスコミに向かって説明した。こうした弾丸が、監房の中にいた一人たりとも命中せずに、ただ消えうせてしまったという事実が、この外交官にはピンと来なかったのだ。
2008年8月16日付けの嘘まみれの手紙で、彼女は「アーフィア シディキ女史の逮捕に関する、見当違いで、でたらめなマスコミ報道」を非難した。彼女は更に続けて言ったのだ。「不幸なことに、世論を操作し、たきつけるねらいから、単に事実をわい曲することだけに関心を持っている人々がいる。真実は、決して、扇情主義によって支配されることはない…」
アーフィア博士への虐待の継続と、彼女のバグラム幽閉に関する真実を、人々に伝えるべく、イスラム協会が、私をパキスタン全国遊説に招待してくれた際、アメリカ大使は反論をし続けていた。
彼女は、我々全員に向かい、アーフィア博士は、国際法に定められている通り、人道的に処遇されており、領事との面会も認められていると、保証した… なるほど。さて、今日は、私からパターソン女史に課題をさしあげよう。当時発言した言葉を一字一句繰り返し、それが、真実である、全て真実である、真実だけであると、誓うよう、私は彼女に要求する。
アーフィア・シディキ博士の裁判が進む中、アメリカ大使や、諜報機関の引き立て役連中が、イスラマバードのアメリカ大使館で、厳選されたジャーナリスト連中向けに豪華なパーティーをしつらえ、ダンスや飲み物と音楽の合間に、この訴訟の、いわゆる真実について、ジャーナリスト連中は、入念に情報を与えられたはずだと私は確信している。
大使が、長年にわたり、コンクリートの掩蔽壕や鉄条網の背後に身をひそめて暮らしながら、このパキスタンという偉大な国家、あるいはその国民について、彼女は何も学んでいなかったことを証明する、自分に不利になる可能性がありそうな、内輪のパーティーで撮影された何枚かの写真で、おそらくは、パキスタンの街路に、この裁判が与えるであろう影響を、極小化しようと願っている様子を伺い知れるのは興味深いことだ。
ある明敏なパキスタン人コラムニストが、彼女について書いている。「尊敬すべき女史は、お国の第16代大統領アブラハム・リンカーン(1809-1865)の名言を、お忘れになっておられるようだ。「国民の一部を、いつまでも騙し通すことはできるし、国民全員を、ある程度の期間、騙すことはできるが、全国民をいつまでも騙し通すことはできない。」
そして、パキスタン国民が一筋縄ではいかないことは既に証明済みで、ニューヨークでの有罪評決に、適切な方法で答えたのだ。
不法が、法となるのであれば、立ち上がって、その不法に、できる限りの方法で異議を申し立てることは、あらゆる人々の義務なのだ。
反応は、これまでのところ、控えめで、慎重だが、それも始まりにすぎない。判決は、5月に、リチャード・バーマン裁判官によって、言い渡されることになっている。
もちろん、ニューヨークでは、アーフィアを殺人未遂のかどで有罪とした陪審員団に対する責任追及や、非難が盛んに行われている。
彼等が一体どうして、科学と疑うべくもない事実を無視できたのかと、観測筋はいぶかしがっている … アーフィア博士と銃とを結びつける証拠は全く皆無で、弾丸はなく、発射による残留物もないのだ。
この評決をした陪審員達をとがめることは、我々にはできまいと私は思う。陪審員団は、単純に、真実に対処できなかっただけなのだ。彼等がもしも、 論理的なtake route科学的な、確かな、客観的な、冷静な事実を目指していれば、二つの事を意味することとなったろう。それは、自分は無事に逃れて、経歴に傷をつけずにすませるため、8人のアメリカ兵士達が、法廷で宣誓し、嘘をついたか、あるいは、アーフィア・シディキ博士が、真実を語っていたかを意味することとなったろう。
そして、私が先に述べた通り、陪審員団は、真実に対処することが出来なかったのだ。そうすれば、被告人が、射撃され、ニューヨーク行きの引き渡し便に乗せられる前に、実は、アメリカによって、ら致され、虐待され、拷問され、暗い秘密刑務所に拘束されていたことを意味することになったであろう為だ。これはつまり、彼女の三人の子供達も、そのうち二人はアメリカ国民なのだが、アメリカによって、ら致され、虐待され、拷問されていたであろうことを意味することになる。
知らぬが仏で、陪審員団は、生後五か月の男の赤ちゃんと、五歳の少女と、7歳の長男のら致に、アメリカが関与していようなどとは決して信じたくなかったのだと言う人々もいる。
彼等は、真実に対処することができなかったのだ … 実に単純なことだ。
そう、私も、世界中の、私のような多くの人々も、これ以上の嘘には対処できない。パキスタンにおける、アメリカの評判は、現在最低の状況にあり、これ以上は落ちようもない。
信頼は消え去り、残されたのは、無人飛行機を村々に飛ばして、無辜の人々を虐殺する超大国に対する、燃えるような憎しみと怒りだけだ。
極めて誠実で、礼儀正しいパキスタン国民にとって、アメリカの善意やら信頼性など、もう尽きたも同然だと言って、過言ではあるまい。
アン・パターソン大使閣下でさえも、事実を認識しており、それこそが、彼女が今、沈黙している理由だろうと私は思う。
もしも彼女に品格があり、多少たりとも自尊心が残っているのであれば、彼女はパキスタン国民の前に立って、無人飛行機で人を殺す連中、裁判無しでの殺人、非合法活動、ら致、拷問、アメリカ国民の引き渡し、水攻め、賄賂、汚職、そして何よりも、アーフィア・シディキ博士と、彼女の家族に対して行われた不法行為に対して許しを乞うべきなのだ。
その後に、彼女はアメリカ大統領に電話をかけ、彼に、アーフィアを釈放し、パキスタンで最も愛され、尊敬され、有名な女性である彼女を帰国させ、依然として行方不明の二人の子供に会わせてあげるよう言うべきなのだ。それから、2008年8月16日付けの自分の手紙を再読し、もう一通の手紙… 辞表を、書くべきだ。
イボンヌ・リドリーは、彼女が2003年3月にら致されて間もなく、アーフィア・シディキ博士の窮状を、初めて、世界に知らしめた「ケージプリズナーズ=Cageprisoners」後援者の一人。受賞歴がある調査ジャーナリストのリドリーは、バグラムのグレー・レディーが、アーフィア・シディキ博士であると結論づけたドキュメンタリー映画『囚人650号を探して』を、映画制作者ハッサン・アル-バンナ・ガニと共同制作した。
記事原文のurl:www.informationclearinghouse.info/article24605.htm
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同じ筆者による下記の関連記事を、以前訳してある。現場を本当に見たジャーナリストでなければ書けない文章だ。
昨日、ジャストシステムブログ事務局から、以下のようなメールが届いた。
日頃よりジャストシステムブログサービスをご利用いただき、誠にありがとう
ございます。
2007年2月より弊社にて運営してまいりました
「ジャストシステムブログサービス」ですが、諸処の事情により、
2010年3月末日をもちまして、シックス・アパート株式会社へサービスを移管
することとなりました。
皆様にはご心配とご不便をおかけすることとなり、大変申し訳ございません
が、現在ご利用中の皆様に極力ご迷惑をおかけすることのないようにしたい
と考えております。
運営元が変わるのであれば、これまでJUSTBLOGに書いた記事、何とも面倒だが、3/31以前に、全てこちらに移行するしかなさそうだ。
インターフェースが良く似ているのが救いだが、引っ越しサービスなるものは使えない。
折角頂いたコメントや、トラック・バック、全て消滅してしまうのが残念。
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どうもこんにちは。
今回のアルジェリアの一連で、武装勢力側が
『Aafia Siddiqui氏とエジプト人のOmar Abdel-Rahman氏の解放と人質を交換』を主張している事を聞いて調べてたらたどり着きました。
従来からアメリカは偽善の国で自分たちの利益の為なら何をしようが、無辜の民を殺そうが構わない世界有数のクズ国家だと理解してるので、この話しをすんなりと納得できました。
何か、イスラム勢力にバラされたら困る事情があったからアルジェリアは焦って人質ごと殺すという暴挙にしたんでしょうか。
人質を救うよりも、アルジェリアにとって利益だから爆撃したとすれば、つじつまが合いますよね。(まだ推測の域ですが)
逃がしたら、よっぽど困る事情があったとした考えられません・・
『真実は1つ』なので、それを追い求めて行きたいですね。
投稿: ゆたか | 2013年1月19日 (土) 01時46分