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2010年1月 4日 (月)

オーウェルの『2010年』の世界にようこそ

John Pilger

2009年12月30日 "Information Clearing House"

小説『1984年』の中で、ジョージ・オーウェルは、その戦争言語では、嘘が反転して、「過去の歴史、真実とされてしまい、‘過去を支配するものは、未来を支配する。現在を支配するものは、過去を支配する’が党のスローガン」だという、オセアニアと呼ばれる全体主義国家を描いた。

バラク・オバマは現代オセアニアの指導者だ。二十一世紀の十年最後の二つの演説で、ノーベル平和賞受賞者は、平和は、もはや平和ではなく、“アフガニスタンとパキスタンを越え、不安定な地域や、拡散した敵へと遥かに広がる”永久戦争だ、と述べた。彼は、これを“世界の安全”と呼び、我々がアメリカに感謝をするように求めた。アメリカが侵略、占領した、アフガニスタン国民に対しては、機知豊かにも、「我々はあなた方の国を占領することに関心はない。」と言ってのけた。

オセアニアでは、真実と嘘は不可分だ。オバマによると、2001年のアメリカによるアフガニスタン攻撃は、国連安全保障理事会によって承認されている。国連の権限など皆無だったのに。彼は、9/11後“世界”は侵略を支持したのだと述べた、しかし実際には、ギャラップが調査した37ヶ国のうち、わずか三カ国を除く、他の国々は大反対を表明していた。アメリカは、“タリバンが[オサマ]ビン・ラデンの引き渡しを拒否した後、ようやく”アフガニスタンを侵略したのだと彼は語っている。2001年、タリバンは三度にわたり、ビン・ラディンを裁判のために引き渡そうとしたが、それは無視されたのだと、パキスタン軍事政権は報じている。戦争を正当化するための、9/11のオバマによる神秘化すら偽りだ。ツイン・タワーが攻撃される二ヶ月以上も前に、パキスタン外務大臣ニアズ・ナイクは、ブッシュ政権から、アメリカの軍事攻撃が十月中頃までには行われると聞かされていた。クリントン政権が秘かに支援していたカーブルのタリバン政権は、カスピ海への石油とガス・パイプラインを巡るアメリカの支配を保証するのに、もはや十分“安定”しているとは見なされなくなっていた。タリバン政権は打倒されなければならなかったのだ。

オバマの最もずうずうしい嘘は、今日のアフガニスタンが、アルカイダによる対西欧攻撃のための“安全な避難場所”だというものだ。彼の国家安全保障顧問ジェームズ・ジョーンズ将軍自身が、10月、アフガニスタンに、アルカイダは“100人以下”しかいないと語っている。アメリカの諜報機関によると、タリバンの90パーセントは、到底タリバンとは呼べないしろもので、“アメリカが占領軍であるがゆえに、自らを反米と考えている現地部族の武装反抗勢力”なのだ。戦争は、詐欺行為だ。末期的に愚かな連中だけが、オバマ・ブランドの“世界平和”に忠実であり続けている。

ところが表面下に、本格的狙いがある。イラクで、暗殺部隊で功を成した物騒な人物、スタンリー・マクリスタル大将の指揮下、最も貧しい国の一つの占領は、オセアニアの権力が及ぶ範囲を超えた、世界中のこうした“不安定な地域”に対するお手本だ。これは、軍隊、援助団体、心理学者、人類学者、マスコミや広報関係の、金のために働く連中を集めた対ゲリラ・ネットワークで、略語COINとして知られているものだ。人々の心を惹きつけることにまつわる専門用語で覆われてはいるが、狙いは、ある民族集団を他の民族集団と戦わせ、内戦を煽り立てることにある。タジク族とウズベク族、対パシュトゥーン族だ。

アメリカは、これをイラクで実行し、多民族社会を破壊した。アメリカは、かつては交婚していた様々な共同体に賄賂を渡し、共同体間に壁を築き、スンナ派を民族浄化し、イラクから何百万人も追い出した。軍隊に埋め込まれたマスコミは、これを“平和”だと報道し、アメリカ人学者達はワシントンに買収され、ペンタゴンにブリーフィングされた“治安対策専門家連中”がBBCに登場し、良いニュースを広めている。小説『1984年』の中と同様、逆こそ真実なのだ。

これとよく似たものが、アフガニスタンでも計画されている。人々は、アメリカとアヘン取引から資金を得ている部族軍長が支配している“目標地域”の中へ追い込まれている。こうした部族軍長達が蛮行で悪名高いことなどどうでもよい。クリントン時代のある外交官は、“安定した” タリバンが支配するアフガニスタンでの女性虐待について、“我々は彼らと共生できる”と言った。お気に入りの西欧救援組織、技術者や、農業専門家達が、“人道的危機”の世話をし、従属させられた部族の土地を“確保する”のだ。

これは理論だ。この理論は、かつては平和だった社会を、民族的-教派的分断が、一掃したユーゴスラビアでは、一応機能したが、南部の住民を囲い込み、分断し、『タリバン』と同様に、レジスタンスを指すアメリカの包括的な用語である『ベトコン』を打ち破るよう計画された、CIAの“戦略村落計画”は、ベトナムで失敗した。

こうしたことの多くの背後には、イスラエルがいて、イラク・アフガニスタン両方の投機的事業で、アメリカに対し助言をしている。民族浄化、壁の建設、検問所、集団的懲罰や絶えざる監視等々が、パレスチナの大半を先住民から奪うのに成功した、イスラエルによる革新だとして喧伝されている。しかし、こうしたあらゆる苦難にもかかわらず、パレスチナ人は決定的に分断されてはおらず、大きな困難をものともせず、一つの国民として持ちこたえている。

このノーベル平和賞受賞者や、彼の奇妙な将軍達や広報担当者達が、我々に忘れて欲しいと願っているオバマ計画の最も顕著な前触れは、アフガニスタンにおける過去の失敗事例だ。19世紀にはイギリスが、二十世紀にはソ連が、あの不毛な国を、民族浄化によって征服しようと試みたが、ひどい流血の後に撃退された。帝国の墓場が彼らの記念碑だ。民衆の力は、時に不可解ながら、英雄的なことが多いが、雪の下に種を残すのだ。侵略者達はそれを恐れている。

オーウェルは『1984年』で書いている。「この空は、ここで眺めているのと同じように、ユーラシアからでもイースタシアからでも、誰にとっても同じものなのだと思うとひどくおかしかった。しかも空の下に生きる人々は、お互いどれだけ似ていることか、世界じゅう何処でも、自分たちと同じような人間が、…お互いの存在さえ知らず、憎悪と嘘の壁に隔てられていながら、お互いとても似ていて…その心と胃と筋肉は、いつの日か、世界を転覆させる力を蓄えつつある。」

www.johnpilger.com

本記事のリンクはInformation Clearing Houseによるもの。

記事原文のurl:www.informationclearinghouse.info/article24286.htm

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間もなく「BOOK3」が刊行される『1Q84』という本、「BOOK1」「BOOK2」2冊あわせて200万部以上売れているという。読んだことが(読む予定も)ないので、本そのものについて論評する資格は皆無。それでも『1984年』がさほど売れていない状況で『1Q84』が売れているというのは、この国の文化、歪んでいるのではと思わざるを得ない。オーウェル原作の『1984年』が、『1Q84』10分の1ぐらい売れた上で『1Q84』も売れているなら問題は小さかろう。

『1Q84』売り上げ200万部以上という記事を読むと「日本はガラパゴスのような国」と思えてくる。ガラパゴスを非難しているのではない。観光立国は素晴らしいことだ。世界の他の国々と生態系が大きく違っていることが、商売になって、主要産業として、生きてゆけるのであれば、それで全く問題はないだろう。読んでいない本の著者を非難するのではない。買うのは読者の皆様の自己責任。本を論評する雑誌まで出ている。単純に、日本はガラパゴスのような、外界とは隔絶した特殊文化のようだ、と述べているに過ぎない。ただ、日本は、生態系が大きく違っていること、だけを商売にしては、生きてはいけないだろうと思う。

英語を母語とする国々、あるいは英米旧植民地の国々では『1984年』が広く読まれている。いやオーウェル自身が、それほど読者を獲得できると想像していなかったであろうロシア・東欧ですら、現地語に翻訳され、膨大な読者を得ている。おそらく、日本は、数少ない例外だろう。属国国民が、属国であると自覚していない不思議な国。戦争に負けたのだから属国になっても、やむをえまい。悲しいことであっても、恥ずかしいことではないだろう。独立国のふりをするのが恥ずかしいだけのこと。ともあれ英語圏では、オーウェルの『1984年』のような状況、と言っただけで、わかる人はわかる。「だからどうだ」とおっしゃるむきもあるだろう。

英語を母国とする国、具体的には、宗主国では、授業で『1984年』を教えるというのを、どこかで読んだ記憶がある。英語アンチョコ本が売れている様子を見ても本当のようだ。

『1Q84』という本、単なる想像でしかないが、『1984年』ほどの「毒」は、つまり気味が悪いほど未来を予言している部分は、さほどないのではあるまいか?題名をちゃっかり流用しただけで、全く無関係なのかも知れない。

もしも、いわゆる「本歌取り」であれば、読者は、元の歌を知っていてこそ、面白さ・理解は増すだろう。そうでなくとも、『1984年』、外国人との英会話とは言わないが、中身ある会話をするのに『1Q84』より役にたつだろう。『1Q84』をくさしているのではない。『1Q84』には、まだ英訳がないので日本語が堪能な外国人としか話題にはできまい、というだけのこと。「本歌取り」でないのであれば、まぎらわしい迷惑な題名。オーウェルが生きていたら、訴訟ものだろう。

要するに、こうした、無料、無責任、無内容な後記を読まれるより、翻訳版『1984年』をお読みいただくことを切に願っている。『1984年』、決して「楽しい」、「面白い」本というのでない。現在の状況を、60年ほど前に書いてしまっている「気味悪さ」についてお読みいただきたいと申しあげているだけ。誤解の無いようお願いしたい。

日本、特に選挙では「ガラパゴスのような」属国だと、投票権を得る頃から思いつづけている。少数派原住民にはたまらないが、宗主国から見れば、さぞや面白い温室だろう。次回選挙で、民主党が圧勝すれば、政治的ガラパゴスが永久化する。宗主国から見れば面白い実験かも知れないが、属国国民にすれば、過去はナチス・ドイツ、現在はナチス・アメリカで、実験済みのこと。喜んで民主党に投票される皆様、こちらからは閻魔様にしか見えない。何が楽しくて、自らファシズムにのめり込まれるのか、さっぱりわからない。

上記文章の末尾の引用部分、新庄哲夫訳を参考にさせていただいたが、訳書では下記。

旧版(新庄哲夫訳)では、283ページ中央。

新版(高橋和久訳)では、338ページの終わり近く。

そして、「自民党は我々の力で倒した。民主党で世の中、巧く行く」と我が世の春を謳う皆様には、同じジョージ・オーウェルの名作『動物農場』も大いにお勧めしたい。幸い川端康雄氏による新訳も岩波文庫から刊行されている。もちろん、『動物農場』をお読みになって、行動を変えるような読者がおられるはずもないのは承知の上。

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