アメリカ、アフガニスタンにおける、ファルージャ型攻勢を準備中
wsws.org
Tom Eley
2009年12月5日
金曜日、オバマ大統領が、更に30,000人の兵士をこの戦争に派兵すると発表して以来、アメリカが率いる占領で、最初の大規模攻勢として、およそ1,000人の海兵隊員が、武装反抗勢力が支配する南部アフガニスタン地域を攻撃した。
ほとんど見捨てられた都市ナウザドへの攻撃は、アメリカ軍が、ヘルマンド州におけるタリバン・レジスタンスの中心だと言っている、より大規模で、より人口の多い都市、マルジャへの攻撃の準備として行われた。ナウザドでの作戦の司令官、ラリー・ニコルソン准将は、予定されている対マルジャ攻撃の、手本は、何千人もの一般市民が殺害された、2004年のアメリカによるイラクの都市ファルージャの破壊だと語っている。そうした攻撃がいつ行われるのかは明らかではない。
金曜日の朝、“コブラの怒り”と名付けられた攻勢で、北からヘルマンド州のナウザド渓谷に数百人の兵士飛来し、もう一つの部隊が、南から徒歩で入った。イギリス軍は、東から補助的な攻撃を行った。ヘリコプターと、垂直離着陸機のMV-22オスプレーと、およそ150人のアフガニスタン兵士が作戦に参加している。
ABCニューズの映像は、敵がいないアメリカ軍が、激しい砲兵射撃で、建物を潰して行く様を写していた。親米派の州知事ダウード・アフマディは、金曜日、作戦の結果、これまでに、4人のタリバン戦士の遺体が見つかったと語っている。(ペンタゴンとカーブル政府は、アメリカ軍作戦で殺害された人々はタリバンだと表現するのがお決まりだ。) NATO側死傷者についての報告はない。
オバマが、アフガニスタンに、30,000人の兵士を“増派”する(その大半がアフガニスタン南部に派兵される)と発表してから、わずか三日後に行われたが、ヘルマンドでの攻撃は、今後遂行されるアフガニスタンでの戦闘作戦のある種の前兆だ。「コブラの怒り」作戦は、オバマの戦争戦略が、圧倒的な暴力を使って、アフガニスタン人住民を威嚇し、恫喝するものとして特徴づけられることを示している。
「この作戦がどのように実施されるのかを見せて、今後一体タリバンに何がおきるか、タリバンに対する警告を意図したものであることは疑う余地はありません。」アル・ジャジーラのアフガニスタン特派員スティーブン・チャオはそう語っている。
この作戦の短期的な戦術的目的は、軍のスポークスマンによれば、南北と東西の補給路を断ち切るために、タリバンの“安全な隠れ場”を破壊することであり、“100人以上の強硬な武装反抗勢力”をナウザド地域から一掃することがだという。
ナウザドの武装反抗勢力は、人数こそ少ないものの、夏には、海兵隊の前進作戦基地の“海兵隊の北、わずか数百ヤード(メートル)に戦線ができるほど、強固な陣地”に塹壕を掘って身を隠すのに成功しているとAP通信は報じている。
この地域に長年駐留していたイギリスもアメリカもナウザドを確保できてはいない。APによると“かつて駐留していたイギリス兵士達は、1979年のベトナム戦争映画の題名、アポカリプス・ナウ(邦題『地獄の黙示録』)”にならい、町に‘アポカリプス・ナウザド’とあだなをつけた落書きを残して行った。“イギリス軍基地は、防御壁から数ヤード(メートル)以内にまで接近した武装反抗勢力により、何回かほとんど制圧されるところだった。地域は2008年に海兵隊にゆだねられ、海兵隊が奮闘し、渓谷の大半を奪還した。」
2001年のアメリカ侵略前、アヘン商売用のケシ栽培の中心地、ナウザド市には、30,000人の住民がいた。マスコミ報道によると、今やそこは“ゴーストタウン”で、“事実上、無人”だ。
ナウザド地域の占領は、今年夏の、オバマが、就任後、更に21,000人の兵士派兵を命じたことによって可能となった攻撃だった、海兵隊による村の攻撃後に、多数のアフガニスタン人が逃げこんだ、この地域の大きな町マルジャを攻撃する準備だ。
ニコルソン准将を含む海兵隊は、“アフガニスタン国軍とともに、2004年11月のイラク、ファルージャの戦闘と似たような掃討作戦で、タリバンをマルジャから追い出すことを計画している事実を隠そうとしていない”とロサンゼルス・タイムズは報じている。
“マルジャはヘルマンド州で最後の大規模な避難所で、敵が自由に活動できる最後の場所だ”とニコルソンはLAタイムズに語っている。“我々は連中から、これを奪いとるつもりだ。」ニコルソンは、あちこちでマルジャを“ヘルマンドの癌”と呼んでいる。
“マルジャは、ファルージャよりもずっと大きく、灌漑用水路で区切られており、兵士や車両の移動が困難だ” とLAタイムズ紙は報じている。“それにまた、人口密度が高いので、もしも海兵隊が強制的な一軒ごとの急襲を開始した場合、見込まれる一般市民の死傷者数が大きい。”
何千人もの一般市民が閉じ込められ、触れると衣服も皮膚も溶かしてしまう、白燐弾のような化学兵器まで使用した激しい爆撃を受けた、アメリカ軍のファルージャを攻撃、破壊の際に、ニコルソンは、海兵隊の地域司令官だった。猛攻は市の建造物のおよそ70パーセントを破壊した。
現在のマルジャ同様に、アメリカのイラク占領に対する反抗の中心だったがゆえに、ファルージャに白羽の矢が立ったのだ。この都市に対する恐るべき攻撃は、現代史における最大の戦争犯罪の一つだが、住民に対する集団懲罰と、それ以外のイラク、そして事実上、世界に対し、アメリカ帝国主義の命令に反抗する連中が一体どうなるかを示す実物教育として役立った。(“ファルージャと、戦争の法則”参照。ただし英語原文)
アメリカ軍が、あからさまに、ファルージャ式のマルジャ攻撃準備をしているのは警告として受け止めるべきだ。今後何年間も、オバマ政権の“増派”は、アフガニスタンにおいて、ブッシュ政権がイラクでしでかしたものをしのぐ、大虐殺と戦争犯罪をもたらすだろう。アメリカや他のNATO諸国の労働者階級が、オバマの攻勢や、彼の選出を支持し、彼の政権による犯罪に直面して、今や沈黙したままでいる“左翼”陣営に対して、結集することが喫緊の課題だ。
オバマはまた、最近、中央情報局(CIA)が、パキスタンでの、プレデター無人機攻撃利用を拡大するのを認めており、ニューヨーク・タイムズは最近、破滅的な暗殺計画について、好意的な記事を掲載した。ミサイル攻撃で、過去二年間に、数百人が殺害されており、CIAの非公式な集計では、少なくとも400人殺害されている。実際の数値は、1,000人に近い可能性が高い。
国際法とパキスタンの主権をひどく侵害しながら、タリバンやアルカイダの支援者とされる人びとに対して、無人機ミサイル攻撃が遂行されている。無人機の飛行は、バージニア州、ラングレーのCIA本部にあるビデオ・ゲーム機のような操作卓で操縦される。アメリカは、公式にはそうした攻撃の否定しているが、殺害された人々は、ほとんど全員がタリバンかアルカイダだと主張し、こうした主張を裏付けるようないかなる証拠も提示していない。
ワシントンが無人機攻撃を強化し、イスラマバードに無理やり、国境地域の部族に対する全面的軍事作戦を開始させたことが、パキスタンを不安定化し、一連のテロ攻撃をひき起こした。
こうした攻撃の最近のものに、月曜日に、4人の過激派が手榴弾と自動小銃を用い、パキスタンの最高位の将軍たちが、金曜礼拝に訪れていたモスクを襲い、自爆する前に、銃と手榴弾で、36人を殺害した事件がある。死者の中には二人の将軍と数人の将校がいた。
攻撃の厚かましさはパキスタン政府と高級将校を驚愕させた。これは、パキスタン軍本部があり、イスラマバードの大郊外である、ラワルピンジの厳重に警備されている地域でおきたが、この二カ月間で三度目のラワルピンジにおける攻撃だった。10月10日には、武装集団が軍司令部を攻撃した。一日がかりの戦闘で、過激派を含め、23人が死亡した。
パキスタン中での過激派の攻撃で、10月以来、400人以上が亡くなった。
記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2009/dec2009/afgh-d05.shtml
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インチキ二大政党間の政権交代とは言え、郵政株式売却凍結法成立は素直に喜びたい。
森田実氏もblogで喜んでおられる。五十嵐仁教授も、五十嵐仁の転成仁語で、12月3日(木)「政権交代による大きな成果も生まれている」という、具体例をあげた記事を書いておられるが、その中で郵政株式売却凍結法にも触れておられる。
ところで、既に旧聞に属することだが、自由民主党が、退勢を挽回するために、党名変更を検討したという。是非、『非自由非民主党』という実態を現す名前に変えていただきたかった。むろん、民主党は『非民主党』に、公明党は『非公明党』にしていただければ、大変嬉しい。
投票はしないが、座布団一枚ぐらい差し上げたいと思う。
「ノーベル平和賞」といい、党名といい、憲法「改正」、あるい、個別法案、たとえば、障害者自立支援法といい、実態と全く逆が、その真実であるようだ。イギリスの作家G.オーウェルの作品『1984年』に出てくる有名なスローガンやら省庁の名前、オバマ大統領や民主党(日米両方)の念仏を先取りしている。
戦争を推進する役所は平和省。虚偽の政治宣伝をする役所は真理省。反体制派への尋問、拷問を行う役所は愛情省。
そしてあの有名なスローガン「戦争は平和だ。自由は隷属だ。無知は力だ。」
あの本を始めて読んだ時、気味の悪い本とは思ったが、まさか、世の中が、そうなってしまうとは、全く予想もしていなかった。ノーベル戦争賞は、平和賞だ。
追記:
同じwsws.orgに、2010/2、別筆者による、同様題名の記事が掲載された。翻訳は下記。
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