アメリカ占領と、ハミド・カルザイの腐敗したマフィア国家
Mike Whitney
2009年12月12日
木曜日にノーベル賞受賞演説をする前に、バラク・オバマが、マラライ・ジョヤに相談しなかったのは、実に残念だ。この元アフガニスタン国会議員なら、継続中のアメリカ占領が、アメリカとアフガニスタン双方の利益を損なうものであるということを、大統領が理解するのを手助けできていたろう。アフガニスタンは、演説の中で、あれほど情熱的にオバマが擁護したような"正しい戦争"ではない。それは、ジョヤがその新著『軍閥の中に女一人:大胆にも抗議の声を上げた、あるアフガニスタン人の驚くべき物語』の中で、概要を描いている、アメリカの大規模な地政学的戦略の一部なのだ。アメリカの為政者達が、中国の成長を監視し、ロシアを包囲し、カスピ海盆地の重要な天然資源を支配し、アジアを"将来の市場"とみなしているアメリカの巨大企業を保安を提供するための橋頭堡を、中央アジアに打ち立てようと決めたのだ。グレート・ゲームのやり直しなのだ。アフガニスタンにおける"勝利" というのは、一握りの兵器製造業者、石油王、軍事関係請負業者達が、非常に儲かるということを意味している。ただそれだけのこと。アル-カイダやら、"デモクラシーの推進"やら、アメリカの国家安全保障とは無関係なのだ。皆全て、広報活動の子供だましに過ぎない。
『軍閥の中に女一人』は、アメリカによるアフガニスタン侵略を巡る多くの幻想にメスを加え、意見対立をひき起こすような本だ。たとえば、大半のアメリカ人は、アフガニスタンではありきたりな言葉"軍閥戦略"など、聞いたことがないだろう。それは、この言葉が、アフガニスタン"解放"という、西欧マスコミの物語とうまくかみ合わないためだ。事実は、ドナルド・ラムズフェルド国防長官が率いたアメリカの戦争立案者達は、最初の一弾が発射される前から、アフガニスタンの全地域を、軍閥に引き渡すという計画を決めていた。あらゆる"解放"論は、戦争支持を導き出すための策略に過ぎなかったのだ。最初に戦争を正当化した理由が、でたらめのかたまりと知っていたら、一体何人のメリカ人が、更なる兵士の派兵を支持しただろう?
ジョヤは、彼女なりに、以下のように要約している。
「占領にも、NATOが支援する、ハミド・カルザイや軍閥や麻薬王の、腐敗したマフィア国家にも、アフガニスタン国民はうんざりしている.... 今や、いわゆる“対テロ戦争”という口実の陰に隠された、アメリカとその同盟諸国の本当の動機が、アフガニスタンを、中央アジアにおける軍事基地と、世界のアヘン麻薬取引の中心に変えようというものであったことは明かだ。普通のアフガニスタン国民は、このチェス・ゲームでの駒に使われ、西欧の納税者達の金や兵士達の血が、この地域を一層不安定化させるだけのこの目標のために、無駄にされる....
私はここで、最愛の人を亡くされたご遺族の方々に、お悔やみを申しあげておいたい。(彼らは)アメリカ政府の誤った政策の犠牲者だ。この戦争で殺害されたアフガニスタン民間人の家族たちも、皆さん方の故人への思いを共有している。もし、こうした悲しみを、力に変えれば、我々はこの戦争を終わらせることができる。2011年末に、兵士たちを帰国させるというのは遅すぎる。更なるアフガニスタン人とアメリカ人の命が無駄に失われる前に、兵士達はできるだけ早急に撤退させられるべきだ。」
ジョヤは、焦点を絞って妥協することがない。女性一人の救援部隊だ。彼女は、戦争への抗議を語って聴衆を心服させることができる感動的な演説家でもある。人々は彼女の激しさ、誠実さ、正義への確固たる姿勢を感じ取れる。戦争や苦難を永続させるだけでしかない、高慢に響く陳腐な言葉を好む嗜好は、オバマと違って、彼女にはない。(オバマのノーベル賞演説引用「我々は、厳しい真実を認めることから始めなければならない。我々が生きている間には、暴力を伴う紛争を根絶することはできないのだ。」) ジョヤの目標は平和だ。30年間の戦争の終結、アメリカ占領とイスラム狂信の終結だ。残念ながら、オバマの軍事エスカレーションは、更に多くの人々に災厄をもたらしながら、紛争が、今後何年間もダラダラ長引くのを確実にするだけだ。
マラライ・ジョヤ「私がこうして文章を綴る間にも、アフガニスタンは徐々にひどくなりつつある。我々は二つの敵の板挟みになっている。一方にはタリバン、そしてもう一方にはアメリカ/NATO軍と彼らが雇った軍閥達.... オバマの軍事増強は、無辜の民間人の苦難と死を増すばかりだ.... 本書中の教訓が、オバマ大統領やワシントンで彼の政策を決定する人々の元に届き、彼らの残虐な占領を、彼らによる軍閥や麻薬密売組織のボス達への支援を、アフガニスタン国民が拒否していることを、彼らに警告してくれることを願っている。」 (『軍閥の中に女一人』、5ページ)
『軍閥の中に女一人』は、アメリカ侵略によってもたらされた大規模破壊を、読者にかいま見せてくれる。軍閥達を権力の地位に復帰させ、3200万人のアフガニスタン国民に、戦犯や人権侵害者の下で、恐怖の生活を強いた、ラムズフェルドの戦略を、ジョヤは繰り返し非難している。彼らのことを、"北部同盟"、あるいは、同様に誤解されやすい、"アフガニスタン救国・民族イスラム統一戦線"と呼んで、軍閥達を掩護しているマスコミにも、彼女は照準を合わせている。ジョヤが指摘する通り、紛争に対する人々の考え方は、虚報、切り捨て、プロパガンダによって、形作られている部分が大きいのだ。オバマのノーベル賞演説は、今度は、更に優秀な広報担当者によって、これと全く同じ嘘がつかれるという証明だ。
マラライ・ジョヤ:「アメリカ合州国が空爆をしている間に、CIAと特殊部隊は、既にアフガニスタンの北部諸州に到着し、何百万ドルもの現金と、武器とを、北部同盟の司令官達に配っていたのだ。連中は、その民兵が、内戦の間、アフガニスタンを略奪したのと、まさに同じ過激派だ。数ある中、ドスタム、サヤフ、ハリリ、ラッバーニ、ファヒム、アリフ将軍、ドクター・アブドッラー、ハジ・カディール、ウスタド・アッタ、モハメド、ダウド、ハズラト・アリ等。...ファヒムは暗い過去を持った冷酷な男だ。西欧のマスコミは、当時こうした軍閥達を"反タリバン・レジスタンス勢力で、アフガニスタン解放者"として描きだそうとしていたが、実際、アフガニスタン国民は、連中とて、タリバンと変わりはしないと信じていた。」(同書、52ページ)
激しい空爆の中を、タリバンがパキスタン国境を越えて逃れていた頃、軍閥達が、全ての州を掌握し、現地の人々に対する残虐非道な支配を取り戻していた。ブッシュ政権は、一つの抑圧的政権を、別の抑圧的政権で置き換えることに成功した。民主主義を確立しようという努力は、全くなされていない。
ニューヨーク・タイムズの2001年11月19日記事はこうだ。「1990年代初期に、アフガニスタンを分裂させ、その腐敗と背信ゆえに、タリバンによって破られた、きら星のようにい並ぶ軍閥達が王座に復帰し、それまでいつもしてきたやり方で、権力を行使する態勢にある。」
ジョヤは、「1990年代に、カーブルで、何千人も殺害した。」過激な原理主義者、アブドル・ラスル・サヤフを含む、多くの軍閥達の略歴も書いている。彼は、あるカーブル粛清で、兵士たちにこう命じていた。「誰一人、生き残らせるな--全員殺害しろ。」サヤフは「1980年代に国際テロリストのオサマ・ビン・ラディンをアフガニスタンに招いた人物だ。彼は、9-11攻撃の首謀者だったとアメリカが主張している人物、ハリド・シェイク・モハメドをも、教育し、庇護していた。」(67ページ)
連中が、ビン・ラディンやハリド・シェイク・モハメドの友人を保護しているのだということを知っていたら、一体何人のアメリカ人が、戦争を支援し続けただろう?
再度マラライ・ジョヤを引用しよう。「西欧の大半の人々は、アフガニスタンでの女性への不寛容、残虐行為、ひどい抑圧は、タリバン政権から始まったと信じ込まされている。だがこれは嘘で、アメリカが支援する、いわゆるハミド・カルザイの民主的政府を支配する、軍閥達が、世界に放つ目くらましなのだ。実際、近年のアフガニスタンにおける最悪の残虐行為のいくつかは、内戦の間に、現在権力を握っている連中によって行われた。」
1992年のアフガニスタン内戦最悪の時代、軍閥のある集団がカーブルを掌握し、その大半を跡形もなく崩壊させた。「ドスタム、サヤフ、マスード、マザリや、ヘクマチヤルの民兵が、市を略奪し、家々から強奪し、女性を虐殺し、強姦した。信じ難いほどの死亡者数についての公式数値はないが、最終的に、カーブルだけでも、65,000人から80,000人の範囲で、無辜の人々が殺害された。国連によると、市の90パーセント以上が破壊された。(最終的に)「アフガニスタンは、対抗しあう殺し屋や軍閥の気まぐれで支配される封土へと、分割された。」(同書 26ページ)
ジョヤの解決策「全ての外国軍隊の撤退」
マラライ・ジョヤ:「軍隊が撤退すれば、内戦が勃発するだろうという人々がいる。こうした見解は、アフガニスタンで、既に起きている、ひどい紛争や人道的災厄を無視している人々から出されることが多い。アフガニスタンに、外国軍兵士がより長く駐留すればするほど、アフガニスタン国民にとって、結果としておきる内戦はますますひどいものになる。ソ連撤退の後に起きた恐ろしい内戦は、確かに正当化しようもない... あの10年の占領によってひき起こされた破壊と死。" (217ページ)...現在我々は、世界でも最も腐敗し、不人気な政府の下、銃に脅かされて暮らしている。(211ページ)
西欧のマスコミで、人が読んでいるの戦争は、本当の戦争ではない。オバマ支持者達は、『軍閥の中に女一人』を入手して、占領の現実と、新聞で報道されているプロパガンダとを比較すべきなのだ。事実は、アメリカ合州国が、アフガニスタンを、大量虐殺マニアとイスラム狂信者の集団に、引渡したのだ。現在でさえ、アメリカ合州国による継続支援無しに、軍閥達は、アフガニスタン国民への残虐な弾圧を継続できていないはずだ。軍閥達の多くは、未だにアメリカから給料を支払われているが、オバマは"平和賞" 演説の中で、何故かこれには触れ損ねた。
『軍閥の中に女一人』は、素晴らしい読み物であり、戦争プロパガンダの絶えざる集中砲火に対する、完璧な対抗手段だ。間違いなく、一読に値する。
記事原文のurl:www.smirkingchimp.com/thread/25483
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読みやすさを考え、文中勝手に『軍閥の中に女一人:大胆にも抗議の声を上げた、あるアフガニスタン人の驚くべき物語』と訳したジョヤの本、原題は下記の通り。
"A Woman Among the Warlords: The extraordinary story of an Afghan who dared to raise her voice"
"A Woman Among the Warlords"は、Amazon.com(本国)でさえも、書評で絶賛されている。
郵政解体の指示も書かれている「年次改革要望書」のからくりを暴いた『拒否できない日本』の取り扱いを、「品切れ」として徹底的にサボっていた(特に911郵政破壊選挙中)同社の属国支社より、宗主国本社、心が広いのだろうか?それとも、宗主国の国民の方が、属国の国民よりも民度が高いことの反映なのだろうか?
この本、是非読んでみたいが、件のネット会社からは決して購入しない。
英会話が好きでもなければ、うまくもない素人としては、こうした本を読むことの方が、英会話を習うより、はるかに重要で、しかも、経済的だろうと思う。これはむろん、発音の悪さ・文法欠如の言い訳。営業妨害をするつもりは皆無。
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