パシュトゥニスタンにようこそ -アメリカの秘密戦争の狙いは何か?
Shaukat Qadir
2009年12月24日 "The National"
ブラックウオーター、後に、ブラックウオーター・ワールドワイドとして、そして現在はXeとして知られている会社を知らない人は、もはやほとんどいるまい。1997年に創立され、ノース・カロライナに本社を置く、民間警備会社は、アメリカ海軍シール特別部隊の元隊員だった、エリック・プリンスが所有し、CIAとFBIの両方と長期的なつながりをもっている。
同社のパキスタン駐留は、ここ数年、公然の秘密だった。先月、調査ジャーナリストで作家で、ブラックウオーターに関する権威者で、ベストセラー本、『ブラックウォーター:世界最強の傭兵軍の勃興』の著者ジェレミー・スケイヒルが、同社が2006年から滞在していることを明かにした。ブラックウオーターは、基本的に、オサマ・ビン・ラディンを含む、重要度の高いアル・カイダ指導部を標的とする秘密作戦に雇われているが、同社は、無人機攻撃用の情報提供も支援し、容疑者を拉致し、尋問のため、彼らをアメリカに移送していると彼は言う。
言い換えれば、同社は、殺害あるいは拉致免許を持ったアメリカ企業で、ある日、説明責任を問われかねない、公式アメリカ機関を責任から免れさせているのだ。(ただし、個人的には、CIAが説明責任を問われるようなことになるなどとは思わない。CIAは、世界で唯一の、本当にならず者の諜報機関であると、私は断言し続ける。モサドは、あらゆる作戦行動の自由を享受しているかも知れないが、イスラエル首相の承認無しには、その一つたりとも実行できない。そうした規制は、決してCIAには適用されない。)
スケイヒル氏は、憶測はしない人物なので、発言は軽視すべきではない。だから、彼が、Xeがカラチにいると語る場合、彼が間違っている可能性は低い。作戦は極秘なので、オバマ政権幹部の多くは、それを知らないと、彼は付け加えた。
とはいえ、彼は一点だけ、間違えているようだ。Xeはカラチだけにいるわけではない。同社は、イスラマバードやペシャワールにも、大挙して滞在しており、そこでこの組織が7軒の隣接する家を借り上げたことを私は知っている。そうした家々に連中が入居してすぐに、こもった爆発音を聞いた隣人達は、そうした家が地下トンネルでつながっているのではないかと考えている。
元大統領ペルベス・ムシャラフが、ブラックウオーターのパキスタンへの入国を許可したことについて、私は全く驚かない。もしも、ジョージ・ブッシュが、彼にそう望むのであれば、進んでワンと吠えたろう。アースィフ・アリー・ザルダーリーとて、彼と大差ない。この両者は、あらゆる機会に、あらゆるアメリカの要求に応じてきたのだ。
去年あたりから、戦士達を標的にするにあたって、アメリカの無人機攻撃が、これまで以上に、はるかに上首尾であることには疑いの余地がない。ただし、バイトゥッラー・メフスードを例外として、下っ端の兵士達を抹殺するのにということだが。CIA/Xeは、人間による諜報活動を強化し、更に同社のペシャワル駐留によって、この無人機攻撃の実績向上に、Xeが貢献している可能性があるという情報を私は得ている。
しかし、それ以外には、あそこで何をしているのだろう? もしも、その目的が、テロリストと目される連中を拉致し、アメリカに引き渡すことであれば、作戦が秘密なために、一体何人が見事に摘出されたのかは、誰も明確に知ることができない。だが、一人として知名度の高い人物がいないことも同様に明らかだ。そうした連中が行方不明になれば、皆が気がついたはずだ。アメリカのテロリスト・リスト上にある、全ての主要な非パシュトゥーン族の人間の名前は、カラチとパンジャブに、野放しで、徘徊している。
もしも、Xeがアル・カイダを標的としていることになっているのであれば、またもや、さほどの成果をあげていないように見える。アメリカ国務長官ヒラリー・クリントン。は、具体的な証拠も示さぬまま、オサマ・ビン・ラディンはパキスタンにいると主張し続けている。そして、もしも彼がいるのであれば、なぜ専門であり、高給を貰っているXeが、彼を殺害、あるいは捕獲しそこねているのだろう? そのような金のかかる作戦について言えば、Xeには、パキスタンにずっと居座り続けるのを正当化するだけの実績はほとんどなさそうだ。
最新の展開として、同社創設者でオーナーのプリンス氏が、どうやら発作的に立腹したためのようだが、アメリカの雑誌ヴァニティー・フェアでインタビューに応えており、そこで彼は、自分は2004年以来、アメリカ政府のために、アル・カイダ闘士を追い詰め、殺害するという任務をもったCIA協力者だと主張している。2007年に、イラクのバグダッドで、同社の社員が17人のイラク一般市民を射殺した後の反発についてこう語っている。“政治的に、そうするのが好都合となった時に、誰かが私をバスの下に投げ込んだのだ。”
彼は、今ではXeとのあらゆる関係を絶っていると語っており、インタビュー後、CIAは、 同社との全ての契約を解消しているところだと語っている。にもかかわらず、同社が近々パキスタンから撤退する証拠は皆無のようだ。この会社は、その費用負担さえできる客なら、誰にでも注文に応じる警備会社だ。もしもCIAと同社との契約が本当に解消したのであれば、同社はパキスタンで一体何をしているのだろう? “契約解消”が、一般向けの茶番なのか、あるいは、Xeが他の雇い主を見つけたのかの、どちらかだろう。
私は、陰謀論に与するものではない。とはいえ、時として、他に納得のゆく説明がなさそうに思われ、そして/あるいは、陰謀論自体が、論理的に見えたりすることがある。そうなった場合には、人は、そういう説を信じるよう強いられるわけだ。この件、そういう場合の一つに思えるのだ。
パキスタンの陰謀論者達は、CIAに成り代わって活動しているXeの本当の目的は、パキスタンが核保有国だと、イスラエルとアメリカがどうしても落ち着けないので、同国の核兵器資産を接収するか、破壊する口実を作り出すために、パキスタンを不安定化させることだと、長いこと主張してきた。私はこの理論にずっと異議を唱えてきたが、そうし続けるのが益々無理なように思えつつある。
ブラジル人ジャーナリストのペペ・エスコバールは、アメリカは、パキスタンの北西辺境州とアフガニスタンからなる統一パシュトゥニスタンと、独立したバルチスタンと、弱体で、切り取られたパキスタン、という姿にしてしまいたいのだと言う。この主張は、事実と虚構を巧みに組み合わせている。ジェレミー・スケイヒルは違う。
だがそうなると、Xeはパキスタンで一体何をしているのだろう? アメリカと、パキスタンとXeの全ての公式説明そのものが、駐留を否定している。しかし、我々は皆、同社が駐留していることを知っており、もしも私の結論が正しければ、目に見えるほど有用な目的には一切役立っていないのが明白だ。こうした全否定は、あれやこれやの陰謀論に信憑性を与えるだけのことだ。中から適当にお選び願いたい。
シャウカット・カディール陸軍准将は、退役パキスタン軍歩兵隊将校。
記事原文のurl:www.thenational.ae/apps/pbcs.dll/article?AID=/20091222/OPINION/712219926/1080
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うがった解釈。しかもパキスタン軍の関係者発言だ。それなら話はわかる。とはいえ、記事には、アメリカ人かららしき反論が書かれている。「CIAは、大統領の許可を得て行動しているのだ...云々。」各自で、原文をお読みいただければ幸いだ。
2009年5月8日の翻訳記事(下記)、彼の言う「陰謀論」の一つだろう。
アメリカ合州国はパキスタンで一体何を仕組もうとしているのだろう?
東京新聞TOKYO Webに下記のような記事があった。冒頭を引用させていただく。
首相、普天間のグアム移設否定 憲法改正に意欲
2009年12月26日 23時05分
鳩山由紀夫首相は26日午後の民放ラジオ番組収録で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題に関し、社民党の主張する米領グアムへの全面移設を否定した。これまで国外の候補地としてはグアム以外は挙がっておらず、事実上国外移転を断念する発言だ。
また「地方と国の在り方を逆転させる地域主権(実現)という意味での憲法改正をやりたい」と、民主党政権での改憲に意欲を表明。自民党との協議にも前向きな姿勢を明らかにしたが、憲法9条改正には慎重な考えを示した。民主党は先の衆院選マニフェスト(政権公約)で憲法改正に取り組むとは明記していない。
「地方と国の在り方を逆転させる地域主権」というのは、実態、責任を地方に押しつけるだけのことだろう。
「ならずもの宗主国の戦争に積極的に参加するため、憲法を壊します」などと宣言するはずもないが、「オバマが言った正義の戦争に積極的に参加するため、憲法を改正します」ぐらいはそのうちに言い出しそうだ。言っても、私は全く驚かない。
「改正」という言葉、政治ニュースで利用される場合は、ほとんどの場合非常に悪質なオマジナイ・メクラマシ言葉。「改訂」というのであれば、それほど、良い響きも、悪い響きもなく、比較的中立的に聞こえるが、「改正」というと、どこか「改良」のような、良い方向に進むような雰囲気がある。「改革」もそうだろう。いずれも、自民、民主、公明党等が利用する場合、その実「破壊」。
官僚答弁禁止を、さも素晴らしい「改善」のように言い立てるが、本音は、自衛隊の海外派遣の条件を厳密にとらえる憲法解釈を曲げようとしなかった内閣法制局の発言封じ。憲法破壊だけでなく、着々と、傭兵派兵への制度改悪はすすむ。
「日本とアメリカの在り方を逆転させる国家主権回復という意味で、50周年の節目に、安保改訂(あるいは廃棄)をやりたい」というのなら驚きだが。もちろん、そういう発言の可能性は皆無。そう発言すれば、ホンジュラスのセラヤ大統領の運命が待っている。セラヤ大統領、国民のための憲法改訂をしようとしたので追放された。日本の与党政治家が、国家主権回復を本気で言い出せば、「12億円のこども手当て分の税金を後から払う」どころでは済まなくなるだろう。
ムシャラフ元大統領や、ザルダリ大統領の宗主国に対する行動様式、この国のトップ達のそれと、そのまま重なって見える。
このままだと、政治タイムマシンで、テレビの大河ドラマだけでなく、実生活も、日清・日露戦争時代?に引きもどされそうだ。それとも明治維新か、満州事変当時?今度は、対米英戦争でなく、米英指揮下の戦争という形の違いはあるが、被害を受ける階層は同じ。皆様、被害を受けるのをじっとお待ちになるのだろう。しかも、今度は、宗主国が勝手に設定する侵略戦争への出撃。100年後にドラマ化されても、惨めな傭兵戦争の現実、隠しようもあるまい。
数日前、縁の下を整理したところ、父親が兵士時代に使っていた水筒がでてきた。
まさか「戦争、過去の話ではない。またすぐにやって来る」という父親の声ではなかろう。
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