イラクにおけるアメリカの“成功”の背後にある現実
wsws.org
2009年10月27日
日曜日、バグダッド中心部の司法省と地方政府本部をバラバラにし、140人以上の人々が亡くなり、少なくとも520人が負傷した大規模爆発は、6年半のアメリカ占領で、イラクの中に作り出された宗派的、民族的、政治的対立についての忌まわしい裏付けだ。
週末の爆撃は、ここ二ヶ月で二度目の政府ビルへの大規模攻撃だ。8月19日、財務省と外務省の外で、自動車爆弾が爆発し、102人が死亡し、600人以上が負傷した。いずれの場合も、爆破実行犯は爆発物を搭載した車両で一連の検問所を通り抜けてしまっている。
政府職員や治安部隊に対し、イラクでは、毎日平均して、10から15件の爆撃、自爆攻撃、あるいは武装反抗勢力の攻撃が起きている。場合によって、爆撃は、特定民族または特定宗派の一般市民を無差別に狙うこともある。日曜日の爆撃ほど目を見はらせられるものではないと、マスコミにはほとんど報道されない。
いつでも、機会さえあれば、武装反抗勢力は、未だにイラクに駐留している120,000人のアメリカ兵を攻撃する。今ではアメリカ軍は都心から離れた場所の厳重に警備された基地から、イラクを占領している。
ヌリ・アル・マリキ首相の傀儡政権は、サダム・フセインの旧バース党政権支持者が人目を引く爆撃の犯人だと主張している。この可能性は排除できない。主にスンナ派アラブ人が占めていたバース党支配体制のかなりの層が、彼等がかつて保持していた資産、地位と特権のほとんど全てを、アメリカ侵略に協力したシーア派とクルド諸派に奪われてしまったのだ。
様々な政治的、宗教的信条を持った多数のイラク人は、アメリカ占領が生み出した政権への攻撃に志願するに足る十分な不満を抱いている。2003年以来、アメリカ軍によって直接殺害された何十万人もの人々を含め、100万人以上の人々が命を失った。他の何万人もの人々も、アメリカとイラク政府の捕虜収容所での、恣意的な勾留や、恐るべき虐待に苦しんできた。400万人以上の人々が自宅あるいは国を追われてしまった。イラクの占領に対する憎悪は和らいでなどいない。
政府省庁に対する攻撃は、憲法上、2010年1月31日までに行われなければならない選挙が近づくなか、イラク内の占領支持各派内部における確執が、益々激化するのに同期して起きた。選挙と同時に、彼の政府とアメリカの間で合意された、駐留米軍の地位に関する協定に対する国民投票を行うという公約を破棄するよう、ワシントンは、マリキに対して大変な圧力をかけている。アメリカの評論家達は、そのような国民投票は、アメリカ軍の即時撤退を希望しているイラク人の先導によって、過半数の票が協定に反対、という結果をもたらす可能性が高いことをあからさまに認めている。
マリキのダーワ党は、おそらくオバマ政権による舞台裏の激励を受け、イランとつながるイラク・イスラーム最高評議会(ISCI)に牛耳られているシーア派原理主義者連合を離脱して、選挙でISCIと争うことになろう。同様に原理主義的なマリキによって、“宗派的”で“反民主的”だとして、冷笑的に悪魔化されているISCI支配層は、もしもダーワの新たな“民族主義的”連盟が、圧倒的過半数で勝利すれば、イラク国家において、現在彼等が掌握している、多数の儲かる地位を失う危機に直面する。あるいは、もしも、ISCIを脇に追いやるという、彼の狙いが失敗すれば、マリキが大統領府から追放されるかも知れない。
マリキの政府は、アメリカ侵略への積極的支持と引き換えに、石油が豊富なキルクーク市や他の北部イラク地域の支配力を掌握するという、2003年に彼等とした約束の履行を拒否して、クルド民族主義者勢力との間に、緊張したこう着状態を生み出した。クルド自治区が所有を主張している北部地域での、アラブ人やトルクメン人党派による猛反発に直面して、いかなる選挙もキルクークでの投票を含むべきだとクルド人は主張している。今年、政府軍とクルド軍部隊がすんでのところで砲火を交わしそうな場面も何度かあった。
スンナ派とシーア派エリート間で、ライバルのシーア派集団間で、またクルド地域とバグダッド政府間で、権力と特権のある地位がどう分けられるかを巡る緊張の程度が、余りに激しい為、選挙をいかにして行うべきかに関し、イラク議会では、いかなる合意も得られていない。いかなる選挙キャンペーンも、ほぼ確実に、かなりの暴力行為といかさまの舞台となり、あからさまな内戦をひき起こしかねない。
状況は、ブッシュ政権の軍“増派”は成功で、イラクは今や安定化への道を進んでいるというアメリカ支配集団による再三の主張とは全く対照的だ。蔓延する自己欺まんと、意図的なごまかしを如実に示す例が、日曜日、ニューヨーク・タイムズのコラムニストで、イラク侵略の擁護者、トーマス・フリードマンの記事だ。
フリードマンは、1月の選挙が無事に進み「本当の多宗派デモクラシー」に尽力する政府を生み出せて、「犠牲は極めて大きかったにせよ、イラクがきちんとした、戦争終結を実現できたのを手助けしたという功績を認められて」バラク・オバマが、2012年にバグダッドに飛んでゆければ良いのだが」という夢想にふけっている。
現実はどうだろう? 金次第で動く、腐敗した民族・宗派勢力への賄賂を含め、分割して統治するという戦術が、占領中終始一貫して、イラクのレジスタンスを崩壊させ、血の海に溺れさせる手法であり続けている。
2003年、ブッシュ政権は、現地協力者を得るため、北部のクルド自治小国家を統合し、シーア派原理主義者を、バグダッド政府の支配層に昇進させた。増派の間、スンナ派武装反抗勢力の指揮者たちは、アメリカ軍への攻撃を止め、抵抗を続ける連中に関して情報を提供するべく支払われた何千万ドルという金で、イラクの様々な地域の支配権を引き渡した。シーア派地域では、聖職者ムクタダ・アル-サドルのマフディ軍団の指導者達も、買収されることに同意し、武装反抗勢力分子の撲滅に協力した。
10月26日、ウォール・ストリート・ジャーナルは、増派の性格を、あからさまにこう記述した。「イラクの個々の地区や、村に、配属された通常のアメリカ軍が、最終的に、現地武装反抗勢力指導者、資金供給者や戦士に関する詳細情報を作り上げることに成功した。この情報は、海軍のシールズ部隊や、陸軍のデルタ・フォースの様な、何百人ものシーア派とスンナ派過激派を消してきた特殊部隊に渡された。」
イラクにおけるアメリカ暗殺部隊の作戦は、アフガニスタンで、“増派”や同様な大量殺害の課題を監督すべくオバマが任命した、スタンリー・マクリスタル大将によって指揮されていた。
自らの物質的利益と利益のため、イラク国民に対する大虐殺を幇助したブルジョア分子から“多宗派デモクラシー”など出現するわけがない。何かあるとしても、彼等が民族的・宗派的分割を推進すれば、国民が直面する、社会的悪夢が悪化するばかりだろう。
かつて比較的進んだ社会だったイラクは、崩壊し、疲弊した。労働人口の少なくとも50パーセントは、正規雇用されていない。国民のわずか半数しか安全な飲み水が使えない。バグダッドや他の都市の貧しい地域では、街路に生下水が流れ、電気も一日にかろうじて10時間しか使えないところで、人々が暮らしている。長年の戦争のおかげで、国連によると、イラク人の60パーセントが“大規模な修繕”が必要な住宅に暮らしている。
アメリカ帝国主義もその現地協力者も、誰一人として、そのほんのわずかたりとも是正する手段も意図も持たない以上、こうした諸条件に対する政治的爆発は一触即発状態だ。煽動的で偽りの約束しかされるはずのない選挙で、この事実が浮き彫りにされよう。
一方、マリキは、先週、イラクの莫大な埋蔵石油を、略奪と利益用に、対外国企業売却にささげるのが主要目的である“投資家会議”に参加すべく、ワシントンに出張した。
イラクにおける根本的な緊張と不安定さ、アフガニスタンで展開しつつある大惨事を考えれば、週末の爆発が、選挙を延期したり、あるいは、完全に中止したりすることを正当化する口実に使える“治安危機”を作り出すための、イラク内の最も親米的な分子による行動の一部であるという可能性を排除できるような真面目な評者はいるまい。
James Cogan
記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2009/oct2009/pers-o27.shtml
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この記事で触れられている、すさまじいアメリカのイラク植民地化作戦については、下記翻訳記事を参照ください。
上から目線=アメリカ目線で、おかしなプロパガンダ文章を書く某社主筆論説を目にして、朝から実に不快だった。(アメリカ対日広報新聞と名前を変えて欲しいものだ。)
「らら」という10代の方が、「アフガニスタン記事検索をしたところ、このブログに辿りつき、アフガニスタン侵略から8年を読んで驚いた」という、ありがたいコメントを書いてくださって、気をとりなおした。
Googleで試して見たところ、「アフガニスタン」といれて検索すると、最初のページに、このブログが出てきたのには、びっくり。(別の有名検索エンジンでは、何ページたどっても登場しないようだ。)
今回の記事を読むと、イラク国民には、駐留米軍の地位に関する協定に関して、賛否を投じる国民投票をする可能性があることがわかる。
イラク、国破れて、アメリカ軍駐留に賛否を投じる国民投票の可能性あり。
一方、この属国日本、駐留米軍の地位に関する協定に関し、賛否を投じる国民投票について触れられることは皆無。
その一方で、憲法破壊「改正」という歪曲語法のための国民投票への準備は着々と進んでいる。安保に賛否を投じる国民投票を行い、万一、独立したいという声が多かったら、安保を廃棄し、しかるべく、憲法を改変するのが、まっとうな順序だろう。安保で軍事同盟にがんじがらめになった属国が、集団安全保障、つまり、集団先制攻撃を是認すれば、宗主国の傭兵として、いいように使われる結果にしかならないことは、いかなB層の方にもわかりそうな道理。今の憲法があってさえ、暗証番号不要のATMの様に、無限に金を搾り取られ、アメリカ帝国の世界制覇の為の基地による公害でなやまされているではないか。第一次イラク戦争のときに、膨大な戦争資金をアメリカに差し出したのは、誰あろう、小沢幹事長。その人物こそが今実権を握っている。普通、人の性格は変わらないことからすれば、基地・安保交渉の行方、考えるまでもないだろう。
イラクと日本、一体どちらが、より真正の属国なのか、考えれば考えるほどわからなくなる。
マスコミは嫌いだとは言え、NHKの国会予算委員会討論は別。100%が作りものというわけではないので、鋭い質疑もたまにはあるからだ。絶滅危惧種政党による、基地問題や、派遣問題を真摯に取り上げる質問には感心した。それに対する、「木で鼻をくくったような」外相答弁と態度、彼が日本の庶民の側にあるのか、アメリカ支配層の側にあるのか、はっきりと示してくれる良いみものだった。
その点、みんなの党、同じエネルギーを基地問題にかけろと言いたい。問題にすべきは、天下り官僚より、アメリカ軍基地・ミサイル開発・おもいやり恫喝予算だろうに。
政党得票数と質問の鋭さ、実にきれいな反比例関係があるのが不思議。
なお概要は、下記blogがしっかりとまとめておられる。
瀬戸智子の枕草子 予算委員会を見てツラツラと その2 追記あり
テレビも新聞も、結婚志望の男性から金をだまし取っては、催眠導入剤を使って死亡させてきたとおぼしき女性、または英会話を教えにきていた女性を殺害しながら、調べにきた警察の隙をついて、無事逃げおおせている男の整形話ばかり。なぜ最初に迂闊にも取り逃がしたかを追求することはない。ゴミ記事ばかりが、電波に、紙に、満ちている。
同じエネルギーで、安保条約、沖縄基地問題を扱う媒体があったら、貧しい身ながら、それなり、見合った費用は払いたいと思っている。
昔はホテルに泊まると、100円玉を入れると放送が見られるテレビがおいてあったものだ。今は1000円カードを購入する方式にだが。もちろん普通番組ではなく、ポルノ。
家庭用テレビも、いっそ100円玉を入れると放送が見られる仕組みに切り換えたらどうだろう。売り上げは全て政府に入るようにする。タバコの税金をあげるどころではない膨大な収入が、政府にころがりこむだろう。
しかし、そうなれば、あまりに愚劣な番組、たとえB層の方とて、100円玉を入れて見るようなことはなくなるかも知れない。その場合は、愚劣なバラエティ番組を流すより、ポルノ放送を全チャンネルで終日流すのが良いかも知れない。
そうなると、テレビを見る家庭は、なくなるかも知れない。しかし、独身男性の中には、一部、狂喜乱舞する方もおられるかも知れない。タバコのようなもの。
催眠導入剤殺人や殺人犯の整形しか扱わない、アメリカ広報アヘン放送局の「くそ蠅」バラエティ番組よりは、ポルノの方がまだ罪が少ないように思える。
少なくとも、ポルノを作っている方々、あまり大きな声で人に言えない仕事で暮らしていることは自覚しておられるだろう。
一方、「くそ蠅」バラエティ番組、スポンサーも、テレビ局社員も、タレントも、大きな声で人に言える、立派な仕事と勝手に思い込んでいるだろう。
大半のテレビ・新聞・出版社の仕事は、昔時々やってきた、ゴム紐のように不要不急の品を主婦に押しつけては金をせびる「押し売り」以下の下劣な職業だと思っている庶民、ごく少数だろう。
考えてみれば、何のことはない、BSチャンネルの大半は「電波押し売り」。台所用具、清掃器具、やせられる器具、やせられる飲料等々...。
タレントというより、電波押し売り、電波香具師。
あんなものを見たくて、BSアンテナを付け変えたつもりなどないのだ。(なお、フーテンの寅さんではないが、電波香具師ならぬ、本物の香具師の方々の名演技は子供の頃からあこがれている。縁日のバナナ売りは、すごかった!)
地上デジタル放送に切り替わると、拙宅ではUHFアンテナを立てないと地上デジ放送が見えない。しかしアメリカ広報アヘン放送を見るため、屋根の上にアンテナを立てるのは、あたかも麻薬患者がアヘン用キセルを購入するのと同じような気がして、電気屋さんにたのめずにいる。見えなくなれば、むしろ脱アヘン効果。
人さまの屋根を見上げて、UHFアンテナがあると、テレビ・アヘン患者のお宅だと思っていることを、ここに告白しておこう。
そして、NHK BS(もちろん野球は除き)を、かなり長時間見ていることも。
「テレビは現代のアヘン」というのは、ポール・クレーグ・ロバーツ氏の言葉。
愚劣なバラエティ番組にでている連中を「くそ蠅」と評したのは辺見庸氏。
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