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2009年11月 8日 (日)

ホンジュラス: "スマート・パワー"の勝利-Postcards from the Revolution

Eva Golinger

2009年11月2日

ヘンリー・キッシンジャーは、外交とは、“力を奪う技術”だと言っている。21世紀アメリカ外交政策の最も有力なイデオローグが言っているのは、アメリカ合州国の支配的な世界権力を維持すべく、“他国や政府の力を奪う”必要性のことであるのは明白だ。ジョージ・W・ブッシュ式スタイルの大統領は、この目標を実現するため“ハード・パワー”を採用した。兵器、爆弾、威嚇と軍事侵略だ。ビル・クリントンの様な他の連中は、“ソフト・パワー”を使った。文化戦争、ハリウッド、理想、外交、道徳的権威や、敵国国民の“人心を掌握する”キャンペーンだ。オバマ政権は、軍事力と、文化的侵入と合法的な工作による、外交的、政治的、経済的影響力とを融合させることによる、二つの概念の突然変異を選んだのだ。彼等はこれを“スマート・パワー”と呼んでいる。それを最初に適用したのがホンジュラス・クーデターであり、今日の時点で、それは完璧に機能している。

上院指名承認公聴会において、ヒラリー・クリントン国務長官は、「外交、経済、軍、政治、法律、そして文化の上で、我々が使用可能なあらゆる種類の手段を、それぞれの状況に応じて、正しい手段、あるいは、手段の組み合わせを選ぶ“スマート・パワー”と呼ばれているものを活用すべきです。“スマート・パワー”を使えば、外交が、わが国外交政策の前衛となるでしょう。」と述べた。クリントンは、後に「最も賢明な方法は、最初にまず説得をすることです。」と語って、この概念を補強した。

 

 

 

この概念の一体どこが気が利いているのだろう? それは、これが分類が困難で、見破ることが困難で、分析することが困難な政治形態であることなのだ。ホンジュラスがその好例だ。オバマ大統領は、セラヤ大統領に対するクーデターを非難する一方、アメリカの在テグシガルパ大使は、クーデター指導部と定期的に会合をしていた。過去四カ月間、国務長官クリントンは、ワシントンは、ホンジュラスの状況に“影響をあたえる”ことは望まず ? ホンジュラス人は、自分たちの危機を、外部からの介入なしに解決する必要があると、何度も何度も繰り返した。しかし、コスタリカのオスカル・アリアス大統領が“率いる”和解を押しつけたのはワシントンであり、クーデター政権や、その支援者を、USAIDによって資金援助を続けたのはワシントンであり、国民の弾圧に関与し、残虐な政権を押しつけたホンジュラス軍を、ソトカノ米軍基地への大規模駐留を通して、支配し、命令していたのはワシントンなのだ。

 

 

 

ワシントンのロビイストが、サン・ホセ“合意”も作りあげ、最後に、ホンジュラスに合意を受け入れるよう“説得した”のは国務省とホワイト・ハウス高官の代表団だ。ホンジュラス・クーデターに、資金援助、立案、政治、軍事支援で、アメリカが常時介入し続けたにもかかわらず、ワシントンの“スマート・パワー”手法は世論を歪めることに成功し、オバマ政権を“多国間協調主義”の大勝利者のごとく見せている。

 

 

 

“スマート・パワー”が実現したのは、ワシントンの覇権主義を、多国間協調主義のように見せかけることだ。最初から、ワシントンは、その狙いを押しつけていたのだ。7月1日、国務省のスポークスマンたちは、ある記者会見で ホンジュラス・クーデターを事前に知っていたことを認めた。二人の国務省高官、トーマス・シャノンと、ジェームズ・スタインバーグが、クーデターの前の週にホンジュラスにいて、クーデターに関与した民間人と軍の集団と会合していたことも、彼等は認めている。目的は“クーデターを妨げる”ことだったと彼等は語っているが、それなら、アメリカ軍当局者の目の前で、ソトカノ軍事基地から飛び立って、セラヤ大統領を強制出国させた飛行機のことを一体どのように説明できるのだろう?

 

 

 

ワシントンとホンジュラス・クーデター、そして続いて起きた“スマート・パワー”を使った実験の成功に関しては、事実が真実を実証してくれている。ワシントンは、クーデターが起きる前から、それを知りつつ、クーデターに関与する連中を、USAID(米国国際開発庁)とNED(全米民主主義基金)を経由して資金を援助し続けた。ペンタゴンは、セラヤ大統領の違法な強制出国を支援し、オバマ政権は、後に、絶滅の瀬戸際にあった米州機構(米州機構)を、アメリカの狙いを押しつけるための見せかけに利用した。国務省の談話は、常にクーデター指導部を合法化し、「双方が…政治的紛争を、対話によって平和的に解決するよう」呼びかけていた。一体いつから、違法な権力簒奪者が、対話ができる“正統な相手”と見なされるようになったのだろう? 暴力で力を奪いとるという犯罪行為をした人物が、対話に関心など持つわけがないのは明白だろう。このワシントンの論理に基づくならば、世界は、オバマ政権に、「アルカイダとの政治紛争を、戦争ではなく、対話による平和的な方法で、解決するよう」呼びかけるべきだ。

 

 

 

オバマ/クリントンの“スマート・パワー”は、クーデター最初の日々に、米州機構加盟諸国に、受け入れる ホンジュラスのクーデター政権に“行動を検討する”余裕を与えるため72時間の待ち時間を与えるよう説得して、最初の勝利を実現した。間もなく、クリントン国務長官は、アリアスが率いる調停工作を押しつけたが、その頃には、ワシントンがお株を奪っており、アメリカは単に介入し、支配しただけのことだ。セラヤ大統領がワシントンを訪問し、クリントンと会見した時に、誰が主導権を握っているのかは明らかだった。そして、連中は最後まで、それを演じ続けて、たとえセラヤが大統領に戻っても、統治するための居場所も時間もなくなるようにするため、最後のぎりぎりの瞬間まで、ひたすら時間稼ぎをしたわけだ。

 

 

 

国民は無視され、締め出された。弾圧、暴力、迫害、人権侵害、夜間外出禁止令、放送局の閉鎖、拷問や政治的暗殺の日々は忘れ去られた。トーマス・シャノン国務次官補が述べた通り、最終“合意”へのミチェレッティとセラヤの署名が実現して、ホンジュラスの状況が“暴力抜きで”解決され、実に一安心。

 

 

 

去る10月30日の“合意”署名後、クーデター政権に対し、圧力戦術として課されていた僅かな規制を、ワシントンは即座に撤廃した。今や、連中はビザを得て、北に出かけることも可能であり、そもそも、差し止められてなどいなかった、USAIDからの何百万ドルについて、懸念する必要はない。ソトカノに駐留するアメリカ軍は、その活動全てを再開することが可能だ。いや待て、そもそも停止などしていなかったのだ。ペンタゴン南方軍(SOUTHCOM)は、クーデター後、間もなく“ホンジュラス駐留のわが軍は、全く異常なく、ホンジュラスのカウンターパートとの通常活動に従事していることを認めた。」またワシントンは早くも、11月29日大統領選挙の選挙監視団派遣を準備中で、選挙監視団は既にその途上にある。

 

 

 

クーデター政権と対レジスタンス策を企んだ冷戦の拷問人ビリー・ホヤや、クーデター政権が国民を“支配”するのを助けるために送りこまれたコロンビアの準軍事組織のことなど忘れるのだ。セラヤを建物から追い出すための企みで、ブラジル大使館内部にいた連中を苦しめるために使われた音響兵器LRADについて、もはや懸念する必要はない。何も起きなかったのだ。トーマス・シャノンの言う通り「偉大な二人の人物が、この歴史的な合意達したことを我々は祝する」。そしてクリントン国務長官は「この合意はホンジュラス人にとっての多大な偉業です。」と論評した。ちょっと待った。それは誰にとってだろう?

 

 

 

結局、ワシントンが押しつけた、慶賀されている“合意”なるものは、クーデターを正当化するため、セラヤの辞表を変造したのと同じ議会、そして、ミチェレッティを違法に大統領の地位につけるのを支持したのと同じ議会、ホンジュラス議会に、セラヤを、大統領に復職させたいかどうかを決めるよう求めるものに過ぎない。ホンジュラス最高裁による法的見解を受けて、ようやく、将来、可能性がある憲法改革に対して、法的拘束力を持たない投票を呼びかけたセラヤは反逆者だと言ったその議会、そして彼を暴力的な捕獲を命じたのと同じ議会に。たとえ議会の答えが肯定的だったとしても、セラヤは、何ら権力を持つまい。“合意”は、彼の内閣のメンバーが、クーデターに関与した政党によって指名されるべきことを規定しており、軍隊はクーデターを支持した最高裁の支配下にあり、セラヤは、憲法改編について、法的拘束力を持たない投票を行おうとしたという“反逆”の“罪”とされるもののかどで、裁判にかけられる可能性がある。

 

 

 

“合意”によると、真実委員会は、その実施を監督することになっている今日、元チリ大統領で筋金入りのワシントンの盟友リカルド・ラゴスが、ホンジュラス真実委員会の指導者として発表された。ラゴスは、ワシントンの中南米政策に影響力を持った右翼シンクタンク、インターアメリカン・ダイアローグの理事会の共同理事だ。ラゴスは中南米における、アメリカ式“デモクラシー推進”のためのチリ版全米民主主義基金(NED)である、ラ・フンダシオン・デモクラシア・イ・デサロリョの立ち上げも担当していた。2006年に大統領の座を去ると、ラゴスは、世界中で“デモクラシーを推進する”ことに専心する、元大統領達だけのクラブ、マドリッド・クラブの理事長に任命された。左傾した中南米政府の不安定化に現在関与している、この“クラブ”の主な顔ぶれには、ホルヘ・キロガとゴンサロ・サンチェス・デ・ロサダ(元ボリビア大統領)、フェリペ・ゴンザレス(元スペイン首相)、ヴァーツラフ・ハヴェル(元チェコ共和国大統領)や、ホセ・マリア・アスナール(元スペイン首相)等がいる。

 

 

 

結局、“スマート・パワー”は、ホンジュラスにおける“危機の終わり”を現在慶賀している程度の連中をだますには十分に気の利いたしろものだった。しかし中南米の大多数の人々にとって、ホンジュラスにおける、オバマの“スマート・パワー”の勝利は、我々を包囲しつつある、暗く危険な影だ。ALBA(米州ボリバル代替構想)のような仕組みが、北の支配的大国からの、中南米のある程度の独立を実現し始めたばかりだった。歴史上初めて、中南米の国家と人々は、集団で、しっかりと、品位と、主権を持って、立ち上がり、自分たちの未来建設を始めた。するとそこに、オバマが“スマート・パワー”を携えて登場し、ALBAはホンジュラス・クーデターに見舞われ、中南米の統合は、コロンビアにおけるアメリカ軍の拡張によって弱体化され、ワシントンの裏庭における、独立と主権の為の戦いは、意地の悪そうな微笑みと、不誠実な握手によって、押しつぶされた。

 

 

 

ワシントンに屈伏することで、ホンジュラスの危機“は解決した”。皮肉なことに、この危機は、そもそもアメリカが扇動したものだ。パラグアイ、ニカラグア、エクアドルとベネズエラでの同様なクーデターが噂されており、これらの国々では、転覆工作、対テロ活動や不安定化が、日々高まっている。権力者同士では“合意”に達したとは言え、ホンジュラス国民はレジスタンスを継続している。彼らの断固たる反抗と、正義への傾倒は、品格の象徴だ。ソフトであれ、ハードであれ、スマートであれ、帝国主義者による侵略を打倒する唯一の方法は、人々の団結と統合だ。

 

 

 

「非合法でならすぐやれる。違憲な方法ではそれより時間がかかる。」 ヘンリー・キッシンジャー

 

 

 

記事原文のurl:www.chavezcode.com/2009/11/honduras-victory-for-smart-power.html

 

 

 

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ホンジュラス・クーデターは他山の石。

 

普天間・アフガニスタン「支援」が、"スマート・パワー"の勝利となる日も近いだろう。

 

帝国支配のために、金をむしられ、土地を奪われ、そのあげく、アフガニスタンへの民生支援という名目で、最新植民地支配用の金をまきあげられる。

 

沖縄の不沈空母状態、ホンジュラスのソトカノ米軍基地などとはまるで桁違い。

 

ねこだましで、猟奇殺人事件報道ばかりの宗主国大本営広報部マスコミ、いずれにも全く触れない。基地害ともいえる、米軍兵士による読谷村ひき逃げ死亡事件の話はとばし、市橋ばかり。地位協定なる不平等条約の方が猟奇事件より大問題だろうに。

 

政権の隷属の度合い、絞りとられる金と基地の巨大さに比例するだろう。

 

「日米軍事同盟」が一番大切と喧伝し、「安全保障という名の、集団先制攻撃を目指す条約」には決して触れない「平成の無血革命」なるもの、実態はまもなくわかる。

 

64年も隷属していたものが、政権が変わったからとて、急に独立できるわけはない。

 

独立実現は、そう思い立ってから、気の遠くなる時間がかかるだろう。

 

それ以前に、その隷属状態を規定している根源の問題に蓋をしたままで、そもそも、思い立てるわけがない。独立の方向に動き始められるわけがない。

 

一般に、経済・政治・軍事等の問題は、その存在・性質を正しく把握すれば、解決できることが多いのではあるまいか。逆に、存在・性質の正しい把握なしには、いかなる問題とて、解決は不可能だろう。

 

 

 

「政権交代」以来、形容詞democraticを「民主的」と書くのがためらわれるようになった。それを言うなら、大昔から、アメリカの民主党が立派な見本としてあるが。

 

公明選挙という言葉も、あの政党が出て以来、信じなくなった。

 

小選挙区という小沢氏が導入した歪んだ制度でもぎりとった虚構の政権。

 

森田実氏がしばしば書いておられるように、あの党内「民主的」の対極にあるようだ。

 

政権党が「民主的」の対極にある国は、国自体、必然的に「民主的」の対極となるだろう。ヒトラーのドイツ。スターリンのロシア。

 

戦争は平和なり。無知は力なり。自由は隷従なり。ファシズムは民主主義なり。

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