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2009年9月 6日 (日)

アメリカはアフガニスタンで、イランとロシアを必要としている

イランとロシアの支援無しには、アメリカはアフガニスタンで勝利できない

Juan Cole

Infomation Clearing House

2009年8月31日

"Salon"

軍事の古い格言がある。「誰もが戦略戦術をやりたがるが、本当の男は兵站を担当する。」つまり、兵員と物資の輸送と補給の管理は、退屈なことに見えるが、成功のためには極めて重要なのだ。オバマ政権は、対テロ戦争を、兵站戦争に置き換えたのだ。オバマ政権は、兵員と装備や資産を、何百万もの膨大な規模で、輸送しており、それゆえ、イラクのスンナ派過激派であれ、ネオ-タリバンであれ、その敵も、兵站に力を注いでいるのだ。あちらでの爆撃、こちらでの空爆という、断続的で散発的なニュース記事は、個々の出来事を、軍事目的の補給路であれ、国際的な正統性のような無形のものの補給であれ、「補給路を巡る戦い」として見ると、話が見えてくる。そして、この文脈では、ワシントンが今ロシアとイランに接近しようとしている熱意、実に筋が通っている。

日曜日、アフガニスタン国境近くのパキスタン、チャマンと、クナール州で、うねる波のような真っ黒い煙に囲まれて、赤々と燃えあがる大火の長い炎が、空に向かって立ち昇り、アフパク兵站戦争が姿をあらわした。この戦争における補給トラックの爆撃は、二つの世界戦争における補給船へのUボート攻撃に匹敵する。

"日曜日夜、チャマンで、アフガニスタンのNATO軍用補給品を載せた一台の車両で爆発が起きた後、少なくとも15台の石油輸送車、トレーラー、コンテナ車が炎上した"とDawn紙は報じている。パキスタンとアフガニスタン間の国境は、パキスタン人国境警備員が、アフガニスタンの果物トラックを検査してよいか否かをめぐる紛争のため、ここ数日間閉鎖されている為、NATO補給車両は、攻撃しやすい標的になっている。

一方、スワット渓谷のミンゴラでは、別種の補給路が攻撃され、タリバン自爆犯が、最近採用されたばかりの警官16人を殺害し、他の5人を負傷させた。今春、パキスタン軍が、スワットを支配している4,000人のタリバン戦士を攻撃したが、これはスワットに暮らす人々にとって迷惑なことで、彼等の大半が追い出された。しかし、姿を隠したタリバン・テロリスト細胞は、明らかに、依然として現地で、警察署に対してさえ、活動可能だ。この特殊作戦警官新人の狙いは、タリバン排除を恒久的にすることだ。

Pajhwokニューズ・サービスによれば、国境のアフガニスタン側で、グルブディン・ヘクマチアルのヒズブ-イ・イスラミ、つまり"イスラム党"の過激派が "紛争地域の東部州クナールで、NATOの補給部隊を襲撃し、少なくとも10台の車輛に放火した" 。

一方、マクラッチーによれば、タリバンは、同国北部のパシュトゥーン族住民に囲まれた地域を、タジキスタンからの補給を阻止できるようになる、三つの地域を支配するための基地として利用してきたという。

こうした妨害は、アメリカのミサイルが、東部アフガニスタンの戦闘的なハッカニ・グループの基地に撃ち込まれ、35人のゲリラを殺害したとされている中で、起きているのだ。ハッカニのグループは、カーブル政府とそれを支援するNATOを弱体化させようという狙いから、ヒズブ-イ・イスラミや、ムラー・オマールの"元祖タリバン" と協力している。

1980年代には、ヘクマチアルも、ジャラル・アル-ディン・ハッカニも、対ソ連の戦闘では、レーガン政権にとって有用な人材で、ワシントンから大量の資金援助を受けていたが、今やオバマ政権に楯突いている。

ともあれ、アメリカとNATOが、その兵員に、砲弾、燃料と食糧の補給を可能にしている補給路を、タリバンが断ち切ろうとしているのは明らかだ。

現在、アフガニスタン選挙監視団の事務所に殺到している何百もの不正選挙の申し立ては、大統領選挙の正統性、ひいてはカーブル政府そのものの正統性を否定しかねない。要するに、今や、かなりの部分、どうもカルザイ大統領支持者達によって、粉砕されてしまったように見える、国際的、および国内的な正統性という補給路を、オバマ政権とNATOは、選挙によって形成しようとしていたのだ。

APによると、それと同時に、NATOとアメリカは、兵員と資材を、アフガニスタンに運び入れようとしており、アメリカは、150万の器機を、イラクから運びだそうとしている。更に、現在イラクに駐留する130,000人の内、40,000人を除いた、アメリカ軍兵士を、来年のこの時期までには撤退させなければならない。アフガニスタンへの補給路が脆弱なのと同様に、イラクから運び出す経路も脆弱だ。大半の資材はトラックに搭載され、マフディ軍団やバドル軍団(シーア派民兵)の地域を経由して、南に位置するクウェートへ向かう。他のトラックは、バグダッドとヨルダンのアカバ間の、時として敵対的なスンナ派アラブ人地域を経由する、かつて危険だった道路を定期的に往復している。イラクのアメリカ軍兵員と、軍装備品が次第に減少すれば、残留する兵士達は一層脆弱になる。

南方経路については、アメリカを、クウェート経由で、無事に撤退させるよう、武装したシーア派を説得できる主要勢力は、南部に新イラク軍を配備し、現地部族軍を養成しているヌリ・アル-マリキ首相の政府と、最高指導者アリ・ハメネイと、マフムード・アフマディネジャド大統領を持つイラン政府だ。アメリカとイランの関係が、非常に悪い方向に変わってしまうようなことがあれば、シーア派民兵によるアメリカ軍車両集団攻撃の危険は急増しよう。

またアフガニスタン国内では、アメリカは、ますますロシアの好意に依存するようになっており、イランはヘラート、マザール、ハザラ地域、およびカーブルで強い影響力を持っている。イランは、二つの隣国において、アメリカの協力者として、事実上の代理という有益な役割を演じる可能性があるが、妨害者にもなれるのだ。

ジョージ・W・ブッシュが、アメリカ軍を敵対的で反帝国主義的な中東3億人の人々の真っ只中で泥沼に陥らせたおかげで、アメリカ合州国はイランとロシアの人質になった。

オバマ大統領の成功、失敗は、厳密に軍事的な意味でも、より幅広い比喩的な意味でも、政治的勝利の為、適切な人材と"資産"を配置する兵站という難解なわざにおける成功にかかっているのだ。

その点、イラクは、大当たりとなる可能性がある。

アフパクは、今の所、それほどではない。

Salon寄稿者のJuan Coleは、ミシガン大学の現代中東、南アジア史教授で、"Engaging the Muslim World"の著者。

記事原文のurl:www.informationclearinghouse.info/article23389.htm

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「アメリカとの同盟関係が第一だ」というのが、鳩山次期首相の意見だ。

「アメリカとの同盟関係」、庶民用語に翻訳すれば、「アメリカとの従属関係」。

アフガニスタン、いきなりISAFではなく、まず民生で協力するということのように見える。

しかし、片手で殺しながら、一体どうやって、もう一方の手で、民生支援が可能なのだろう。

ペシャワール会の大水路工事、虐殺を遂行中の宗主国、同盟国、支援している属国政府とは、全く無縁。ペシャワール会はNGOですらない。

体制翼賛マスコミ、民主党圧勝を言祝ぎ、一方で、鳩山と小沢の二重政権はどうなるか、宗主国が属国の次期政権をどう見ているか、などという記事を書くばかり。

しかし、小泉「911郵政欺瞞」選挙の自民党圧勝、そして今回の民主党「政権交代」選挙の民主党圧勝、小選挙区制という、とんでもない歪んだ制度(もちろん、あの小沢幹事長が、率先して導入した)によるものだ、という問題点には、絶対に触れない。この無謀な制度の解消なしに、市民革命などありえようはずもない。民主党、比例議席の削減をマニフェストに書いている。小選挙区制のゆがみを更に拡大する暴挙。市民の権利を奪う無血市民革命が、一体、世界のどこに存在するだろう?この属国日本以外の世界の庶民の頭には、存在するまい。今回のできごとは、「自民党の崩壊」のはじまりにとどまらず、さなきだに脆弱な日本における「民主主義の崩壊」のはじまりなのだ。

憲法破壊を推進する記事は書いても、安保見直しについては全く触れないのと軌を一にしている。そもそも、マスコミが、率先して小選挙区制を推進したのだ。その帰結が、小泉破壊選挙。そして、揺り戻し、保守二大派閥間の「政権交代選挙」宗主国が属国次期政権をどう見ているかなどというのは、愚劣な争点ずらしにすぎない。

もっとも、小選挙区制の問題、大多数のブログの皆様が、不思議なことに決して触れようとしない話題でもあるのだが。煩雑な数値処理が背景にあるためだろうか?

故石川真澄氏(朝日新聞編集委員)、小選挙区制度の危険さに警鐘をならした数少ないマスコミ人だった。「戦争体験は無力なのか」― ある政治記者の遺言 ―は、彼による、庶民に向けた、白鳥の歌だったろう。彼が去ったあとの新聞、もう読むに耐えない。石川真澄氏なきあと、小選挙区制度の危険さを、指摘しておられる方は、極端な少数派だろう。そうした人々の中で、政治学者の五十嵐仁法政大学教授が、ブログ五十嵐仁の転成仁語で、はっきり書いておられる。

比例代表区での民意は何を示していたのか

選挙を歪める小選挙区制はただちに廃止するべきだ

また、『逝きし世の面影』ブログでも、噛んでふくめるように、下記エントリーで小選挙区制導入の背景、意図を説明しておられる。

小選挙区制は第一党の為のセーフィネット

あの議長斡旋だかの大逆転、唖然としたのを今でも覚えている。あの時のマスコミの翼賛報道もひどかった。当時の著名キャスター、こぞって小選挙区制導入に賛成していた。今の、裁判員制度、民主圧勝報道と全くおなじ。

しかし、大多数のブロガーの皆様は、マスコミに完全に洗脳されておられるようだ。大政翼賛マスコミのテレビ・ニュースを見たり、新聞を読んだりすると、血圧や、精神や、脳には、多大な悪影響しかないだろう。地デジになったとて、大政翼賛という中身が変わるわけではない。

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