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2009年9月18日 (金)

アフガニスタン戦争のエスカレーション- アメリカ-NATOはロシア、中国とイランが標的

Rick Rozoff

Global Research

2009年9月10日

アメリカ合州国と北大西洋条約機構は、パキスタン国内での、無人機による破壊的なミサイル攻撃で、その範囲を、そして、より多くのNATO加盟諸国からの派兵が予定されており、既に駐留している68,000人に加え、45,000人ものアメリカ軍兵士が要求されており、間もなく派兵される、という日々の報道の通りに、激しさをと、アフガニスタンにおけるほぼ8年にわたる戦争を拡大しつつある。

9月4日のクンドゥス州におけるNATO爆撃は、アフガニスタン民間人に対し、西欧の軍隊によって実行された、これまでで最悪の残虐行為になるかも知れず、また今月これまでに20人近いアメリカとNATO兵士が死亡し、総数は、2008年通年での294人と比べ、今年既に300人以上だ。

戦闘の規模とゆゆしさは、西欧のマスコミや政府幹部すら、もはや否定しようもなく、南アジアにおける戦争は、ほぼ8年間で初めて、世界の注目の中心となっている。

戦争を開始し、継続し、エスカレートするのに、ワシントンとブリュッセルが使う、短命で、続々と、忘れ去られては、再度考案される、様々な根拠は、あからさまに偽善的で、互いに矛盾していることが多く、詐欺的なものであることが暴露されてきた。目的だとされるものは一つとして達成されておらず、今後もずっと達成されない可能性が高い。オサマ・ビン・ラディンとオマール・ムラーは、捕獲されても、殺害されてもいない。タリバンは、西欧が、いかなる時点で、どのように意味づけをしようと、タリバンという名前は、大きくものを言っており、8年前の先月に打倒されて以来、いかなる時点より優勢で、これまでに、同国北部諸州に対し、想像を絶する支配力を得ている。

2001年の侵略時には、事実上、存在しなかったアヘン栽培と輸出が、今や最高レベルで、アフガニスタンは世界最大の麻薬生産国、輸出国となっている。

アフガニスタン-パキスタン国境は、確保されておらず、パキスタン側で、NATOの補給部隊は、定期的に捕獲され、放火されている。パキスタン軍の攻勢では、国境の反対側で、何千人とは言えずとも、数百人を殺害し、スワット地域と、北西辺境州に接する地域で、200万人以上の民間人が、強制退去させられた。

ベトナムでの大失敗以来、アメリカ最長で、NATOとして初の地上戦争で、アジアで初の戦争が、際立った失敗であったことを認めるどころか、アメリカとNATOの指導者達は、既にアフガニスタンに派兵されている100,000人に加え、更に多くの兵士を強く要求しており、十年も継続するであろう戦争へのこの兵員派兵に貢献している50ヶ国は、国民に覚悟をさせようとしている。しかも依然として、成功裏に解決する保証はないのだ。

だが、ワシントンとブリュッセルが、彼等の目的であったとし、今も目的であると主張していることから判断した場合にのみ、西欧の南アジア戦争は失態となる。より広範な地政学的、戦略的な、軍事的な見地から見ると、その逆かもしれない。

ペンタゴンがアフガニスタンに進出し、NATOがヨーロッパ外では最初の戦争を遂行している主目的は、南および中央アジアの広大な地域で、影響力を行使し、支配をすることであり、そこで中国、イランとロシアの国境に、西欧の兵力、つまり、兵員、戦闘機、監視能力を配備しているのだという、9月7日のロシア人評論家セルゲイ・ミヘエフの発言が引用されている。

「二極システムの崩壊後、アフガニスタンは、世界分割の舞台であり」、アメリカとNATOは「ユーラシア支配強化を狙って…そこに多数の兵員を派兵し」、そうする口実として「それまでは、誰もタリバンに関心などなかったのに、タリバン・カードが使われたのだと、ミヘエフは主張している。」 [1]

タリバンは、アメリカ合州国やNATO同盟諸国が、アフガニスタンや、キルギスタン、タジキスタンや、ウズベキスタンといった中央アジア諸国で、兵員を派兵し、空軍基地や他の基地を占拠する原因というよりは、口実になっているという主張に、上記作家の同国人、アンドレイ・コヌロフが、今月始め、同意した。キルギスタンの場合だけで、アフガニスタンへの途中で、200,000人ものアメリカとNATO軍兵士が、マナス空軍基地を経由していると今年始めに推定されている。

「ワシントンのあからさまな激励とは言わないまでも、不干渉のおかげで、タリブ達は、中央アジアや、中国のウイグル地域を不安定化させ、イランへの侵入を狙っている。これが、ウイグル分離主義者による最近の動乱の背景説明であり、ある程度まで、ウズベキスタンのイスラム教運動の背景でもある」と、コヌロフは主張している。 [2]

ただし、西欧にとって、タリブ非難の言葉は、融通がきくもので、西欧の軍事占領に対する、いかなるパシュトゥーン族反対派に向けて、先週金曜日のNATO空爆虐殺で明らかになった通り、多民族クンドゥス州でのように、西欧の軍隊によって殺害された誰にでも、恣意的に適用されるものである点、留意が必要だ。

コヌロフは、再度、西欧で受け入れられている考え方に反し、「アフガニスタンに、いかなる本格的な中央権力もできず、カーブルの政府が、完全に、ワシントンに依存することが、アメリカにとって、最善のオプションだ。アフガニスタン領土の大半を支配することができない政府が、アメリカによって、大きな問題と見なされることはなく、実際、ワシントン、ある意味で、状況につけ込むことができるだろう。」 [3]

ロシア、中国、イラン、パキスタンと、インドの権益が出会う交差点において、西欧の軍事的な立場を維持し、拡大するという計画にとり、平和で安定したアフガニスタンは、決定的に不都合だ。

ワシントンと、そのNATO同盟諸国は、旧ソ連の様な戦略的空軍基地になりうる、アフガニスタンのバグラム、シンダンド、ヘラート、ファラ、カンダハルやジャララバードの基地を含め、アフガニスタンと中央アジアにおける19の軍事基地を、確保し、占拠し、改良すべく、アルカイダに対し、そして今は、タリバンと、麻薬取引に対し、作戦を遂行しているのだと、ロシア人ライターは述べている。この評論家は、「基地システムによって、アメリカが、ロシア、中国とイランに軍事的圧力を加えることを可能にしている。」と指摘している。

1980年代、アメリカの現国防長官ロバート・ゲーツが、アフガニスタン国内での攻撃用に、パキスタンの軍事キャンプで、アフガニスタン人過激派に武器を与え、訓練する、かつてない規模の秘密作戦、オペレーション・サイクロン担当のCIA幹部であったことを思い起こすだけで十分だ。“侵入しやすい国境”は、当時彼には問題にならなかった。

コヌロフはその記事を下記の警告で結んでいる。

「アメリカ支配階級の中には、アフガニスタンへのアメリカ駐留は継続しなければならないという不変の合意がある。」

「ソ連後の空間における、南方周辺部での進展を、ロシアは、拱手傍観すべきではなく、また明らかに、そうはするまい。」 [4]

イラン革命防衛隊の司令官、ヤヒヤ・ラヒム・サファビが、9月7日、同国のマスコミに、よく似た分析を語り、同様の警告をしていることが引用されている。“アメリカとNATOと、アフガニスタンの間で締結された最近の安保条約は、アメリカ合州国にはこの地域から退去する予定がないことを示している”と彼は述べ“ロシアは、中央アジアにおけるアメリカのプレゼンスを気にしており、中国は、パキスタンとアフガニスタンに国境を接する二つの主なイスラム教州へのアメリカによる介入を懸念している” [5]と彼は評した。

中央アジアやロシア、中国国境を超えて広がる西欧の軍事的脅威の規模を示すため、“特に南西アジア地域への200,000人以上の外国兵駐留、パキスタン、アフガニスタンと中東、イラク、アラブ首長国連邦、クウェートやサウジアラビアへの、基地拡張、何十億ドルもの軍装備品売却と、石油資源略奪が、南西アジア、ペルシャ湾地域やイランの不安定の真因だ”とも彼は語り、“アフガニスタン、パキスタン、イラク、オマーン湾とペルシャ湾における、アメリカとNATO軍は、ロシア、中国とイランの、懸念の原因となっている”と言及した。[6]

イランの懸念には、根拠がないとは到底言い難い。8月31日版のエルサレム・ポストは、「NATOのイランに対する関心が、ここ数ヶ月で、劇的に増大し」、「2006年12月、イスラエル軍諜報部は、世界テロと諜報に関する初の国際会議を主催し、その後、イスラエルとNATOは、諜報情報を共有する仕組みを立ち上げた。」ことを明らかにした。

同記事は、「NATOは、イランと、イランによる、軍事力構造と、軍事力構築への影響について話し合っている。」ある匿名のイスラエル高官がと付け加えたとして発言を引用している。 [7]

6日前に、あるアメリカの通信社が「1000億ドルを上回る中東の武器購入」と題する記事を掲載し、「…2008年1月 イランに対抗するため、ジョージ・W・ブッシュ大統領が明らかにした、…未曾有のパッケージ」の結果、「中東諸国は、今後5年間で、1000億ドル以上、使うものと予想されている」と述べている。[8]

アメリカ製兵器を受け取る主な国々は、ペルシャ湾の三カ国? サウジアラビア、アラブ首長国連邦とイラク、そしてイスラエルだ。

他の湾岸諸国も、イラン近隣諸国における、この前代未聞の軍備増強に参加する。「この派手な武器購入騒ぎの核心が、サウジアラビア、U.A.E. [アラブ首長国連邦]、クウェート、オマーン、カタールとバーレーンという、湾岸協力会議六カ国向けの、10年間にわたる200億ドルのアメリカ兵器システム・パッケージであることは確実だ。」 [9]

一週間前、NATO広報部「地中海ダイアログ」と「イスタンブール・イニシアチブ諸国課」のトップ、ニコラ・デ・サンティスが、NATOアラブ首長国連邦を訪問し、同国外務大臣、アンワル・マハメッド・ガルガシと会談した。

「UAE-NATO協力の見通し」と「NATOのイスタンブール・イニシアチブ」が、会談の首題だった。[10]

エジプト、イスラエル、ヨルダン、モロッコ、チュニジア、モーリタニアとアルジェリアとの軍事同盟である、地中海ダイアログを、平和のためのパートナーシップ協定のレベルに格上げする為、2004年のNATOサミット時に、イスタンブール・イニシアチブが、トルコで創設された。平和のためのパートナーシップ協定は過去10年間、12ヶ国のNATOへの完全加盟を準備するのに利用されていた。

イスタンブール・イニシアチブに二つ目の要素は、湾岸協力会議メンバー6ヶ国とのNATOの公式な軍事的紐帯に関係している。つまり、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、バーレーン(アメリカ海軍、第5艦隊は、ここに司令部を置いている)、クウェート、オマーンとカタールだ。

今年5月、フランスは、ここ半世紀で最初の在外軍事基地を、アラブ首長国連邦に開設した。

アメリカとNATOの兵力と、イランと国境を接する国々、イラク、アフガニスタン、トルコ、パキスタン、アゼルバイジャンの基地に加え、ペルシャ湾は今やペンタゴンとNATOの湖となりつつある。

中国も幾つかの方向から、同時に浸食されつつある。

8月、ペンタゴン中央軍司令官デビッド・ペトレイアス大将が訪問した後、中国と国境を接するキルギスタンは折れて、アフガニスタン戦争用のアメリカ軍通過再開に同意した。

やはり中国と国境を接するタジキスタンも、今月アフガニスタンに再配備予定のフランス戦闘機を受け入れている。

中国とロシアの間に位置するモンゴルは、アメリカの定期的なカーン・クエスト軍事演習を受け入れており、NATOのアフガニスタン戦争に兵員を送る約束をした。

北部でロシアに、南東で中国に接するカザフスタンは、アメリカとNATOに、アフガニスタン戦争用の輸送増大と、他の支援を申し出ており、噂では、空軍にも兵員を配備すると約束しており、現在NATO20ヶ国が参加する『ジェティス2009演習』を受け入れている。

先月末、中国は、ワシントンに、中国の沿岸水域での軍事的監視行動を中止するよう要請したが、国防省は「中国の排他的経済水域における、アメリカによる絶え間のない空中および、海洋監視、調査活動は、中国とアメリカの海軍と空軍間の問題の根本的原因だ。」と語っている。[11]

在北京アメリカ大使館の広報担当者は、「アメリカ合州国は、国際法の下で、海上航海の自由を行使しているに過ぎず…この政策は変わっていない。」とやり返した。[12]

ロシア、中国、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタンと、ウズベキスタンが、軍事的な要素も持った、地域的安全保障・経済同盟である上海協力機構(SCO)を立ち上げてから4ヶ月後に、アフガニスタン戦争が開始された。今や、ペンタゴンとNATOは、そのうち最後の三カ国に基地を置き、カザフスタンとは軍事協力条約を結んでいる。

2005年、インド、イラン、湾岸協力会議とパキスタンは、オブザーバーとして、上海協力機構に参加した。今や、イラン以外の全ての国が、アメリカ-NATOの軌道に引き入れられつつある。南および中央アジアにおける西欧の計画のごく一部が、SCOと、 2002年に、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、アルメニアとベラルーシによって創設された集団安全保障条約(CSTO)を、無力化し、破壊するわけではないのだ。

ウズベキスタンは2006年に加盟したが、先月ペトレイアス大将が同国を訪問した後、この組織を脱退する態勢にあるように見える。ロシアの全西部国境沿いで、唯一の緩衝となっているベラルーシも、これに続く可能性がある。

1991年のソ連崩壊後、アメリカとNATOは迅速に中央アジアへと侵入したが、アフガニスタン戦争は、南および中央アジア全域で支配権を得て、ユーラシアを支配しようという、西欧の動きに対抗しかねない、唯一の地域的安全保障機構の存在であるSCOとCSTOを弱体化させ、脅かす好機となっている。

注:

1) Russia Today, September 7, 2009

2) Strategic Culture Foundation, September 3, 2009

3) 同上

4) 同上

5) Press TV, September 7, 2009

6) 同上

7) Jerusalem Post, August 31, 2009

8) United Press International, August 25, 2009

9) 同上

10) Emirates News Agency, September 1, 2009

11) Agence France-Presse, August 27, 2009

12) 同上

Rick Rozoffは、Global Researchの常連寄稿者。Rick Rozoffによる、Global Research記事。

James Petrasは、Global Researchの常連寄稿者。James Petrasによる、Global Research記事。



 

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