ニュージーランド政府、エリートSAS部隊をアフガニスタンに再配備
wsws.org
John Braddock
2009年8月12日
月曜日、ニュージーランドのジョン・キー首相は、政府は、エリートの特殊空挺部隊(SAS)兵士を、アフガニスタンの新植民地主義的占領に、再配備すると発表した。この決定は、オバマ政権による要求の後に、行われた。
約70人のSAS要員が三交代で派遣されるが、当初、18ヶ月継続する。彼らは、アフガニスタン警察訓練を支援すべく“再編成され”アフガニスタンに、更に5年駐留する予定の、いわゆる地域復興チーム(PRT)で服務している130人のニュージーランド兵に、加わる予定だ。キー首相は、農業、医療と教育に焦点を当てた、バーミヤン州における民生的な役割の強化も、発表した。現状のように、テヘランにではなく、同国に大使が駐在する予定だ。
最新のSAS配備は、高度に訓練された専門戦闘分隊の、アフガニスタン派兵の四度目となる。アメリカが率いた最初の侵略後、ヘレン・クラークが率いる労働党政府が、2002年に分隊を初めて派兵し、最後の服務期間は、2005年に完了した。
キー首相による戦闘部隊再派遣の決定は、在アフガニスタンのアメリカの最高司令官が、タリバンが“優勢”になっていると警告した後のことだった。スタンリー・マクリスタル大将は、ウォール・ストリート・ジャーナルに、武装反抗勢力は南部の本拠地を超えて活動しており、北部と西部の、かつては“安定していた”地域を脅かしていると語った。
オバマ政権は既に、タリバンのレジスタンスを鎮圧すべく、アフガニスタンに、21,000人の追加アメリカ兵を派兵するよう命じており、アメリカとNATO軍の駐留兵の総員数を、ほぼ100,000人にまで押し上げた。ワシントンは、それでもなお、ヨーロッパ、オーストラリアやニュージーランドなどの他同盟国からの、追加兵力を求めていた。
マレー・マッカリー外務大臣と、アメリカのヒラリー・クリントン国務長官との四月の会談で、アメリカは、アフガニスタン戦争に更なる貢献するよう、特に戦闘部隊を派兵するよう、キー政府圧力をかけていた。
アメリカの新NATO大使、イヴォ・ダードラーは、7月27日ニュージーランド・ヘラルドに、ニュージーランドは、アメリカの“パートナー・同盟者”として、アフガニスタンで戦わねばならないと述べた。派兵を再開する主要な理由は、アメリカや、他の同盟国、特にオーストラリアと、密接な軍事関係を、ニュージーランドが維持するためであることを彼は明確にした。
彼の前任者クラーク同様に、キー首相は、政府による、アメリカとの同盟に対する返礼は、増大する“テロ”の脅威への対応として描きだそうとした。在外ニュージーランド人は、“テロ攻撃によって脅かされており”もしも、国際軍がアフガニスタンを安定化しなければ、アフガニスタンは“世界的テロの更に大きな温床になる”だろうと彼は主張した。月曜日の彼の発表では、SASが“状況を安定化させる”だろうと、繰り返して述べた。
キーのプロパガンダには、主要紙が賛意を表し、いずれもSAS配備を扇動し、政府決定を支持している。
7月21日のニュージーランド・ヘラルドの論説記事は、こう宣言していた。「SAS派兵は、ホワイト・ハウスのご機嫌とりとは無関係だ。アフガニスタンが、世界中のテロの訓練場になっているという問題のためなのだ。」ヘラルドは、先月のジャカルタでの、テロ爆撃を“再発を防ぐためには、あらゆる努力が払われねばならない”証拠としてあげた。
ドミニオン・ポストは、ニュージーランドの会社員が殺された、ジャカルタでの最近の爆撃も、“テロが、ニュージーランド人の、経済的、肉体的幸福への脅威である」証拠としてあげている。同紙は、アフガニスタンは、「世界の平和と治安にとって最大の脅威だ」と主張している。
こうした主張は無意味だ。7年以上の戦闘後、マクリスタルらアメリカの将軍達ですら、もはやアメリカ軍が、アルカイダを追っていたり、国際テロリスト・ネットワークを破壊させようとしていたりするふりなどしなくなっている。連中は、あからさまに、外国軍の駐留に対するアフガニスタン国民によるレジスタンスを壊滅させることを狙って、反乱鎮圧戦争を遂行していること、また、アメリカが支援するカーブルの傀儡政権を確立しようとしていることを認めている。アフガニスタン戦争は、アメリカ帝国主義によって、資源の豊かな中央アジア地域における、地政学的権益のために遂行されている新植民地主義的な冒険的事業なのだ。
ニュージーランドのSASが派兵されるのは、アフガニスタンにおいて、この狙いに反対する勢力を粉砕するという、組織的で冷酷な軍事作戦を支援するためだ。反乱鎮圧作戦で、オーストラリア軍と協力しておこなう、その主要機能は殺戮だ。つまり、武装反抗勢力と見なされる連中を、血も涙もなく、殺害するか、捕獲することだ。前回の服務時には、アメリカが率いる統合特殊作戦軍の一部として活動し、アメリカの秘密作戦にとって部隊が非常に役立ったため、ブッシュ政権から、稀な表彰まで受けている。
アフガニスタンにおけるSAS作戦の性格は、秘密に覆い隠されたままだが、2007年、ニュージーランド・ヘラルドの報道が、その活動を垣間見させてくれた。記事は、SASが、2002年に、誘拐作戦で、50人から70人のいわゆる“テロリスト容疑者”を捕獲し、彼らを拘留・尋問用にアメリカ軍に引き渡したと報じていた。国際法の下で要求されている通りに、身元を確認され、写真を撮影され、指紋を採取され、適切に登録されるのではなしに、“容疑者たち”は、頭を剃られ、写真も、IDも記録されないまま、アメリカ軍に引き渡された。
8月2日のサンデー・スター・タイムズ記事によると、国際的な法律専門家達は、この件は、ジュネーブ協定や、拷問を禁じる法律に違反していると語っている。抑留者は、アメリカ兵士により、“キャンプ・スラッピー”とあだ名がつけられている、アメリカが運営する南部アフガニスタン、カンダハル拘留センターに移送された。そこに拘留された囚人は、ひどく打擲されたり、拷問されたり、水でびしょぬれにされたりし、冬には、戸外で、凍えるがままにされたと語っている。
拷問を禁じるジュネーブ協定と、国連の条約は、ニュージーランドなどの調印国が、囚人に、拷問をしたり、屈辱を与えたり、おとしめたり、あるいは、そういうことを行う国々へ彼らを移送することを禁じている。ニュージーランドSASが、アフガニスタンで活動していた時期に、アフガニスタン国内で犯された犯罪についての調査が、現在、アメリカや他の国々で、進められている。
アメリカの一流国際人権弁護士マイケル・ラトナーは、移送された囚人の氏名を、正確に記録に残し損ねたことにより、ニュージーランド兵は、事実上、虐待幇助者となったと述べた。オバマ政権が、アフガニスタン戦争を徐々に拡大するにあたった、SASは、新たな、遥かに重い犯罪を犯すために使われるのだ。
アフガニスタン戦争へのあらゆる関与に対する、ニュージーランドにおける広範な反対を活用しようとして、労働党指導者フィル・ゴフは、SAS配備に疑念を呈した。そうではなく、ニュージーランドは“PRTに力を注ぐべきだ”と彼は言明し、こちらは人道的な仕事を遂行していることを示唆した。
緑の党も同様に、“ニュージーランド国防軍再建チームがなし遂げた仕事の正統性と有効性”を損ないかねないという理由で、SAS配備を批判した。緑の党によれば、国連が承認した“安定化、国家建設任務”への関与は、全く合法的で、アフガニスタンにおける、アメリカの戦闘作戦活動とは別物だという。
とはいえ、PRTに従事するニュージーランド兵士と警官は、悪意のない“再建”、“平和維持”軍に従事しているだけとも言えない。例えば、今月早々の作戦では、彼らは“タリバン指導者”とされる人物の捕獲で、アフガニスタン警察を支援した。8月4日、ドミニオン・ポストは、バーミヤン州元知事のムッラー・ボルハンが、ニュージーランド軍基地から約25キロ、ガンダクの地方政府幹部宅への武装反抗勢力による攻撃との関連で逮捕されたと報じている。ニュージーランド統合軍司令官は、捕獲された指導者は、かなりの期間“我々の監視対象だった”と語って、作戦の成功を自慢した。
労働党や緑の党と、キー首相政府との違いだとされるものは、あからさまな、でっちあげだ。SAS兵士を、アフガニスタンに最初に派兵したのは、労働党政府だった。そして、現行ニュージーランド政府が、アフガニスタン国内にその兵員を、PRTの一部なり、あるいは、SAS戦闘派遣隊なり、いずれのために派兵しようと、それは貧困にあえぐ国の、犯罪的で、違法な侵略と占領への参戦だ。
キー政府の決定の背後には、ニュージーランド帝国主義自身の、財政的、地政学的権益がある。キー政府は、アメリカ市場に、より一層アクセスしたいのであり、また、オーストラリアの支配層エリートとともに、地域における中国の影響力の増強を前にして、南太平洋の極貧島嶼国家を巡る政治的、経済的支配を確立するためのキャンペーンを継続するのに、ワシントンの支援が必要なのだ。
こうした目的を実現すべく、ニュージーランド支配集団は、ワシントンによる中央アジア属国強化支援として、殺害し、殺害されるため、SASを喜んで派兵するのだ。
記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2009/aug2009/newz-a12.shtml
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これもまた、必ずやってくる日本の近未来。
岩波書店刊行、豊田祐基子著『「共犯」の同盟史 日米密約と自民党政権』という本を、二ヶ月以上目の前においてあるが全然読めずにいる。解禁された米公文書と関係者の証言を元に密約の軌跡を辿った本だ。日米関係の実態を描いた大変良い本なのだが。読めばよむほどつらくなる。90ページと、284-285ページのあとがきから、一部を引用しておこう。
90ページから
二〇〇〇年、懸案が持ち上がる。CIAが日本の保守政権の安定を図り、自民党に繰り出した資金提供に絡む複数の文書の扱いだ。シャラーを含む委員の多くは、既に関係者が死亡しているため日米関係には影響がないと判断、解禁を主張したが、そこに在日米大使館から待ったがかかった。
諮問委員会に宛てた抗議文で大使館は訴えた。「事実が公表されれば、過去の出来事とは受け取られず、甚大な影響を及ぼすことは必至だ。文書に登場する人物の子孫、そして使徒たちが現在の日米関係を支えている。秘密活動の実態は現政権に打撃となる……」
284-285ページのあとがきから
日米間で結ばれた秘密合意が政治的果実を得るために必要な嘘だったとしても、その嘘は長い時間をかけて、国民から知る権利を確実に奪い取ってきた。喪失の過程は緩慢で痛みを伴わない。失ったものの大きさに気が付いたときには、多くの人々が知ることを諦めている。真実はどうせ語られないので、提示される政策も信用できないが、受け入れるほかはないと考えている。結果が良ければ評価し、悪ければ批判するだけのことだ。
そこに主体的な選択など存在しない。知る権利を奪われることは、選び取る権利を失うことと同義だからだ。その意味で、日米同盟は存在してきたが、一度も選び取られたことはなかったと思う。多くの国民にとって、いつの間にか目の前にあり、支える理由さえ理解できない陽炎のような現象に過ぎない。
同盟が必要だというなら、私たちはそれを選び直す作業を始めなくてはならない。最初の作業は私たちの目の前に横たわる風景の断絶を直視することになるだろう。そのためには断絶を薄い皮膜のように覆ってきた密約をはがし取り、点検していく必要がある。
二〇〇九年一月、米国ではオバマ政権が誕生した。「単独行動主義」に偏重したブッシュ政権の政策方針を転換し、「対話と協調」を重視するという。それには、同盟国が求められるより先に〝主体的な″貢献を提示することが前提になる。選び取ることのできない国には困難な時代の到来となるはずだ。二〇一〇年には、日米安保改定から五〇年を迎える。以来、米国から出された宿題をこなしていくことに邁進してきた日本が、自ら課題を設定できるのか試金石の時期となるだろう。
マスコミも、お盆モード。いつも以上に内容は劣化して、終日芸能人麻薬汚染の話題を垂れ流す。最後のかろうじて、民主的な選挙を前にしながら、安保や密約をあつかうことは決してない。もちろん、似非二大政党、いずれも、これには触れられないからだ。安保が憲法の上にたつ歪んだ現状をあらためるのではなく、宗主国の要求の通り、邪魔な、憲法を破壊することで、自民、公明、民主は、一致しているからだ。不況のなか、ドイツで、ナチスが選ばれた雰囲気、恐らくこんな感じだったのだろう?ええじゃないかエセ二大政党。ええじゃないか属国ファシズム。芸能人の麻薬濫用はまずかろうが、テレビそのものも、新聞も、実態から乖離した幻想を、きわめて多数の人々に抱かせるという悪影響では、麻薬に決して劣らないように思うのだが?
辺見庸氏の講演で、記憶に残っている名言がある。テレビだか、マスコミだかに触れ、「連中は、意味のない愚劣な糞にたかる糞バエだ。」と彼が言ったのだ。某有名コメンテーターが、すぐ後ろの席に座っていたので、思わず振り向きたくなって困った。糞バエと指摘された、糞バエの顔が見たくて。
今でもニュースやバラエテイ番組を見ると、「意味のない愚劣な糞にたかる糞バエ」を眺めているお前(筆者)こそ、変態変質者かB層か、という声が、天から聞こえてきそうだ。
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