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2009年8月 1日 (土)

カラー革命: ブルガリア対ウクライナ: まばたいてはいけない!

Eric Walberg

2009年7月21日

オバマの、ロシアの裏庭における地政学的措置は、好調に前進している... まず、ブルガリアで選挙が行われ、7月5日、新政党が権力を握った。ボイコ・ボリソフの「ヨーロッパ発展のためのブルガリア市民」だ。親しみをこめてバットマンとも呼ばれているが、ボリソフは、共産党時代の内務省職員で、後に、繁盛する民間警備会社を設立し、2005年以来、ソフィア市長をつとめていた。いつもの、汚職と戦い、より良い経済的未来を確保するという選挙キャンペーンを彼はおこなった。バットマンは、デア・シュピーゲルとのインタビューで、CIAとFBIから、恐らくは、闇の勢力との戦いに対してであろう"称賛の手紙"をもらったと自慢していた。首相として、彼が最初に行ったことの一つは、しかしながら、モスクワとの間の既存のエネルギー契約、つまりサウス・ストリーム・パイプラインと、原子力発電所プロジェクトとの両方の保留だ。

この"デモクラシー"の勝利は、至る所に"アメリカ製"と書きつけられている。2007年、モスクワは、二本の代替パイプライン計画を決定した。ウクライナとポーランドを迂回する、バルト海海底から、ドイツへのノース・ストリームと、黒海海底、ブルガリア、そして、ヨーロッパへのサウス・ストリームだ。ソフィア政府は、EUとNATOのメンバーであるにもかかわらず、2008年に、モスクワとエネルギー協定に調印した。この件と、2009年1月のウクライナとロシア間のガス危機により、ブルガリアに体制変換が、不可欠のものとなり、アメリカ政府が資金援助をしている全米民主主義基金によるサービスが、(彼等は、1990年のブルガリア政府転覆を支援した)明らかに、非常に有効に活用されたわけだ。買収による票集めで損なわれた(NEDにもかかわらず、あるいは、そのおかげで?)選挙からわずか一週間後、ブルガリア新首相はロシアとの契約を破棄した。

ボリソフは、一週間後アンカラに出張し、EUナブッコ・パイプラインに調印した。アメリカのユーラシア・エネルギー特使、民主党のリチャード・モーニングスターと、共和党上院議員リチャード・ルーガー(超党派であることに留意)が、アンカラで、7月13日の調印式に彼と合流した。全て計画通りに進めば、カスピ海地域と中東から、中・西欧の市場へと、ガスを輸送するナブッコ計画は、サウス・ストリームのお株を奪うことになる。アゼルバイジャン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、イランとイラクを供給国候補だ。ルーガー上院議員は、真顔でこう言った。トルコで調印されたナブッコ協定は、政治的な目的による、エネルギー供給の操作には、パートナー政府は黙従などしないという、世界の他の国々に対する合図だ。これはまた、平和的な協力のための新たな手段を構築する可能性をも秘めている。」オバマは、そうしたつまらない話を、7月7日の「モスクワ演説」で更に蒸し返した。「2009年、大国は他国を支配したり、悪魔化したりして、力を示すことはない。帝国が主権国家をチェス盤上の駒のように扱える時代は終わった。」

とはいえ、ナブッコがそのパイプラインに必要としているのと同じガス田である、シャーデニス・ガス田のガス取引について、6月にロシアのガスプロムとも仮調印している、アゼルバイジャンは、ナブッコを実現可能なものにするだけの十分なガスを提供するには問題があるかも知れない。アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領は、ロシアと西欧間の競争の板挟みとなって、結局、誰が最高の価格を支払うか?ということになりうる。たとえ、ナブッコが、アゼルバイジャンのガスを、ガスプロムと既に合意した価格で買うという取引をまとめたにせよ、F ウイリアム・イングドールによると、十分行き渡るほどにはないのだという。そして他の全ての供給者候補にも問題はある。

ルーガー上院議員は、上院で、またもや真顔で言った。「理想的には、天然ガス、また、やがては石油供給も、この種の資源を、統一イラクが輸出してくれる可能性がある。そうなれば、イラクの歴史における極めて悲劇的な時期に対し、奇跡的な出来事であり、素晴らしい結末となるだろう。」もちろん、もしイラクがアメリカの属国状態を黙諾すればだが。たとえそうであっても、トルコに向かうイラクのガスは、トルコと現イラク政府に対する分離主義の温床である、クルド地域を経由する。もう一つの主要ガス供給源はイランだろう。

オバマが大げさに売り込んでも、彼の顧問たちは、実際はチェイニーとブッシュ達と同じ地政学的ゲームを演じているのだ。これは、アメリカという、いわゆる教化をする国と、それ以外の、教化されるべき国々との間の"文明"の衝突だ。しかし、イランとロシアは、オバマ演説を借用すれば、他の国々ほどには、容易には「支配するか、悪魔化する」ことができない。この国とワシントンとの動力学を変えるには、イラン侵略が必要だろう。また、ワシントンから流れてくる熱風は、ミサイル基地と、ウクライナとグルジアを飲み込むというNATOの誓約によって生み出された、ロシア人の疑惑の雲を消散させることはあるまい。

後者二カ国の"文明"の程度は、今のところ「明らか」とはほど遠い。グルジアの野党は、昨年夏に、悲惨な対ロシア戦争を彼がしかけて以来、グルジア大統領ミヘイル・サアカシュヴィリの辞職要求を継続している。現在混乱にあるグルジアを、ナブッコ・パイプライン計画における主要なリンクとして依存するのは、かなりのギャンブルだ。

ウクライナの世論調査では、非常に重要なことが明らかになっている。「もしも我々が、夢想して、ロシア首相ウラジーミル・プーチンが、ウクライナ大統領の職に出馬すると仮定したらどうか、についての世論調査結果によると、彼は即座に勝利するだろう」と、キエフの世論調査会社リサーチ & ブランディング(R&B)のアナリスト、アレクセイ・リャシェンコは言う。「本格的な競争相手になるのは、ロシア大統領ドミトリー・メドベージェフしかいません。」リャシェンコによれば、これは目新しいことではないと言う。プーチンの人気は、2004年の "オレンジ革命"の間ですら、50パーセントを超えていた。5月に公開された、世論調査結果は、ウクライナ人の58パーセントが、プーチンに好意的で、56パーセントが、メドベージェフを良いとしていることを示している。親ロシア派の野党、地域党のヴィクトル・ヤヌコヴィッチ党首は、現在30パーセントの支持率を享受しており、首相ユリア・ティモシェンコは、15パーセントだ。2010年1月の大統領選挙では、5パーセントを上回る程度、ごく少数のウクライナ人が、反ロシアの大統領ヴィクトル・ユシチェンコに投票するだろう。キエフ国際社会学研究所(KIIS)理事長のワレリー・フメルコによると、「メドベージェフとプーチンが、それほど高い評価を受ける主な理由は、ウクライナ政治における、果てしない紛争と意趣返し合戦ゆえに、ロシアの政治家が良く見えているためだ。」「ウクライナ人が、ロシアの国営テレビが好きなことと、危機の時代における強い指導力への期待も、これに貢献している」とR&Bのリャシェンコは語っている。

KIISの世論調査では、25パーセントが、ロシアとの完全統合を、68パーセントが、ロシアと、EU型の国境解放式の形態方式、つまり、ロシアもウクライナも、ビザや税関なしの"独立はしているが、友好的な国家"を望んでいる。世論調査は、半数以上のウクライナ人が、NATO加盟に反対していることを一貫して示しており、いずれにせよ、そのための国民投票は必要だ。「ウクライナ国民の90パーセント以上が、ロシアに対して、好意的な態度を示しており、昨年それは更に好転している」とKIIS理事長ワレリー・フメルコと述べた。ウクライナ人は、ユシチェンコの友人サアカシュヴィリのことも良く思ってはいない。リャシェンコによると、45パーセントが、サアカシュヴィリに対して否定的な考えで、好意的なものはわずか11パーセントしかない。

ジョー・バイデン副大統領が、今週グルジアとウクライナを訪問し、ワシントンは、公式的には、依然としてウクライナ、グルジア両国のNATO加盟を支持している。「ロシアとの関係をやり直すという、わが国の努力は、どこか他の国を犠牲にして行うものではない」と、バイデンの国家安全保障顧問トニー・ブリンケンは述べた。「我々の願いは、これらの指導者達が、革命の約束を果たし、協力して働くという困難な選択をしてくれることだ」ブリンケンは、ウクライナのオレンジ革命にふれ、そう語った。オバマ政権は、ウクライナ国民同様と、申しあげておきたいが、キエフの"政治的麻痺"を懸念している、と彼は語った。NATOについて、同盟に加盟したいかどうかを決めるのは、ウクライナとグルジア次第だと述べた。アフガニスタンへの軍隊と武器の通過に対する、アメリカのロシアへの依存と、ブリンケンの熱烈とはほど遠い語り口、さらに、オバマの事実上の沈黙からして、 近い将来には、そういうこと起こりそうもないことを示唆している。

そう。モスクワ・サミットで、ウクライナ、グルジアとNATOの話題になった際、プーチンに、オバマは、見てみないふりをしたに違いないことは、もはや明らかだ。それが、アメリカの軍隊を、ロシア経由で、アフガニスタンの戦場に派兵する唯一の方法なのだから。しかしナブッコ・パイプラインの成功が、黒海でのNATO "演習"継続や、NATOと、ロシアを除く、全黒海沿岸諸国との緊密なつながりと同様、ロシアをいらだたせるのは確実だ。またポーランドは、年内に最初のミサイル設置を予定していると大胆にも発表した。

こうしたゲームに直面しているモスクワは、ワシントンのタカ派を刺激しかねない、いかなる外交的な失敗を避けるには、決して最初に"まばたき"はしないようにする必要があろう。いずれにせよ、オバマのロシア問題主席顧問マイケル・マクフォールが、ロシア・サミット前に語った嘲笑的なセリフ、「我々はロシア人を必要としていない」というのは、決して真実ではない。ワシントンのブルガリア-ウクライナ-カフカス陰謀は、容易に分解しかねない。またたく間に。

Eric Walbergは、Al-Ahram Weeklyに寄稿している。彼とはhttp://ericwalberg.com/で連絡がとれる。

記事原文のurl:ericwalberg.com/index.php?option=com_content&view=article&id=192:bulgaria-vs-ukraine-dont-blink&catid=37:russia-and-ex-soviet-union-english&Itemid=90

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帝国は過酷だ。時間があれば、選挙で、政権を奪取させるカラー革命を狙うのだろうが、間にあわなければ、もちろん軍事クーデターも辞さない

ブルガリアでは、カラー革命が成功。

イランでは、現在、カラー革命が進行中?

ホンジュラスでは、カラー革命ではなく、クーデターが成功。

わが属国日本で、これから行われる選挙が、カラー革命の例外でいられるはずがあるだろうか?強力な軍事基地、思いやり予算(日本語では、普通は、「かつあげ」というのではないだろうか?)、そして郵便貯金等々、最大の金づるの可愛い属国を一人立ちさせてくれるはずがない。自民党ぼろ負けというのも、シナリオのような気がしてきた。

「孫悟空が、觔斗雲(きんとうん)に乗り、世界の果てまで飛んで行き、5本の柱に落書きをして帰ってくるが、その5本の柱とは、お釈迦様の手の指だった。」という西遊記、日本の現実のように思えてくる。

政権交代と騒いでも、結局は、掌の上を騒ぎ回り、自分で自分の首を締めてしまうだけ。

孫悟空は、脱走できないよう、頭に「緊箍児」(きんこじ、別称「金剛圏」)という輪をはめられていた。日本人は、独立できないように、安保条約と、大本営マスコミを与えられているのだろうか?

商業マスコミでない、NPJ通信では、下記のような記事が読める。

マスメディアをどう読むか

丸山重威関東学院大学教授・日本ジャーナリスト会議

問われているのは 「日本の方向」
総選挙の争点は 「政権の選択」 ではない

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