アメリカの対イラク戦争-文明の破壊
James Petras
2009年8月21日
"Information Clearing House"
アメリカの7年間にわたるイラク戦争と占領は、幾つかの主要な政治勢力によって、動かされており、様々な帝国主義的権益に基づいている。とはいえ、こうした権益は、それ自体で、今継続中の、社会全体の、大規模で、継続的な破壊と、永久的な戦争状態への下降の、底なしの淵や、規模を物語りはしない。開戦と、それに続くアメリカ占領に貢献した一連の政治勢力には、以下のものが含まれる(重要度の順):
最も重要な政治勢力は、また、最も公に語られることの少ないものだ。それは、シオニスト権力構造(ZPC)で、それは、長年の、強硬派、ブッシュ・ペンタゴンのトップ役職に任命された無条件のイスラエル国家・ユダヤ支持者達(ダグラス・フェイスとポール・ウォルフォウィッツ )、副大統領オフィスの主要工作員(アーヴィング(スクーター)・リビー)、財務省(スチュアート・リービー)、国家安全保障会議 (エリオット・エイブラムズ) そして、コンサルタントの一団、大統領スピーチライター(デーヴィッド・フラム)、国務省の二級幹部や政策顧問の、大きな役割を含んでいる。こうした熱心なシオニスト‘インサイダー達’は全米主要ユダヤ人団体代表者会議(CPMAJO)を組織した、51の主要なアメリカ内ユダヤ人団体の、何千人ものイスラエル第一主義専業職員によって支えられている。彼等は、自分たちの最優先事項は、イスラエルの目標を推し進めることだと、あからさまに述べており、この場合、サダム・フセインを打倒し、イラクを占領し、イラクを物理的に分割し、軍事的、産業的能力を破壊し、親イスラエル/親米傀儡政権を押しつけるための、アメリカによる対イラク戦争だ。極右のイスラエル首相ベンヤミン・ナタニエフや‘リベラルな’外交問題評議会名誉理事長で、軍国主義者-シオニストであるレスリー・ゲルブらが唱導するとおりに、もしイラクが、民族浄化され、分割されれば、複数の‘属国政権’が作られるだろう。
戦争を推進した、シオニスト為政者達は、最初、実際、イラク文明丸ごとの計画的破壊という政策を、直接遂行しようとしてはいなかった。だが、占領政策に対する、彼等の支持と計画には、イラク国家機構の徹底的な破壊や、尋問手法や、民間人レジスタンスや対テロ弾圧に関する‘専門的知識’を提供するイスラエル人顧問の採用が含まれていた。イスラエルがパレスチナで修得した、イスラエルの専門的知識は、イラク内の宗教的、民族的対立を醸成する上で、確実に重要な役割を演じていた。植民地戦争と占領のイスラエル‘モデル’、つまり、1982年のレバノン侵略や、宗派的、人種-宗教的差異を利用した‘全面破壊’の手口は、イスラエルの軍事監視の下で起きた、ベイルートのサブラとシャティラ難民キャンプでの悪名高い虐殺で明らかだった。
イラク戦争の背後にいた二番目に強い政治勢力は、中東における、アラブ反植民地主義武装反抗勢力の、強力で、非宗教的、民族主義的な支援者を抹殺することにより、ペルシャ湾におけるアメリカ帝国の勢力圏を拡大し、地政学的な立場を強化しようと、目論む文民の軍国主義者(ドナルド・ラムズフェルドやチェイニー副大統領のような)だ。文民の軍国主義者は、アメリカ軍事基地によって、ロシア包囲を強化し、中国に対する政治圧力の対象として、イラクの油田を巡る支配の確保を狙っている。文民軍国主義者達は、チェイニー副大統領が石油産業に持っていた過去の絆には、さほど影響は受けず、それよりも、全世界への軍事基地拡張によって、アメリカ帝国を強化しつつある、ハリバートンの巨大軍事基地請負業者下請け業者ケロッグ-ブラウン・アンド・ルートのCEOという彼の役割に、興味をもっていた。ヨーロッパやアジアの競争相手に座を奪われることを危惧していたアメリカの大手石油会社は、既にサダム・フセインとの取引に熱心で、石油業界のブッシュ支持者の中には、既に、禁輸されているイラク政権と、違法な貿易をしているものすらあった。石油産業は、戦争によって、地域の不安定化を促進するつもりはなかった。
征服と占領という軍国主義戦略は、植民地軍事顧問や、戦闘部隊の大規模で、持続的な代表団を伴った、戦略的軍事基地の形で、長期的な植民地への軍事駐留を確立するよう設計されている。強い民族主義の歴史と、高度なインフラストラクチャーを持ち、高度な軍隊と警察機構、広範囲に及ぶ公共サービスや、広範な識字の、独立した、非宗教的国家の、残酷な植民地占領は、当然、様々な過激武装反占領運動の発展をもたらす。これに対し、アメリカの植民地幹部、CIAと国防情報局は、‘分割して統治する’戦略(元‘紛争地域’大使で、アメリカ国家情報長官ジョン・ネグロポンテにゆかりのある、いわゆる‘エルサルバドル式解決法’)を立案した。武装した宗派に基づく紛争を醸成し、統一された民族主義者による反帝国主義運動のあらゆる努力を弱体化させるため、異教徒間における暗殺の促進だ。非宗教的な民間の官僚機構と、軍隊の解体は、ブッシュ政権の内部のシオニストによって、この地域におけるイスラエルの権力を強化するために計画され、崩壊させられたサダム・フセインのバース党政権によって、抑圧されていた、過激派イスラム教集団の勃興が奨励された。イスラエルは、この戦略を早くから修得していたのだ。もともと、イスラエルが、非宗教的なパレスチナ解放機構の代替として、ハマースのようなイスラム教過激派宗派集団に資金援助を与えて、パレスチナ人間での宗派戦争の舞台をしつらえたのだ。
アメリカの植民地政策の結果は、様々な内部抗争に、資金援助をし、拡大させることで、ムッラー(宗教的指導者)、部族指導者、政治ギャング、部族軍司令官、国外居住者や、暗殺部隊は急増した。‘全員による、全員に対する戦争’は、アメリカ占領軍の権益に役立った。イラクは、そこから新たな傭兵を採用できる、武装した失業中の若者達のプールと化した。‘内戦’や‘民族抗争’は、アメリカと、そのイラク人傀儡にとって、何十万人もの兵士、警官や、前政権の職員達(特に、彼等がスンナ派や、異なる宗教間で結婚していたり、非宗教的な家族であったりする場合)を解雇し、民間人雇用の基盤をむしばむ口実として役立った。一般的な‘対テロ戦争’を装って、アメリカ軍特殊部隊とCIAが指揮する暗殺部隊が、傀儡政権を批判していると疑われたあらゆる人物を対象に、特に、まさに、独立した非宗教的な共和国を再建する能力がもっともあるイラク人たる、教養ある専門職階級に、イラク人市民社会中に、テロを拡げたのだ。
イラク戦争は、イスラエルと強いつながりを持った、ネオコンと、ネオリベ理論家の強力者集団によって動かされている。彼等は、イラク戦争の成功を(成功という言葉で、彼等は、この国の完璧な解体を意図している)中東を‘再植民地化’するための(彼等の言葉では“地図を書き換える”)ための一連の戦争における、最初の‘ドミノ’と見なしていたのだ。彼等は、自分たちの帝国主義イデオロギーを、中東において‘デモクラシーを推進する’などという付け焼き刃の論理で偽装していた(もちろん、支配下に置いたパレスチナ人を巡る、自らの‘祖国’イスラエルによる非民主的な政策は除く)。イスラエルの地域における覇権の野望を、アメリカの帝国権益と結合させ、ネオコンと、そのネオリベ仲間、民主党内部の支持者達は、対アフガニスタン・パキスタン戦争のエスカレーションに対し、最初はブッシュ大統領を、後にオバマ大統領を支持している。レバノンに対するイスラエルの’野蛮な爆撃作戦、ガザに閉じ込められた何千人もの民間人への陸上と、空爆と、虐殺、シリア施設への爆撃、(イスラエルの)先制的、全面的対イラン軍事攻撃に対する強い後押しを、連中は満場一致で支持してきた。
中東や南アジアにおける、連続的な、複数の同時戦争を支持するアメリカ人達は、自分たちの大量破壊戦力の全力を発揮できるのは、最初の犠牲者、イラクの完全支配を確保した後のことだと信じていた。アメリカと国連によって、この国に課された、13年間という残酷な飢餓的経済制裁の後では、イラク人レジスタンスは、急速に崩壊するだろうと、彼等は確信していた。アメリカ人為政者は、植民地支配を強化するため、全ての独立したイラク人民間人の反体制派を、永遠に沈黙させようと決意していた。市民社会運動指導者の、選択的暗殺を実行するため、彼等は、シーア派聖職者や、スンナ派の暗殺者への資金供与に向かい、クルド人のペシュメルガ部族軍司令官達の何千人もの民間傭兵と契約した。
アメリカは、ほぼ全てが、シーア派武装集団から構成される、総員200,000人のイラク植民地傀儡軍を生み出し、訓練したが、宗教的でなかったり、スンナ派や、キリスト教の背景をもっていたりする、経験豊かなイラク軍兵士を排除した。アメリカが訓練し、資金援助をした暗殺部隊と、その傀儡‘イラク’軍強化の、ほとんど知られていない結果が、その教会が爆撃され、指導者達や司教や知識人、学者や科学者が、暗殺されるか、亡命を余儀なくされ、強制移動させられてしまった、古代からのイラク人キリスト教徒の、事実上の破壊だ。非宗教的な、民族主義、反イギリス/反君主制主義者運動の歴史的な発展の上で、イラク人キリスト教徒が、主要な役割を演じていたことを、アメリカと、そのイスラエル人顧問達が、十分にわきまえていたことと、アメリカ占領後の最初の一年間における、影響力が大きい勢力である彼等の抹殺は、偶然ではない。このアメリカ政策の結果は、大半の、非宗教的で、民主的、反帝国主義の指導者達や運動を抹殺し、自分たちの‘民族的-宗派的’協力者の殺人ネットワークを、イラクにおける長期的なアメリカの植民地駐留を維持する上での、競合相手のいない‘パートナー’として提示するということなのだ。自分の傀儡を権力に付けておけば、イラクは、他の‘ドミノ’(シリア、イラン、中央アジアの共和国…)を戦略的に追求するための出発点として使えるのだ。
アメリカ占領下イラクでの、血なまぐさい粛清の継続によって、2003年3月にブッシュが侵略して以来、最初の7年間で、130万人のイラク人一般市民が殺害された。2009年中頃までに、イラク侵略と占領は、公式には、アメリカ財務省の6660億ドル以上の支出となっている。この莫大な支出は、アメリカの大規模な属国支配戦略における、中東全体/南および中央アジア地域に対する、その重要性を証明している。民族的-宗教的差異を、政治問題化させ、軍事化させ、武装させ、ライバルの部族、宗派、民族指導者達が、お互いの殺りくに携わることを奨励するワシントンの政策は、国家的統一と、レジスタンスの破壊に役立った。‘分割して統治する’戦術と、退化した社会、宗教団体への依存というのは、統一した、高度な民族主義国家を征服することを目指すための、ありふれた、最も良く知られた手法なのだ。国民国家の解体や、民族主義者の自覚の破壊や、粗野な民族的-宗派的、封建的、地域的忠誠心を奨励するには、民族主義者的な自覚、歴史的記憶や、非宗教的な科学的な思考の主要な提供者を、組織的に破壊することが必要だった。民族的-宗教的憎悪をひき起こし、異なる宗徒間の結婚や、様々な人々が混成する共同体や、多様な背景の中で、長年にわたる個人的な友情や、専門家同士の絆がある機構を破壊した。学者、作家、教師、知識人、科学者や専門家、特に医師、エンジニア、弁護士、裁判官や、ジャーナリストの物理的な抹殺は、植民地占領の下で、民族的-宗教的支配を押しつける上で、決定的に重要だった。長期的な支配を確立し、民族的-宗教的な属国支配者を確保し、前から存在し、独立した非宗教的国民国家を維持してきた文化体系が丸ごと、アメリカと、そのイラク人傀儡によって、物理的に破壊された。この破壊は、図書館、国勢調査局、あらゆる財産や裁判歴の保存場所、保健所、研究所、学校、文化センター、医療施設、そして、なによりも科学-文学-人文科学の、専門家という社会的科学者階級全体を対象にしていた。何十万人ものイラク人専門家や家族が、テロにより、国内、海外への難民化を強いられた。国立の、非宗教的、科学・教育機関への全ての資金援助が停止された。暗殺部隊は、多少とも反対派、多少とも民族主義的な意見の持ち主と疑われる何千人もの学者や、専門家の組織的殺害に、携わった。共和国を再建する能力が多少ともある全ての人々が狙われたのだ。
現代アラブ文明の破壊
独立した、世俗イラクには、サダム・フセインの警察国家という抑圧的状態にもかかわらず、アラブ世界で、最も進んだ科学-文化秩序があった。前例のない水準の男女同権と結びついた、国家による医療制度、 普遍的な公教育と、鷹揚な福祉サービスがあった。これは、二十世紀後半におけるイラク文明の先進的な特質だった。教会と国家の分離や、宗教的少数派(キリスト教徒、アッシリア人や他の人々)の厳格な保護は、アメリカ占領と、アメリカによるイラク民間、政府機構の破壊から生み出されたものと、鋭い対照をなしている。サダム・フセインの過酷な独裁的支配は、高度な科学的研究が、強烈な民族主義、反帝国主義というアイデンティティーと、手を携えて進んでいる、大いに発展した現代文明を、統轄していたのだ。これは、特に、イスラエル支配と占領下におけるパレスチナ人の苦境に対する、イラク国民と政権の団結表現となって現れていた。
単なる‘体制変革’だけでは、イラクにおける、この深く根付いた、高度な世俗的共和主義文化は根絶できない。アメリカの戦争計画者達や、イスラエル人顧問達は、非宗教的な国家を破壊しない限りは、植民地占領が、イラク人民族主義者の自覚を高めるだろうことを十分に理解しており、それゆえに、帝国の要求として、学識があり、有能な、科学、実際、イラク人社会で最も非宗教的な部分の人々を、物理的に抹殺することで、民族主義的自覚を持った人々を、根絶し、破壊したのだ。退化は、アメリカにとって、最も洗練された民族主義的な社会階層を剥奪され、文化的に粛清されたバグダッドに、原始的で、‘国家以前の’忠誠心を持った植民地傀儡を権力の座に、無理やり据えるための、主な手段となった。
カイロのアル-アハラム研究センターによると、アメリカ占領後、最初の18ヶ月間に、310人以上のイラク人科学者が抹殺された。この数値は、イラク文部省も否定していない。
別の報告では、2005年から2007年までの間に、340人以上の知識人や科学者の殺害があげられていた。高等教育施設の爆撃は、在籍者数を、侵略前の数値の30%に押し下げた。2007年1月のバグダッドのムスタンシリヤ大学に対する一度の爆撃で、70人の学生が殺害され、何百人もが負傷した。これらの数値によって、UNESCOは、イラクの大学制度が、崩壊の瀬戸際にあると警告せざるを得なくなった。国外に亡命した著名なイラク人科学者や教授の人数は、20,000人に近づいた。2003年以後、亡命した6,700人のイラク人大学教授のうち、2008年10月までに帰国した人々は、わずか150人だと、ロサンゼルス・タイムズは報じている。治安は向上したというアメリカの主張にもかかわらず、イラクで二番目の大都市バスラで開業していた唯一の神経外科医が殺害され、遺体が街路に捨てられたものを含め、無数の暗殺があるというのが、2008年の状況だ。
アメリカと多国籍占領軍や民兵や、彼等が支配する闇の勢力によって暗殺されたイラク人学者、科学者や専門家に関する元データは、パキスタン・デイリー・ニューズ(www.daily.pk)が2008年11月26日に発表したリストから得た。このリストは、アメリカ占領という非情な制度下における、イラク知識人の計画的抹殺という現実に対する、非常に不快な解釈を提示している。
暗殺
暗殺による個人の肉体的抹殺は、テロの極端な形であり、その個人が所属する共同体中、この場合には、イラク知識人、学者、専門家や、芸術や科学分野の創造的な指導者達の世界に、さざ波を立てるという、広範囲の影響力を持っている。殺害された一人のイラク人知識人に対し、何千人もの学識あるイラク人が、より安全で、危険性がより少ない仕事を求め、国を捨てたり、仕事を捨てたりしているのだ。
バグダッドは、文化、芸術、科学、教育の点で、アラブ世界の‘パリ’と見なされていた。1970年代と80年代、イラクの大学は、アラブ世界で羨望のまとだった。バグダッドに雨あられのごとく爆弾を降り注いだアメリカの‘衝撃と畏怖’作戦は、ルーブルや、ソルボンヌや、ヨーロッパの偉大な図書館の空爆と似たような、感情をひき起こした。バグダッド大学は、アラブ世界でも、最も権威ある、生産的な大学だった。学者達の多くは、博士号を持ち、海外の一流の大学で、博士課程研究の経験者だ。同大学は、中東最高の専門家や科学者の多くを、教え、輩出した。2003年3月侵略前、13年間にわたって、イラクを飢えさせた、アメリカと国連が課した経済制裁という致命的な締めつけの下でさえ、何千人もの大学院生や若い専門家が、大学院の研修のため、イラクにやって来ていた。アラブ世界中の若い医師たちは、イラクの教育施設で、高度な医学教育を受けていた。学者の多くは、主要な国際会議で科学論文を発表し、一流雑誌に論文を書いていた。最も重要なことは、バグダッド大学は、あらゆる民族や宗教的背景を持った学者達によって、宗派的差別がない、大いに尊敬される、科学的な非宗教文化を教育し、維持していたのだ。
この世界は、永遠に壊滅させられた。アメリカ占領の下、2008年11月までに、バグダッド大学で教えていた、83人の学者と研究者が殺害され、彼らの同僚や学生や家族の数千人が、逃亡を強いられたのだ。
学問分野別の暗殺対象学者選別
2008年11月、パキスタン・デイリー・ニューズが報じた記事には、バグダッドに在住するそれぞれの分野で著名で、殺害された最高の学者、合計154人の名前が列記されていた。イラク最高の大学で教鞭をとっていた合計281人の有名な知識人が、アメリカ占領下で、‘暗殺部隊’の犠牲になったのだ。
アメリカ占領前には、バグダッド大学は、第一級の研究・教育医学部を擁し、高度な教育で、全中東から、何百人もの若い医師を惹きつけていた。アメリカの暗殺部隊体制が勃興していた間に、このプログラムは、徹底的に破壊され、回復の見込みはほとんどない。殺害された人々のうち、25% (21)は、バグダッド大学医学部の最古参教授と講師達で、あらゆる学部の中で、最高の比率だ。教授陣の殺害が、二番目に高い比率なのは、バグダッド大学の有名な工学部の教授と研究者で(12)、その次は、人文科学のトップ学者(10)、物理、社会科学(8人の古参学者)、教育学部(5)だ。バグダッド大学において殺害された他のトップ学者、農学、経営、体育、通信や、宗教学部にまで及ぶ。
バグダッドの他の三大学で、社会科学の10人、法学部の7人、医学部と人文科学部でそれぞれ6、物理学で9人、そして工学部で5人を含み、53人の古参学者が虐殺された。2002年8月20日、ラムズフェルド国防長官は侵略前にジョークを言った。「…彼等は(科学者は) (アメリカの子供ゲームである)‘tiddlywinks’は、やっていなかったと、想像せざるを得ない」(物理と化学分野におけるイラク人科学者の血なまぐさい粛清を正当化するものだ。これは、侵略後に起きた学者殺戮の一つの不吉な予兆だった。
同様に残酷な学者粛清は、全ての地方大学で起きた。モスル、キルクーク、バスラや他都市の評判の高い様々な大学で、127人の古参の学者や科学者が暗殺された。古参の教授会員で殺害された人数が多い地方大学は、アメリカとイギリス軍や、彼等のクルド人傭兵が最も活動していた諸都市のものだ。バスラ (35)、モスル(35)、ディヤラ(15) そして、アル-アンバル(11)。
イラク軍と、同盟国軍の暗殺部隊が、アメリカ、あるいは‘多国籍軍’の支配の下、都市在住学者殺害の大半を遂行した。学者の計画的殺害は、現代アラブ文明の、文化的、教育的基盤を破壊するための、全国規模、領域横断的な動きだ。こうした暗殺の大半を実行した暗殺部隊は、現代の非宗教的な社会と、独立した、統一共和国再建という目標を追求しかねない、政治的に意識の高い知識人や、民族主義的な科学者全員を一掃するためにアメリカ軍の戦略家によって‘解き放たれた’ あるいは、手段として利用された、原始的な、近代以前の、民族的-宗教的集団なのだ。
アメリカ侵略を防ごうというパニックの中、2002年12月7日に、イラク国家監視理事会は、500人以上の主要イラク人科学者を明らかにするリストを国連に提出した。このリストが、イラク科学エリートを抹殺するためのアメリカ軍殺害予定者リストの根幹となったことに、疑念の余地はない。悪名高い侵略前の国連演説で、コリン・パウエル国務長官は、その専門的知識が、他の国々によって利用されるのを防ぐため‘封じ込める’必要がある、3,500人以上のイラク人科学者、エンジニアのリストを引用した。アメリカは、イラク人科学者やエンジニアを再教育するプログラムである、‘民間人再教育’を立ち上げるため、国連が保管する、イラクの‘石油・食料交換プログラム’の資金から、何億ドルもの‘予算’を引きだした。こうした大いにもてはやされたプログラムも、決して本気で導入されたわけではなかった。あるアメリカの政策専門家が、カーネギー財団論文(2004年4月、RANSACポリシー・アップデート)の中で、イラクの‘過剰な科学者、エンジニアや技術者’と表現した人々を、安上がりに封じ込める方法が、明らかになった。アメリカは、イスラエルのモサドによる、選ばれた主要イラク人科学者の秘密暗殺作戦を採用し、工業規模で、拡大することを決断したのだ。
アメリカ‘増派’と‘暗殺’作戦のピーク: 2006年-2007年
学者に対するテロの全盛期は、バグダッドおよび、地方におけるアメリカ軍攻勢再開と同期している。日付が記録されているバグダッド在住学者暗殺の総数のうち(110人の知識人が虐殺されたことがわかっている)、ほぼ80%が(87)2006年と、2007年に起きている。同じパターンは地方でも見られ、合計84人の学者の77%が、同時期に、首都外で殺害された。傾向は明らかだ。アメリカ兵の犠牲者数を減らし、占領に対する潜在的な反対意見論者を粛清する手段として、占領アメリカ軍が、傭兵イラク軍と警察を組織し、ライバルのシーア派やスンナ派部族の人々や民兵の採用と訓練に資金を提供するにつれ、学者の殺人率は増加している。
学者に対するテロ作戦は、2005年中頃に強化され、2006年-2007年に頂点に達し、何万人ものイラク人学者、科学者、専門家や、その家族の大量海外亡命をひき起こした。大学の医学部の教授陣が丸ごとシリアなどへの難民となってしまった。年老いた両親や親戚を見捨てることができずに、イラクに残った人々は、自分の正体を隠すため、非常手段を講じた。保護してもらうか、家族とともに、アメリカかヨーロッパへの移住を認められることを願って、アメリカ占領軍や傀儡政権に協力することを選んだ人々もいる。ヨーロッパ人、特にイギリスは、イラク人学者を受け入れたがらないのだが。2008年以後、学者殺害は大幅に減少しており、この年は、わずか4人しか暗殺されていない。これは、アメリカと、その傀儡傭兵側での、何らかの方針変換というよりは、海外で暮らしているか、隠れているイラク知識人の大量逃亡の反映だ。結果的に、イラクの研究機関は、すっかり縮小されてしまった。技術者、司書や学生を含む残った補助スタッフ達の生活は、徹底的に破壊されており、将来の就職見込みもほとんどない。
アメリカの対イラク戦争と占領は、ブッシュ大統領やオバマが宣言したように、‘成功’し、2300万人の国民がいる独立国家が、武力で占領され、傀儡政権は腰を据え、植民地傭兵軍は、アメリカ人幹部に服従し、油田は売りに出されている。歴史的遺産、文化遺産や国家資源を保護する民族主義的な全てのイラク法は、破棄されたか、アメリカ帝国に有利な‘憲法’を占領者が押しつけた。イスラエルと、ブッシュ、オバマ両政権内部のシオニスト取り巻き連中は、現代の敵対国家の終焉と、イラクを文化的-政治的砂漠に転換したことを慶賀している。2003年1月、アメリカ国務省とペンタゴン幹部によって、アメリカン・カウンシル・フォー・カルチュラル・ポリシーの有力な収集家達に対してなされた合意とされるものに沿って、略奪された古代メソポタミアの財宝は、ロンドン、ニューヨーク等に住むエリートの所蔵品となる道を‘見いだした’。収集家達は、今やイランの略奪を楽しみに待つことができる。
イランへの警告
イラクにあったような現代的な科学-文化文明の、アメリカによる侵略、占領と破壊は、 もしも、アメリカ-イスラエルの軍事攻撃がおきた場合、イラン国民が被るであろうことの前触れなのだ。デモに参加する、豊かなイラン人学生や、アメリカが資金援助しているNGOによる、大統領選後の‘口紅革命’抗議の文脈では、イラン国民の文化的-科学的基盤に対する帝国主義的脅威が、完全に欠如していた。2004年、バグダッドで‘少なくとも、我々はアフガニスタンとは違う’という、致命的に間違った楽観主義で、教養ある、洗練されたイラク人が自らを慰めていたということを、彼等は肝に銘ずるべきなのだ。同じエリートが、今やシリアやヨルダンのごみごみした難民キャンプで暮らしており、彼らの祖国は、中東の他のどの国より、アフガニスタンに似てしまっている。イラクを、'あらたに解放された、わがアフガニスタンのイメージ'に変換するという、2003年4月のブッシュ大統領の戦慄的な約束は実現された。そして、アメリカ政権の顧問達がイスラエル・モサドによる、イラン人科学者の選別的暗殺政策を再検討したという報道を聞いた、テヘランで暮らす親西欧のリベラル知識人は、2006-2007年に、イラク人科学者や学者を、事実上抹殺してしまったすさまじい軍事作戦の教訓を、真剣に熟考すべきなのだ。
結論
イラクに、中世的な民族-聖職者社会-政治構造に基づく退行した属国政権を樹立することで、アメリカ合州国(そして、イギリスとイスラエル)は、一体何を得ているのだろう? 何よりもまず、イラクが帝国の前哨基地になったのだ。第二に、イラクの、弱く、後進的な政権は、この地域における、イスラエルの経済的、軍事的支配に挑戦することができず、エルサレム、ヨルダン川西岸や、ガザの、先住パレスチナ・アラブ人に対して進行中の民族浄化を問題としてとりあげるのに乗り気ではないのだ。第三に、一つの独立国家の、科学的、学問的、文化的、および法的基盤の破壊は、西欧(と中国の)多国籍企業や、その技術インフラへの依存が増すことを意味し、帝国による経済侵略と搾取が容易になる。
19世紀半ば、1848年の革命の後、フランスの保守的な社会学者エミール・デュルケムは、ヨーロッパのブルジョアが、増大する階級闘争に直面しており、反資本主義の労働者階級が増大していることを認識した。宗教や聖職権主義に関する哲学的な懸念はあるにせよ、社会的一体性を‘作り出し’、階級分化を和らげるためには、ブルジョワが伝統的宗教の神話を利用せざるをえまいことに、デュルケムは気がついたのだ。教養があり、洗練されたパリの資本家階級に対し、宗教を政治的支配維持用の道具として利用するため、反啓もう主義の宗教的教義に対する拒否反応は、差し控えるよう、彼は呼びかけた。同様に、ペンタゴン-シオニストを含むアメリカの戦略家達は、この戦略が、科学者、専門家階級の全滅を必要とするものであるとは言え、イラクの植民地支配を強化すべく、非宗教的な国家政治指導層や、高度な文化を破壊するために、部族ムッラー、民族的-宗派的勢力を、手段として利用したのだ。現代アメリカの植民地支配は、社会の中で、社会的、政治的に、最も後進的な部門を支持し、戦争の最も高度な技術を適用することで成り立っている。
自分たちの60年間の経験から得た、都市での対テロや、民間人弾圧の方法を、イラクのアメリカ占領軍に教授する上で、イスラエル人顧問達は、主要な役割を演じた。1948年、デール・ヤシン村での、何百ものパレスチナ人家族の悪名高い虐殺は、新植民地秩序を押しつけるために、その土地に対する内因的な文明、文化的な絆を持った先住民が何世紀も定住していた、何百もの生産的農村の抹殺した、シオニストの象徴だ。パレスチナ人を、故郷から完全に引き離す政策は、イラク駐在アメリカ人為政者に対するイスラエルの助言の中核だった。ブッシュとオバマ政権内のシオニスト信奉者により、現代イラクの民間と国家の官僚機構の丸ごと解散と、この荒廃した国の、現代的大学や、研究所を粛清するため、クルド人とシーア派過激派で構成される、近代以前の部族暗殺部隊を活用するよう命じることで、彼らのメッセージは遂行されたのだ。
アメリカによるイラクの帝国的征服は、現代の非宗教共和国破壊の上に、成り立っている。後に残された文化的砂漠(聖書の‘寂しい荒野’は、イラクの貴重な学者達の血に染まっている)は、超巨大詐欺師、‘イラク人幹部’のふりをしている殺し屋傭兵、部族や民族の文化的文盲や、中世的な宗教者連中達によって支配されている。アメリカやヨーロッパ多国籍企業の権益に仕えるのに熱心な、プリンストン、ハーバード、ジョンズ・ホプキンス、エールやシカゴ大卒業生が、計画した‘帝国の青写真’を持った陸軍士官学校卒業生の指導と指示の下で、彼等は活動している。
これは、‘複合化した、不均等な発展’と呼ばれている。その実、原理主義者ムッラー達と、アメリカに奉仕するアイビーリーグ・シオニストの結婚なのだ。
記事原文のurl:www.informationclearinghouse.info/article23342.htm
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『マケインの本当のペトレイアス原則』という08/10/18の記事翻訳中で、下記のように書いた。
ボブ・ウッドワード、イラクでのゲリラ活動が大幅に減少したのは「増派」のおかげではないと、他要因を説明している。Why Did Violence Plummet? It Wasn't Just the Surge.
The War Withinという著書で、ボブ・ウッドワードは、他に有効な作戦があるのだが、具体的に言うわけにはゆかない、というようなことを書いていたようだ。そんな、うまい作戦などあるはずもないだろうと、以来、ゲリラ活動の減少理由を、大変不思議に思っていた。
この記事で、ようやく納得。上記のウッドワード記事を読み返して見ると、「秘密作戦が、非常に効果をあげている」と、ちゃんと書いてある。作戦のコードネームも、詳細もあかせない、ともある。これほど悲惨な実態、決して明かすわけにはゆくまい。凄惨なインテリ殲滅作戦だったのだ。
敗戦させてしまった後は、簡単な脅し、テロ、賄賂で、属国支配が完成した某国と異なり、本格的な民族主義者がいたイラク、Shock and Awe(衝撃と畏怖)作戦終了後にこそ、『衝撃と畏怖』が本格的になっていたというわけだ。
ところで、『マケインの本当のペトレイアス原則』という翻訳記事のおまけとして、終わりの方に、こう書いた。
政権交代など呪文にすぎない。実体は、派閥内の政権たらい回し。正確には、アメリカ傀儡大政党間たらい回し。たらい回しに失敗すれば大連立をするだろう。二大政党などというマスコミの虚構にだまされてはならない。実体は傀儡二大政党。
(とはいえ、政権交代を待望するブロガーの方々の数! 小泉選挙を思い出せば、結局は大半がだまされるのは確実だろう。いや、騙されているのではなく確信犯か?)
引かれ者の小唄。戯れ歌でも書いておこう。今日は、ブロガーの皆様が欣喜雀躍されている、自民党政治の終わりどころか、さなきだにひ弱な日本の民主的?政治そのものの、終わりの始まりなのだから。
いよいよ、金だけでなく、命も、宗主国に捧げさせられる。ファシズムは、楽しそうな顔をしてやってくる。もちろん、民主党、この記事にある、アメリカと、同盟関係(実態は、宗主国・属国関係)を強化すると言っている。庶民の皆様、民主党・自民党の議席合計を考えただけで、恐ろしくならないのだろうか?支配層の方々なら、ほくそえむのはわかるが。往時の大政翼賛会再現だろう。
これが妄想であったら、どれ程嬉しいことか。(妄想で、電波で狙われていると書かれる方々も多々おられるが:-)次に行われるのは、比例代表の削減。少数野党は殲滅され、民主党と自民党という傀儡二大政党(実は派閥)が確立する。オザワ氏が中心となって導入した、小選挙区制度というゆがんだ仕組みの上で、予定通りに起こされた茶番を、「市民革命」と浮かれる方々すらおられる。保坂展人氏も、亀井幹事長も落ちたではないか。小泉の息子が堂々当選しているではないか。何が「市民革命」か?「痴民革命」というのなら納得する。いや、大宅壮一の言葉をもじれば「白痴革命」?。あのナチスも、選挙で政権を獲得した。同じ属国でも、札束で頬をはたくだけですむ、イラクのような過酷なインテリ殲滅作戦が不要なアジアの属国、宗主国にとっても、属国傀儡政権にとっても、さぞや統治は楽だろう。
選挙前に、自民党員の知人と、酒を飲んだ際、「後は二大政党で交互にやろうという話になっている」というようなことを言って、さほど野党転落を気にしている様子はなかった。当方、いい加減酔っていたので、正確には覚えていないが「さもありなん。」と思ったものだ。昔、力道山のプロレス華やかなりしころ、テレビにしがみつくようにして見ていた。今回の選挙、初めからお互いやらせで、ガチンコの振りをしているただの「選挙版プロレス」だったろう。プロレスでさえ、受けるためには、流血し、怪我もする。時には、事故で亡くなるレスラーまでいる。
まして国政。自民党幹部落選すら折り込み済だろう。傀儡二大政党(派閥)化こそが最大目的。テレビも新聞も、見事スポーツ・タブロイド品質。そこで一句。
「小泉が搗き、麻生がこねし天下餅、座して食らうは小沢一郎」
「交代が良いね」と皆が言ったから夏の終わりはファッショ記念日
関連翻訳記事:
暗殺部隊の訓練法、革命の鎮圧方法、サンサルバドルからイラクに転用
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2009/9/12追記
主題が本記事と通底している、6年も前の下記記事を見つけた。
TUP速報223号 星川 淳のピースウォッチ#6 03年11月25日 「侵略の動機」
また、『週刊金曜日』 2009/9/11 金曜アンテナ 国際短信に下記記事がある。
イラク 米軍が秘密に展開した 学者・知識人の絶滅作戦
この翻訳記事と同じweb記事を、わずか1500字以下で、まとめておられる。さすが。
長く、まずい、この翻訳を読む時間のない方は、是非、週刊金曜日記事を!該当記事は、かなり下の方で、スクロールしないと、現れない。
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