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2009年7月11日 (土)

二都物語:テヘランとテグシガルパ

Barry Grey

2009年7月9日

"WSWS"

テヘランで、アメリカに支援された、敗北した大統領候補が呼びかけた抗議デモについては、アメリカのマスコミによって、不休の包括的報道が行われている。選挙が不正で、“クーデター”なのだという、元首相ミル・ホセイニ・ムサビによる非難は、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストや他の“権威ある”新聞によって、いかなる独自の調査や証拠も無しに、事実として、無批判に受け入れられ、報道されている。マスコミのプロパガンダ・キャンペーンは、最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイと大統領マフムード・アフマディネジャドが率いるイランの支配的党派を孤立化させ、不安定化させることを狙って、行われている。

抗議デモの大多数を占めるのは、都会の中流階級の、より裕福な層で、大半がムサビに投票し、アメリカとヨーロッパ帝国主義とのより密接なつながりと、自由市場政策の迅速な導入という彼の右翼的なプログラムを支持している人々だ。ムサビや、億万長者の元大統領アリ・アクバル・ハシェミ・ラフサンジャニが率いる“改革論者”派閥を支持すべき何の理由も見いだせない労働者階級は、デモ参加を控えている。

マスコミは、いかなる客観性のふりもかなぐり捨て、抗議運動と、その指導者達が、民主主義を目指す“緑の革命”の先鋒だと主張している。イラン政権による、あらゆる抑圧行為が、重大ニュースとして報道され、何百人も死亡したという噂が事実として報道されている。アメリカのマスコミは、とりわけ、インターネットと携帯電話の通信を阻止しようとするイラン政権の活動に対して、その矛先を向けている。

二週間後、アメリカが訓練し、装備を与えたホンジュラス軍が、選挙で選ばれた大統領の家に押し入り、縛りつけ、銃をつきつけて、飛行機に乗せ、国外に追放した。職を追われた大統領マヌエル・セラヤの基本的な犯罪は、ホンジュラス政府を、ラテン・アメリカにおけるワシントンの宿敵、ベネズエラのウーゴ・チャベスやキューバのフィデル・カストロと提携させ、ホンジュラス国内で、最低賃金引き上げのような、控えめな人気のある改革を進めたことにある。

ホンジュラスでクーデターが起きていることに議論の余地はない。しかし、アメリカの新聞や、テレビでは、この事件はほとんど報道されていない。セラヤ政府閣僚の逮捕と国外追放、追放された大統領に同情的な現地マスコミの閉鎖、外国人ジャーナリストの逮捕、CNN等、アメリカに本社があるマスコミの閉鎖、夕暮れから夜明けまでの外出禁止令や、全ての主要都市における、何千人ものホンジュラス軍の動員を含む、事実上の非常事態発動のいずれもが。

ホンジュラス財界、国会、裁判所と教会が支援するクーデター政権が、インターネットと携帯電話通信を阻止しようと狙っているのに、アメリカのマスコミからは何の抗議も起きない。

新政権が仕組んだ、クーデター支持派デモは、首都テグシガルパの豊かな中産階級が多数派を占めていた。

国家による抑圧をものともせず、ホンジュラスの教師組合は、総勢60,000人の学校閉鎖ストライキを敢行し、何千人もがテグシガルパで抗議デモをした。このデモでは、労働組合員、労働者、失業者や地方の貧しい人々が多数派を占めていた。クーデターに対する、この労働者階級の抵抗は、アメリカのマスコミでは、ほとんど報じられない。

日曜、7月5日、テグシガルパ空港をバリケード封鎖している軍隊が、チャーター機で着陸し、職に復帰しようとしたセラヤ歓迎のため集まった非武装のデモ参加者に発砲した。19歳の青年が射撃され死亡した。またもや、アメリカの報道メディアではほとんど触れられていない。

アフマディネジャドがムサビを逮捕し、イラン国外に追放していたら、アメリカのマスコミがどのように反応しただろうかというのは、容易に想像できる。もしもイラン大統領が、ムサビの帰国を阻止するために空港を封鎖していたら、怒号が噴出していただろう。

イランとホンジュラスに適用される二重基準の見本はたっぷりある。ごく一部をあげればこうだ。

CNNは、ニュースを検閲し、外国人報道陣を脅迫しようとするイラン政権の活動をことさら強調している。一方、ホンジュラス・クーデター政権自身によるホンジュラス放送の停止については、一言も触れない。

7月4日、CNN.comは、地方から、テグシガルパにでかける反クーデター・デモ参加者を、乗せていたバスのタイヤを、ホンジュラス軍が撃ち抜く様を示すビデオ・テープを入手したと報道した。ところがこのビデオ、同局では、例え放送されたとしても、事実上ほとんど放送されていないに等しい。

もっとも重要なのは、日曜、テグシガルパ空港での反クーデター・デモ参加者の殺害と負傷の報道が、アメリカ・マスコミでは、事実上皆無なことだ。月曜日、イギリスのフィナンシャル・タイムズは、残虐行為について、その計画的な特徴を明らかにするような恐ろしい記事を掲載した。セラヤの飛行機を歓迎するため、約1,500人の群衆が空港境界のフェンスに集まったと報道して、同紙は書いている。

「しかし、目撃者によると、日曜の午後3時頃、セラヤの帰国を妨げるために滑走路を警備している兵士たちが、非武装の群衆に対して、攻撃を始めた。

「兵士たちは、空港内の位置から発砲し、更に群衆の中に催涙ガスを打ち込んだ。

「少したって、少数の連中が、デモ参加者が切り裂いた境界フェンスを超え、自動小銃を構え、それを怯えた男、女、子供たちに向けた。更に、連中は、再度発砲した。少なくとも、一人が死亡し、30人もの人々が負傷した。」

ラテン・アメリカのマスコミの多くが、致命傷を負った青年イシス・オベ・ムリーリョが、抗議デモ参加者仲間に運び去られて行く写真を掲載している。そのような写真は、大手アメリカ新聞や、テレビ・ニュース番組には全く現れていない。ムリーリョは、アメリカのマスコミでは、無名のまま、哀悼もされずにいる。

この冷淡な扱いは、6月20日テヘランでのネダ・アガ・ソルタンの死をめぐるマスコミの狂乱ぶりと比較する必要があるだろう。ムサビ支持派抗議デモの傍観者だと報道されている27歳の学生の死は、曖昧な状況下で起きている。イラン政府は関係がないと主張しているが、マスコミは直ちに、彼女を「緑の革命」の殉教者だと宣言した。彼女の映像は、新聞第一面に目立つように掲載され、あらゆるTVチャンネルで放映されている。「ネダ」はイラン反対派の「ジャンヌ・ダルク」だと讃えられている。

二つの首都の物語が、アメリカ・マスコミの性格と役割をまざまざと描き出している。超巨大企業が所有し、支配するアメリカ・マスコミは、国家の付属物、兼、アメリカ帝国主義者の権益のための宣伝機関として機能しているのだ。テヘランとテグシガルパの抗議デモに対する、まったく正反対の対応によって、アメリカ・マスコミと、編集主幹や、上席記者やら、TVニュースキャスターとして働き、たっぷり金をもらっている連中の階級的偏向は浮き彫りにされている。

イランの支配党派を攻撃するアメリカのキャンペーンを、一斉に支持しているいわゆる“進歩的”リベラル・メディアも、同じ役割を果たしている。ネーション誌の水曜日のウェブサイトでは、ムサビ支持派勢力による新たなデモの呼びかけを歓迎する、同誌のイラン特派員ロバート・ドレフュスの記事を見出しに載せている。ホンジュラスの出来事に関する記事をざっと探してみたが無駄だった。(ドレフュスについてより詳しくは、『ネーションのテヘラン特派員ロバート・ドレフュスとは何者か?』英語原文)

アメリカ支配層の国内、外交政策の目的に従って、世論操作の機能を遂行するにあたって、アメリカのマスコミは、いかなる基準も遵守することなく、いかなる制限も守りはしない。アメリカのマスコミが、アメリカの権益にとって好ましくないと目される政権に対する、まやかしの“カラー革命”を支持し、CIA、軍や国務省に支援された政権による目に余るほど反民主的な手段を無視する姿ほど、アメリカの民主主義と、アメリカにおける“自由な言論”の崩壊を分かりやすく示しているものはない。

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2009/jul2009/pers-j09.shtml

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チャールズ・ディケンズに『二都物語』という小説がある。ロンドンとパリだ。

アナリー・サクセニアンに『現代の二都物語』という経営学の名著がある。ボストンとサンノゼだったろうか。

郵政911デマ選挙で小泉首相を強く押した日本の商業マスコミ、その行為を何ら反省しないまま(それが業務なのだから、反省するはずもないが)、今度は二大政党の間の政権交代をうたっている。これも既定路線。これもまんまと成功するだろう。属国日本の商業マスコミも、二大政党制度も、巧妙に、強烈に、宗主国に管理されているのだろう。

ホンジュラスの場合、自由党と国民党、二大政党いずれも、アメリカの傀儡政党。

日本の場合、自民党と民主党、二大政党いずれも、アメリカの傀儡政党。

ホンジュラスと日本の違いは、日本はアジアで孤立しており、アメリカから自立するような政策をとるような政党も政治家も権力を握る可能性がなく、こうしたクーデターが不要であることだけかも。

二大政党間(実質は、自民党の二大派閥だろう)で政権が移動することが、庶民にとって、政治・選挙の目的ではなかろう。

庶民の生活を良くすることが、庶民にとっての、政治・選挙の本当の目的だろう。

そうであれば、小泉郵政選挙で、自民党に2/3の圧倒的大多数の議席を与えた過ちを、有権者は反省・後悔しているだろうか?

東京都議選挙、事実上与党の一つである民主党が、野党のふりをして、商業マスコミの絶大な応援を得て、今度、自民党の代替となる。商業マスコミが民主党を応援するのは、民主党が多数派になっても、財界に対し不利な政策を行わないことを知っているからに違いない。

二大政党なるものの間における権力交代よりも、たとえ、自民、公明、民主といった与党が大連立を組んでも、2/3を超える議席を持てないよう、他の弱小政党を増やすことこそ、属国化暴走を止める安全弁だろうに、そういうことを商業マスコミは書かない。書かないで、二大政党化をあおることが、彼等の使命、業務なのだ。

もちろん、そうなる可能性は皆無。日本は無限に属国化するだろう。(かな漢字変化で、「よとう」を変換させたら、「夜盗」が出てきた。あたらずとも言えず、遠からず、と賢さに感心した。)

今日の新聞で、象徴的な広告を見つけた。

リチャード・ギア主演の「HACHI」なる映画の宣伝だ。

911郵政選挙時期、リチャード・ギアのVisaカード・コマーシャルが連日流されていた記憶がある。

ライオン・ヘアで、ボタンをはずしたシャツ姿のリチャード・ギアが、インドらしき都市で、放鳥しようとする少女を助けるコマーシャルだ。

放鳥すると幸運になれます。鳥の数は多ければ多い方が良いですと商人は語る。出立する兄の幸運を祈って、少女が放鳥しようとするが、小遣いでは一羽しか放鳥できない。少女の背後にいたギアが商人に目配せし、カードで無数の鳥を少女のために放鳥させる。

鳥は仕込まれていて、舞い戻ってくるのだろう。リチャード・ギアにそっくりな当時の首相が、あたかも「これから手品・まやかしをやりますよ」というコマーシャルに見えた。

映画「HACHI 約束の犬」リチャード・ギア主演8月8日ロードショー宣伝。あまりにうまい時期のサプライズ?

「どちらの党が多数派になろうと、日本はアメリカのポチですよ」と言われた気分。

いや、意外に「息子さんも父親ゆずりのポチです。安心して選んでください。」という素直な応援かも知れない。

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