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2009年7月 5日 (日)

もう一つの9/11、中南米に再度出没

頂点にいる人々が、労せずして得ている特権を維持しようと反撃するのは、どうしても避けられない。

Johann Hari

2009年7月3日

"The Independent"

もう一つの、破壊的な9/11の亡霊が中南米に再来し、しつこくつきまとっている。日曜日朝、兵士の大隊がホンジュラスの大統領官邸に押し入った。彼等は、民主的に選出された大統領マヌエル・セラヤが眠っていたベッドを包囲し、機関銃を大統領の胸に押しつけた。兵士たちは、彼に起きるよう命じ、軍用機に連行した。彼等は、コスタリカの滑走路に、セラヤをパジャマ姿のまま置き去りにし、彼を自由意志で国家首長に選んだ国ホンジュラスには、二度と戻るなと命じたのだ。

ホンジュラス国内では、将軍達が、電話網、インターネットや国際TVチャンネルを封鎖し、自分たちが今や権力の座にあると発表した。甘美で、空虚な音楽だけが、ラジオで流されている。政府閣僚は逮捕され、打擲されている。もしも午後9時以後に家から出ると、射撃される可能性があると、国民は脅されている。街頭に押し寄せた反対デモ参加者に対して、戦車と催涙弾が向けられた。

中南米の人々にとって、これは、あの9月11日の再演だ。チリでは、1973年のこの日、平和的な民主社会主義者で、大多数を占める貧しい人々に、着々と富を再分配していたサルヴァドール・アジェンデが、官邸を爆撃され、自殺を強いられたのだ。彼にとって代わったのは、自ら認める "ファシスト"、アウグスト・ピノチェト将軍で、彼は更に何万人もの無辜の人々を"行方不明"にした。クーデターは、ワシントンDCで、ヘンリー・キッシンジャーによってくわだてられたのだ。

チリのデモクラシーを圧殺した公式な口実は、アジェンデが「共産主義者」だったというものだ。彼はそうではなかった。実際、彼は、国富や土地を、アメリカと、チリの超巨大企業から、国民へと移しつつあり、彼等の権益を脅かしていたがゆえに殺害されたのだ。サルヴァドール・アジェンデの未亡人が先週亡くなった時、彼女は、まるで昔の時代の象徴のように見えたのに、なんとわずか数日後に、クーデターが戻って来たのだ。

ホンジュラスは、国民わずか700万人の中米の小国だが、成長しつつある自前のデモクラシー事業に着手してきた。2005年、セラヤはホンジュラスの大多数の貧しい国民を助けると約束して出馬し、約束を守った。彼は労働搾取工場はもはや受け入れられず、「豊かな人々は割り前を払わなければならない」といって最低賃金を60パーセント上げた。

ホンジュラスの富の45パーセントを持つ、頂点にいる僅かなエリート層が怯えたのだ。彼等は、ホンジュラスを、自分たちで、自分たちのために動かすことに慣れている。

しかし、この富の国民への再配分という波は、中南米中に押し寄せている。バリオやフアベラと呼ばれるスラム街、泥と錆びたトタンで作られた貧民街に、初めて、医者や教師や、助成金を受けたスーパーマーケットがあらわれるようになる様子を私は見てきた。石油で得た資金の蛇口を国民の方向に変える指導者を選出したからだ。ベネズエラでは、例えば、ノーベル経済学賞受賞者のアメリカ人経済学者ジョセフ・スティグリッツが引用した研究によれば、ウゴ・チャベスを大統領に選んだがゆえに、国民の半数の貧しい人々は、インフレーション後、収入が130パーセントも増えたという。幼児死亡率は急降下した。

これほど多くの中南米諸国がこの例によって、元気づけられたのも不思議ではない。チャベスが、セラヤのような人を"賄賂"または"洗脳"しているに違いないなどという発想は、とっぴにすぎる。

頂点にいる人々が、労せずして得ている特権を維持しようと反撃するのは、どうしても避けられない。2002年、ベネズエラのオリガーキーは、ウゴ・チャベスの拉致で、ブッシュ政権と共謀した。大規模な民主的な民衆の蜂起だけが、彼の復帰を強いた。ホンジュラスでも、民衆は同じことをしようとしている。

しかし軍産複合体は、プロパガンダ上の口実を考え出し、それが、手先連中によって、西欧世界中で熱心に反復されている。将軍たちは、デモクラシーを救うために、民主的に選出された指導者を打倒し、閣僚たちを逮捕したのだと主張している。

ことのなりゆきはこうだ。ホンジュラスには、1982年に、退陣する軍独裁権力の監督のもとで、オリガーキーによって制定された憲法がある。この憲法は、大統領は一期しか勤められないが、ホンジュラスにおける本当の権力者であることを確保し続けるため、軍は永久に、そのまま残り、"独立"していると定めている。

セラヤは、これはデモクラシーに対する障害だと考え、国民が、新憲法を制定するための憲法制定会議を選出したいのかどうかを見るための、国民投票を提案した。これは、軍の権力を削減する可能性があり、おそらくは、大統領が再選に出馬することを可能にするはずだった。ところが、最高裁が、大統領選挙がある年に、拘束力がある国民投票を行うことは違憲だと裁定した。そこで、ゼラヤは、その代わりに、単に世論を測るだけの、拘束力の無い国民投票を行うよう提案していた。これは全く合法的だ。軍は、国民による票決を恐れ、銃を持って介入したのだ。

しかし、1973年の、あるいは2002年のクーデターの日々以後、世の中は進歩している。アジェンデやチャベスに対するクーデターは、CIAとホワイト・ハウスにより熱心な支援を受けた。だが今回は、バラク・オバマはこう語っている。「クーデターは、合法的ではなかったし、セラヤ大統領は依然として、ホンジュラス大統領だと考えている。」彼は、このクーデターを「不快な前例」と呼んだ。

彼の対応は完全とは言えない。フランスやスペインとは異なり、彼はまだアメリカ大使を召還していない。中南米デモクラシーに対する大きな障害である国際通貨基金と世界銀行を彼は支持し、正真正銘、権力濫用をしているコロンビア政府に武器を供給しながら、チャベスを中傷している。だが、漠然と「我々は、今や皆ホンジュラスの将軍だ」というよう合唱をしていたに違いないブッシュとマケインに比べれば大きな進歩だ。

醜い中南米オリガーキーが、世界を敵に回し、孤立して、デモクラシーと自国民への軽視を現している。機関銃を突きつけることで、全ての富が自分達のものになる古い大陸を維持するために彼等は戦っているのだ。こうした行為の代償を私は見てきた。こうした大陸の、褐色の肌をしたごみ拾いの子供たちが群がっているごみ捨て場に暮らしたことがあるが、そこから何キロか離れた所には、ビバリー・ヒルズのような住宅地があるのだ。

今週末、アルゼンチン大統領と米州機構事務総長を伴い、セラヤは、正当な地位に着くため、彼を選んだホンジュラスに帰国する。彼が成功するか失敗するかによって、ごみ捨て場の子供たちも希望が持てるようになるのか、そして、あの破壊的な9/11クーデターの硝煙がとうとう晴れたのかどうかがわかるだろう。

Slate magazineに書いた、アジアの赤ん坊の生と死に関するJohann Hariの最新記事を読むには、ここをクリック。

j.hari@independent.co.uk

記事原文のurl:www.independent.co.uk/opinion/commentators/johann-hari/johann-hari-the-other-911-returns-to-haunt-latin-america-1729429.html

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関連記事翻訳:

1973/9/11 アジェンデの遺言

ナオミ・クラインの「The Shock Doctrine」中でも、シカゴ大学に学んで洗脳されたシカゴ・ボーイズ達による、ピノチェト時代の過激なチリの経済政策、ピノチェトの独裁・弾圧政治と不可分だったことが実に詳しく書かれている。是非お読みいただきたい。投票をされる前に。

中南米諸国、アメリカ軍から離れようと努力していることも「The Shock Doctrine」にあった。

クーデターを起こした将軍たち、周知の通り、こういう行動をとるように教えるアメリカ軍に育てられている。

それで昨日テレビで報道されていた神奈川の世襲候補を連想した。彼もアメリカで超一流ジャパン・ハンドラーに育てられている。そのことに触れる報道は当然、皆無。アメリカ軍に育てられたホンジュラスの将軍たちと、彼は違う行動をとれるだろうか?父親の懐刀?竹中氏もアメリカ留学した。ホンジュラスの将軍たちとまさに同じ行動をとっているように思える。

アメリカ留学時に、ブレジンスキーの講義を受けたのがご自慢の民主党衆院議員長島昭久氏はどうだろう?ソマリア派兵を最初に言い出した彼、次期は、あの国のために、この属国で、一体何を推進してくれるだろう?

今朝の新聞に、気になる記事があった。

アマゾンに140億円追徴 国税局「日本にも本社機能」というもの。一部を引用しよう。

アマゾン側は米国に納税しており、日本側の指摘を不服として日米の二国間協議を申請。日米の税務当局間で現在、協議中という。日本法人「アマゾンジャパン」(東京都渋谷区)は「課税は不適切で、当局と議論を継続している」とコメントしている。

日米租税条約では、米企業が支店など「恒久的施設(PE)」を日本国内に持たない場合、日本に申告・納税する必要はない。アマゾンは市川市に物流センターがあり、仕入れた書籍などが置かれている。こうした倉庫はPEに当たらない。

ということは、「愛国者法」、日本アマゾンにも適用され、日本人がどんな本を購入しているかという情報、アメリカ当局に報告される可能性がある、ということを意味するのではなかろうか。妄想であれば幸いだ。少なくとも、税金は、アメリカにもってゆかれる可能性が限りなく高い。

こうした理由で、宗主国の巨大企業アマゾン、基本的に本のリンク先にはしていない。(原文で、原書を参照している場合は、その限りではない。)

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