セラヤ、ネグロポンテとソトカノ論争- ホンジュラスのクーデターと米空軍基地
Nikolas Kozloff
2009年7月22日
"Counterpunch"
ホンジュラスで進行中の話題の重要な側面について、大手マスコミは、またしても、へまをした。パルメロラとしても知られている、ソトカノ・アメリカ空軍基地だ。最近の軍事クーデターの前に、マヌエル・セラヤ大統領は、基地を、民間空港に転換するつもりだと発表していたが、それには元アメリカ大使が反対していた。おまけに、セラヤは、彼の計画を、ベネズエラの資金援助で、実行するつもりでいたのだ。
クーデターの何年も前から、ホンジュラス当局は、パルメロラを民間施設に転換する可能性を議論していた。テグシガルパのトンコンチン国際空港は、手狭すぎて、大型の民間航空機を扱うことができないことを、役人たちは思い悩んでいた。1948年にさかのぼる設備は老朽化し、トンコンチンの滑走路は短く、航法装置と原始的だった。施設は丘に取り囲まれており、世界でも最も危険な国際空港となっている。
パルメロラには、これと対照的に、この国で最高の長さ2700m、幅50mの滑走路がある。この空港は、より最近、1980年代中頃に、3000万ドルといわれる経費で建設され、アメリカ合州国が、ニカラグアのサンディニスタに対するアメリカの代理戦争時代、コントラへの補給と、エルサルバドルでの対ゲリラ戦争遂行に使用していた。コントラ戦争の絶頂期には、アメリカは、5,000人以上の兵士を、パルメロラに駐留させていた。コントラの“不沈空母”として知られた基地には、ニカラグア反乱軍への助言役、グリーン・ベレーや、CIA工作員達が暮らしていた。
ここ最近、およそ500から600人のアメリカ兵が、ホンジュラス空軍基地と、飛行訓練センターとして使われている施設に配置されている。1999年、アメリカ基地が、パナマから退去すると、パルメロラは、アメリカが中南米で使える、数少ない飛行場の一つだ。基地は首都テグシガルパから約80キロのところにある。
2006年、あたかも、セラヤとブッシュ政権は、パルメロラの将来の立場に関する協定をすぐにも締結しそうに見えた。その年6月、セラヤはワシントンに飛び、ブッシュ大統領と会談し、ホンジュラスは、パルメロラを商業空港に転換したいと要求した。ブッシュは、その考えは「全く筋が通っている」と述べたとされ、セラヤは、テグシガルパから、パルメロラへ、四車線の道路を、アメリカの資金援助で、建設するつもりだと発表した。
パルメロラ施設に対するホワイト・ハウスの支援と引き換えに、セラヤは、アメリカに対し、ニカラグア国境に近い、ホンジュラス海岸沿い、モスキティア地域におかれるはずの新たな軍事施設の利用を申し出た。モスキティアは、南から北へ移動する麻薬にとっての回廊となっていると言われている。麻薬カルテルは、貨物をもって、コロンビア、ペルーとボリビアからの途上、モスキティアを通過するのだ。
空、海と川からしら接近できない辺鄙な地域、モスキティアは、沼地とジャングルだらけだ。大人数の兵士が、むしろ隠遁したような形で、モスキティアに駐留させられるので、この地域はアメリカにとって理想的だ。海岸という位置は、組織犯罪、麻薬密輸、および、テロと戦うという公式のアメリカ軍戦略と、矛盾のない、海軍、空軍による掩護に、理想的にぴったりだ。ホンジュラス軍統合参謀本部議長ロメオ・ヴァスケスは、この地域は“紛争や問題”だらけなので、軍が、モスキティアに大規模駐留する必要があると語っていた。
しかし、アメリカは、モスキティアをどのように使えるのだろう? ホンジュラス国防長官アリスティデス・メヒアは、モスキティアは、必ずしも「恒久的な設備を持った典型的な基地ではなく、必要な時にのみ使うものだ。もしも大統領セラヤが承認すれば、[アメリカ合州国との]共同作戦を拡張する予定だ。」と語った。ところが、この発言は、明らかに、既にワシントンを訪れ、モスキティアの将来計画を議論していた、最終的なクーデター指導者で、アメリカ陸軍米州学校卒業生ヴァスケスのお気に召さなかった。長官発言を否定して、ヴァスケスの考えは、航空機と、燃料供給施設を収容する「我々の恒久的な軍事基地を、この地域に設置することだ」だと言った。アメリカ合州国は、現場に滑走路を建設するのを助けてくれるだろうと、ヴァスケスは補足した。
一方、間もなく、地上での事件が、航空の安全にむけた、より積極的な方法を、ホンジュラスに強いることとなった。2008年5月、トンコンチン空港で、TACAのエアバスA320が、二度目の着陸の試みで滑走路を外れ、ひどい事故が起きたのだ。木々をなぎ倒し、金網の塀を突き抜け、飛行機の胴体は、滑走路近くで三つに割れた。事故で、3人が死亡し、65人が負傷した。
大事故後、ホンジュラス当局は、悪名高い、危険なトンコンチンへの着陸の長期的封鎖を強いられた。全ての大型ジェット機は、一時的にパルメロラに移動するつもりだと、当局は語っていた。自らアメリカ空軍基地を見学し、当局は、60日あれば、パルメロラに、新たな民間施設が作れるだろうと、セラヤは述べた。ブッシュは既に、ホンジュラスが、パルメロラに民間空港を建設することに合意していると、セラヤ語っていた。「複数の証人もいる」と大統領は補足した。
だが、新空港建設は政治的に一層複雑化した。セラヤとブッシュとの2006年の会談以来、ホンジュラス-アメリカ関係が、大幅に悪化し、セラヤは、アメリカが率いる対麻薬戦争を批判しながら、ベネズエラとの関係を深め始めていた。
ブッシュのアメリカ大使チャールズ・フォードは、パルメロラでの民間飛行は歓迎するが、過去の協定は守られるべきだと語った。基地は、主として、麻薬監視用航空機用に使用される。フォードは「大統領は、彼が望む時に、パルメロラの使用を命じることはできるが、ある種の協定や協約は、守られなければならない。」と述べた。「トンコンチンは、国際民間航空機関によって認められていることを指摘することが重要だ。」空港の安全に関する、長期的な懸念を和らげようとして、フォードはそうつけ加えた。更にこの外交官は、パルメロラを“魅力的な”着陸地とは見ない航空会社もあると発言したのだ。フォードは、この発言が一体ど何を意味しているのか、詳しくは語らず、説明もしなかった。
元駐ホンジュラス・アメリカ大使のジョン・ネグロポンテ国務副長官が火に油を注ぎ、ホンジュラスは、パルメロラを「一日で」民間空港に転換することはできまいと語り、テグシガルパで、ネグロポンテはセラヤと会談し、パルメロラについて話し合った。後刻、ホンジュラス・ラジオでの発言で、このアメリカ外交官は、セラヤがパルメロラ空港の計画を着手する以前に、新たな航空便受け入れに対し、国際的承認を得る必要があろうと語った。スペイン語の通信社EFEによると、ネグロポンテは、テグシガルパ訪問の機会を利用して、ホンジュラス国会議長で、後のクーデター指導者ロベルト・ミチェレッティと、腰を落ち着けて会談したという[ただし、ニュースは、二人が何を話したかについては、語っていない]。
言うまでもなく、ネグロポンテのホンジュラス訪問は、ネグロポンテに「暗殺者」というレッテルを貼り、この外交官が、大使として駐在していた間の(1981-1985)強制的な行方不明に、関与したと、非難した進歩的な人々や、人権活動家によって、幅広い反対を受けた。更に、フォードとネグロポンテの見下したような態度が、ホンジュラスは、パルメロラに対する国家主権を取り戻すべきだと要求する、組織労働者、先住民団体や農民をいらだたせた。「中米最高の滑走路が、アメリカ軍の手中にあるままであるのは受け入れがたく、パルメロラを取り戻す必要がある。」と、様々な進歩的政治団体からなる民衆連合のリーダー、カルロス・レエスは言う。「冷戦は終わっており、この地域に軍事駐留を続ける口実などない」と彼は言い足した。政府は、ホンジュラスの自尊心を辱めるような、モスキティアとパルメロラの交換も考えるべきではない、と活動家たちは述べた。
翌年ずっと、セラヤは、パルメロラを、民間空港に転換することを狙ったが、政府が国際的投資家を呼び込むことができなかったため、計画は棚上げされた。とうとう、2009年、セラヤはホンジュラス軍が建設を行うと発表した。新プロジェクトの費用を工面するのに、大統領は、ベネズエラ大統領ウゴ・チャベスが推進する、二つの互恵通商協定、ALBA [米州ボリバール代替構想]と、ペトロカリベからの資金に頼るつもりだった。予想通り、ホンジュラスの右翼は、ベネズエラ資金の利用を口実に、セラヤに襲いかかった。ホンジュラス商工組合理事長 [スペイン語の略語COHEPで知られている] アミルカール・ブルネスは、ペトロカリベ資金は、空港のために使用されるべきでなく、むしろ他の不特定用途に使うべきだと語った。
セラヤが、軍がパルメロラでの建設を進めると発表した数週間後、軍が反乱した。ロメオ・ヴァスケスが率いた軍が、セラヤを打倒し、彼を国外に強制追放した。クーデターの後、パルメロラを訪れたアメリカの平和運動活動家は、基地が活発で、ヘリコプターが飛び回っているのを見て驚いた。活動家たちが、アメリカ人の職員達に、米ホンジュラス関係という点で何か変わったのか、尋ねると、「いや、何も」という答えだった。
ホンジュラスのエリート層と、アメリカ外交政策の体制派極右には、私がこれまでの記事で論じてきたように、マヌエル・セラヤを嫌悪する理由が山のようにある。とはいえ、パルメロラ空軍基地を巡る論争が、攻撃材料を増やしたのは確実だ。
Nikolas Kozloffは、Revolution! South America and the Rise of the New Leftの著者(Palgrave-Macmillan、2008年)
記事原文のurl:www.counterpunch.org/kozloff07222009.html
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従順だった属国政権が多少でも言うことを聞かなくなれば、すぐさま実力を行使する、わが宗主国の体質がよーくわかる。ホンジュラスのソトカノ米軍基地は、日本の横田基地。
日本への見せしめと考えるのは被害妄想だろうが、人ごととは思えない逸話。
もちろん、日本の次期政権党、早くも従順さを見せ始めている。
日本では、もはや、軍事クーデターではなく、選挙自体が、クーデターのようなもの?
オザワ氏が率先導入した、現行の理不尽な小選挙区制度をこそ、見なおすべき時期だろうに。民主党の圧倒的勝利に終わった後、選挙制度は一層、歪曲される。経費削減を口実にした、少数野党殲滅策として。つまり、比例定数の削減、単純小選挙区制。全て、大昔から計画されていたこと。
嬉々として民主党への投票に向かう皆様、本当に、アメリカのような社会(属国はもっとひどい社会になるだろう)に組み換えたい(=破壊したい)のだろうか?属国民総愉快犯?
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