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2009年6月19日 (金)

ニューヨーク・タイムズとイラン選挙

wsws.org

2009年6月15日

イラン選挙に対するアメリカ・マスコミの反応は、それがイランにおける民主的権利の状態を語っている以上に、アメリカにおけるデモクラシーと、いわゆる「自由出版」の状態をこそ、より物語っている。

ニューヨーク・タイムズによる、現職大統領マフムード・アフマディネジャドが、主要な競合相手、元首相ミル・ホセイン・ムーサビーを抑えた選挙勝利報道は、ジャーナリズムとしての客観性のいかなる見せかけをも投げ捨てた報道の典型だ。これは選挙結果の信用を落とすことを狙った、純然たるプロパガンダなのだ。

アメリカ時間の金曜日遅く、アフマディネジャドが、ムーサビーを30パーセントの票差で破ったとイラン当局が発表するやいなや、タイムズと、事実上、全マスコミが、選挙は不正だと主張した。タイムズは、選挙は盗み取られたというムーサビーの主張を単に報告したばかりでなく、彼の主張を心底から、無批判に受け入れている。

いかなる独自の調査も行わずに同紙はそう言っている。主張を裏付ける本格的な事実は何も提出していない。そうではなくムーサビーや彼の支持者が言っている主張に基づいている。

早くも土曜日、タイムズはビデオを制作し、日曜日それを同社のウェブ・サイトに掲載したが、そこで同紙の有力海外特派員ロジャー・コーヘンが、息をはずませて、「早計に発表された」アフマディネジャドの勝利を非難し、黒装束警官の群れが都市を歩き回り、反対派をなぐりつけ、テヘランが戒厳令下に置かれているかのような印象を与えた。

コーヘンが、選挙だと主張することができていた、唯一の「証拠」は、アフマディネジャドの勝利を、投票締め切りから「数時間内に」当局が宣言したことと、公式投票数が、最初の投票集計と「わずかに異なっていた」という事実だ。

コーヘンのビデオを、タイムズ編集主幹ビル・ケラーによる一面記事が、日曜日に補完した。ケラーはアフマディネジャドの再選は、政権「押しつけの判断」で「クーデター」だという反対派有権者の主張を無批判に引用した。こうした主張の根拠となる事実を一つも彼は提示していない。証拠代わりに、彼は「政権内部の誰かを知っていると思われる誰かの兄弟」による主張を「投票集計者達は、単に、数字を改ざんするよう命令されたのだ」と報道している。

選挙が不正操作されているというケラー説の核心は、彼がアフマディネジャド「非常識な票差の勝利」と呼んでいるものだ。だが彼自身がアフマディネジャドは、有権者の内で大きな比率を占めるイランの貧しい人々に対し、うまく訴求したことを記事の中で認めている。また彼は「アフガニスタンやイラクや、核拡散問題解決に役立つはずの、イランとのより良い関係を期待していた西欧指導者」の激しい落胆を認めている。

タイムズとそれ以外のアメリカ・マスコミは、政府見解を直接反映して、ムーサビー立候補を推し、必ずや「改革論者」を大統領官邸に送り込むか、アフマディネジャドとの決選投票を強いるのに十分な結果をえられるはずの国民の支持率の上昇機運を描き出していた。国とアメリカ帝国主義者の政策のパイプ役として機能して、彼等は、ムーサビーの勝利は、デモクラシーの勝利を示すものであり、アメリカ-イラン関係の新たな章の扉を開くものだという意識を広めようとしていた。アフマディネジャドの圧勝に対する唯一可能は説明は、彼等は即座に結論を出したのだが、不正工作なのだという。

イラン社会と政治について本当に知っている人々にとっては、アフマディネジャドの圧倒的な勝利は、決して驚くべきものではない。選挙を非難する西欧の新聞でさえ、現職は、都市労働者や地方の貧しい人々など、大多数の国民の強い支持を得ている事実は認めている。アフマディネジャドは、政権の抑圧的で、腐敗した性格にもかかわらず、社会主義という代替案がないために、こうした支持者を固めることができたのだ。

アフマディネジャドに取って代わる成功を実現するため、ムーサビーは一体どのような基盤に依拠していたのだろう? イランのリベラルな体制派候補は、アフマディネジャド以上に、イスラム聖職者支配の熱心な擁護者として選挙キャンペーンを行った。国内政策では、更なる開放性を曖昧に呼びかけ、アフマディネジャドの「ポピュリスト」的な、都会の貧しい人々や、農民に対する助成に反対した。

マスコミは、世界中で社会的災害をひき起こしたのと同じ自由市場政策を擁護する人物を、なぜ多数のイラン国民が支持するなどと期待できるのかを説明しようとはしていない。しかもムーサビーの最も有力な支援者は、アリ・アクバル・ハシェミ・ラフサンジャニで、彼は国家機構の大立て者でイランで最も裕福な人々の一人なのだ。腐敗で悪名高いラフサンジャニは、イラン人労働者や貧しい人々から軽蔑されている。

ムーサビーの実際の支持基盤は、都会中流階級、大学生、ビジネスマンの暮らし向きの良い層以外には広がらなかった。

更にもう一つ問題がある。ニューヨーク・タイムズや、アメリカ・マスコミ全体は、イラン人に民主的な選挙について説教を垂れるような立場にあるのだろうか?

タイムズは、泣き声で不平を言うこともなく、2000年のアメリカ大統領選挙奪取を受け入れた。あれこそ大統領のクーデターで、しかも白昼公然と実行されたのだ。ブッシュと共和党が、投票を抑圧し、最高裁判所が、全国的に得票が多かったアル・ゴアが、選挙で勝っていたであろうフロリダ州での再集計を止めさせて。2000年選挙の晩、各放送局が、フロリダ州はゴアのものだという態度を突如翻し、ブッシュにとって極めて重要な州だと宣言した異常な出来事さえ思い出せば十分だろう。

アメリカの選挙は、世界のデモクラシーで通用する、本当に民主的な選挙とは最もほど遠い。労働者や貧困な人々は決まって投票の権利を奪われる。選挙は大企業の資金とマスコミ操作によって支配されている。二大政党による独占を維持するよう設計された法律のおかげで、二大政党以外の党は、選挙対象となるのが、事実上、不可能になっている。

アメリカ・デモクラシーの状態は、アメリカ最大の都市ニューヨークにおける直近の市長選挙に要約されている。そこで、超億万長者のメディア王、マイケル・ブルームバーグが、任期を制限する法律をひっくり返し、無競争で再選挙に立候補していた。

タイムズは、イランにおけるデモクラシーに対するアメリカの「支援」に関する歴史的記録については沈黙している。CIAが仕組んだ1953年のクーデターで、民主的に選出されたモハンマド・モサデク首相の政府を打倒し、シャーをすえつけたことも含まれる。その時から、1979年のイスラム革命まで、アメリカはシャーの拷問政権を支援し、ペルシャ湾における「自由世界」のとりでだとして称賛していた。

イラン選挙の信用を損なおうとするタイムズの汚らわしい役割は、アメリカ・マスコミの腐敗と、国家への統合を典型的に示している。マスコミは、益々あからさまに、国家権益にむけた世論操作の道具として機能している。

アメリカ外交政策目的のパイプとしてのタイムズの役割が、一つの国や世界の一部に限定されていないことは、ニュースを装ったプロパガンダのもう一つの例が、はっきり示している。わずか二週間前の5月30日、タイムズは、ワシントンによって、アメリカ帝国主義者の権益に対する障害と見なされているもう一つの政権、つまりベネズエラのウゴ・チャベス政権の罵倒記事を書いている。「チャベス、軍支配強化を狙う」という見出しの記事は、主張に必要な証拠も無しに、軍内部の反対派に対するチャベスによる大規模な取り締まりを言いふらしている。

この記事にも、イラン選挙に関する記事同様に、きわめて挑発的な要素がある。そうした「ニュース」記事は、アメリカ諜報機関からの指示で書かれている。こうしたマスコミの腐敗そのものが、アメリカ・デモクラシーにおける高度な頽廃という要素の、重要な表現だ。

イラン選挙は、イラン人労働者階級に対し、聖職者による反動的なブルジョア政権に対抗する唯一の基盤としての、明確に定義された社会主義、国際主義者綱領という方向づけの必要性を強く示している。

選挙に対するアメリカのマスコミの反応は、アメリカの労働者階級が民主的権利を守るには、自分たち自身の大規模な、独立した社会主義運動を発展させるしかないという事実を強く示している。

Barry Grey

記事原文のurl:wsws.org/articles/2009/jun2009/pers-j15.shtml

抗議デモで、緑色の布を身につけ、熱狂したムーサビー支持者の姿、旧ソ連圏におけるあのカラー革命を即座に連想させる。使い古した手口なのに。人は忘れるものだ。

ムーサビー支持者、Twitterで連絡を取り、抗議デモを展開したとTwitterは当初発表した。

Twitter、イラン問題に配慮してメンテナンス時間を変更

この記事には、気になる記述がある。

Twitterは同社のネットワークホストとして2008年2月からNTTコミュニケーションズ傘下のNTT Americaを採用している。

イランをも属国にしようと、属国が手先になる悲しさ。

後にTwitterは前言撤回。本当だろうか?うっかり最初に本音を言ったのでは?

Twitterが報道を否定,「メンテナンスの予定変更に国務省は無関係」

アメリカによる再三のイラン政権転覆について、田中宇氏が下記記事を書かれている。

イラン革命を起こしたアメリカ 2008年7月31日

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