NSA、何百万通もの米国電子メールを監視
Tom Eley
2009年6月19日
wsws.org
国家安全保障局 (NSA)の、数人の元職および現行職員が匿名を条件に、諜報機関が、何百万通ものアメリカ人による電子メール通信と電話会話を監視している可能性があるとニューヨーク・タイムズに語った。新事実の暴露には、NSAによる2008年と2009年の国内電子メール通信の監視は、法律に違反していたことにまつわる4月の発覚が続いた。
昨年、議会は、外国人、またはアメリカ国外にいると「正当に信じられる」人々をスパイしようとする国家安全保障局の努力の結果、意図しない結果として生じるものである限りにおいて、アメリカ人の通信をスパイすることへの、より大きな自由度をNSAに対して認める法律を通過した。これは、NSAに、アメリカの通信“ゲートウェー”を通過する何千万通の電子メールと電話会話を傍受する権限を与えている。この方策は、私的な通話記録を連邦当局に渡した通信会社の免責を認める議会法案に添付されている。
法案に賛成した人々の中には、当時イリノイ州上院議員バラク・オバマもいた。全部で、下院議員の293人と、上院議員69人が、法案通過に賛成した。
特にアメリカ人“テロ容疑者”を対象とした捜査を開始するには、法律上、NSAは、まず秘密主義の外国諜報活動監視裁判所(FISC)から、令状を得る必要がある。実際、これは単なる形式的手続きに過ぎない。FISCは、ほとんど政府の令状要求を却下したことはない。
しかしNSAの活動は、国内でのスパイ活動を許容するために特に設けられたこの疑似合法的制度さえも、超えてしまっている。どれだけの人数のアメリカ人がスパイされていたのかは分かっていないが、タイムズ紙の情報源は、FISCが発行した令状10通のうち8通で、NSAは「法律の範囲を超えていると見なされている。」と報じている。更に、「各命令で、数百から、数千の電話番号や、電子メールアドレスを選び出すことが可能なので、不適切に収集された個々の通信の数は、数百万にのぼるだろう」とタイムズ紙は報じている。
ある元職員は、NSAの違法な国内スパイ活動は、数年間にわたり進行中であると語った。2005年に、この職員は、ピンウェールという名の秘密データベースを使うよう訓練されたが、このデータペースは、職員が「アメリカに・から着発信する膨大な量の電子メール・メッセージを読む」ことを可能にするものだと語っていた。この計画で集められているアメリカの電子メールメッセージは、全体の30パーセントにも及ぶと思っているとその職員は語っている。現役NSA職員二人が、この計画は現在も継続していることを認めている。
この情報筋は、タイムズ紙に、アメリカ国内の電子メールに対するスパイ活動が、元司法長官ジョン・アシュクロフトと、「NSA監視活動の、あるいは非合法な側面と彼等が考えられるものに対し、ほとんど革命のような事態を画策した」司法省幹部職員達を巻き込んだ、2004年のブッシュ政権内部での激しい闘いの核心だったことを認めた。この危機は、膵炎から回復の途上にあったアシュクロフトの病床横で展開した。アシュクロフトと司法副長官ジェームズ・コメイは、国内電子監視計画は、1978年の外国諜報監視法(FISA)違反だと考え、再認可する命令に署名するのを拒否した。
「論争は、ほとんどこの問題を巡るものでした」この紛争について知っているある元ブッシュ政権幹部は、タイムズ紙に語っている。当時コメイは、主要なコミュニケーションのパターンと、個人と集団間の通信リンクの姿を解明するための、データベース構築用に使うことが可能な『“アメリカ人のコミュニケーションに関する‘メタデータ’収集』を巡る懸念を表明していた。ブッシュ政権は、司法省の承認無しに、計画を更に推進していた。(「元司法省幹部、国内スパイ活動を擁護するための、ブッシュ政権による違法行為について語る。」を参照のこと)英語
合法的に制定された国内スパイ活動ガイドラインを破ったことが分かっている例は、「過剰収集」の不慮の例だと、議員たちに対し、NSAは明らかに説明したのだ。NSAは、タイムズ紙の記事について論評することを拒否しているが、デニス・ブレア国家情報長官のスポークスマンは、法的および兵站上の複雑さから、「技術的な、不慮の過ちは、おきる可能性があり」「そのような誤りが明らかになった場合には、しかるべき幹部に報告され、是正手段が講じられている。」と主張した。
下院諜報監督委員会の議長、ラッシュ・ホルト(ニュー・ジャージー選出民主党議員)は、このあいまいな説明に疑問を投げかけた。「活動の中には、目に余るものがあり、到底、偶発的とはいえない」とタイムズ紙に語っている。
これは驚くべき発言だ。諜報機関を監督する立場にある下院委員会の主要メンバーが、事実上、令状あるいは他の形の法的に正当な理由なしに、膨大な数のアメリカ人をスパイするために、NSAが意図的に法律違反をしていた、と語っているのだ。これと、タイムズの匿名情報源による暴露とをあわせれば、政府の立法、司法府への、ましてや過去三回の国政選挙で、ブッシュ政権の反民主的な政策を断固否定したアメリカ人への説明責任も無しに、刑事免責を得て活動している、諜報機関の姿がまざまざと描き出される。
タイムズは、調査記事に続け、論説によって、進行中のNSAによる職権乱用が、昨年の議会によるFISA改定によって準備されたことを、正当にも指摘している。「ジョージ・W・ブッシュ大統領は、9/11後間もなく、まず所要令状を得ること無しに、NSAが国内で盗聴を行うことを承認し、この法律への違反を始めたのだ。この計画がタイムズによって暴露された2004年末、盗聴活動と、それに参加した通信会社に対し、遡及効果のある法的な援護を与えるよう、ブッシュ・チームが議会に圧力をかけ始めた。」と論説は述べている。
2004年末に記事を暴露したタイムズ紙への言及は、むしろ利己的だ。実際、タイムズ紙は、NSAが国内でスパイ活動をしている証拠を、ブッシュ政権の強い要請により、2004選挙の後まで、アメリカ国民から隠していた。(「不幸な告白: ニューヨーク・タイムズ、2004選挙後まで、NSAのスパイ活動を隠ぺい」を参照)英語
議員たちは、NSAの国内スパイ計画を巡る懸念の詳細について、アメリカ国民に明かしてはおらず、上院諜報委員会議長、カリフォルニア選出上院議員ダイアン・フェインシュタインは、水曜日、あわててタイムズ紙記事の内容を否定した。「私がこれまでに知っている全てのことが本当の話を示しており、 [アメリカ人の電子メール]の内容を収集する上で、目に余る行為があるというのは、私が知る限りでは真実ではない」と彼女は主張した。
実際、オバマ政権と主要民主党議員は、ブッシュ時代に構築された警察国家の権力を強化すると固く決意している。
火曜日、上院司法委員会での証言で、司法長官エリック・ホルダーは、オバマが大統領に就任する前には、彼とバラク・オバマ大統領が擁護していた姿勢である「アメリカ人の電話会話を令状無しに盗聴するのは違法だ」と述べることを拒否した。彼はまた、令状無しの盗聴計画に対して法的な論拠を与えるよう企んだ2006年のブッシュ政権白書を、司法省が撤回するかどうか、発言することを拒否した。
こうした暴露は、国家の政治制度や法規から、益々独立しつつある権力機構、軍-諜報機関の、強力な国内的役割を示すもう一つの兆候としての機能を果たしている。
4月、拷問者に対し、擬似的な法的根拠を作ることを狙ったブッシュ政権の法律メモを、裁判所の命令に従って公表する、というバラク・オバマ大統領の決定に対し、「国家安全保障関係者のコミュニティー」内部、あるいはそれに近い筋が、大声で批判を始めると、オバマは、拷問を命じたり、実行したりした連中の調査は行わないと約束した。
これは、軍-諜報機関と共和党右派を元気づけただけだ。イラク人囚人を拷問しているアメリカ兵を撮影した、何十枚もの写真を公表しろという裁判所の命令を先に受け入れたことを、オバマが覆した際、司令官たちは彼を支持した。しかし、軍-諜報機関の圧力に屈伏し、グアンタナモ湾捕虜収容所に拘置されている、テロリストとされている人々を裁くための軍事法廷制度を止めるという大統領選挙キャンペーン時の約束から、オバマはまたもや後戻りした。
実際、表向き、国家の諜報機関を監督する立場にある議員たち自身が、その諜報活動の対象なのだ。NSAが、議員や著名な政治家達に対し、スパイ作戦を遂行していることは、公然と認識されている。4月、カリフォルニアの民主党下院議員で、当時、下院諜報委員会の有力メンバーであった、ジェーン・ハーマンが、政治的便宜と引き換えに、起訴されている二人の親イスラエル・ロビイストのため、仲裁してやると約束している会話を、NSAが盗聴していることが明らかになった。ハーマン自身が、NSAによる令状無しスパイ作戦の、積極的な支持者だ。
タイムズ紙がインタビューした元職員は、ビル・クリントン元大統領の電子メール・アカウントに、ある職員がアクセスするのにもピンウェールが使われたことを認めた。彼は、それを実行した職員は尋問されたとは述べたが、解雇されたか否かは触れなかった。
関連する進展として、軍は、コンピューター上で、軍の諜報、戦争開始能力を監督、開発する新たな「サイバー司令部」の詳細を、数日中に発表するものと予想されている。サイバー戦争に関連する大半の機能を支配しているNSAは、この新司令部の中で卓越した姿を示すだろう。
下記記事もお勧めする。
Seven days in May, 2009
[2009年5月13日]
Congress moves toward expanding government spying, with immunity for telecoms
[2008年2月14日]
記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2009/jun2009/nsas-j19.shtml
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宗主国で行われている監視、属国でも当然行われているだろう。
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