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2009年6月19日 (金)

アメリカ帝国は破産している-Chris Hedgesのコラム

クリス・ヘッジズ

2009年6月14日

"Truthdig"

今週が、世界の準備通貨としてのドル支配時代終焉の区切りになる。経済・政治におけるアメリカ合州国の衰退という恐ろしい時期のはじまりという区切りだ。それはまたアメリカ帝権最後のあがきも示している。アメリカ帝国は終わったのだ。もはやたち直ることはない。そして、やってくるものはといえば、なんとも実につらいものだ。

バラク・オバマや、ウォール街の犯罪集団は、愚劣なゴシップやばか話をニュースとして広め続けている商業マスコミの支援を得て、アメリカ歴史最大の経済危機に我々がじっと耐えている間、アメリカ国民を騙すことはできるかもしれないが、アメリカ以外の世界は、アメリカが破産したことを知っている。そして、そうした国々が、もしも膨張したドルを支え続け、ユーラシアにおけるアメリカ帝国の拡張と、アメリカのカジノ資本主義体制に資金供給するために、2兆ドル以上にまで膨れあがった、莫大な連邦予算赤字を維持し続けるつもりであれば、うまくゆきはしない。彼らはアメリカの喉に手をかけている。彼らは締め付けようとしているところだ。

月曜日と火曜日、ロシアのエカテリンブルグ(旧スヴェルドロフスク)で、中国の胡錦濤主席、ロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領や、他の上海協力機構六カ国の首脳を集めた会議が開催されている。参加を申し込んだアメリカ合州国は、受け入れを拒否された。そこでおきることに注目されたい。この集まりは、エコノミストのマイケル・ハドソンによれば、「21世紀におけるこれまでの会合の中で一番重要だ。」

それは、世界の準備通貨としてのドルを置き換えようという、アメリカの主要貿易相手国による、最初の正式なステップなのだ。もしも彼らが成功すれば、ドルの価値は劇的に暴落し、石油を含む輸入品の価格は急騰し、利子率は上昇し、最後の数ヶ月が高度経済成長期であるかのようにすら見えるほどの勢いで、仕事が国外に流出する。州と連邦のサービスは、資金不足で、低下するか、停止するだろう。アメリカ合州国は次第にワイマール共和国やジンバブエと似てこよう。多数の人々から救世主の資格を授かっていたオバマが、突如、痛ましく、無能で、無力に見えてくる。更に、過去数週間、わずかな数の発砲や、人種間対立から起こる犯罪をあおった激怒が、権利を奪われ、途方にくれた労働階級と中産階級の広範な部分を巻き込むだろう。この階級の人々は、仇討ち、徹底的な変革、秩序と道徳の再生を要求するだろうが、キリスト教右翼から、フォックス・ニューズで人種差別発言を広めるごろつきに至るまでの原初ファシスト連中が、それを強行するよう、国を説得するだろう。

「エカテリンブルグの転換点: 非ドル化とアメリカの金融-軍事覇権の終焉」という記事を月曜日のフィナンシャル・タイムズに書いたハドソンに電話した。「エカテリンブルグは」ハドソンは書いている。「ツァーリ終焉の地のみならず、アメリカ帝国終焉の地として知られるようになる可能性がある。」ロンドン・レビュー・オブ・ブックス5月28日号に掲載された「再起不能」と題する、ジョン・ランチェスターの、世界銀行制度に関する憂慮すべき暴露記事と並んで、彼の記事は読む価値がある。

「これはドルの終焉を意味している」とハドソンは言った。「つまり中国、ロシア、インド、パキスタンとイランが、アメリカをユーラシアから追い出す公式的な金融、軍事地域を形成しつつある。国際収支の赤字、は本質的に主として軍事費だ。アメリカの自由裁量支出の半分は軍事費だ。赤字は外国銀行、中央銀行の手中で終わる。連中は、アメリカ政府国債を買う以外に、資金を循環させる選択肢がない。アジア諸国は、自分で自分の首をしめる軍事包囲に資金供給してきた。連中は、返済される見込みのないドルを受け取ることを強いられてきた。連中は自分たちの国へのアメリカによる軍事侵略に金を支払い続けてきた。連中はそれから解放されたいのだ。」

中国は、ハドソンが指摘するように、既にブラジルやマレーシアと、ドル、ポンドやユーロではなく、中国の元建てによる二国間貿易で合意している。ロシアは、ルーブルや各国通貨で貿易を始めると約束している。中国の中央銀行総裁が、準備通貨としてドル使用を廃止するようあからさまに呼びかけており、国際通貨基金の特別引き出し権を利用する意志を示唆している。新システムがどういうものかはまだ明らかでないにせよ、ドルからの逃避は明らかに始まっている。狙いは、ロシア大統領によれば、アメリカ合州国による、経済的、更にその延長として、軍事支配を崩壊させる「多極的世界秩序」を築くことだ。手持ちアメリカ通貨を処分すべく、中国は狂ったようにドル備蓄を、世界中で工場や資産を購入するために使っている。これが中国アルミニウムが、オーストラリアの資源企業リオ・ティントとの資本提携で195億ドルを出資しようとした失敗した企てで、これほど多数の大口採掘権を得ようとした理由だ。中国は保有ドルを是非とも減らす必要に迫られているのだ。

「中国は、ゴミ屑のようなかねによる資源購入取引で、できる限り全てのドルをお払い箱にしようとしたのです」とハドソンは言う。「彼らはドルを、アメリカが、たとえユノカルであれ、自国のハイテク企業を、黄禍の国に売却するのを拒んでいるので、資源を安値で売り払ってくれる国にくれてやろうとしているのです。中国はドルが間もなく無価値になることが分かっているのです。」

この新たなグローバル為替制度の設計者は、もしもドルを破壊すれば、アメリカの軍事支配も破壊できることに気がついたのだ。アメリカの軍事支出は、この大規模な借金のサイクルなしには維持できない。核研究などを積みます前の、2008年度公式アメリカ国防予算は6230億ドルだ。中央情報局(CIA)によれば,これに続く国家軍事予算は中国もので、650億ドルだ。

国際収支赤字には種類が三つある。アメリカは輸出以上に輸入をしている。これは貿易だ。ウォール街とアメリカ企業は外国企業を買収している。これは資本の動きだ。三番目で、最も重要な過去50年間にわたる国際収支赤字は、ペンタゴンによる海外支出だ。過去50年間にわたり、国際収支の赤字をひき起こしていたのは、主に軍事支出だ。国務省のSurvey of Current Business四季報の、国際収支報告の第5表、軍事支出の項をご覧いただきたい。ここに赤字額がある。

アメリカの永久戦争経済に資金を供給するため、アメリカは世界をドルで溢れさせてきた。ドルを得る外国人は、ドルを自国の中央銀行で自国通貨に変換する。そこで各国の中央銀行が問題を抱えることになる。万一、中央銀行が、お金をアメリカ合州国で使わないと、その国の通貨のドルに対する為替レートは上昇してしまう。そうなると、輸出企業が不利益を被る。これが輸入品や、外国企業を購入し、軍事拡張に資金を供給し、中国などの外国が、米長期国債を購入し続けさせるために、アメリカが紙幣を無制限に印刷できた理由なのだ。このサイクルは、もはや終わったように見える。ひとたびドルが世界の中央銀行を溢れさせることができなくなり、誰も米長期国債を買わなくなれば、アメリカ帝国は崩壊する。全て勘定に入れれば、ほぼ1兆ドルの放漫な軍事支出は維持不可能になろう。

「アメリカは、軍事支出に自分で資金を供給しなければならなくなる」ハドソンは警告する。「そして、唯一の方法は、賃金率を大幅に引き下げることだろう。階級戦争の再開だ。ウォール街はそれが分かっている。それで連中は、生存するだめの十分なお金を得られるよう、巨大な詐欺によって、ブッシュやオバマに10兆ドル捧げさせたのだ。」

金融崩壊の借金から抜け出すために借りようという絶望的な努力が、第二次世界大戦以降これまでにない、国家による大規模介入を促進させたのだ。それは私たちを未知の領域へと導いてもいるのだ。

「我々は、事実上、この経済制度によって生み出された穴から我々が脱出するための戦争を宣言しなければいけなかったのだ」とランチェスターは、ロンドン・レビュー・オブ・ブックスに書いている。「今の状況に対する、モデルも、前例も皆無で、本当にそれで大丈夫なのだ、なぜなら資本主義の、これこれのモデル下では云々、などと主張しようがないのだ... そんなモデルは存在しない。こんな風にはならなかったはずであり、起きてしまっていることに対する指針も皆無なのだ。」

食糧購入から、医療費に至る日常生活の経費は、ドルが急落すれば、ごく少数の人々を除き、困難なものとなろう。州や都市では、年金基金が枯渇し、最終的には、停止するだろう。政府は、道路や交通機関を含むインフラを、民間企業に安く売り払うことを強いられるだろう。民営化された公益事業によって、たとえばエンロンを考えて欲しいのだが、かつては規制され、助成金が払われていたものにたいし、益々料金を請求されるようになる。商業用、個人不動産価値は現在の半額以下になるだろう。既にアメリカ家庭の25パーセントを苦しめている不動産の逆ざや状態は、ほぼ全ての不動産所有者に及ぶだろう。膨大な損失を受け入れることなしには、借りることは困難になり、不動産を販売することが不可能になるだろう。空っぽになった店舗や、板を打ち付けた家々が、何ブロックも続くようになるだろう。家屋の差し押さえが、まん延するだろう。焚き出し所に長蛇の列ができ、実に膨大なホームレスが生まれよう。アメリカの企業が支配する、もはや陳腐でとるに足りないマスコミは時間外勤務をして、無価値なゴシップや、見世物、セックス、いわれのない暴力、恐怖や、安っぽいジャンク政治で、我々に麻酔をかけるのだ。アメリカは、所有せざる多数の底辺層と、しっかりと警備された屋敷の中から、ネオ封建制度という無慈悲で残虐な制度を運営する権力を持った一握りのオリガーキーとで構成されるのだ。抵抗する人々の多くは、暴力によって沈黙させられる。アメリカ人は莫大な代償を支払うことになるだろう。それももう間もなく。アメリカ・パワー・エリートによる重大な違法行為の代償を。

記事原文のurl:www.truthdig.com/report/item/20090614_the_american_empire_is_bankrupt/

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この記事、一つ大きな間違いがあるように思える。下記太字部分が漏れている。

アジア諸国は、自分で自分の首をしめる軍事包囲に資金供給してきた。連中は、返済される見込みのないドルを受け取ることを強いられてきた。連中は自分たちの国へのアメリカによる軍事侵略に金を支払い続けてきた。日本以外の連中はそれから解放されたいのだ。

マイケル・ハドソンの該当フィナンシャル・タイムズ記事

マイケル・ハドソンによる関連記事(英語)は下記にも。

Globalresearch

De-Dollarization: Dismantling America’s Financial-Military Empire
The Yekaterinburg Turning Point
by Prof. Michael Hudson

また

Counterpunch

The Ending of America's Financial-Military Empire

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戦争国家アメリカに関する記事翻訳には、例えば以下がある。

永久戦争という、やまい

アメリカ介入の歴史
海外諸国における、アメリカの軍事、秘密作戦 - 1798年から現在まで
軍国主義とアメリカ帝国:日本政策研究所所長チャルマーズ・ジョンソンとの対話
 04/1/29

アメリカを衰亡させる方法:なぜ累積債務危機が、今アメリカ共和国とって最大の脅威なのか

チャルマーズ・ジョンソン: 『復讐の女神ネメシス: アメリカ共和国最後の日々』

アメリカ軍はなぜいまだに沖縄にいるのか? 1997年4月

愛し合って、戦争になった: 好戦国家アメリカとの遭遇 ノーマン・ソロモン

「体制転覆:ハワイからイラクに至るまで、一世紀にわたるアメリカによる体制変革」その2

「体制転覆:ハワイからイラクに至るまで、一世紀にわたるアメリカによる体制変革」その1
ハワード・ジン「歴史の効用とテロリズムに対する戦争」を語る

 

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