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2009年5月 3日 (日)

なぜフランスは、 ソマリア沖で実力行使に及んだのか?

wsws.org

Olivier Laurent

2009年5月1日

4月10日、ソマリア沿岸、ヨット、タニ号上に拘束されたフランス人の人質5人を奪還するための武力行使は、フランス人の人質とソマリ人海賊の生命、並びに、フランスやソマリア世論、に対するニコラ・サルコジ政府の軽視を証明している。

アメリカの船舶マースク・アラバマの乗っ取りと、ソマリ人海賊が、船長リチャード・フィリップスを人質にしたことへの対応として、武力を行使したオバマ政権のそれと、自分たちの政策を、同水準にすべく、フランス政府はこの事件を利用した。4月7日、アメリカ海軍の狙撃手が、フィリップスを拘束していた海賊三人を射殺した。

ソマリ人海賊は、長さ12.5メートルのヨット、タニ号を、4月4日、アデン湾で乗っ取った。ヨットは、フランスの特殊部隊による強襲で、六日後に奪回されたが、これによる交戦で、二人のソマリ人海賊と、タニ号船長フローラン・ルマコンが死亡した。

フランス作戦で捕まった23歳から27歳までの三人の海賊は逮捕され、拘置された。彼らは、2008年、ソマリア沿岸で別の二隻のヨット、ポナンとキャレ・ダスドを誘拐したかどで、現在フランスの刑務所に拘留されている他の海賊12人に合流する。連中は“船のハイジャック”と“恣意的な誘拐と、暴力団での監禁”で、起訴されている

4月17日、レンヌの検事、エルベ・パヴィは、ルマコンの解剖では、彼を殺害した銃弾を発射した銃を決定することが不可能であることが分かったと発表した。しかしながら、パヴィは、答えは“絶対に必要なヨットの実況見分”と、“海賊が使い、収容された武器”の検査後に、得られようと述べた。

エルヴェ・モラン国防大臣はヨット奪還後に、ルマコンの死亡が、フランス軍の発砲によるものである可能性も“除外はできない”と述べた。フランス軍が遂行した作戦は“最も実現可能な解決策”だったと彼は強調した。モランは、パリは、海賊に身の代金の支払いを申し出ていたとも補足したが、金額は明らかにしなかった。

こうした事実は、タニ号船上の三人の死に対する、フランスの責任を明らかに示している。ルマコンを殺害した銃弾を発射した銃が何であれ、急襲するという決定と、それによって彼の命を危険にさらした責任は、全てフランス当局にある。海賊が人質を殺害しようとしていた兆しは皆無だ。実際、人質殺害は、人質無しでは逃亡できる可能性がなくなるため、海賊たちの利害関係に全く反するのだ。

ソマリ人の命に対するフランス当局の明らかな軽視は、フランスが、かつても、今も、植民地大国として振る舞っているアフリカの角で暮らす一般大衆の中で、フランス帝国主義に対する憎しみを倍加するだけだ。

ソマリア北西部と国境を接するジブチは、フランス最後のアフリカ植民地で、スエズとインドシナのフランス植民地との間の海上交通路を監視できることから、長年にわたり極めて重要だった。ジブチは1977年になってようやく独立したが、フランスは、いまだにフランス最大の在外軍事基地の一つをそこに構え、2,900人の兵士と空軍基地がある。2002年以来、フランスは、ジブチに1,800人の軍事要員と、更にアラビア語放送ラジオ局を擁しているアメリカとライバルだ。2008年6月、フランスは、飛行機と海軍艦隊を追加し、分遣隊を強化した。

これまでのところ、ここ数年間活発化しているソマリ人海賊は、まだ誰も殺害していないが、フランス、アメリカ、およびオランダの部隊によって最近実行された“強引な”作戦の後では、それも変わる可能性が非常に高い。フランスの急襲は、今後、アフリカの角沖でつかまる人質たちの命を危険にさらすだけだろう。

海運保険業者の業界誌、ロイズ・リストに掲載されたあるインタビューが、このような血なまぐさい作戦に対する、海運業界の悲観論と反対を要約している。ロイド・レジスター・フェァプレー情報サービスの、アデン湾地域専門家ジム・マーフィーは、提案されている、立ち入り禁止区域、軍の護衛艦隊、警備員または武装船員といった対策は、ソマリアにおける紛争に対する政治的解決がない中で、失敗する運命にあると主張している。

これまでに前例のない戦艦配備にもかかわらず、海賊事件や同様な行為は、国際海事局によると、2007年から2008年の間で、ほぼ200パーセント増えた。

大半のマスコミは、そこから海賊が作戦を展開しているとされるソマリアの港、ハラデレやエイルを“海賊のねぐら”として描き外国の軍事介入可能性の道を開いた。実際、こうした港の、全て合わせた人口は32,000人で、海賊行為に関わっている連中はそのうちごく一部にすぎない。軍事力で問題を解決しようという試みは、さらなる大虐殺を招きかねない。

ソマリア沿岸の住民にとって、大国の政策は、ひどい影響を与えてきた。外国企業は何トンもの有毒廃棄物をそこに投棄し、ヨーロッパとアジア諸国は、自国の領海では漁獲割り当てを削減し、環境擁護者のようなふりをしながら、ここの漁業資源を食い物にしてきた。

一般的に言って、ソマリアの社会的荒廃は、大国のうつろい行く地政学と、この地域のスターリン主義者の身勝手さに由来する。民族的にはソマリア地域ではあるが、エチオピアの一部となっているオガデンで、ソマリアが戦争を行って(1977-78)以来、飢餓が猛威を振るった。この紛争の間、ソ連は最初ソマリアを支援したが、やがて鞍替えし、エチオピアを支持した。これはソマリアの敗北をもたらし、1980年に、モハメド・シアド・バーレのソマリア軍事政府は、NATOと国際通貨基金による経済的介入の方向に動いた。

1980年代の、この地域における一連の飢饉や、オガデンのソマリ人をバーレが見捨てたことや、IMFが課した緊縮経済政策を彼が採用したことで、彼の政権への国内的支持は弱体化した。バーレはその後、様々な民族主義者や民族集団に率いられた、彼の政府に対する内戦に直面した。ゴルバチョフがアフリカの同盟諸国に対するソ連の財政援助を停止すると、アメリカもバーレに対する財政援助を止め、彼の政権は崩壊した。

1992-93年、当時飢饉で苦しんでいたソマリアへの食糧援助の供給活動を守るためとされる試みで、フランス外国人部隊は、アメリカのソマリア侵略に協力した。この作戦は、ソマリア国民のレジスタンスに直面した外国軍隊の撤退で終わったが、とりわけモガディシュで撃墜されたアメリカのヘリコプターを巡る戦闘が有名だ。

現在のフランス外務大臣ベルナール・クシュネルは、その当時“人道的介入の権利”を支持するキャンペーンで有名になり、米袋を降ろすクシュネルの写真が世界中に流された。ソマリア全体の“二ヶ月分”の食糧補給を組織したと彼は主張していた。実際に持ち込まれたものは、後に明らかになったが、結局モガディシュ住民の三日分の消費量だった。

1992年に主張されたこの人道的介入の権利は、19世紀末や二十世紀初頭に、ヨーロッパ諸大国が自分たちの意志を押しつけ、オットーマン帝国の残滓を切り分けるために持ち出した様々な正当化を呼び覚まし、単に、再開されたこの地域における帝国主義者の作戦を正当化するのに役立ったに過ぎない。

ソマリア国民は、長期間、不安定と貧困状態の中で暮らしており、果てしのない帝国主義者の策謀、地方、あるいは部族民兵間紛争の犠牲者なのだ。過去十年間にわたり、イスラム教徒の勢力の力が強くなり、2006年、アメリカが奨励し、アメリカと同盟諸国の海軍が支援するエチオピアによる侵略をひき起こした。国際的なマスコミは、予想通り、この攻撃を “平和維持”作戦として描き出した。

昨年のソマリアからのエチオピア軍撤退も、ソマリア国民にようやく平和をもたらすというのとはほど遠く、この国で、帝国主義者の影響力がどのように発揮されるのかという、疑問を再開したに過ぎない。

強烈な経済的、戦略的利害関係が働いているのだ。アデン湾は、国際貿易、大半のヨーロッパとペルシャ湾の間の石油貿易と、アジアとヨーロッパの間で貿易される商品の海運航路として、決定的に重要なのだ。ニコラ・サルコジ大統領のもとで2008年に刊行された防衛白書は、この地域はフランスにとって、特別な戦略的関心がある場所だとしている。

あらゆる大国が、こうして、ソマリア沖での人質の話題を、軍事・政治力を誇示する好機としてとらえている。各大国は、帝国主義諸国間の競合における名声を高めようとするあまり、ソマリ人であれヨーロッパ人であれ、民間人の運命に対する無関心さえ、はっきりと示している。

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2009/may2009/soma-m01.shtml

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本日は憲法記念日。

昨日、大本営広報部代表?朝日新聞に唐突に掲載された
『憲法9条は日本人にはもったいない』
「最大の違憲」ソマリア沖への自衛隊派遣に、なぜ猛反対しない 
という、伊勢崎賢治教授のインタビュー記事を、再読している。彼の主張こそ正しいだろう。

ブログ「薔薇、または陽だまりの猫」に、その文章が、掲載されている。

大脇道場!の下記記事でも触れておられる。

NO.1128 「憲法9条は日本人にはもったいない」・・・伊勢崎賢治さん①

NO.1129 「憲法9条は日本人にはもったいない」・・・伊勢崎賢治さん②

豚インフルエンザは、(本当は、あるいは陰謀なのかも知れないが)、おそらく本人?本菌?は何も意識していないウイルス次第の天災なので、人ができることは限られるだろう。いくら猛反対したとて、流行るものは流行るだろう。

憲法破壊、戦争は、ウイルスより遥かに悪質な人間たちが、本人がそうと知りながら、意図的に起こす人災だ。猛反対すれば止められる、はずだろう。

4月23日に、この憲法を踏みにじる、海賊対策法案が、衆議院を通過した。そもそも、この施策の必要性を言い出したのは、在日ネオコン工作員ではないかとさえ思えてしまう、(ブレジンスキーの弟子である)、民主党長島議員。ご丁寧に、武力行使可能の答弁を、4月23日に引きだした。森田実氏の『時代を斬る』2009.4.29(その1)を再度引用させていただく。

《ここでお尋ねをしたいんですけれども、
結果として海賊行為を行っていたと判断されなかった船舶に対してそれまでの時点で行われていた警告射撃等の武器使用、これはさかのぼって違法になることは
ないのかどうか。一連のプロセスとして海賊行為に対処するために使う武器の使用、これは憲法九条に反するものではないということを、国民にわかりやずく簡
潔に、内閣法制局長官、説明をしてください。お願いします。》

長島議員は、内閣法制局長官の「違法性が生ずることはない」との答弁を得て「それでは確認させていただきます」と発言した。

つくづく、とんでもない御仁、とんでもないエセ野党。自民党と民主党、本当はなにからなにまで繋がっている、結合性双生児、いわゆる、シャム双生児だろう。政治がまともになって欲しいとは思うが、それと世上言われる「政権交代」とは、等号で結べるものではあるまい。小泉元首相の「郵政改革」911選挙で、とんでもない世の中になったのを、騙されたと思った方々が多数おられないのだろうか。「政権交代」、よくよくみると「郵政改革」ATM国家振り込め詐欺事件の焼き直しとしか思えないのだが。

そこに、なんとも好都合に、人気タレント裸事件が勃発。海賊対策法案なる、憲法破壊法案通過という、大変な事態は全く報道されず、どうでも良い事件が、日本の大本営広報部の目玉ニュースになった。裸事件では、いくらなんでも、長続きするはずもない。すると、またもや好都合に、豚インフルエンザが起きた。これでしばらく、いや、永久に?海賊対策法案は話題にせずに済む。アメリカ政府と日本政府という軍事・経済シャム双生児国家、なんとも運の良い国だ。昔、タミフルが爆発的に売れ、薬品会社の元社長だったラムズフェルドは、その株でとんでもない大儲けをした。今度は誰が儲けるのだろう。

素人の杞憂はさておき、下記は憲法記念日とソマリアにまつわる貴重なお話だ。

NPJ通信の憲法記念日 緊急寄稿

ソマリア海賊対策の欺瞞性を突く─新法は恒久法・憲法改正への一歩
鹿児島大・木村朗教授

アソコを隠さず問題になった裸事件で、あの海賊対策法案を隠そうとする策動を、桂敬一氏が、マスコミ9条の会ホーム・ページで、鋭く指摘しておられる。

「草彅剛全裸事件」が伝えたものは何だったのか―海賊対処法案は何ごともなく衆院を通過した―
日本ジャーナリスト会議会員 桂 敬一

この話題、与党と、野党の振りをする与党(民主党)、その大本営広報部であるマスコミは、当然隠すばかり。 海賊対策法案のひどさを隠すのではなく、隠さずに、問題にしようとしているのは、blogばかり。日本の現在の「二大政党」、昔の「大政翼賛会」の言い換えにすぎない。森田実氏の「言わねばならぬ」最新記事(09/5/4)も、そのような御意見と読める。末尾を引用させていただこう。 

政治路線が根本的に同じ状況下の二大政党制は何を意味するか。国民の選択権がないということになる。これでは二大政党制は無意味になる。考え直すべき時がきているのではないか。

オバマと海賊:国家暴力の賛美

ソマリア沖で作戦活動中のドイツ海軍 

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