アメリカ合州国はパキスタンで一体何を仕組もうとしているのだろう?
Keith Jones
World Socialist Web Site
2009-05-04
パキスタン大統領アーシフ・アリ・ザルダリは、今週オバマ大統領とアフガニスタンのハミド・カルザイとの三国サミット会談でワシントンを訪問する際、アメリカ軍がパキスタン国内で戦争を遂行するのを認めるようさせるべく、新たな圧力をかけられるのは確実だ。
アフ・パク(アフガニスタン-パキスタン)戦域として、ワシントンが再定義した場所において、アメリカの絶対的命令に完全に従うよう、イスラマバードを脅すため、アメリカの政治、軍事支配層と、アメリカのマスコミは、ここ何週間か、益々けたたましいキャンペーンをしかけている。
アメリカの指示で、パキスタン軍は、過去10日間、パキスタン北西辺境州(NWFP)のタリバン民兵に対し、戦闘機による機銃掃射と重火器を含む残酷な攻勢をしかけている。攻勢は、多数の民間人死傷者を生み出し、何万人もの貧しい村人たちに逃亡を強いた。
アメリカのアフガニスタン占領を強化するため、NWFPと、同国でも伝統的に自立してきた連邦直轄部族地域 (FATA)を制圧するという、パキスタン国家の行為により、60万人から、100万人のパキスタン人が難民と化している。
アメリカの支配エリートは、最近の一連の殺戮を歓迎しているが、満足というにはほど遠い。ザルダリ・ワシントン訪問の準備中も、暗黙であれ、明示的であれ、パキスタン国民と政府に対する、立て続けの威嚇が、衰えることなく続いている。
4月29日の記者会見で、オバマは、パキスタン文民政府は「非常に脆弱で」、国民に対し「基本的なサービスを提供する」あるいは国民の「支持と忠誠」をかち取る能力に欠けている、と表現した。だが彼は、パキスタン軍と“強い"米-パキスタン軍事協議と協力"を称賛した。
イスラマバードにおける軍事独裁の継続を維持する上でのワシントンの極めて重要な役割からして、オバマの発言は、パキスタン国内と、アメリカの政治支配層内部の両方で、ワシントンが、軍事クーデターの支援を検討していることを示唆するものだと広く受け止められた。
これは、アメリカ中央軍司令官デービッド・ペトレイアス大将が、もしも、ザルダリ政府が、今後二週間のうちに、国内北西部のタリバン武装反抗勢力を壊滅させることができることを実証しなければ、アメリカは「次のコースの行動」を決める必要がある、と発言したとして引用する報道によって、更に強調された。ペトレイアスは、パキスタン軍はパキスタン文民政府よりも「優れている」とまで言明した。
パキスタンでの抗議が余りに激しかったので、国務省スポークスマン、ロバート・ウッドは金曜日に、イスラマバードが二週間という「時間枠」に直面していることを否定するよう強いられた。にもかかわらず、パキスタンが「二日間、二週間、二ヶ月間」ではなく、予見しうる将来、対タリバン戦争で「110パーセントの努力」をするよう、ワシントンは期待していると、彼はあからさまに、強く主張した。
オバマのアフガニスタン・パキスタン特使リチャード・ホルブルックは、アメリカが以前支持した独裁者ペルベス・ムシャラフ将軍が、パキスタン大統領職をあきらめるよう強いられてから、9ヶ月もたたないうちに、ワシントンが軍が主導する政府を支援することを検討している、という、パキスタンのマスコミが書き立てている解釈を。「これは、マスコミのごみ... マスコミのたわごとだ」とホルブルックは非難した。
中央アジアにおけるアメリカの戦争を徐々に拡大するため、オバマ政権が、パキスタンで、何か新たな犯罪を準備しているという証拠は圧倒的だ。
先週ウォール・ストリート・ジャーナルと、ニューヨーク・タイムズに引用された政権高官によると、ザルダリに対する圧力を強化するという明らかな狙いから、オバマ政権は、彼の最大のライバル、元首相でパキスタン・ムスリム連盟総裁ナワズ・シャリフに言い寄っている。
オバマは先週の記者会見で、アメリカはパキスタンの主権を尊重したいのだと主張した。「しかし」彼は付け加えた。「パキスタンの安定を確保することに、我々は重大な戦略的関心と、重大な国家安全保障上の関心を持っていることをも、認識している」。
言い換えれば、アメリカは、パキスタンの主権を、気の向くままに侵害するつもりなのだ。昨年8月以来、アメリカはパキスタン国内で、何十回ものミサイル攻撃と、特殊部隊の地上攻撃を一回しかけた。
先週ロバート・ゲーツ国防長官は、オバマ政権が、ペンタゴンに対し、パキスタンに対する軍事援助についても、イラクとアフガニスタンの傀儡政権に対する軍事援助について持っているのと同様権限を与えるよう、アメリカ議会に要請していると公表した。この"特別"処置の下で、パキスタンに対する軍事援助は、もはや国務省を経由したり、対外援助法の制限を受けたりすることなく、ペンタゴンによって完全に支配されるようになる。
更に「パキスタンの不和、核兵器に対するアメリカの疑念をひき起こす。」 という見出しの昨日のニューヨーク・タイムズの極めて重要な記事の登場だ。同紙のホワイト・ハウス通信員デイビッド・サンガーによって書かれたこの記事は、世論を操作し、パキスタンにおけるアメリカの政治的、軍事的介入の大規模エスカレーションを正当化する狙いで企てられた、CIAあるいはペンタゴンが仕組んだ狂言のあらゆる特徴を帯びている。
記事は完全に匿名"アメリカ高官"の発言に基づいている。パキスタン軍による核兵器備蓄管理に対する信頼を確認する先週のオバマ発言にもかかわらず、タリバン、または、アルカイダの工作員がパキスタンの核兵器を強奪したり、核施設に潜入したりするという現実の、増大しつつある脅威が存在する、と記事は主張しているのだ。
アメリカの支援を得て、核兵器備蓄を巡って施した、パキスタン軍の入念な管理を、イスラム教テロリストが、どのようにして出し抜くのかを説明するために、記事はスリラーもどきのシナリオを唱えている。イスラム教テロリストは、まず、インドとパキスタン間の対立をひき起こし、パキスタンがそれを、東の隣国との国境近くに移動しようとした際に、核兵器を奪うのだという。
アメリカ世論をイラク侵略に結集させることを図るにあたり、タイムズが大きな役割を果たしたことを思い起こさねばならない。このキャンペーンの中心は、イラク政府はアルカイダと同盟していて、サダム・フセインが開発しているとされた核兵器を、アルカイダが入手できるようにするのだというウソだった。
タイムズの記事が、組織的なキャンペーンの一部だということは、あのタイムズ記事が掲載されたのと同日、月曜日の、オバマの国家安全保障顧問ジェームズ・ジョーンズ大将による、BBCとのインタビューによっても明らかだ。
ジョーンズは、アメリカ最大の懸念は、パキスタンの核兵器備蓄の安全だと指摘し、パキスタン政府に対し見え透いた威嚇として、こう述べた。「もしも、パキスタンが、現在の路線を続けなければ、そして、我々がパキスタンで成功できなければ、そうなれば、明らかに、核問題が視野に入るだろう。」
彼は更に、パキスタンの核兵器がタリバンの手に落ちることは「実に、実に悪いシナリオ」だと主張を言い続け、彼の言葉を入念に選択しながらも、辛辣にこうつけ加えた。「そういうことが決して起きないようにすべく、両国の二国間関係と、多国間関係の枠組みの中で、我々はできることを全てしてゆくつもりだ。」
オバマ政権とペンタゴンは、石油が豊富な中央アジアにおける地政学的優位を求めるアメリカの攻勢における、パキスタンとその役割に関ついて、明らかに、自分たちのオプションをはかりにかけているのだ。一つ確実なことがある。彼らが仕組んでいることは、より激しい武力衝突と、この地域の人々の苦難を招き、更にパキスタン国民の民主的な意志と熱望を覆すだろう。
記事原文のurl:wsws.org/articles/2009/may2009/pers-m05.shtml
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パスワード不要のATM属国日本は、
下記MNS産経ニュース記事によると、アフガニスタン警察官の給料半年分とし、既に約141億円の予算措置を既に講じている。これはアフガン側に無償供与される。
またパキスタンに対しては、2009年4月14日のasahi.com記事では
10億ドルのうち7~8割を円借款で、残りを無償資金協力と技術協力で供与する。
こうして、世界最大のテロ国家・宗主国に、莫大なカネを差し出したあと、いよいよ軍隊の戦闘参加が、ソマリアで始まる。つまりは、憲法決壊だ。
森田実の言わねばならぬ【400】【斉藤つよし・森田実の総選挙予想〈その6〉】に、非常に気になる文章がある。いずれも森田実氏の発言だ。引用させていただく。
「ソマリア沖海上自衛隊効果」が出る可能性も高い。とくにソマリア沖で武力行使が行われるようになれば、総選挙への影響は大きいと思う。
私は「小沢ショック」のために、自民党と民主党の第一党争いは自民党やや優勢とみているが、「小沢効果」「ソマリア沖戦闘効果」「北朝鮮核ミサイル闘争効果」で流れがさらに促進される可能性があると思います。
「ソマリア沖海上自衛隊の派遣には、総選挙対策の匂いがある」と言っていた人がいたが、そうだとすると、政府側には知恵のある人物がいるということになる。これから何が起こるかわからない。
憲法を実質的に破壊して、属国から、宗主国への軍隊提供をし、しかも、小泉郵政テロ選挙をも上回る、巧妙なテクニック「ソマリア沖戦闘効果」が使えるわけだ。
たしかに「政府側には知恵のある人物がいる」のだろう。
しかし、そもそも民主党の長島議員が、「ソマリア沖派兵」を言い出したことを考えれば、自民党と民主党は、究極の「八百長政治」ということだ。
仮に民主党が、より多数の議席をとって政権につこうと、議席がとれずに政権につくまいと、宗主国への軍隊提供の実績と、事実上の憲法破壊さえ実現すれば、二大政党論で国民の目を逸らしてきた「宗主国」と「傀儡支配層」の目的は達せられる。
「政府側自民党にも野党のふりをしている民主党にも知恵のある人物がいる」。というのが正解か。
これから永遠に何人も死者をだすことになる憲法決壊を前にして、本来、豚インフルエンザなどで騒いでいる時期ではないだろう。騒いでいるのは、重要な事実を報道するためでなく、重要な事実を隠すためだ。
わが宗主国が、アフガニスタンやイラク侵略をしたがっているところに、実に好都合に911が起きた。
日本を完全属国にしたがっているところに、実に好都合に豚インフルエンザが起きたのであっても、決して驚かない。
アメリカ合州国は、ソマリアで一体何を仕組もうとしているのだろう?
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