カーブルへ至るタリバンの道
Patrick Cockburn
2009年4月29日 "Counterpunch"
-- カーブル --
カーブルで二日前、イギリス首相ゴードン・ブラウンに対して主人役をつとめたハミド・カルザイは、タリバンがパキスタンに本拠地を維持している限り、南部アフガニスタンのタリバンに対して、長期的な成功はありえない、というアフガニスタン人がずっと昔から持っていた信念を、ブラウン首相が追認するのを聞いて、さぞや喜んだことだろう。
アフガニスタンの指導者達は、2006年以来のタリバン復活は、パキスタン軍事諜報機関ISIによる支援と、再編成、訓練と、武器や補給の受領に、パキスタン国内の本拠地を利用していることのせいだとしてきた。しかし、アメリカ、イギリス、あるいは彼らの同盟国が、1990年代から明らかだった、タリバンに対するパキスタンの支援について、本当に何か有効なことをする用意があるのかどうかを、アフガニスタン人は疑っている。
ブラウン首相訪問に先立つ、検問所と道路閉鎖によるカーブル封鎖は、この国を依然として苦しめている治安問題の実例だ。
アフガニスタン軍と警察は、タリバン武装集団が、式典の間にアフガニスタン大統領を射撃しようとした昨年とは対照的に、アフガニスタン独立記念日が平和裡に、終われるよう、精一杯努力している。
司法省と刑務所に対して、一回攻撃があったものの、自爆攻撃者は、今年これまでのところ、中央カーブルへの潜入にはずっと苦労している。
昨年、最も深刻な劣化をしたのは、カーブルから出る道路の治安だ。「一年前、私はカーブルの南60マイルのロガール州にある故郷の村に行くことができましたが、今はあえて行こうと思いません。なぜなら、タリバンが、私が政府と関係しているとして、殺すからです」匿名希望のあるアフガニスタン人ジャーナリストが語っている。
「オートバイに乗った6人から8人のタリバン集団が、移動検問所を設置して、政府職員や、NGOと、関係している人々を探します。彼らが該当する者を見つければ、射殺します。」
ブラウン首相の強硬な発言にもかかわらず、ほぼ全南部アフガニスタンにおいて、周辺の都市を、支配、あるいは戦闘するというタリバンの能力を、逆転することは困難だろう。イギリスは、アフガニスタンに、大半、ヘルマンド駐留兵として、8,300人を配備しており、8月の選挙用に更に700人を派兵する予定だ。既に駐留している40,000人を強化するために、オバマ大統領が派遣しようとしている、25,000人のアメリカ兵の一部である8,000人以上のアメリカ海兵隊員が来週以降やってきて、軍は更に強化される予定だ。
「我々には、自分たちの負担分を引き受ける自信がある」と、ブラウンは述べた。
カーブルから外部に出る道で唯一安全なのは、北行のサラン・トンネル経由で、最終的にタジキスタンとウズベキスタンに至るものだ。この経路は、パキスタンのペシャワル経由の補給が、輸送車両に対する再三の攻撃で脅かされている、アメリカとNATOの補給路として益々利用されるようになる可能性が高い。
首都周辺の他の全道路は、恒久的に、あるいは間欠的に、タリバン支配下にある。文部大臣の父親が、最近、故郷の州で、ある家族の葬式に参列にでかけた際に誘拐された。
ブラウン首相に同行した幹部は、警官と軍隊の訓練に重きをおくオバマ大統領の戦術とよく似た、新戦術を発表する予定だと語った。このうち、警官は、一ヶ月に給料わずか50ポンドで、腐敗と無能さで悪名が高い。正規軍は、アフガニスタン人の間での評判こそ、それよりずっと良いが、装備が貧弱で、兵士たちは装甲の薄い車両を運転することが多く、そうした車両は、爆弾攻撃には非常に脆い。
パトリック・コバーンは『イラク占領-戦争と抵抗』(緑風出版刊、2940円)の著者。彼の新刊'Muqtada! Muqtada al-Sadr, the Shia revival and the struggle for Iraq' 「ムクタダ! ムクタダ・アル-サドル、シーア派復活と、イラクのための闘争」は、スクリブナーから刊行されている。
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