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2009年5月

2009年5月28日 (木)

8年にもおよぶオサマ心理作戦

『お尋ね者オサマ・ビン・ラディン: 生死を問わず』

Tod Fletcher

デヴィッド・レイ・グリフィン新著の書評

2009年5月26日

"Information Clearing House"

デヴィッド・レイ・グリフィンの本『お尋ね者オサマ・ビン・ラディン: 生死を問わず』は、オサマ・ビン・ラディンはまだ生きているのか?という疑問にまつわるあらゆる種類の証拠についての、決定的に重要で、時宜を得た調査だ。現在に対するこの疑問の重要性は、アメリカ合州国が新大統領の下でアフガニスタンでの攻勢をエスカレートし、戦争をパキスタンへと拡大し、「ビン・ラディン狩り」が、そういう行動の主要な動機の一つだと主張している事実にある。明示的であれ、暗示的であれ、アメリカ政府も、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト等の大手マスコミも、ビン・ラディンは生存しており、「アフ・パク」国境の部族地域に隠れて、アメリカの安全保障に対し、相変わらずの脅威となっていると、主張し続けている。

人の心をとらえて離さない新著で、2001年9月11日以来出現した、ビン・ラディンはまだ生きているであれ、彼は実際死亡しているというものであれ、あらゆる証拠を綿密に検討して、グリフィンは、この戦争用口実の根底を攻撃している。彼の結論はビン・ラディンは確実に死亡しているというもので、2001年のかなり後半に彼が死亡した可能性が高いというものだ。多くのアメリカ人の対テロ・対ゲリラ専門家は、ずっと以前から、まさにこれと同じ結論に至っているが、彼らの見解は、オバマ大統領、ディック・チェイニーの用語を拝借して「長期戦」と呼んでいるものの継続を支持するものでないため、マスコミがほとんど報道しないことをグリフィンは示している。マスコミがそんなことをしていたら、戦争政権の原動力の一つが損なわれていただろう。

第1章、「オサマ・ビン・ラディンが死んでいるという証拠」で、グリフィンは、ビン・ラディンはずっと重病でいたが、亡くなった、という2001年末と2002年始めの大手マスコミが報道した様々な兆候の詳細を精査している。これらの中には、(ブッシュ政権の広報担当が認めているように)三途の川にいるように見える2001年12月のビデオ、彼の健康状態の深刻さに関する医療関係者による分析、2001年12月、彼からの通信に対するあらゆる監視傍受の、突然、完全な中断、そして、彼の葬儀の報道さえ含まれている。この早い時期に、ドナルド・ラムズフェルド国防長官やペルベス・ムシャラフ大統領を含む、アメリカやパキスタン政府の様々な首脳が、彼は死んだのではと推測していた。2002年中頃までには、FBIの対テロ捜査官デール・ワトソン、アフガニスタンのハミド・カルザイ大統領、イスラエルの諜報機関職員らを含む多くの専門家が、彼は死亡していると結論を出していた。現在、元諜報機関部員のロバート・ベーアとアンゲロ・コデヴィッラは、彼は2001年に亡くなったと確信している。

第2章、「2001年の二本の偽ビン・ラディン・ビデオ?」で、ビン・ラディンが9/11攻撃を自分の手柄だと言い、それゆえ彼のこの件に対する罪が確立した、といわれている二本のビデオは、ブッシュとブレア政権の立法府、軍事的目標に対して、きわめて好都合なタイミングであったばかりでなく、他の諸理由からして極めて疑わしいことをグリフィンは示している。二本のうち一本は、実際には決して公開されず、ブレア政府が単にそう主張しただけだ。もう一本は、初期のビデオで、肉体的に、本物のビン・ラディンには似ていないビン・ラディンが写っており、その中で、彼は実際、9/11攻撃の責任を否定している。グリフィンは、両方のビデオは偽造されたものだという説得力のある主張を示し、そのようなリスクが伴う企ての背後にある、それらしき動機を示唆し、ずっと以前にこの結論に達した(FBIを含む)専門家の意見を引用している。

第3章、「2001年以降のビン・ラディン・メッセージとされているもの」で、もし偽のビン・ラディン ビデオが、おそらく彼がまだ生きていた早い時期に制作されているのであれば、彼からのあらゆる通信傍受が停止し、多くの専門家が彼は死亡していると結論を出した後に公開された「ビン・ラディン・ビデオ」あるいは、他の彼の「メッセージ」とされているものを疑わしく思う、更に強力な理由になるとグリフィンは主張する。しかし、それ以後、そうした疑わしい一連の「ビン・ラディン メッセージ」が公開されている。グリフィンは、2002年3月の「電子メール・メッセージ」から、2009年1月14日の「ビン・ラディン・テープ」に至るまでの19のデータについて、徹底的な調査を提示している。そのいずれにも、いんちきであることの、あるいは、その信ぴょう性を疑うに十分な理由があるという重要な徴候を、グリフィンは特定している。メッセージについて論議をする中で、様々な種類の偽メッセージを捏造する技術的可能性が既に存在していたことを、彼は証明した。

第4章で、グリフィンは「誰にメッセージを偽造する動機があったのだろう?」という重要な疑問に取りかかる。2003年イラク侵略の準備期間に、侵略の口実として、サダム・フセインとアル カイダとの間のつながりがあるという偽りの証拠を作り出すために、アメリカ軍が心理作戦部隊を用いたことを彼は示している。当時、アフガニスタンのアルカイダ指導者に送られる途中で「途中で傍受」されたと称される、在イラク・ヨルダン人、アブ・ムサブ・アル-ザルカウイの「手紙」を、心理作戦部隊がでっちあげた。侵略後、この「証拠」を本物だとして一面記事を書いた、ニューヨーク・タイムズ記者デクスター・フィルキンスによって、心理作戦は推進された。一方で、ニューズウイーク誌やロンドンのテレグラフ紙を含む他企業のジャーナリストたちは、当時、その手紙が偽造である可能性が極めて高いと考えていた。グリフィンは、心理作戦の標的は、アメリカ国民だったと結論づけている。「ビン・ラディン メッセージ」でも、何か非常に良く似たことが起きているのではあるまいかと彼は疑問を投げかけている。アメリカ政府は、ビン・ラディンが未だに暮らしているとアメリカが主張する場所のどこにでも、軍事作戦を拡大したいと望んでいるのだろうか。証拠に基づき、この目標を実現するために、同様の心理作戦が活用されていないと考える理由は皆無であることをグリフィンは示している。

第5章、「メッセージのタイミングが、政権に都合が良いこと」で、「ビン・ラディン メッセージ」が本物でないと疑わせるもう一つの理由が、特定の目標を追求するにあたって、ブッシュ政権のためになるような、重要な瞬間に発表されていることが多いのを、グリフィンは示している。言い換えれば、「メッセージ」は、ほとんどいつも、客観的に、アメリカの敵にとって不利で、ブッシュ政権なりブレア政府なりに役立っている。グリフィンは、「メッセージ」のこの並ならぬ特徴を、具体例として、11個あげている。

デヴィッド・レイ・グリフィンによる著書『オサマ・ビン・ラディン: 生死を問わず』は、この国を支配し、この国を奈落の底へ突き落としつつある、略奪的な軍-産-金融エリートによる、今後の計り知れない血まみれの侵略戦争に対する抵抗を、私たちが動員・組織できるようにするため、我々がその下に集うべき基盤となる書籍だ。グリフィンは、アフガニスタンとパキスタンでの残虐な戦争を止めるために使える、真実という強力な武器を我々に与えてくれたのだ。活用しようではないか!

記事原文のurl:informationclearinghouse.info/article22708.htm

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こういう本の記述、本当か嘘かという問題は、素人には簡単にはわからない。こういうことこそ「マスコミ」に調べてもらいたいものだが、そうした希望、幻想に過ぎない。

マスコミが報道してやまない、中央大学教授殺人事件やら、豚インフルエンザで客の減った神戸の話より、こうした話題のほうが、普通の日本人にとって、はるかに直接影響する話題だろう。税金が、庶民生活向上のためでなく、宗主国の戦費や、兵站、わが国の傭兵派兵に使われている以上は。

個別のテレビ・アナウンサーやディレクター、新聞記者やデスクが、放送、報道するニュースを自発的に決めているわけはあるまい。体制として、宗主国を含めた上からの圧力で、どうでもよい事件しか報道しないことにしているに違いない。

そうした報道や、茶番国会論議放送を見る時は、悪罵をさけびながら見ている。「ばかやろー!プロパガンダだろう」。そうでもしないと精神のバランスに良くないだろう。馬鹿馬鹿しく、電気代ももったいないので、すぐにテレビは消している。

新聞社説や御用文化人の論説、頭が汚れるので、決して読まない。

貧乏人ができる、せめてもの自己防衛。(もちろん、スーパーのビラは見落としのないよう本気で読んでいる。御用文化人の論説と異なり、効用があるので。)

昔、反安保条約デモにぎやかなりし頃、女子学生が死亡した1960年6月15日の翌々日、マスコミ大手による「七社共同宣言」というものが出された。以来、日本のマスコミ、属国路線推進一辺倒。

ところで、wikipediaの「安保闘争」まるで自民党記事。属国路線推進一辺倒。このblog同様、無料の記事を鵜呑みにしてはいけない

評価という部分から、一部を引用しておく。太字は当方が加工。

新安保条約や60年安保闘争への評価は政治的な立場により異なるが、新安保条約は現在(2009年)まで約半世紀にわたり存続しており、日本の政治体制・軍事体制の基礎として完全に定着しており、 新安保条約により日本が戦争に巻き込まれる危険が増したなどの主張は現在では余り聞かれない

この筆者、正気だろうか?既に、イラク派兵、そしてソマリア派兵という事実があるだろう。宗主国アメリカにまきこまれ、属国日本は戦時中だ。やがて、派兵先、流血場所は、アフガニスタン、パキスタン...と無限に広がってゆく。もろに、巻き込まれている。「いや、主体的に参加しているのだ」と、政府や諸氏は、自分がそう信じたい、真っ赤な嘘を言うだろう。

だが、他国における不正義の人殺しに、主体的に参加したいなどという主張は、現在も普通の神経の人間からは余り聞かれない。人殺しは、そのひとのためなのだ、というようなことを言ったアサハラと同じではないか?

2009年5月26日 (火)

アメリカ・アフリカ軍:AFRICOM、ジブチで60億ドルの大失態

Thomas C. Mountain

Online Journal - 2009-05-15

アメリカ・アフリカ軍(AFRICOM)は、アフリカの角にあるジブチという小国に、新規巨大基地を建設中だ。報道によれば、第一段階では、20億ドルかけ、最終的には、更に40億ドル投資するという。今回、アフリカの大地における、アメリカ帝国によるこの最新の勢力拡張は、ペンタゴンとアメリカ国務省の大失態へと変わりつつある。

その理由を理解するためには、この地域の最近の歴史を振り返る必要がある。ジブチは、エチオピアの一州に毛の生えたようなものにすぎない。ジブチは元フランス植民地で、大規模なフランスの軍事基地を擁し続けている。9-11以後、アメリカ軍は、アフリカの戦略的な場所に、大規模軍事駐留の場を探そうと、熱心に努めてきた。ペンタゴンにとって不幸なことに、基地を置きたい場所のアフリカ国家で、アメリカが基地を置くことを認める国は現れなかった。

そこでジブチだ。人口およそ500,000人で、地球上で最も貧しい国の一つであるジブチは、紅海の入り口に位置しているが、ここをヨーロッパやアジアで使われる石油のかなりの部分を含む、世界海運の多くが通過しているのだ。アメリカは、ジブチ大統領が断りきれない提案をし、インド洋の北アフリカ沿岸の砂と砂漠に、今やコンクリートが注ぎ込まれ、新滑走路やドックが続々と生まれることになった。

ジブチの収入の大半は、ほとんど全て、 ジブチの港を経由するエチオピアの輸入によるものだ。エチオピアは、そのエリトリア植民地の一部であるアッサブ港を常用していた。30年間の独立戦争後、1991年に、エリトリアは、エチオピア軍を打ち負かし、エチオピアから独立をかち取り、エチオピアから、旧ソ連の属国政権メンギスツ・ハイレ・マリアムを追い出した。この独立によって、海に対するエチオピアの主要な窓口アッサブ港は、新独立国家エリトリアの一部となってしまった。

オンライン・ジャーナル読者の多くは、イスラム法廷同盟が、エチオピア/アメリカが支援するソマリ軍閥を打破し、1991年以降、初めてソマリアに新政府を作り始めた後、アメリカの扇動と資金援助で、エチオピアが、ソマリアを2006年12月に侵略したことを覚えておられるかも知れない。

西欧で、ほとんど誰もが知らないであろう事実は、アメリカや他の西欧諸国に扇動され、資金を得て、1998年に、エチオピアがエリトリアと戦争を始め、彼らの元植民地を奪還する企みとして、2000年にエリトリア侵略を実行したことだ(Antiwar.com記事、エリトリア侵略の背後にいるアメリカ、2000年6月、トーマス・C・マウンテンを参照)。

アメリカが、エチオピアとした取引は、西欧の支援で、エチオピアが、エリトリアを破壊し、アメリカが、紅海の入り口に極めて近い戦略的な位置にあるアッサブの主要な港と、国際空港を入手する、ということだった。エチオピア狂信的愛国主義者の心情にとって大切な、アッサブ港をエチオピアが奪還して使用できるのだ。

2000年5月と6月、いくつかの死に物狂いの戦闘後、エリトリア軍は、エチオピア軍の侵略を粉砕し、エリトリアの戦車が、またもやエチオピアの首都アジス・アベバ市街を轟音とともに走行する光景が出現しかねない反撃を、あわや開始しようという時、アメリカが、航空母艦機動部隊を紅海に派遣し、もしエリトリアがそうすれば、アメリカが攻撃すると言ったのだ。

2000年6月以来、エチオピアとエリトリアの間には、膠着状態(アメリカによって助長されたものだ)となっており、特に西欧とアメリカは、建前上、人道支援ということで、アフリカ最大で最高装備のエチオピア軍に、何十億ドルもの資金流用を認め続けてきた。

ジブチにおけるAfricomの大失態の話題に戻ると、アメリカが大規模軍事基地をジブチに建設中であることにエリトリア人が気がつくと、エリトリア人は、思慮深くも、軍が、ジブチを見下ろせるエリトリアの有利な高地を確保できるようにしたのだ。

AFRICOM基地丸ごとが、エリトリア軍火砲の射程内、96キロほどのところにあることに、アメリカ軍が気がついた時は、不快な驚きだったに違いない。ある朝、職場について、エリトリア軍が、エリトリア領土から、ジブチ沿岸に建設中のAFRICOMの見事な新基地を見下ろしている衛星写真を渡された時の、ペンタゴン将軍連中が真っ赤になって怒った様が想像できるだけだ。エリトリア人は、そうと望めば、火砲を山頂に引き上げ、直前の通知で、新AFRICOM基地を閉鎖させることが可能だ。

エリトリアは、もちろん、馬鹿ではなく、アメリカと何らかの戦争を始めようなどという意図は毛頭ない。エリトリアは、アメリカ軍という雄牛の鼻面で赤い旗を振ろうとしているわけではなく、エリトリアが、ジブチを見下ろす火砲を設置したという証拠も、示唆するものも皆無である。一方、エリトリアは、独立を獲得する過程で、多数の生命を失っており、これがアメリカにはそもそも当初から気に食わなかったのだが、エリトリアは極めて慎重に、ジブチと国境を接する自国領土、極めて戦略的な高地を確保したのだ。エチオピアは、既にエリトリア/エチオピア/ジブチ国境のエリトリア領土を占領しており、2000年の侵略時に確保したエリトリア領土を占領し続けている。きわめて誇り高い独立国家エリトリアは、決して傍観し、自国領土に対するいかなる侵害も許すことはしなかった。

穏やかな表現で言えば、エリトリア軍が、自分たちの新基地に向かい合った、そのような戦略的な位置にいることが、アメリカにとって極めて不満であることが、なぜ昨年ジブチ軍が、新AFRICOM基地を見下ろすエリトリア軍陣地を攻略しようと企てたかという理由なのだ。百戦錬磨のエリトリア国防軍古参兵達が、ジブチの侵略の企みを素早く破壊し、エリトリア軍兵士達が、ジブチのAFRICOM巨大基地を見下ろす塹壕に依然として腰を据えている。

ペンタゴンの将軍たちが一体何をしようと計画しているのかは誰にも分からない。エリトリア軍が、ジブチの襲撃を粉砕した素早さや、アメリカのために、エリトリアの元の仲間を攻撃しなければならないことを巡り、ジブチ軍内で反乱が起きかけたとも報じられていることから、アメリカが画策する余地はほとんどない。

アメリカは、国連安全保障理事会で、国際法と国連自身の憲章に違反しながら、エリトリアが、自らの領土から軍隊を撤退させるよう要求する決議をゴリ押しして、エリトリアを脅そうとした。エリトリアはそのような要求を、まさに正当に非難し、こけおどしも効かないアメリカは、面目丸潰れとなった。

一つ確実なのは、ジブチに建設した新AFRICOM基地が、60億ドルの大失態となり、アメリカ軍がまるで阿呆のように見えてしまうと言う事実を、アメリカが受け入れるのは決して容易ではないということだ。

今後の詳細については、西欧のいわゆる「自由な報道陣」が報道し損ねているアフリカの角に関するニュースが読める唯一の場所オンライン・ジャーナルに乞ご期待。

エリトリア在住の最後の白人、トーマス・C・マウンテンは、アメリカで、元教師、活動家、代替医療施術者。Email thomascmountain@yahoo.com.

記事原文のurl:onlinejournal.com/artman/publish/article_4704.shtml

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ソマリアへの日本・海軍、陸軍派兵と、それにまつわるジブチ基地関連記事の一例。

宗主国にいわれてする仕事は、何とも実に手回しのよいことだ。属国民の生活のために働く建前の社会保険庁の仕事と大違い。豚インフルエンザや、日本の経済、軍事力と比較して、大変失礼ながら、吹けば飛ぶような軍事予算の北朝鮮地下核実験よりも、こうした一歩一歩の傭兵派遣策動こそ、困った行為だと思うが、属国大本営広報部(マスコミと称する)は全く詳細を報道してくれない。北朝鮮とて、エリトリアと同じ、本気で核攻撃するはずもない。攻撃すれば国が完全消滅するだろう。

軍事予算比較を、Wikipediaの数字からみると以下の通り。

(日本 4兆7797億円
北朝鮮 年間6000億円 CIA推定)

ジブチ空軍基地使用も可能 イラク派遣「ヒゲの隊長」に聞く

--P3C哨戒機は整備などがたいへんだが

 「ジブチの米軍基地にはP3Cが駐機しており、整備関係で支援は受けやすい。問題は駐機スポットが狭いことだが、ジブチ政府は米軍基地に隣接する空軍基地の使用を歓迎するとのことだった。P3Cを派遣するならあそこがいいのかなという感じはした」

佐藤津正久参議院議員オフィシャル・ページ

中東・アフリカ訪問記(08冬:その8)
(ジブチ空港の視察)
2008年冬に訪問している。

防衛省web記事

武田防衛大臣政務官のジブチ共和国訪問

平成21年5月4日(月)夕  関西空港発
5日(火)  夕  ジブチ着
6日(水)     ジブチ政府高官等と会談、空港地区視察
7日(木)     海賊対処部隊隊員の激励
       夕  ジブチ発

海賊対策 空自C130、ジブチへ 小牧基地を出発

東アフリカ・ソマリア沖海賊対策で海上自衛隊のP3C哨戒機が派遣されるのに伴い、航空自衛隊のC130輸送機1機が18日、愛知県小牧市の小牧基地で装備品などを積み込み、ソマリアの隣国・ジブチに向けて出発した。

今回の派遣はP3C哨戒機2機と海自隊員約100人に加え、同機の拠点となるジブチ国際空港の警戒にあたる陸上自衛隊員約50人。

外務省webの記事

ユスフ・ジブチ共和国外務・国際協力大臣の来日について

   1.  マハムッド・アリ・ユスフ(H.E.Mr. Mahmoud Ali YOUSSOUF)ジブチ外務・国際協力大臣は、4月2日(木曜日)から4日(土曜日)まで外務省の招待により来日します。

   2. ユスフ大臣は、滞在中、日本の政府要人と会談を行い、二国間関係や国際情勢について意見交換を行う予定です。また、ユスフ大臣は、中曽根外務大臣との間で、「ジブチ共和国における日本国の自衛隊等の地位に関する日本国政府とジブチ共和国政府との間の交換公文」並びに「食糧援助に関する交換公文」及び一般無償資金協力「ラジオ・テレビ放送局番組作成機材整備計画に関する交換公文」に署名し、書簡の交換を行う予定です。

   3. 今回のユスフ大臣の訪日により、我が国自衛隊等の海賊対処の基本的な活動拠点となるジブチとの協力関係が更に発展することが期待されます。また、「食糧援助」及び「ラジオ・テレビ放送局番組作成機材整備計画」は、昨年5月に行われたTICADⅣにおいて日本が表明した対アフリカ支援の拡大を具体化するものです。

2009年5月24日 (日)

ジャパン・ディッシング(日本を侮辱する)

2009年5月22日

ディッシング・ジャパン(日本を侮辱する)?   [Jonathan Adler]

誰を駐日大使にするかに関する、オバマ政権の最近の心変わりについて、興味深い(きがかりな?)ニュースを、ある友人が送ってきた。

    本来、オバマは、ハーバード大学の政治学者ジョセフ・ナイを、駐日大使に任命するものと思われていた。この噂は明白にオバマ政権から出たもので、日本のマスコミで広く報道された。日本人は大いに喜び、ナイが、米日同盟の重要性に関する、評判の良いナイ-アーミテージ報告書をものした、非常に尊敬されている学者である、という事実を好んでいた。元ユタ州知事で、実際、標準中国語を話すハンツマンを中国大使として任命した後、今やオバマ政権はナイにするのを辞め、代わりにジョン・ルースなる人物を送り込むのだ。おそらく皆さんは彼をご存じだろう(彼は明らかに、バリバリ仕事をこなす、シリコン・バレーの弁護士だ)が、彼の唯一の資格証明は、カリフォルニアで、オバマのために、何トンも募金を集めたということのようだ。彼は国際問題における専門知識は皆無で、日本について何かを知っているようにも見えない。本質的に、これは政治的報酬だ。日本人が、これを一体どう思うか、特にハンツマンに関して散々報道された後で、想像いただきたい。オバマ政権は、中国ではなく、彼らが、世界で二番目に大きな経済であることを、想起させたいのだろう。それで、わが国は、日本に、資金調達者を派遣するということだろうか? 北朝鮮のミサイル発射に対し、アメリカが無干渉の態度をとった後、二国関係を既に再評価し始めている国に対して、これは実に「顔を平手打ち」的侮辱だ。

記事原文のurl:corner.nationalreview.com/post/?q=ZjQ2OTllZTkwYThkZTBlYmZhNDM2NDJiMTY5NzE3N2U=

この話題は、『園田義明めも。』の下記記事で拝見して知った。

ジョン・ルース起用はジャパン・ディシング? 2009/05/23

属国化推進のナイ-アーミテージ報告書を喜んだり、こわもてナイ教授の日本着任を待望する方々の心理が、素人にはまるで分からない。

またしても、イソップの、蛙の王様。
池に住む蛙が、「王様が欲しい」、と神様に要求した。
神様、最初に、丸太ん棒を投げ込んでくれた。
デクの坊に、蛙はあきたらない。
「もっと強い王様が欲しい。」と蛙は要求する。
神様は、次に、コウノトリを送り込んでくれた。
蛙は全員食べられてしまったとさ。

この新大使の件については、中田安彦氏が『ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報』に、

ソフトパワーの限界: ジョゼフ・ナイが駐日大使を辞退!!

という記事で、氏の見解を詳しく書いておられる。

また、中田安彦氏、『ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報』の別記事、

こんな知日派はいらない!2007年 08月 03日

で、ワシントン発古森義久記事を引用し、アメリカの「知日派」を、こう評しておられる。

これを読んではっきりと分かることは、アメリカの「知日派」と言う人たちは、日本の友人でもなんでもなく、むしろ反日といわれる人よりも性質が悪いということです。

彼らは、結局、日本人や日本の政治家に親しい友人のふりをして接近して、アメリカの安全保障政策や経済政策のロビー活動を仕掛けている。要するに、日本国内にトロイの木馬を作り出して、アメリカの要求を内側から、さも日本の政治家が独自に選んだかのように決定させていくという任務を帯びた人たちです。

もちろん、中田氏の言説、古森記事中にもある、CSISのマイケル・グリーンという人物も対象だ。

更に、氏は言う。

日本の政治家、マスコミ関係者、文化人たちのアメリカ留学組は、古くは阿川弘之を初めとして、彼らの資金でアメリカに呼ばれ、それなりに立派なホームスティ先で、アメリカの国益をいざと言う時には優先するようにみっちりと教育をうけた、トロイの木馬候補たち。

全く別に、リベラル21 マイケル・グリーンのポスト福田論という記事がある。2008.09.06 ごく一部だけ、引用させていただこう。

福田は病気で辞めたのではなく、ファイティング・スピリットを失ったのである。それを日本政治の「退行現象」の発生とみている。同時にそれは次期首相に日本復活の機会を与えたともいえるとして、グリーンは小泉純一郎に学べと訴える。

更に、また、中田安彦氏の、『ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報』の記事で、

小泉進次郎(小泉Jr.)のCSISペーパーを読む」という話題がある。2006年10月19日

彼が、家庭教師のマイケル・グリーンと共同執筆したとされるペーパーを読もうとしたが、あまりに退屈なので、あきらめた。人生は短い。

小泉進次郎という将来の大物?、CSISで、マイケル・グリーンという人物によって育てられたのだ。小泉進次郎というムショ族?立候補する人物、中田氏の表現を拝借すれば、

立派なホームスティ先で、アメリカの国益をいざと言う時には優先するようにみっちりと教育をうけた、トロイの木馬候補」の典型だろう。

あの米国を想い、この属国を作るの名パロディーになった、あの父親にして、この子あり。

地位協定なる不平等条約や、それに乗じた宗主国兵士による多様な犯罪に目をつぶって、そういう「コウノトリ」のような候補を嬉々として?選ぶ属国民、宗主国からこういう扱いは当然。

わざわざ、コワモテの御本尊がお出ましにならずとも、シリコン・バレーの弁護士様で、属国支配はたやすくできるだろう。宗主国、属国の政治、官僚、企業から、マスコミ、学会まで、完全掌握済。永世属国と化した日本、世界の植民地支配の歴史で、最高の成功例だろう。

最下位でジュニアを落選させれば、見なおされるのかも知れないが、100%ありえまい。

議員数削減という甘い言葉で、さなきだに風前の灯火状態にある本質的な野党を、殲滅させる図々しさ。

仮に民主党が政権党に変わっても、ソマリアでの戦闘、実態憲法破壊、そして、それに続く、壊憲路線は、決してゆるがない。

マスコミは、豚インフルエンザと、朝鮮地下核実験しか報道しない。永久属国万歳?

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09/5/25追記

JanJanという、インターネット新聞、日頃ほとんど読んでいないが、たまたま下記の記事があるのに気がついた。

オバマ政権はなぜ駐日大使にルース氏起用か
--安全パイ・日本の「属国路線」が行き着いたところ

田中良太  2009/05/22

尊敬している元新聞記者田中良太氏の文章に違いない。全く同感。この記事を先に知っていれば、上記駄文など書かず、そのまま引用させていただいていただろう。

憲法9条を破壊する以前に、まず、属国状態の根源である、安保条約を破棄することが、独立国として、当たり前のことだろう。

安保条約を破棄して、独立国になった後に、「憲法9条はおかしい」というのなら、論理的な発想だ。
安保条約を残して、属国状態のまま、憲法9条を破壊して、戦争を認めれば、宗主国の傭兵状態を固定するだけのこと。
人は憲法9条のために生きるにあらず。さりとて、屈辱的不平等条約、日米安保条約のために、生きるわけなどましてないだろう。
もちろん、属国傀儡与党も、野党のふりをしている民主党も、そういう発言は永久にしない。

2009年5月21日 (木)

(ドイツも)憲法改悪の口実に海賊を利用

Ludwig Weller

2009年5月18日

ドイツ国民は、三週間遅れで、ようやく、エリートGSG 9 警察部隊とドイツ軍を、ソマリア沿岸沖に大規模に派兵するという計画の詳細を知ることになった。政府の最高レベルによって作り上げられ、承認されたこの計画は、4月4日にソマリ人海賊によって乗っ取られたドイツ・コンテナ船「ハンザ・スタヴァンゲル号」を、エリートのGSG 9部隊が、急襲することを想定していた。作戦は、ぎりぎりの瞬間で、アメリカ政府が、ヘリコプター空母を、ドイツ軍に提供するという申し出を撤回したたとで停止した。

ドイツ貨物船の奪還計画は、ドイツ戦後史における最大の秘密軍事作戦の一つだ。ソマリ人海賊が「ハンザ・スタヴァンゲル」と、ドイツ人船員5名を含む乗組員を、捕獲した直後に、ドイツ政府は作戦計画をたて始めた。

大虐殺にへと容易に転化しかねなかったこの冒険主義的作戦の主立案者は、ドイツ内相ヴォルフガング・ショイブレ(キリスト教民主同盟、CDU)と、外務大臣フランク=ヴァルター・シュタインマイヤー(社会民主党、SPD)だ。内部情報に基づき、デア・シュピーゲル誌は、作戦準備と、内相、国防相と外相との間での激烈な議論に関して、詳細に報じた。

三つの省が、作戦を遂行するため、次官や、高官たちの小グループを任命した。彼らは、ハイジャックの翌日に、危機管理委員会をたちあげ、ベルリンの国防省で、毎日会合し始めた。

シュタインマイヤーの外務次官で、SPDに近い人物、ラインハルト・ジルバーベルクが、危機管理委員会の委員長となったが、彼はより積極的なドイツの軍事的役割を熱烈に支持する人物と見なされている。

内相ショイブレは、内務次官アウグスト・ハニングを危機管理委員会に参加させた。2005年まで、ハニングは、ドイツ情報庁(BND)長官だった。長年にわたり、彼は国家機構を強化するという、ショイブレの方針を支持し、基本的な民主的権利を弱体化させてきた。2007年にドイツで開催されたG8サミット期間、ハニングは、警察活動の責任者であり、活動は1,000人以上の抗議デモ参加者の逮捕で終えた。

KSKドイツ特殊部隊の派兵には、法的な障害があるため、危機管理委員会は、GSG 9対テロ部隊を出動させることを決めた。この部隊は、連邦警察の特殊部隊であり、派兵に、ドイツ国会での承認が必要なKSKとは異なり、ショイブレ内務省の管理下にある。

最初、国防省は、逃げる海賊を追いかけるため、インド洋を巡回していた海軍フリゲート艦「ラインランド-プファルツ」と「メックレンブルグ-フォルポンメルン」を派遣した。ジルバーベルク外務次官は、当時、あからさまに発言していた。「船上に海賊が5人しかいないのであれば、一撃を加えて、迅速に決着をつけることが可能だ。」とはいえ海賊は逃げおおせ、援軍を得てしまった。

デア・シュピーゲルによると、ショイブレと外務次官は、軍があまりに「煮え切らない」と文句を言ったという。ショイブレは、アメリカに支援を求めるべきだと言って、あまりに「友邦」に依存することに対し、警告していた外務省の立場とは対照的な、自分の考えを主張していた。ペンタゴンは、そこでドイツの作戦を進んで支援すると宣言し、GSG 9が、米海軍のヘリコプター空母である強襲揚陸艦ボクサーを使えるようにした。

デア・シュピーゲルは、奇襲作戦の内容をこう説明している。「金曜日、連邦政府は、とうとう行動できる。アントノフAn-124二機、イリューシンIl-76三機、C-160トランザール一機、エアバス一機が、復活祭の日曜日、兵器、爆薬と、6輌のプーマ装甲歩兵戦闘車とベル・ヘリコプターを搭載し、モンバサへと飛んだ。技術支援部隊が、GSG 9の兵站を準備し、先遣特殊部隊に続く、残り200人以上の兵士を用意した。」追加支援として、兵士800人を載せた4隻のドイツ戦艦が、強襲揚陸艦ボクサーを護衛すべく配備された。

ポツダムのGSG 9本部は、30人の完全武装した海賊との銃撃戦は、大虐殺になりかねないと警告しており、作戦の実行可能性には疑念があったにもかかわらず、ハニングとジルバーベルクの両次官は、5月1日夜に計画した作戦を実行するという決断を変えなかった。

デア・シュピーゲル記事は、外務大臣シュタインマイヤーが、この軍事作戦にどれほど深く関与していたかということも明らかにしている。計画段階の重要な時期に、彼はアフガニスタン訪問旅行中だったが、秘密の電話回線経由で、定期的に進捗状況報告を得ていたのだ。

結局は、オバマ政権が、4月29日にブレーキを引いたため、配備は行われなかった。オバマの国家安全保障問題担当顧問ジェームズ・ジョーンズが、ドイツのアンゲラ・メルケル首相に電話して、アメリカ軍には、作戦が余りに危険と思われるので、もはや米軍強襲揚陸艦ボクサーを提供することはできないと語ったのだ。

時折、より強力なドイツ軍の必要性という声を上げてきたデア・シュピーゲル誌は、不成功に終わった作戦について、以下の様に書いている。「この拒否は、内相ヴォルフガング・ショイブレ(CDU)と、外務大臣フランク=ヴァルター・シュタインマイヤー(SPD)にとっては痛打だった。二人は、もしもできることであれば、この人質事件を軍事力で終わらせたいと望んでいた。彼らは、定期的に首相に報告しており、首相の了解を得ていた。ショイブレとシュタインマイヤーは、過去数年間の金力外交にあきあきしており、国際的カリスマがある前例を打ち立てたがっていたのだ。つまり「見てみろ、もはやドイツは、ギャングやテロリストには金を支払わない。ドイツは違うやり方で対処できるのだ。」

雑誌はそしてこう結論している。「ベルリンで、事がおかしくなった。作戦は三週間続き、財務省の負担が、近年支払われた全ての身代金支払いよりも、何百万もかかっている。GSG 9は、今回の試みで明らかなように、より良い兵站、飛行機、艦船無しには、十分迅速に対応することができないのだ。全てをドイツ軍の手中に集中すべきことが明白なように思われる。」

これはまさに、CDUと姉妹政党、キリスト教社会同盟、そして、SPD内部の各派が、長らく追求してきた路線だ。ようやく先週になって、ショイブレは再び、基本法の改訂を要求し、メルケル首相の支持を得た。ショイブレの狙いは、本質的に、ドイツ憲法が規定する、軍と警察の分離を撤廃することだ。内相は、ドイツ兵を、いつでも、国内にも、海外にも派兵できる権力が欲しいのだ。

ジャーナリストのヘリベルト・プラントルも、スード・ドィッチェ・ツァィトゥングの解説記事で、同じ結論を出している。「ショイブレは、海賊を、彼が常に望んでいたことを実現するためのひっかけかぎとして利用している。それは、汎用の安全保障部隊として、軍隊を大規模に派兵することだ。」

既に、内相ショイブレは、クルド人が道路を封鎖した抗議デモを、軍隊を出動させる口実に利用したことがあり、最近のドイツでのサッカーW杯期間にも、軍隊によるサッカー場警備を実現させるため、彼はヒステリーをかきたてようとした。今や彼は、海賊を自分の目的実現を推進するための口実として利用している。

12月19日にドイツ国会で合意された権限は、ドイツ兵士が、攻撃するだけでなく、敵側船舶を沈没させることも認めているという事実があるにも関わらず、こうした事態展開だ。そのような派兵は、対海賊措置として、欧州連合によって2008年11月に採用され、欧州連合によるソマリア海賊対策作戦であるアタランタ作戦の中に織り込まれている。

SPDの大半は、現状、少なくともこの秋に予定されている連邦選挙まで、軍が警察活動を引き受けることを認めるような、基本法のいかなる改訂にも反対している。その後は、状況は変わりうる。SPDの軍事専門家ライネル・アルノルドは、二つのエリート部隊、GSG 9とKSK、の統合、少なくとも、彼らが「参加し、共同作戦を行えるように」したいと要求している。

SPDの一派閥のリーダーペーター・シュトルックは、こう発言している。「ドイツは、明らかに、こうした人質事件を、自力で解決することは出来ず、外部の援助に依存している ... 同様な事件に向けて、我々自身で、武装する能力を発展させるべきか否かを、真剣に自ら問わねばなるまい。」

国内でも、海外でも、好きな時に、国会の制約無しに、ドイツ軍を「総合治安部隊」として派兵しようという、ショイブレの揺るぎないキャンペーンは、必要とあらば、自分たちの権益を、力づくで押しつけることに、ドイツ支配層エリートの関心が増大しているのと照応している。

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2009/may2009/germ-m18.shtml

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いずくも同じ、初夏の夕暮れ。

中村正三郎さんのブログHOT CORNER 記事で知った新書、下條信輔著「サブリミナル・インパクト―情動と潜在認知の現代 」209ページに、以下の記述がある。

†無意識へ働きかける危険

 たとえば、自衛隊の海外派遣という具体的な問題を考えてみましょう。これについて政府が、国民の同意を混乱なく、すみやかに取り付けたいと考えたとします(仮に、の話です)。どういう手順が一番良いでしょうか。

 あえて中身が曖昧なままでも、とりあえずの大義名分に大筋の合意だけ取り付けてしまう。そうすれば、細部や具体的な法整備にも全息を得やすくなるかも知れません。そこには「最初のコミットメントに対して後の行動の首尾一貫性を保つ」という潜在心理のルールが働くからです。

残念ながら、仮にではなく、まさにこれを狙って、政治家とマスコミは、海賊対策法案を推進しているのだろう。じわじわと既成事実を積み重ねて、憲法を台無しにするために。

「憲法9条は、アメリカの押しつけだから、廃棄するのだ」という人々がいる。前半はその通りだろう。

しかし、憲法9条があるから、属国になっているのではなかろう。安保条約が、憲法の上にあるために、属国になっているのだ。憲法9条廃棄を唄う人々は、なぜ「独立する第一歩は、安保条約廃棄だ」と、なぜ考えないのだろう。どうして、憲法9条までで、思考停止するのだろう。思考停止しているのであれば、それは知的レベルが低すぎるということになろう。それこそが、本当に問題の核なのだ、と知っていて、言わないのであれば、誠実さにかけるだろう。憲法9条廃止論者には、是非、安保条約についてのお考えを、並記いただきたいものだ。

岸田秀の新刊対談集『官僚病から日本を救うために』新書館刊には、彼の持論が随所に書かれている。以下は、272-273ページからの引用。全く同感。

安倍政権のときに朝日新聞に書きましたが、私は現時点での改憲には反対です。今日本は事実上はアメリカの属国なのだから、こんな状態のときに憲法を改正すればアメリカに都合のいい改憲になって、自衛隊はアメリカ軍の便利な無料傭兵になっていいように使われるだけですよ。

 ただぼくは、改憲自体には必ずしも反対ではない。ただし、改憲するなら、アメリカ軍基地が日本からなくなって、アメリカ兵が日本からいなくなるまで待つ必要があると思ってます。

 そのときに国民的合意の上でね、戦争放棄を謳い非武装中立を選び平和憲法を押し通し、それでアメリカかロシアか中国か北朝鮮かに攻め込まれて滅びるなら自分の決断の結果ですから、それはしょうがないと諦めることができる自信があるのなら、平和憲法もいいですよ。しかし今の平和憲法は、日本が再びアメリカに反抗して将来戦争を仕掛けることがないようにとアメリカの安全のためにつくられたものですから、国民のプライドに反するわけでね、いつかは改憲しなきやいけないでしょう。ただ今は改憲するべきではない。

そして、ニール・ポストマン、スティーブ・パワーズ著『TVニュース 七つの大罪』(邦訳題名、翻訳は1995刊、現在は絶版?古書しか手にはいらない。)(原題 HOW TO WATCH TV NEWS 改訂版は2008年Penguin刊)の著者まえがき(Preface x)に、いみじくもこうある。訳してみよう(Steve Powersが、全編にわたって加筆しているので、旧版邦訳のものとは、原文が異なるのだろう。)

テレビのニュースが、伝えていると主張していることと、実際に伝えていることは、別物だ、という結論に我々は達した。テレビ・ニュース番組を理解するのに備える為の、整然とした正確な本があれば有用だろうという結論に至った。お手許にある本が、その所産だ。

この件について、何事かを語る以前に、まず、新聞、雑誌、書籍を貪欲に読まない人々は、本質的に、テレビ・ニュース番組を視聴する態勢ができていないのだということを指摘しておかねばならない。これは将来もあてはまるだろう。

中略(天安門事件で、戦車の前に立っていた学生の画像を忘れる人はあるまい。云々)

人は、誰が中国を支配しているのか、そして支配者たちの出自はどうなのか、どのような権威、イデオロギーで、支配していると彼らは主張しているのか、学生たちが、どのように自由とデモクラシーを理解していたかを、知ることが必要だろう。こうしたものごとは、単純なテレビ・ニュース報道の範囲を超えており、新聞や書籍を多読することによって、学習するしかない。

したがって、テレビ・ニュースを見るための準備として、我々が最初に教えるべきことは、多読をして、我々の頭を準備させるということだ。この事は非常に重要なので、あえてまえがきに含めることとした。この極めて重要なことを明らかにした上で、他の項目を以下に検討することにしよう。

残念ながら、大手新聞のほとんど、テレビと同じ翼賛体制喧伝の道具と化している現在、いくら商業新聞の多読をしても、洗脳されるばかりで、テレビ・ニュースを冷静に読み取る助けにはなるまい。書籍の多読が必要だろう。

漢字検定やTOEICの不祥事が話題になるが、意味のある、本当の「テレビ視聴検定」、「インターネット検定」でもあれば良いのにと夢想する。

合格しないとテレビが見られない。あるいは、見る時間が極端に制限される制度だ。

そうした検定ができれば、世の中、不合格者だらけになり、テレビ視聴検定、インターネット検定の予備校が駅前に林立するだろう。英会話を習いにゆくより、はるかにためになるには違いない。(もちろんこれは、金も時間もなく、英会話を習いにゆきそこね、アメリカ留学も駐在もできなかった僻み:-)

しかし、そんなリテラシー教育をすれば、世の中、ひっくり返るので、与党・役人が、そういうものを作るわけもない。ショート・ショートとして面白い話ができそうだが。

そう、昔、サトウ・サンペイの漫画に、「歩行者免許」というのがあったのだ。小股・中股・大股免許...。免許を取得しないと、町を歩けないというのだが。

「リテラシー検定の証明書がない人は、選挙権をえられない」という制度にすれば、自分の首をしめる人に喜んで投票するという不思議な習慣はなくなるのだろうか?そもそも、自分の首をしめる人に喜んで投票する方々は、「リテラシー検定の証明書がない人は、選挙権をえられない」という考え方に、猛烈な反対をされるだろう。

Neilpostmantp

おテレビ様と日本人 林秀彦著 成甲書房刊も、お勧め。

2009年5月18日 (月)

オバマの『動物農場』: より大規模で残酷な戦争は、平和で公正だ

Prof James Petras

Global Research

2009年5月17日

デルタ部隊の連中は、精神病者だ。…デルタ部隊で服務するには、折り紙付きの精神病者でないといけない…」、フォート・ブラッグ基地の、ある陸軍大佐が、1980年代、私にそう言ったことがある。今や、オバマ大統領は、最も悪名高い精神病者スタンリー・マクリスタル中将を、アフガニスタンにおける、アメリカとNATO軍司令官に昇進させたのだ。マクリスタルの昇進は、裁判なしの暗殺、体系的拷問、一般市民社会への爆撃、そして、索敵殲滅作戦を遂行する特殊作戦チームを指揮する上で、彼が果たした重要な役割によって特徴づけられる。彼は、軍主導の帝国形成にともなう、残虐さと血糊の権化まさにそのもの。2003年9月から、2008年8月まで、マクリスタルは、外国での暗殺を行う特殊部隊を運営する、ペンタゴンの米統合特殊作戦コマンドを指揮していた。

「特殊作戦」チーム (SOT)の要は、民間人と反対勢力軍を、活動家とその同調者や、武装反抗勢力を、区別しないことにある。暗殺隊を作り、民兵部隊を採用し、訓練し、アメリカ属国政権に反対するコミュニティー、地域、社会運動を威嚇することが、SOTの専門だ。SOTの「テロ対策」なるものは、アメリカの代理人と、武装抵抗勢力との間にたつ、社会-政治集団に焦点を当てる裏返しのテロだ。マクリスタルのSOTは、イラク、アフガニスタンやパキスタンの、現地反抗勢力指導者を、奇襲攻撃や空爆による、標的としてきた。過去5年間にわたる、ブッシュ-チェイニー-ラムズフェルド時代に、SOTは、政治犯や容疑者の拷問に深く関与していた。「特別任務部隊」の「直接行動」部隊責任者だったために、マクリスタルは、ラムズフェルドとチェイニーの大のお気に入りだった。「直接行動」工作員は、暗殺隊であり、拷問人であり、現地住民に対する彼らの唯一の関与は、威嚇することであって、宣伝活動ではない。彼らは「死のプロパガンダ」に従事し、現地の指導者達を暗殺して、占領に服従、屈伏するよう現地人を「教えこむ」のだ。オバマがマクリスタルをトップに任命したことは、アフガニスタン中で広がっている抵抗に直面して、アフガニスタン戦争を、新たに大規模に軍事エスカレーションすることを反映している。

アメリカの立場が悪化していることは、アフガニスタンの首都カーブルに出入りする全ての道路を巡る円陣が強化されていること、パキスタン-アフガニスタン国境全域にわたるタリバンの支配と影響力の拡大から、歴然としている。オバマは、新たなNATO増派を期待することができないので、軍主導型の帝国を推進するためのホワイト・ハウス唯一の望みは、アメリカ兵士の人数を増やし、アフガニスタンの武装反抗勢力によって支配されている地域のあらゆる、全ての疑わしい民間人の殺傷率を高めることしかない。

ホワイト・ハウスとペンタゴンは、マクリスタル任命は、現地状況の「複雑さ」と、「戦略変更」の必要性によるものだと主張している。「複雑さ」というのは、伝統的な絨毯爆撃と軍事掃討作戦を困難にしつつある、民衆の対アメリカ抵抗が増大していることの婉曲表現だ。マクリスタルが実施する新戦略は、武装抵抗勢力に支援体制を提供している、現地の社会ネットワークや共同体の指導者を壊滅し殺害する、大規模で長期的な「特殊作戦」を伴うのだ。

(特に「特別部隊」の指揮の下での)アメリカ兵士による囚人の拷問と「尋問」に関わる多数の写真記録の公開を阻止するというオバマの決断は、イラクにおいて広く行われていた拷問にかなり深く関与していた「SOT」部隊を指揮していたマクリスタルを任命したことと直接関連している。同様に重要なのが、マクリスタルの指揮の下で、DELTA、SEAL、および、特殊作戦チームが、新たな「対テロ戦略」において、より大きな役割を担うだろうことだ。こうした写真を公開すれば、「兵士達」に対して逆効果になるという、オバマの主張には、特別な意味がある。ブッシュ大統領の下での過去5年間にわたるマクリスタルの手口が、画像で暴露されると、オバマの下で同じ作戦を遂行する上で、彼の有効性が損なわれてしまうのだ。

グアンタナモ監獄に抑留されている外国人政治犯の秘密「軍事法廷」を再開するという、オバマの決断は、オバマが、大統領選挙キャンペーンの間、非難し、無くすと約束していたブッシュ-チェイニー政策の単なる再演ではなく、国を軍事化するという彼のより大規模な政策の一部であり、アメリカ国民に対して行われる大規模な秘密警察監視作戦を彼が承認したこととも、合致する。

マクリスタルを、拡大版アフガニスタン-パキスタン軍事作戦の責任者に据えるということは、軍事テロ、つまり、アメリカ政策に対する反対者への拷問と暗殺の、悪名高い実践者を、アメリカ外交政策の中心に据えるということだ。オバマによる南アジアにおけるアメリカの戦争の量的、質的拡大は、自分たちの農場、家、村の破壊から逃れる膨大な人数の難民を意味する。何万人もの民間人死者と、共同体丸ごとの根絶だ。こうしたこと全てが、「魚(武装反抗勢力と活動家)を獲るべく、湖を空 (カラ)にする(住民全員を強制退去させる)」作戦を進めるために、オバマ政権によって行われるのだ。

オバマが、最も悪名高いブッシュ時代の政策を全て復活させ、ブッシュの最も残酷な司令官を任命したのは、軍が主導する帝国形成というイデオロギーを、彼が全面的に奉じていることによるものだ。アメリカの権力と拡張は、軍事征服と対ゲリラ作戦に基づくものだと、(オバマのように)一度思い込んでしまえば、ほかのあらゆるイデオロギー的、外交的、道徳的、経済的配慮は、軍国主義に従属させられてしまう。あらゆる資源を、軍事征服の成功に集中することにより、アメリカ財務省やアメリカ国内経済の復興を対象に、国民が負担すべき費用に対しては、わずかな注目しか集まらなくなる。これも始めから明らかだった。大規模な景気後退/不況で、何百万人ものアメリカ人が職や家を失うさなか、オバマ大統領は軍事予算を4%も増大し、予算は8000億ドルを超えた。

オバマが軍国主義を奉じていることは、NATOが、更なる戦闘部隊の増派に反対しているにもかかわらず、アフガニスタン戦争を拡大するという彼の決定からも明らかだ。一番の強硬派で、ブッシュ-チェイニー時代の悪名高い特別部隊司令官を、アフガニスタンやパキスタン辺境地域を鎮圧する軍事司令部のトップに任命したことで、それは明白だ。

ジョージ・オーウェルが『動物農場』で描いたのと全く同じだ。民主党の豚たちが、今や、前任者の共和党食用豚と全く同じ、残酷な軍事政策を推進しているのだ。ただ今度は、国民と平和という名の下で。オーウェルなら、バラク・オバマ大統領の政策を、「より大規模でより残酷な戦争は、平和と公正である。」と言い換えたかもしれない。

James Petrasは、Global Researchの常連寄稿者。James Petrasによる、Global Research記事。


 

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© Copyright James Petras, Global Research, 2009

記事原文のurl:www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=13644

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1945年に刊行されたイギリス人作家ジョージ・オーウェルの寓話小説『動物農場』では、「荘園農場」で、家畜を搾取していた持ち主のジョーンズ氏を、豚の指揮のもと、家畜たちが追い出す。しかし、革命の陶酔も長くは続かず、豚が家畜を支配して、人間と取引を始め、甘い汁をすうようになる。農場は人間が支配していた時代以上に、家畜にとって過酷なものとなる。

同じジョージ・オーウェルの『1984年』という、1948年に執筆された小説は、永久に戦争が続く、まさに現代のような状況を描いている。その小説の中で、使われる有名なスローガンは、『戦争は平和である。自由は屈従である。無知は力である。』

オーウェルは、第二次世界大戦時、イギリスBBCで、戦争プロパガンダ番組を作成・放送していた。メディア・プロパガンダの先駆者の一人だろう。

上記記事、『動物農場』同様、現代アメリカでも、主人の交代で庶民の暮らしは良くならないこと、つまり、

「ブッシュ共和党の後、オバマ民主党により、戦争はますます過酷になって行く」ことを端的に示している。

アメリカでは、『動物農場』学校の授業で習う、誰でも知っている小説らしいが、知っていることと、それを避けることは、全く別なのだろう。

庶民にとって意味ある選択肢を無くすため、宗主国と同じ二大政党システムを導入すべく、小選挙区制度を実現したのが小沢元代表。今度こそ、民主党の選挙担当、代表代行として、「民主党」で政権を獲る可能性は高い。

だが属国政治が、宗主国のエミュレーションの域から脱することは決してありえない。

「自民党・公明党連立政権の後、民主党(・xx党連立?)政権により、テロ帝国による戦争への属国の加担はますます過酷になって行く」に違いない。

民主党の長島昭久議員が、対ソマリア海賊派兵を最初に提案したのだ。
民主党小沢元代表が、アフガニスタンのISAF参加を主張しているのだ。
民主党鳩山代表が、憲法9条の破壊を早速示唆しているのだ。

従米自民党とどこが違うだろう。

民主党が、自民党・公明党より、対米自立を主張、実践してきた事実は皆無だろう。

 

昔、戦争突入をあおったマスコミが、また同じ目的で、何をいうのにも驚かない。しかし、多数のブロガーが、小沢支持一辺倒、民主党による政権交代原理主義者でおられるのは、実に何とも不思議なこと。

 

小泉911選挙の焼き直し、飛んで火にいる夏の虫。小泉自民党・公明党に投票して、セーフネットをはずされたことをお忘れのようだ。再び、庶民は騙され、宗主国と同じ、庶民にとって利益のない、二大支配政党論に取り込まれる。こうして、属国戦争遂行体制は作られて行く。

「戦争に良い戦争と悪い戦争がある」「一国平和主義は無責任だ」という類の、憲法破壊の主張、

    • 分かっていて主張していれば、戦争で儲かる宗主国の回し者か、死の商人・武器業者、
    • 騙されて主張していれば、いわゆるB層。

一般庶民にとって、良い戦争などあろうはずがない。戦争は皆悪いのだ。悪い平和なら、あるいは、あるかも知れないが、庶民にとっては、必ずや、良い戦争・悪い戦争よりましだろう。

2009年5月15日 (金)

オバマと海賊: 国家暴力の賛美

wsws.org

2009年4月16日

四日間にわたるアメリカ第五艦隊と、少数のソマリ人海賊とのにらみ合いは、復活祭の日曜日に、ソマリ人三人の射殺と、マースク・アラバマ号のアメリカ人船長、リチャード・フィリップスの解放という結末となった。

世界での出来事の規模という点で、このにらみ合いは、かなり些細な出来事、人質事件なのだ。

全ての警察署は、こうした出来事に対処すべく訓練されている。こうした出来事をいかにさばくべきかについての教本は、例外なく、目的は、事件を平和裡に解決することであり、人質と警官の命を守り、そして、できれば、致命的な武力の行使を避けることを強調している。

この場合、人質事件は、マスコミがお膳立てしたドラマ、バラク・オバマ大統領の軍事力使用への意欲に関する、いちかばちかの政治のテストへと転化した。海賊の殺害それ自体が、政治目的と化していた。

殺害の余波の中、マスコミは、フィリップス船長の生存を巡るアメリカ国民の無理からぬ安堵につけこみ、狙撃兵の銃撃による射殺の血なまぐさい祝賀へと転化した。海賊が、三人のソマリ人の若者が、殺害されたことに対するマスコミの歪んだ満足に、完全に欠落していたのは、銃撃が理にかなったものなのか、あるいは、アメリカの海外政策という枠組みの中でも、一体望ましいものなのかどうか、という問いだった。

船長が差し迫った危険にあったため、殺害は不可欠だったという公式説明は、説得力がない。海賊が殺害される前に、この一団の四人目、16歳の少年がアメリカ海軍に投降し、アメリカ貨物船をハイジャックしようとした際に負った怪我の治療を受けていた。疲労困憊し、船長の解放と引き換えに、自分たちの命乞い交渉をするつもりでいた彼の仲間三人は、自分たちが、アメリカ戦艦ベインブリッジに引き綱で繋がれることを認め、彼らの船は戦艦から23mの近さにまで引き寄せられていた。海賊が最後の絶望的な抵抗を準備していた様子には到底見えない。しかも、600m以上の距離にある標的に命中させるよう訓練されている軍の狙撃兵にとって、海賊を射殺することは朝飯前だった。

海賊を銃殺するという決断は政治的理由で行われたのだ。オバマに対する右からの批評を無力化し、軍とアメリカ人支配層エリートに対する、大統領の根性を証明するのに役立った。ホワイト・ハウスが、オバマが致命的攻撃を承認したと、ほぼ即座に公式発表することで、これが明らかにされた。そして、フィリップス船長が、この状況を生きのびられたのは、政治的動機による決定の、偶然の産物であることも。

こうした殺人の本質を最も物語ってくれるのは、商業マスコミの反応だが、それは、死んだソマリ人に関する胸の悪くなる殺戮への欲望と一緒にと、オバマにとって、どれほどの政治的“勝利”事件かという記事類をまとめたものだ。

もはや、マスコミから衝撃を受けることは困難だ。マスコミの政治的奴隷根性、後進性、そして、下劣な本能への訴求は、長らく、アメリカの政治風景の一部となっている。だが今回は、ほとんど錯乱気味とも見える、残虐性があった。

最も注目すべきなのは、アメリカの首都での出来事を記録する新聞として機能しているワシントン・ポストの反応だ。救出から二日後、同紙は、第一面に、全段抜きの見出しを掲載した。「三発の銃撃、三つの死体

同紙の海外問題コラム執筆者、デーヴィッド・イグナティウスは「狙撃兵を褒めたたえて」という題のコラムを書いた。記事はこうだ。「まさに政策の大御所たちが、ソマリ人海賊に対処するための入念な政治-軍事戦略についての議論を始めようとしていた矢先、最善の解決策は、時に、最も簡潔かつ最も直接的なもの、今回の場合は、狙撃兵のライフル銃であることを我々は思い知らされた。」コラムは更に、ソマリアにおける危機の解決策として、秘密CIAや特殊部隊の殺人分隊が「迅速かつ、音もなく動き、戦場での力のバランスを変える」という類の事を主張している。

最後にポスト紙は、元同紙の映画評論家で大衆小説作家スティーヴン・ハンターによる、狙撃兵を称賛する記事を掲載した。ハンターの記事は、狙撃兵は「ある種、騎士道的英雄だ。彼は国家で、雷の中で語り、道徳的な世界へと秩序を回復させる。あるいは、彼は野蛮人に連中の窮状の無益さを知らしめる文明だ。」と熱烈に支持している。

アメリカの歴史における狙撃兵の役割を、つまり、ジョン・F・ケネディとマーチン・ルーサー・キングの暗殺を思い浮かべる様な年齢の人々にとって、こうした類のファシスト志向の与太記事を大手新聞が掲載するのは、とりわけうんざりさせられることだ。

銃を持った、錯乱した自暴自棄の人物による大量殺人が、少なくともほぼ週に一度は起きずに済まないアメリカで、孤独な銃の名人(ローン・ガンマン)への、こうした賛美が現れるのは、注目に値する。軍隊が、複雑な問題に対する解決策として喧伝される悪臭を放つ政治環境が、こうした無差別の暴力の一因だという何らかの疑念はないのだろうか?

マスコミに、ほとんど欠落しているのは、ソマリアの危機に対する理性的な論評と、再三のアメリカ軍の介入が、ソマリアの崩壊と海賊の増加に、決定的な影響を与えたという事実だ。「テロの正当化」だとして非難される恐怖から、9/11攻撃に関する、いかなる思慮ある説明をも、マスコミが避けたのとほぼ同様、ソマリアにおけるアメリカの役割に対する、批判的な評価を沈黙させるために、同じ言葉上のテロが使われている。つまり「海賊の擁護」だという烙印を押されるのだ。

インド洋における狙撃兵の殺人を称賛するのには、明白な政治的動機がある。一つは、これが、アメリカと世界経済の不況突入が続いていることや、何百万人もの仕事と、生活水準の破壊から目をそらす格好の話題として役立つこと。

もう一つは、ブッシュが開始し、オバマが継続中の、敗北と失敗で特徴づけられているイラクとアフガニスタンにおける戦争の後で、これは、ワシントンが、アメリカ人に向かって、軍事力は実際に有効なのだと主張できる機会だったことだ。世界における自分たちの権益を推進するために、アメリカの相対的な軍事的優位性に大きく依存しているアメリカの支配階級にとって、これは極めて重要なイデオロギー的概念だ。

アメリカの政治支配階級内部の、有力なオバマ支持者たちが、大統領候補を彼に集約する際に、彼らの主張の一つは、ワシントンだけでなく、中国やヨーロッパもが切望している戦略的なエネルギーと鉱物資源を持ったアフリカとの関係を改善するのに、アフリカ系アメリカ人大統領は役立つだろうというものだった。

結局、三人のソマリアの若者を銃殺したことは、ソマリ族の間にある、そうでなくとも強い反米感情を燃えあがらせ、アフリカ大陸中で、オバマは、「チェンジ」だという意識を傷つけることにしか役立つまい。

Bill Van Auken

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2009/apr2009/pers-a16.shtml

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スティーヴン・ハンター、狙撃手を主人公にした大衆小説作家のようだ。彼の作品はほとんど読んだことがない。彼の『極大射程』は、ヴェトナム戦争で87人の命を奪った伝説の名スナイパー、ボブ・スワガーが主人公。そのもとになった作品?というのが『魔弾』原題はThe Sniper、狙撃の名手が登場する。『ブラックライト』でも、名スナイパー海兵隊退役一等軍曹ボブ・スワガーが登場。『ハバナの男たち』では、スナイパー、アール・スワガー(ボブの父親)が、カストロ抹殺作戦に登場。

スティーヴン・ハンターのような大衆小説、狙撃兵、銃殺を当然のことと考える文化から生まれるのだろう。海賊対処法案が間もなく、成立し、わが傭兵による戦闘で、双方の戦死者、民間人の巻き添え被害が増えるにつれ、日本版スティーヴン・ハンターも生まれるだろう。マスコミ(テレビも新聞)は、全てワシントン・ポストのように国家暴力を賛美するようになるだろう。今の白痴番組状態のほうが、まだましに見えてくる。

ワシントン・ポストの同じ話題に関する別記事 Kill the Pirates「海賊を殺せ」については、藤永茂氏のブログ『私の闇の奥』、「ソマリア沖の海賊と黒いロビン・フッド (1),   (2)現在いずれもリンク切れ」で、詳細に触れておられる。拝読すると、宗主国アメリカと、わが属国日本、基本的な価値の共有などないことが、つくづく良く分かる。憲法を破壊することは、宗主国のこの恐るべき価値観を、そのまま属国日本の価値観として受け入れることを意味する。

今マスコミがしきりに話題にしている、民主党代表の選挙など、「海賊対処法案成立」という「憲法破壊」にくらべれば「かなり些細な出来事」。

自民党、公明党を攻める、民主党が、攻める相手と同じ穴のむじななのだ。自民党、民主党、いずれも、企業献金がなければ生きて行けない政党だ。そうではない政党が、もっと議席を得られる選挙制度に変える必要がある、というのが、普通の結論ではなかろうか。

折しも、屈辱的なグアム移転協定が、13日、国会で承認され、成立した。こちらの方が、民主党代表選挙より、はるかに重要だろう。

民主党代表選挙もまた、「海賊対処法案成立」という露骨な「憲法破壊」を推進するための八百長芝居かも知れない、と疑心暗鬼になる。

「小沢傀儡うんぬん」などというつまらない話題以前に、小泉政権を見れば、端的に「与党」そのものが「アメリカ傀儡」だろう。

自民党、公明党、あるいは民主党、そしてマスコミの対米奴隷根性、後進性、そして、下劣な本能への訴求は、長らく、日本の政治風景の一部となっているのだから。

ところで、中村正三郎さんのブログ、『ホットコーナーの舞台裏』で、下條信輔著「サブリミナル・インパクト―情動と潜在認知の現代 」が紹介されていた。細かい内容には触れていないが、あの中村さんが、

個人的には、今年のノンフィクションNo.1です。きっとそうなりそうと
思います。\(^O^)/

と書いておられる。無条件にこれは買いだと思い、読んでみた。はたしてその通り。繰り返し読んでいる。たとえば206ページから引用しよう。

†雪だるま式に独り歩き

 不確かさの下では、人の判断にはバイアス=偏りが生じます。そのバイアスには大きく二通りあります。
 送り手が情報を選んで流すことで、情報そのものが偏るというのがひとつ。「サンプリングバイアス」と呼ばれるものです。先に述べた米国のメディアの現状は、これが大きいと思いますし、日本のメディアもそれに近づいていると思います。
 もうひとつ、人々の側にも自分の信じたいものだけ受け入れる傾向があるので、その方向の情報だけが記憶され、行動に影響する、という受け手の側のバイアスもあります。
「動機のバイアス」とも言います。このふたつが重なると、どうなるでしょう。人々の嗜好に応じる情報を送り手が選んで供給し、今度はそれに人々の嗜好が影響される。そういうことがくり返されると、情報は事実から離れ、雪だるま式に独り歩きをはじめるのです。

関連記事翻訳:

(ドイツも)憲法改悪の口実に海賊を利用

なぜフランスは、 ソマリア沖で実力行使に及んだのか?

ソマリア沖で作戦活動中のドイツ海軍

2009年5月14日 (木)

対アフガニスタン海外援助の醜い真実

Press TV

2009年5月10日

アフガニスタンに対する国際援助のうち、法外な金額が、西欧の支援組織によって、戦災被害を受けたこの国に駐在する職員用として浪費されている。

「アフガニスタンでの、道路、ダム、送電線建設を援助するために使われるはずのお金として、アメリカ合州国、イギリスや他の国々で人々は働き、税金を支払っています」アフガニスタン国会議員で元計画省大臣のラマザン・バシャルドゥストは語っている。

バシャルドゥストはこう付け加えた。「しかし、一度、資金がアフガニスタンに入ると、60,000ドルの自動車を所有し、一ヶ月の家賃15,000ドルの家に暮らす人々用に使われるのです。お金はそうした支出に使われます。90パーセントが後方業務と管理費です。」

ヨーロッパの援助団体職員の給料、護衛と宮殿のような住宅に対する多額の支出が、国連の国家の豊かさの順位で、なぜアフガニスタンが178ヶ国中の174番目なのかという説明の一助になる。

アフガニスタン首都カーブル中の諸地域が、支援組織や、大使館で働くヨーロッパ人を滞在させるため、接収されたり、再建されたりしている。

「この建物を、月30,000ドルで、ある支援組織に賃貸したばかりです。直結した浴室と、装甲ドアと防弾ガラス窓付きの部屋が24あるのですから、そんなに高額なのです。」プロパティ・コンサルティング・アフガニスタン社の社長トリアライ・バハデリは語った。

支援組織や、外国の請け負い業者は貪欲で、77パーセントのアフガニスタン人が、上水が使えない状態だという事実にもかかわらず、寝室には必ず直結した浴室がなければならないというのだ。

極端な貧困が、若いアフガニスタン人をタリバンに入って戦うよう追いやっている時、カーブルの外国人コンサルタントは、年間250,000ドルから500,000ドルの月給を享受できる。

アフガニスタンにおける援助資金の無駄が多いことは、アフガニスタン政府さえも、悩ませている。

「私は、人口830,000人の、北部アフガニスタン、バダフシャン州にいました。彼らの大半は農業に依存しています」カーブルのオックスフォード飢餓救済委員会(略称Oxfam)代表マット・ウォルドマンは語っている。

「バダフシャンの農民にとって極めて重要な、現地の、農業・かんがい・家畜担当部門の総予算は、わずか40,000ドルです。これは海外に居住しているコンサルタントが、数ヶ月カーブルで暮らせば得られる給料です。」

アフガニスタンにおける海外援助の醜い真実は、この国で、ここ数ヶ月、武力衝突のレベルが増加している中で、表面化している。タリバン武装反抗勢力は、一連の破壊的攻撃を遂行し、アフガニスタンと多国籍の軍隊が、常駐するだけの人員がない、地方の大半の部分を支配している。

記事原文のurl:www.presstv.ir/detail.aspx?id=94294&sectionid=351020403

原文記事には、下記写真とキャプションがある。


キャンデーをねだるアフガニスタン人の子供。南部アフガニスタン、カンダハール州、ゴラク地区、チナル村

 

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「全て」がそうではあるまい。ペシャワール会は例外のはずだ。

「対パキスタン海外援助の醜い真実」もあるに違いないが、商業マスコミは割り当てた予算金額程度しか記事にはしない。

2009年5月12日 (火)

EU加盟から5年: 危機的状態の東欧諸国

wsws.org

Markus Salzmann

2009年5月9日

2004年5月1日の中・東欧10ヶ国の欧州連合加盟を祝うべく華麗な祭典が催された。五年前、欧州連合は拡張し、およそ7500万人の住民がいる10ヶ国を包含した。ポーランド、チェコ共和国、ハンガリー、スロバキア、スロベニア、エストニア、ラトビアとリトアニア、更に地中海の島国マルタとキプロスだ。新旧加盟諸国の元首も政府も、経済の好転、国民の繁栄と、民主的な安定への約束を、お互いに競い合った。五年後の今日、まさに逆のことが起きているのは明らかだ。

東欧のEU加盟諸国は今や、集団で経済崩壊に直面している。ハンガリー、ラトビアとルーマニアは、大規模な国際的支援によって、破産からかろうじて救われたが、東ヨーロッパ全体で、経済は不況に突入しつつある。ラトビアは、昨年の12パーセントという成長のあと、2009年は、経済が14パーセント下落すると予想されている。自動車製造に大きく依存しているチェコ共和国とスロバキアの産業も、経済活動の落ち込みを味わっている。

多くの東ヨーロッパ諸国の通貨は急落している。ポーランド、チェコ共和国とバルト海沿岸諸国の貨幣は、ユーロに対し、10から30パーセント、価値低減した。この低落の結果は、国家と個人の負債の急増であり、バルト海沿岸諸国の赤字予算はヨーロッパで最高だ。エストニアでは、国内債務と対外債務は、国家の国内総生産の二倍にものぼっている。

10のEU新加盟諸国の政府は、危機の重荷を国民に転嫁すべく、素早く動いた。つい最近の例はハンガリーだ。社会党による指揮の下、いわゆる専門家の政府が任命されたが、それは大企業幹部のみで構成されている。最近任命された諮問機関は、大幅な賃金引き下げ、公務員削減、同国のさなきだに貧弱な社会福祉ネットの更なる削減という計画を既に書き上げた。

元民間投資銀行のトップだった、政府の新首相バイナイ・ゴルドンは、公務員に対する、6000億フォリント(およそ20億ユーロ)の賃金引き下げ、社会保障の解体、国有鉄道の削減を発表した。

欧州連合に加盟するために、加盟を希望する国々は、ブリュッセルのEU官僚による命を受け、経済人の過激な公職追放を強いられた。元国有企業の民営化は、何百万もの仕事を失わせ、この地域中の政府が、EUが策定した財務基準に合致すべく、一連の予算削減を実施した。当初、国外からの高水準の投資から生じた、相対的に高い成長率が、国民各層で、より高い生活水準という希望をかき立てた。

最近の国際金融危機の悪影響が効果をあらわすにつれ、そうした幻想は消散し、東ヨーロッパ資本主義の寄生的な性格が、はっきりと表面化した。東ヨーロッパの低賃金労働者を土台に、膨大な利益を生み出した国際的企業は、産業が不振となった今や、余剰人員の大量解雇を行っている。東ヨーロッパで高い利幅も絞り取った西ヨーロッパの銀行は、その資金も引きあげている。

これらの国々の広範な国民は、失業と貧困という暮らしを運命づけられている。バルト海沿岸諸国では、失業は今年15パーセントを上回ると予想されている。ハンガリーでは、失業率予想は、6から8パーセントの幅だ。もしも自動車市場における危機が進展しつつければ、チェコ共和国だけでも、この部門で、300,000人の労働者が仕事を失う可能性があると推定されている。

これは、既に緊張した社会状況を更に悪化させるだけだろう。今や、大部分の個人家計は、もはや絶望的な赤字だ。2004年以来、エネルギー価格は平均30パーセント上昇した。プラハやブダペストのような都会では、高い家賃や生活費が、国民のわずかな給与のほとんど全てを消費してしまう。若者の家族は、若夫婦の家賃を払う余裕がないため、両親との同居を強いられることが多い。

東ヨーロッパ諸国の国民は、ブリュッセルから開発費として流れ込んだ膨大な金額の恩恵を受け損なった。EU資金の大半は、うさんくさい、半ば犯罪的な連中によって、かすめ取られたか、あるいは、国家が支援する主要建設プロジェクトを任された主要な起業家連中のポケットに直接流れ込んでしまった。

EU新加盟10ヶ国の国民は、経済的、社会的向上という希望を葬り去るだけでは済まなかった。デモクラシーについてのあらゆる約束も空手形に終わった。

東ヨーロッパにおける既存政党の一つとして、国民の利益を更に推進できるような政策を実行してこなかった。ほとんどの国で、政治舞台は、ネオリベの自由市場勢力か、正当化された社会的要素をまるごと、最も反動的なチャネルに流し込むことを狙っている後ろ向きの国粋主義者によって牛耳られている。

1989-1990年の自由市場再導入の後、元スターリン主義者の幹部たちは、早速自らの私腹を肥やし、自由市場状況を、できる限りのあらゆる手段で擁護した。この過程は極右勢力を鼓舞することとなった。ハンガリーでは、9年間の社会民主主義政府統治の後、人種差別主義者と、反ユダヤ主義攻撃が、当たり前になっている。保守派野党のハンガリー市民連合(FIDESZ)は、ファシスト勢力と緊密な接触を保っている。反政府デモは、超国家主義者に支配されていることが多い。スロバキアでは、数年前、社会党が、ネオ・ファシストの自由民主連盟と連立政権を組んだ。権力の座についた自由民主連盟は、その財源と政治影響力を大幅に増大させている。

ここ数ヶ月に行われた抗議デモは、これらの国々における潜在的な社会不安を現している。最近、ラトビア、リトアニアとハンガリー、更に、ルーマニアと、ブルガリアで、政府と、危機の結果に対する大規模な抗議デモや暴動があった。

現在、新たな加盟国内に、低賃金労働者の宝庫と、新たな販売市場を見いだした、ヨーロッパ金融エリートの利害関係のために、欧州連合が加盟国拡大を実行したことは明白だ。同時に、東ヨーロッパの窮状と貧困は、西側の生活水準と賃金を引き下げるのに利用されたのだ。

しかし、東欧市場の搾取は、ヨーロッパの銀行業界に、ブーメランのように返ってきた。東ヨーロッパにおける、西側銀行の総投資金額は、1兆5千億ユーロにものぼる。オーストリアの銀行だけでも、東ヨーロッパ諸国における貸付金額は、2240億ユーロにのぼる。これは、オーストリア国民生産の78パーセントにもあたる。こうした膨大な金額のごく一部の債務不履行は、一連の国家破産をひき起こす恐れがある。

同盟国拡張というプロジェクトそのものが、資本主義という条件の中で、ヨーロッパの調和的統一を実現することが不可能であることを、まざまざと実証した。ヨーロッパ大国間の軋轢は増しており、今やユーロ圏の崩壊すら、完全にあり得ると見なされている。

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2009/may2009/euex-m09.shtml

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「日本はハンガリーとは国交樹立140年、ルーマニアとブルガリアとは国交再開50年」だと、新聞記事にあった。

コメントで、国名の誤りをご指摘いただいた。「オーストラリアの銀行」は、「オーストリアの銀行」が当然正しい。

2009年5月10日 (日)

カーブルへ至るタリバンの道

Patrick Cockburn

2009年4月29日 "Counterpunch"

-- カーブル --

カーブルで二日前、イギリス首相ゴードン・ブラウンに対して主人役をつとめたハミド・カルザイは、タリバンがパキスタンに本拠地を維持している限り、南部アフガニスタンのタリバンに対して、長期的な成功はありえない、というアフガニスタン人がずっと昔から持っていた信念を、ブラウン首相が追認するのを聞いて、さぞや喜んだことだろう。

アフガニスタンの指導者達は、2006年以来のタリバン復活は、パキスタン軍事諜報機関ISIによる支援と、再編成、訓練と、武器や補給の受領に、パキスタン国内の本拠地を利用していることのせいだとしてきた。しかし、アメリカ、イギリス、あるいは彼らの同盟国が、1990年代から明らかだった、タリバンに対するパキスタンの支援について、本当に何か有効なことをする用意があるのかどうかを、アフガニスタン人は疑っている。

ブラウン首相訪問に先立つ、検問所と道路閉鎖によるカーブル封鎖は、この国を依然として苦しめている治安問題の実例だ。

アフガニスタン軍と警察は、タリバン武装集団が、式典の間にアフガニスタン大統領を射撃しようとした昨年とは対照的に、アフガニスタン独立記念日が平和裡に、終われるよう、精一杯努力している。

司法省と刑務所に対して、一回攻撃があったものの、自爆攻撃者は、今年これまでのところ、中央カーブルへの潜入にはずっと苦労している。

昨年、最も深刻な劣化をしたのは、カーブルから出る道路の治安だ。「一年前、私はカーブルの南60マイルのロガール州にある故郷の村に行くことができましたが、今はあえて行こうと思いません。なぜなら、タリバンが、私が政府と関係しているとして、殺すからです」匿名希望のあるアフガニスタン人ジャーナリストが語っている。

「オートバイに乗った6人から8人のタリバン集団が、移動検問所を設置して、政府職員や、NGOと、関係している人々を探します。彼らが該当する者を見つければ、射殺します。」

ブラウン首相の強硬な発言にもかかわらず、ほぼ全南部アフガニスタンにおいて、周辺の都市を、支配、あるいは戦闘するというタリバンの能力を、逆転することは困難だろう。イギリスは、アフガニスタンに、大半、ヘルマンド駐留兵として、8,300人を配備しており、8月の選挙用に更に700人を派兵する予定だ。既に駐留している40,000人を強化するために、オバマ大統領が派遣しようとしている、25,000人のアメリカ兵の一部である8,000人以上のアメリカ海兵隊員が来週以降やってきて、軍は更に強化される予定だ。

「我々には、自分たちの負担分を引き受ける自信がある」と、ブラウンは述べた。

カーブルから外部に出る道で唯一安全なのは、北行のサラン・トンネル経由で、最終的にタジキスタンとウズベキスタンに至るものだ。この経路は、パキスタンのペシャワル経由の補給が、輸送車両に対する再三の攻撃で脅かされている、アメリカとNATOの補給路として益々利用されるようになる可能性が高い。

首都周辺の他の全道路は、恒久的に、あるいは間欠的に、タリバン支配下にある。文部大臣の父親が、最近、故郷の州で、ある家族の葬式に参列にでかけた際に誘拐された。

ブラウン首相に同行した幹部は、警官と軍隊の訓練に重きをおくオバマ大統領の戦術とよく似た、新戦術を発表する予定だと語った。このうち、警官は、一ヶ月に給料わずか50ポンドで、腐敗と無能さで悪名が高い。正規軍は、アフガニスタン人の間での評判こそ、それよりずっと良いが、装備が貧弱で、兵士たちは装甲の薄い車両を運転することが多く、そうした車両は、爆弾攻撃には非常に脆い。

パトリック・コバーンは『イラク占領-戦争と抵抗』(緑風出版刊、2940円)の著者。彼の新刊'Muqtada! Muqtada al-Sadr, the Shia revival and the struggle for Iraq' 「ムクタダ! ムクタダ・アル-サドル、シーア派復活と、イラクのための闘争」は、スクリブナーから刊行されている。

記事原文のurl:informationclearinghouse.info/article22513.htm

2009年5月 9日 (土)

空飛ぶブタ、タミフル、そして工場方式飼育場

下記は、首題記事のごく一部のご紹介。首題記事は、上・下、二編の長いもの。

F. William Engdahl

Global Research

2009年4月29日

タミフルとラムズフェルド

2005年10月、ペンタゴンは、世界中の全てのアメリカ軍人に、鳥インフルエンザ、H5N1と呼ばれるものに対するワクチン接種を命じた。世界中のマスコミは恐ろしい話でもちきりになった。そこで、ドナルド・ラムズフェルド国防長官が、タミフルという商品名で販売されている薬品オセルタミビルを備蓄するために、10億ドル以上の予算を計上したと発表した。ブッシュ大統領は、タミフル備蓄用に更に20億ドルの支出を承認するよう議会に要求した。

当時ラムズフェルドが報告を怠っていた事実は、とてつもない利益相反だった。2001年1月にワシントンにやってくるまで、ラムズフェルドは、カリフォルニアの製薬会社、ギリアド・サイエンシズの会長だった。ギリアド・サイエンシズは、同社が開発した薬、タミフルの世界中の独占的特許権を保有しており、その世界中での販売権は、スイスの巨大薬品会社ロシュに売却された。伝える所によれば、ラムズフェルドは、ロシュが販売する全タミフルの10%を得るギリアド社の最大株主だった。これが洩れると、ペンタゴンは、ラムズフェルド国防長官は、売却するのは、何か隠したいことがあるということになるからと主張し、ギリアドの株を売らずに、もち続けることに決めた、という趣旨の素っ気ない声明を出した。ギリアドの株価が数週間で、700%以上も高騰したため、この苦渋の決断によって更に何百万ドルも儲けたと言われている。

タミフルは、気楽に食べられる口当たりの良いアメではない。これには強い副作用がある。これは人の呼吸に対して致命的な結果をひき起こしかねない物質を含んでおり、吐き気、目まいや、他のインフルエンザの様な症状をひき起こすことが多く報告されている。

豚インフルエンザ・パニック(豚インフルエンザではなく、豚インフルエンザ・パニックであることに留意)が勃発して以来、インフルエンザに関連するものとして販売されている他のあらゆる薬品同様、タミフルの売り上げは急増した。ウォール街の証券会社は、慌てて、同社を「買い」の推薦銘柄にした。「先生、注射してくださいよ。何の注射でもいいんです…死にたくないんで…」

パニックと死の恐怖は、鳥インフルエンザ詐欺を進めるため、ブッシュ政権に巧妙に利用された。現在の豚インフルエンザ恐怖の不気味な前兆である、鳥インフルエンザでは、製品を世界中に出荷していた、タイやアジアの他の国々の、工場化した巨大養鶏場が発生源として突き止められた。こうした大規模養鶏場の衛生状態を真面目に調査する代わりに、ブッシュ政権とWHOは、小規模家族農園で「自由に動き回る鶏」のせいにした。極めて衛生的な自然条件で鶏を育てている農民に対して、壊滅的な経済的帰結をもたらす動きだった。伝えられるところによれば、アーカンサスのタイソン・フーズと、タイのCGグループは、ほくそ笑みながら銀行に向かったという。

オバマ政権が、いわゆる豚インフルエンザをめぐる恐怖を、今回は、空を飛ぶ鳥の代わりに、「空飛ぶ豚」を使って同じシナリオを繰り返すために使うかどうかは、この先を見てみないと分からない。既にメキシコ当局は、いわゆる豚インフルエンザによる死者の数は、マスコミが言いふらした、150人あるいはそれ以上ではなく、7人であり、感染が疑わしい症例は、大半が普通の流感、つまりインフルエンザだったと報告している。

記事原文のurl:www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=13408

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アメリカでは、大統領交代後、テロ容疑者に対する拷問の責任者を追求する国民の動きが続いていた。もちろん、ラムズフェルドやブッシュが対象。

そこに豚インフルエンザ。このかぜのおかげで「拷問責任追求」の話題、完全に吹き飛んだ。

しかも二度目のたなぼた。一石二鳥、三鳥の、実に巧妙な危機対応策。

タレント裸事件で、海賊対処法案通過の話題を吹き飛ばしたのと同じ仕組み。

マスコミには載らないが、blogには、たとえば、下記のものがある。

アセンション:ラムズフェルドとタミフル

本国の記事には、以下の様なものがある。

Citizens For Legitimate Government: Flu Kills The Torture Memos

Newsvine: Flu Kills The Torture Memos -- Rumsfeld, Tamiflu, Bioterror, Genocide, etc.

同じGlobal Researchの別記事のごく一部を訳したものも、ご覧いただきたい。

ソマリア海賊を理由に、憲法を堂々と破壊して、軍隊を派兵する動きを、カバーする騒ぎとして、宗主国アメリカと、属国日本政府にとって、豚インフルエンザの流行ほど有り難いものはないだろう。

アプトン・シンクレアが100年前に描き出した、移民労働者に依存する、シカゴの巨大食肉工場の想像を絶する不潔さ、今に至っても変わっていないのだろう。是非、ご一読を。

アメリカ古典大衆小説コレクション  5  ジャングル
アプトン・シンクレア著
松柏社
亀井 俊介監修
巽 孝之監修
大井 浩二訳・解説
税込価格: ¥3,675
2009.6

関連記事翻訳:

豚インフルエンザの世界的流行に関する政治的うそと、マスコミの歪曲

工業規模の養豚場はウォール街と瓜二つ

2009年5月 8日 (金)

アメリカ合州国はパキスタンで一体何を仕組もうとしているのだろう?

Keith Jones

World Socialist Web Site

2009-05-04

パキスタン大統領アーシフ・アリ・ザルダリは、今週オバマ大統領とアフガニスタンのハミド・カルザイとの三国サミット会談でワシントンを訪問する際、アメリカ軍がパキスタン国内で戦争を遂行するのを認めるようさせるべく、新たな圧力をかけられるのは確実だ。

アフ・パク(アフガニスタン-パキスタン)戦域として、ワシントンが再定義した場所において、アメリカの絶対的命令に完全に従うよう、イスラマバードを脅すため、アメリカの政治、軍事支配層と、アメリカのマスコミは、ここ何週間か、益々けたたましいキャンペーンをしかけている。

アメリカの指示で、パキスタン軍は、過去10日間、パキスタン北西辺境州(NWFP)のタリバン民兵に対し、戦闘機による機銃掃射と重火器を含む残酷な攻勢をしかけている。攻勢は、多数の民間人死傷者を生み出し、何万人もの貧しい村人たちに逃亡を強いた。

アメリカのアフガニスタン占領を強化するため、NWFPと、同国でも伝統的に自立してきた連邦直轄部族地域 (FATA)を制圧するという、パキスタン国家の行為により、60万人から、100万人のパキスタン人が難民と化している。

アメリカの支配エリートは、最近の一連の殺戮を歓迎しているが、満足というにはほど遠い。ザルダリ・ワシントン訪問の準備中も、暗黙であれ、明示的であれ、パキスタン国民と政府に対する、立て続けの威嚇が、衰えることなく続いている。

4月29日の記者会見で、オバマは、パキスタン文民政府は「非常に脆弱で」、国民に対し「基本的なサービスを提供する」あるいは国民の「支持と忠誠」をかち取る能力に欠けている、と表現した。だが彼は、パキスタン軍と“強い"米-パキスタン軍事協議と協力"を称賛した。

イスラマバードにおける軍事独裁の継続を維持する上でのワシントンの極めて重要な役割からして、オバマの発言は、パキスタン国内と、アメリカの政治支配層内部の両方で、ワシントンが、軍事クーデターの支援を検討していることを示唆するものだと広く受け止められた。

これは、アメリカ中央軍司令官デービッド・ペトレイアス大将が、もしも、ザルダリ政府が、今後二週間のうちに、国内北西部のタリバン武装反抗勢力を壊滅させることができることを実証しなければ、アメリカは「次のコースの行動」を決める必要がある、と発言したとして引用する報道によって、更に強調された。ペトレイアスは、パキスタン軍はパキスタン文民政府よりも「優れている」とまで言明した。

パキスタンでの抗議が余りに激しかったので、国務省スポークスマン、ロバート・ウッドは金曜日に、イスラマバードが二週間という「時間枠」に直面していることを否定するよう強いられた。にもかかわらず、パキスタンが「二日間、二週間、二ヶ月間」ではなく、予見しうる将来、対タリバン戦争で「110パーセントの努力」をするよう、ワシントンは期待していると、彼はあからさまに、強く主張した。

オバマのアフガニスタン・パキスタン特使リチャード・ホルブルックは、アメリカが以前支持した独裁者ペルベス・ムシャラフ将軍が、パキスタン大統領職をあきらめるよう強いられてから、9ヶ月もたたないうちに、ワシントンが軍が主導する政府を支援することを検討している、という、パキスタンのマスコミが書き立てている解釈を。「これは、マスコミのごみ... マスコミのたわごとだ」とホルブルックは非難した。

中央アジアにおけるアメリカの戦争を徐々に拡大するため、オバマ政権が、パキスタンで、何か新たな犯罪を準備しているという証拠は圧倒的だ。

先週ウォール・ストリート・ジャーナルと、ニューヨーク・タイムズに引用された政権高官によると、ザルダリに対する圧力を強化するという明らかな狙いから、オバマ政権は、彼の最大のライバル、元首相でパキスタン・ムスリム連盟総裁ナワズ・シャリフに言い寄っている。

オバマは先週の記者会見で、アメリカはパキスタンの主権を尊重したいのだと主張した。「しかし」彼は付け加えた。「パキスタンの安定を確保することに、我々は重大な戦略的関心と、重大な国家安全保障上の関心を持っていることをも、認識している」。

言い換えれば、アメリカは、パキスタンの主権を、気の向くままに侵害するつもりなのだ。昨年8月以来、アメリカはパキスタン国内で、何十回ものミサイル攻撃と、特殊部隊の地上攻撃を一回しかけた。

先週ロバート・ゲーツ国防長官は、オバマ政権が、ペンタゴンに対し、パキスタンに対する軍事援助についても、イラクとアフガニスタンの傀儡政権に対する軍事援助について持っているのと同様権限を与えるよう、アメリカ議会に要請していると公表した。この"特別"処置の下で、パキスタンに対する軍事援助は、もはや国務省を経由したり、対外援助法の制限を受けたりすることなく、ペンタゴンによって完全に支配されるようになる。

更に「パキスタンの不和、核兵器に対するアメリカの疑念をひき起こす。」 という見出しの昨日のニューヨーク・タイムズの極めて重要な記事の登場だ。同紙のホワイト・ハウス通信員デイビッド・サンガーによって書かれたこの記事は、世論を操作し、パキスタンにおけるアメリカの政治的、軍事的介入の大規模エスカレーションを正当化する狙いで企てられた、CIAあるいはペンタゴンが仕組んだ狂言のあらゆる特徴を帯びている。

記事は完全に匿名"アメリカ高官"の発言に基づいている。パキスタン軍による核兵器備蓄管理に対する信頼を確認する先週のオバマ発言にもかかわらず、タリバン、または、アルカイダの工作員がパキスタンの核兵器を強奪したり、核施設に潜入したりするという現実の、増大しつつある脅威が存在する、と記事は主張しているのだ。

アメリカの支援を得て、核兵器備蓄を巡って施した、パキスタン軍の入念な管理を、イスラム教テロリストが、どのようにして出し抜くのかを説明するために、記事はスリラーもどきのシナリオを唱えている。イスラム教テロリストは、まず、インドとパキスタン間の対立をひき起こし、パキスタンがそれを、東の隣国との国境近くに移動しようとした際に、核兵器を奪うのだという。

アメリカ世論をイラク侵略に結集させることを図るにあたり、タイムズが大きな役割を果たしたことを思い起こさねばならない。このキャンペーンの中心は、イラク政府はアルカイダと同盟していて、サダム・フセインが開発しているとされた核兵器を、アルカイダが入手できるようにするのだというウソだった。

タイムズの記事が、組織的なキャンペーンの一部だということは、あのタイムズ記事が掲載されたのと同日、月曜日の、オバマの国家安全保障顧問ジェームズ・ジョーンズ大将による、BBCとのインタビューによっても明らかだ。

ジョーンズは、アメリカ最大の懸念は、パキスタンの核兵器備蓄の安全だと指摘し、パキスタン政府に対し見え透いた威嚇として、こう述べた。「もしも、パキスタンが、現在の路線を続けなければ、そして、我々がパキスタンで成功できなければ、そうなれば、明らかに、核問題が視野に入るだろう。」

彼は更に、パキスタンの核兵器がタリバンの手に落ちることは「実に、実に悪いシナリオ」だと主張を言い続け、彼の言葉を入念に選択しながらも、辛辣にこうつけ加えた。「そういうことが決して起きないようにすべく、両国の二国間関係と、多国間関係の枠組みの中で、我々はできることを全てしてゆくつもりだ。」

オバマ政権とペンタゴンは、石油が豊富な中央アジアにおける地政学的優位を求めるアメリカの攻勢における、パキスタンとその役割に関ついて、明らかに、自分たちのオプションをはかりにかけているのだ。一つ確実なことがある。彼らが仕組んでいることは、より激しい武力衝突と、この地域の人々の苦難を招き、更にパキスタン国民の民主的な意志と熱望を覆すだろう。

記事原文のurl:wsws.org/articles/2009/may2009/pers-m05.shtml

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パスワード不要のATM属国日本は、2009.3.28 01:28の下記MNS産経ニュース記事によると、

アフガニスタン警察官の給料半年分とし、既に約141億円の予算措置を既に講じている。これはアフガン側に無償供与される。

米アフガン担当特別代表、日本の警官給与負担を評価

またパキスタンに対しては、2009年4月14日のasahi.com記事では

日本のパキスタン支援、1千億円 支援国会議で表明へ

10億ドルのうち7~8割を円借款で、残りを無償資金協力と技術協力で供与する。

こうして、世界最大のテロ国家・宗主国に、莫大なカネを差し出したあと、いよいよ軍隊の戦闘参加が、ソマリアで始まる。つまりは、憲法決壊だ。

森田実の言わねばならぬ【400】【斉藤つよし・森田実の総選挙予想〈その6〉】に、非常に気になる文章がある。いずれも森田実氏の発言だ。引用させていただく。

「ソマリア沖海上自衛隊効果」が出る可能性も高い。とくにソマリア沖で武力行使が行われるようになれば、総選挙への影響は大きいと思う。

私は「小沢ショック」のために、自民党と民主党の第一党争いは自民党やや優勢とみているが、「小沢効果」「ソマリア沖戦闘効果」「北朝鮮核ミサイル闘争効果」で流れがさらに促進される可能性があると思います。

「ソマリア沖海上自衛隊の派遣には、総選挙対策の匂いがある」と言っていた人がいたが、そうだとすると、政府側には知恵のある人物がいるということになる。これから何が起こるかわからない。

憲法を実質的に破壊して、属国から、宗主国への軍隊提供をし、しかも、小泉郵政テロ選挙をも上回る、巧妙なテクニック「ソマリア沖戦闘効果」が使えるわけだ。

たしかに「政府側には知恵のある人物がいる」のだろう。

しかし、そもそも民主党の長島議員が、「ソマリア沖派兵」を言い出したことを考えれば、自民党と民主党は、究極の「八百長政治」ということだ。

仮に民主党が、より多数の議席をとって政権につこうと、議席がとれずに政権につくまいと、宗主国への軍隊提供の実績と、事実上の憲法破壊さえ実現すれば、二大政党論で国民の目を逸らしてきた「宗主国」と「傀儡支配層」の目的は達せられる。

「政府側自民党にも野党のふりをしている民主党にも知恵のある人物がいる」。というのが正解か。

これから永遠に何人も死者をだすことになる憲法決壊を前にして、本来、豚インフルエンザなどで騒いでいる時期ではないだろう。騒いでいるのは、重要な事実を報道するためでなく、重要な事実を隠すためだ。

わが宗主国が、アフガニスタンやイラク侵略をしたがっているところに、実に好都合に911が起きた。

日本を完全属国にしたがっているところに、実に好都合に豚インフルエンザが起きたのであっても、決して驚かない。

アメリカ合州国は、ソマリアで一体何を仕組もうとしているのだろう?

 

2009年5月 6日 (水)

豚インフルエンザの世界的流行に関する政治的うそと、マスコミの歪曲

Michel Chossudovsky

Global Research

2009年5月1日

下記は、首題記事の、ごく一部の翻訳であることにご留意頂きたい。元記事の冒頭、WTOの声明について書かれている。それに続けて、この文章だ。

以下、引用。

社会的な反対運動の弱体化

病気の"流行は避けられない"という、この種の声明は、極めて意図的に、恐怖、不安感とパニックの雰囲気を生み出す。また、こうした声明は、中東における戦争や、アメリカ-NATOによる戦争犯罪等の広範な問題は言うに及ばず、大量の貧困や失業を世界中でひき起こしている、壊滅的な世界経済の危機から、人々の注意を逸らす役割をも果たしている。

貧困、経済崩壊、部族間の紛争、死と破壊、公民権の制限や、国家社会保障制度の廃止こそが、世界的危機の本当の特徴だ。豚インフルエンザの世界的流行というEUの声明は、必然的に、ヨーロッパ中に広がっていた社会的な抗議運動を弱める働きをすることになる。

メキシコでは、都市部をすっかり"閉鎖"した、豚インフルエンザ緊急対策は、メキシコの歴史上最も腐敗した政権の一つに対して、高まりつつある社会的反対に歯止めをかけるための、フェリペ・カルデロン政府の口実だとして広く受け止められている。

メキシコでは、カルデロン政府に向けられていたメーデーの行進が、取り消された。

巨大医薬品企業にとっての棚ぼた

WHOによって、巨大製薬会社は危機の解決策として認められた。

「私[WHO事務局長]は、製造能力と、生産を増強するあらゆるオプション策を評価するため、抗ウイルス薬を製造している企業と接触した。パンデミック(世界的流行)・ワクチンの製造に貢献できるインフルエンザ・ワクチン・メーカーとも接触した。」

ほんの一握りのバイオテク・コングロマリットにとって、豚インフルエンザの世界的流行は、事業上の棚ぼただ。欧州連合は既に、豚インフルエンザに対するワクチンを開発すべく、巨大製薬会社と協力することに青信号を出した。

記事原文url:www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=13433

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海賊対処法案なるものの通過に、世間の注目が集まるのを、タレント裸事件で、見事にかわしたのと同じことが、世界規模で、宗主国によって、行われているということだろう。

これで、海賊対処法案の参議院での論議も、すっかりかき消される。パスワード不要のATM振り込め詐欺属国は、こうして、軍隊の傭兵化・全面的参戦を開始するのだろう。マスコミは、既に、完全に、戦争突入のための本格的大本営広報部と化している。宗主国同様、すでに戦時なのだ。何度も書くが、属国は悲しい。

海賊対処法案なるものの通過に、世間の注目が集まるのを、タレント裸事件で、巧妙にかわしたことを批判する文章に、たとえば下記がある。

「草彅剛全裸事件」が伝えたものは何だったのか
―海賊対処法案は何ごともなく衆院を通過した―

日本ジャーナリスト会議会員  桂 敬一

また、『マガジン9条』の下記記事も、海賊対処法のひどさ具合の理解に必須。

憲法9条があっても 「戦争ができる国」 へ!?
検証!「戦争国家」への立法状況
田中隆(弁護士/自由法曹団)

最後の部分を引用させていただく。最後の文章の太字は、原文にはない。

そして現在、国会にて審議中の海賊対処法は、この派兵を法的に追認し、しかも恒久化する法制です。海賊対処法は、護衛の対象を外国船籍の保護にまで拡大するもの。また、停船命令を無視した海賊船への射撃が可能になります。つまり武器使用の基準がこれまでよりずっと緩和されるのです。また期限をもうけている特措法でもありません。そして今回の政府の憲法解釈は、「海賊は国や国に準じる組織ではない、なので憲法が禁じている武力行使ではない」としていますが、その解釈だとテロ組織との武力行使も可能ということになり得るのです。

 ソマリア沖派遣と、海賊対処法は、警察活動を口実にして「9条」を大きく迂回しつつ、自衛隊を戦闘に突入させようとしている策動です。

そして、

NPJ通信
憲法記念日 特別企画
緊急寄稿
 ソマリア海賊対策の欺瞞性を突く
─―新法は恒久法・憲法改正への一歩

 鹿児島大学教員 木村 朗

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豚インフルエンザにまつわる、もう一つのGlobal Research記事抜粋は下記。

空飛ぶブタ、タミフル、そして工場方式飼育場

考えてみれば、5月から、裁判員制度なる国民総動員というか、徴兵制の予行演習というか、とんでもない制度が強引に導入される。おかみから宣伝広告料をしこたまもらっている為か、新聞もテレビも、全く本格的な疑問を提示しない。このインフルエンザ騒動、政府は、ソマリア海賊を口実にした憲法破壊だけでなく、裁判員制度の円滑な導入にも、利用している可能性がありそうだ。国民にとって、本質的に不都合なこと全ての問題を隠すための、英語で言うred herring、便利な攪乱用マキ餌だろう。

攪乱作戦に関する関連記事翻訳:

大衆を国家に頼らせるべく、無辜の民間人、女性、子供を攻撃せよ<グラディオ作戦>07/12

簡単な10のステップで実現できるファシスト・アメリカ(日本?) 07/08

2009年5月 3日 (日)

なぜフランスは、 ソマリア沖で実力行使に及んだのか?

wsws.org

Olivier Laurent

2009年5月1日

4月10日、ソマリア沿岸、ヨット、タニ号上に拘束されたフランス人の人質5人を奪還するための武力行使は、フランス人の人質とソマリ人海賊の生命、並びに、フランスやソマリア世論、に対するニコラ・サルコジ政府の軽視を証明している。

アメリカの船舶マースク・アラバマの乗っ取りと、ソマリ人海賊が、船長リチャード・フィリップスを人質にしたことへの対応として、武力を行使したオバマ政権のそれと、自分たちの政策を、同水準にすべく、フランス政府はこの事件を利用した。4月7日、アメリカ海軍の狙撃手が、フィリップスを拘束していた海賊三人を射殺した。

ソマリ人海賊は、長さ12.5メートルのヨット、タニ号を、4月4日、アデン湾で乗っ取った。ヨットは、フランスの特殊部隊による強襲で、六日後に奪回されたが、これによる交戦で、二人のソマリ人海賊と、タニ号船長フローラン・ルマコンが死亡した。

フランス作戦で捕まった23歳から27歳までの三人の海賊は逮捕され、拘置された。彼らは、2008年、ソマリア沿岸で別の二隻のヨット、ポナンとキャレ・ダスドを誘拐したかどで、現在フランスの刑務所に拘留されている他の海賊12人に合流する。連中は“船のハイジャック”と“恣意的な誘拐と、暴力団での監禁”で、起訴されている

4月17日、レンヌの検事、エルベ・パヴィは、ルマコンの解剖では、彼を殺害した銃弾を発射した銃を決定することが不可能であることが分かったと発表した。しかしながら、パヴィは、答えは“絶対に必要なヨットの実況見分”と、“海賊が使い、収容された武器”の検査後に、得られようと述べた。

エルヴェ・モラン国防大臣はヨット奪還後に、ルマコンの死亡が、フランス軍の発砲によるものである可能性も“除外はできない”と述べた。フランス軍が遂行した作戦は“最も実現可能な解決策”だったと彼は強調した。モランは、パリは、海賊に身の代金の支払いを申し出ていたとも補足したが、金額は明らかにしなかった。

こうした事実は、タニ号船上の三人の死に対する、フランスの責任を明らかに示している。ルマコンを殺害した銃弾を発射した銃が何であれ、急襲するという決定と、それによって彼の命を危険にさらした責任は、全てフランス当局にある。海賊が人質を殺害しようとしていた兆しは皆無だ。実際、人質殺害は、人質無しでは逃亡できる可能性がなくなるため、海賊たちの利害関係に全く反するのだ。

ソマリ人の命に対するフランス当局の明らかな軽視は、フランスが、かつても、今も、植民地大国として振る舞っているアフリカの角で暮らす一般大衆の中で、フランス帝国主義に対する憎しみを倍加するだけだ。

ソマリア北西部と国境を接するジブチは、フランス最後のアフリカ植民地で、スエズとインドシナのフランス植民地との間の海上交通路を監視できることから、長年にわたり極めて重要だった。ジブチは1977年になってようやく独立したが、フランスは、いまだにフランス最大の在外軍事基地の一つをそこに構え、2,900人の兵士と空軍基地がある。2002年以来、フランスは、ジブチに1,800人の軍事要員と、更にアラビア語放送ラジオ局を擁しているアメリカとライバルだ。2008年6月、フランスは、飛行機と海軍艦隊を追加し、分遣隊を強化した。

これまでのところ、ここ数年間活発化しているソマリ人海賊は、まだ誰も殺害していないが、フランス、アメリカ、およびオランダの部隊によって最近実行された“強引な”作戦の後では、それも変わる可能性が非常に高い。フランスの急襲は、今後、アフリカの角沖でつかまる人質たちの命を危険にさらすだけだろう。

海運保険業者の業界誌、ロイズ・リストに掲載されたあるインタビューが、このような血なまぐさい作戦に対する、海運業界の悲観論と反対を要約している。ロイド・レジスター・フェァプレー情報サービスの、アデン湾地域専門家ジム・マーフィーは、提案されている、立ち入り禁止区域、軍の護衛艦隊、警備員または武装船員といった対策は、ソマリアにおける紛争に対する政治的解決がない中で、失敗する運命にあると主張している。

これまでに前例のない戦艦配備にもかかわらず、海賊事件や同様な行為は、国際海事局によると、2007年から2008年の間で、ほぼ200パーセント増えた。

大半のマスコミは、そこから海賊が作戦を展開しているとされるソマリアの港、ハラデレやエイルを“海賊のねぐら”として描き外国の軍事介入可能性の道を開いた。実際、こうした港の、全て合わせた人口は32,000人で、海賊行為に関わっている連中はそのうちごく一部にすぎない。軍事力で問題を解決しようという試みは、さらなる大虐殺を招きかねない。

ソマリア沿岸の住民にとって、大国の政策は、ひどい影響を与えてきた。外国企業は何トンもの有毒廃棄物をそこに投棄し、ヨーロッパとアジア諸国は、自国の領海では漁獲割り当てを削減し、環境擁護者のようなふりをしながら、ここの漁業資源を食い物にしてきた。

一般的に言って、ソマリアの社会的荒廃は、大国のうつろい行く地政学と、この地域のスターリン主義者の身勝手さに由来する。民族的にはソマリア地域ではあるが、エチオピアの一部となっているオガデンで、ソマリアが戦争を行って(1977-78)以来、飢餓が猛威を振るった。この紛争の間、ソ連は最初ソマリアを支援したが、やがて鞍替えし、エチオピアを支持した。これはソマリアの敗北をもたらし、1980年に、モハメド・シアド・バーレのソマリア軍事政府は、NATOと国際通貨基金による経済的介入の方向に動いた。

1980年代の、この地域における一連の飢饉や、オガデンのソマリ人をバーレが見捨てたことや、IMFが課した緊縮経済政策を彼が採用したことで、彼の政権への国内的支持は弱体化した。バーレはその後、様々な民族主義者や民族集団に率いられた、彼の政府に対する内戦に直面した。ゴルバチョフがアフリカの同盟諸国に対するソ連の財政援助を停止すると、アメリカもバーレに対する財政援助を止め、彼の政権は崩壊した。

1992-93年、当時飢饉で苦しんでいたソマリアへの食糧援助の供給活動を守るためとされる試みで、フランス外国人部隊は、アメリカのソマリア侵略に協力した。この作戦は、ソマリア国民のレジスタンスに直面した外国軍隊の撤退で終わったが、とりわけモガディシュで撃墜されたアメリカのヘリコプターを巡る戦闘が有名だ。

現在のフランス外務大臣ベルナール・クシュネルは、その当時“人道的介入の権利”を支持するキャンペーンで有名になり、米袋を降ろすクシュネルの写真が世界中に流された。ソマリア全体の“二ヶ月分”の食糧補給を組織したと彼は主張していた。実際に持ち込まれたものは、後に明らかになったが、結局モガディシュ住民の三日分の消費量だった。

1992年に主張されたこの人道的介入の権利は、19世紀末や二十世紀初頭に、ヨーロッパ諸大国が自分たちの意志を押しつけ、オットーマン帝国の残滓を切り分けるために持ち出した様々な正当化を呼び覚まし、単に、再開されたこの地域における帝国主義者の作戦を正当化するのに役立ったに過ぎない。

ソマリア国民は、長期間、不安定と貧困状態の中で暮らしており、果てしのない帝国主義者の策謀、地方、あるいは部族民兵間紛争の犠牲者なのだ。過去十年間にわたり、イスラム教徒の勢力の力が強くなり、2006年、アメリカが奨励し、アメリカと同盟諸国の海軍が支援するエチオピアによる侵略をひき起こした。国際的なマスコミは、予想通り、この攻撃を “平和維持”作戦として描き出した。

昨年のソマリアからのエチオピア軍撤退も、ソマリア国民にようやく平和をもたらすというのとはほど遠く、この国で、帝国主義者の影響力がどのように発揮されるのかという、疑問を再開したに過ぎない。

強烈な経済的、戦略的利害関係が働いているのだ。アデン湾は、国際貿易、大半のヨーロッパとペルシャ湾の間の石油貿易と、アジアとヨーロッパの間で貿易される商品の海運航路として、決定的に重要なのだ。ニコラ・サルコジ大統領のもとで2008年に刊行された防衛白書は、この地域はフランスにとって、特別な戦略的関心がある場所だとしている。

あらゆる大国が、こうして、ソマリア沖での人質の話題を、軍事・政治力を誇示する好機としてとらえている。各大国は、帝国主義諸国間の競合における名声を高めようとするあまり、ソマリ人であれヨーロッパ人であれ、民間人の運命に対する無関心さえ、はっきりと示している。

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2009/may2009/soma-m01.shtml

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本日は憲法記念日。

昨日、大本営広報部代表?朝日新聞に唐突に掲載された
『憲法9条は日本人にはもったいない』
「最大の違憲」ソマリア沖への自衛隊派遣に、なぜ猛反対しない 
という、伊勢崎賢治教授のインタビュー記事を、再読している。彼の主張こそ正しいだろう。

ブログ「薔薇、または陽だまりの猫」に、その文章が、掲載されている。

大脇道場!の下記記事でも触れておられる。

NO.1128 「憲法9条は日本人にはもったいない」・・・伊勢崎賢治さん①

NO.1129 「憲法9条は日本人にはもったいない」・・・伊勢崎賢治さん②

豚インフルエンザは、(本当は、あるいは陰謀なのかも知れないが)、おそらく本人?本菌?は何も意識していないウイルス次第の天災なので、人ができることは限られるだろう。いくら猛反対したとて、流行るものは流行るだろう。

憲法破壊、戦争は、ウイルスより遥かに悪質な人間たちが、本人がそうと知りながら、意図的に起こす人災だ。猛反対すれば止められる、はずだろう。

4月23日に、この憲法を踏みにじる、海賊対策法案が、衆議院を通過した。そもそも、この施策の必要性を言い出したのは、在日ネオコン工作員ではないかとさえ思えてしまう、(ブレジンスキーの弟子である)、民主党長島議員。ご丁寧に、武力行使可能の答弁を、4月23日に引きだした。森田実氏の『時代を斬る』2009.4.29(その1)を再度引用させていただく。

《ここでお尋ねをしたいんですけれども、
結果として海賊行為を行っていたと判断されなかった船舶に対してそれまでの時点で行われていた警告射撃等の武器使用、これはさかのぼって違法になることは
ないのかどうか。一連のプロセスとして海賊行為に対処するために使う武器の使用、これは憲法九条に反するものではないということを、国民にわかりやずく簡
潔に、内閣法制局長官、説明をしてください。お願いします。》

長島議員は、内閣法制局長官の「違法性が生ずることはない」との答弁を得て「それでは確認させていただきます」と発言した。

つくづく、とんでもない御仁、とんでもないエセ野党。自民党と民主党、本当はなにからなにまで繋がっている、結合性双生児、いわゆる、シャム双生児だろう。政治がまともになって欲しいとは思うが、それと世上言われる「政権交代」とは、等号で結べるものではあるまい。小泉元首相の「郵政改革」911選挙で、とんでもない世の中になったのを、騙されたと思った方々が多数おられないのだろうか。「政権交代」、よくよくみると「郵政改革」ATM国家振り込め詐欺事件の焼き直しとしか思えないのだが。

そこに、なんとも好都合に、人気タレント裸事件が勃発。海賊対策法案なる、憲法破壊法案通過という、大変な事態は全く報道されず、どうでも良い事件が、日本の大本営広報部の目玉ニュースになった。裸事件では、いくらなんでも、長続きするはずもない。すると、またもや好都合に、豚インフルエンザが起きた。これでしばらく、いや、永久に?海賊対策法案は話題にせずに済む。アメリカ政府と日本政府という軍事・経済シャム双生児国家、なんとも運の良い国だ。昔、タミフルが爆発的に売れ、薬品会社の元社長だったラムズフェルドは、その株でとんでもない大儲けをした。今度は誰が儲けるのだろう。

素人の杞憂はさておき、下記は憲法記念日とソマリアにまつわる貴重なお話だ。

NPJ通信の憲法記念日 緊急寄稿

ソマリア海賊対策の欺瞞性を突く─新法は恒久法・憲法改正への一歩
鹿児島大・木村朗教授

アソコを隠さず問題になった裸事件で、あの海賊対策法案を隠そうとする策動を、桂敬一氏が、マスコミ9条の会ホーム・ページで、鋭く指摘しておられる。

「草彅剛全裸事件」が伝えたものは何だったのか―海賊対処法案は何ごともなく衆院を通過した―
日本ジャーナリスト会議会員 桂 敬一

この話題、与党と、野党の振りをする与党(民主党)、その大本営広報部であるマスコミは、当然隠すばかり。 海賊対策法案のひどさを隠すのではなく、隠さずに、問題にしようとしているのは、blogばかり。日本の現在の「二大政党」、昔の「大政翼賛会」の言い換えにすぎない。森田実氏の「言わねばならぬ」最新記事(09/5/4)も、そのような御意見と読める。末尾を引用させていただこう。 

政治路線が根本的に同じ状況下の二大政党制は何を意味するか。国民の選択権がないということになる。これでは二大政党制は無意味になる。考え直すべき時がきているのではないか。

オバマと海賊:国家暴力の賛美

ソマリア沖で作戦活動中のドイツ海軍 

2009年5月 2日 (土)

工業規模の養豚場はウォール街と瓜二つ

Washington's Blog

2009年4月28日

豚インフルエンザについての一つの理論に、急速に勢いを増しつつあるインフルエンザはメキシコ、ベラクルスにある、巨大なグランハス・キャロル養豚場の豚の糞便池周辺に群がるハエによって広められたのだというのがある。グランハス・キャロルは、部分的に、世界最大の養豚企業、スミスフィールドによって所有されており、この施設で、年間950,000頭の豚を飼育している

こうした工業規模の養豚場では、豚はびっしりと押し込められていて、向きをかえるのもやっとなほどだ。あまりに多くの豚が飼われているので、何トンもの糞尿がでるが、覆いのない巨大な池にただ捨てられるだけだ。

これは、養豚場のウォール街だ。ウォール街でも、巨大食肉用飼育場でも、豚は、公共のかいばおけで、えさを食べる。

養豚場では、ウォール街同様、

    • わずかな数の巨大企業が市場を支配した
    • 監督機関は、企業が暴れ狂うにまかせた
    • おおごとになれば、政府が後始末をしてくれるだろうことを知っているので、企業には「節度がない」(英語では、hog wild ="豚のように興奮する")
    • 利益は私企業のものにされたが、損失は社会が負担した。養豚場の場合、巨大養豚場からの利益は、企業が着服する一方、豚インフルエンザ対策経費は、納税者たちが負担する。養豚場は、膨大な量の豚の糞尿を、地域社会に投棄し、これは地域社会の人々を病気にしたばかりでなく、世界的な健康問題をひき起こした。同様に、ウォール街の巨大企業が、今や世界中の国々や、納税者たちが、後片付けを強いられている、何兆ドルもの"不良資産"を次々と送り出した。

あるブロガーはこう書いている。

    アグリビジネスは責任を問われるべきだ。連中は銀行家と同じ規則に従っている。もうけは自分のもの、損は公に(狂牛病や、今の豚インフルエンザという形で)おしつける。数百万人が死ぬことを計算にいれれば、地域の小規模農園で生産される食べ物は、結局、高いものではないのかも知れない。

記事原文のurl:georgewashington2.blogspot.com/2009/04/hog-wild.html

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関連記事として、Global Research記事抜粋がある。

豚インフルエンザの世界的流行に関する政治的うそと、マスコミの歪曲

空飛ぶブタ、タミフル、そして工場方式飼育場

2009年5月 1日 (金)

豚インフルエンザ、メキシコの社会的危機を深める

wsws.org

Bill Van Auken

2009年4月30日

豚インフルエンザの流行に対する恐れが、世界中で広まる中、ウィルスが最初に発見されたメキシコでは、政府が、火曜日に、インフルエンザ死亡者数は159人で、患者の総数は2,498人に達すると発表した。このうち、1,311人が入院している。

水曜日、メキシコのホセ・アンゲル・コルドバ保健相は、豚インフルエンザの新ウィルスが原因だと確認された症例での、死者数は7人だと発表した。豚インフルエンザと確認された症例のうち、患者が生存しているのは49人とされている。

豚インフルエンザによると確認された死亡者数は、最初に発表された数値より、減ったとは言え、全体的な死亡者数が増え続け、この伝染病と戦うためにとられている対策が、経済的苦難と麻痺状態を深刻化する以上、メキシコ国民にとっては、なんの慰めにもなりはしない。

インフルエンザの流行は、人口2200万、西半球最大の首都圏であるメキシコ・シティに集中している。

メキシコ政府は、メキシコの全32州で、学校を閉鎖し、保育園から大学にいたるまで、3400万人の学生・生徒が、少なくとも5月6日まで、教室に立ち入らないようにした。

メキシコ・シティの町を行く人々の間で広く利用されている外科手術用マスクが、業者で品切れになっていると言われている。

健康に対するこの危機は、メキシコ経済に膨大な損害をもたらしている。アメリカ合州国との密接なつながりのおかげで、メキシコは、既に、世界的な金融危機によって、中南米でも一番悪影響を受けている国だった。国境付近のマキラドーラ組立工場は、アメリカにおける需要の急落に対応して、大量レイオフを行った。同時に、二つの主要国民所得の源、石油と、およそ1300万人のアメリカ出稼ぎメキシコ人による送金も、急減した。

第三に、観光も、病気が蔓延する前から、大幅に落ち込んでいたが、アメリカ、欧州連合や他の国々が、メキシコ旅行を控えるよう勧告していることによって、更に大きく落ち込んでいる。ヨーロッパでは、フランス政府は、EUにメキシコ行きの便を禁止するよう呼びかけている。団体旅行だけでも、既に2,500件がキャンセルされた。メキシコ・シティでは、90パーセントのホテル客室が空いている。

人が集まる全ての場所、レストラン、バー、ナイトクラブ、映画館、ジムやアスレチック・クラブを、事実上、閉鎖するという首都当局の決断によって、メキシコ・シティの経済活動のうち、四分の一が完全に停止した。メキシコ・シティは、全国の経済活動で、三分の一を占めている。

メキシコ・シティ当局は、豚インフルエンザの流行によって、産業は一日8500万ドルの収入損失を被っていると推計している。

最もきつい打撃を受けたのは、レストランとバーで働く450,000人で、彼らの70パーセントがレイオフされ、収入皆無の状態だ。

当初予測では、健康に対する緊急事態が、メキシコの経済成長さらに1パーセント引き下げるというものだった。先週、国際通貨基金は、メキシコは、世界的経済危機の悪化の結果として、経済が3.7パーセント縮小するだろうと予測した。バンコ・メヒコは、水曜日、現在の健康に対する緊急事態のインパクトを含めずに、今年4.8パーセントも縮小する可能性があると発表した。

シティバンクのメキシコ子会社、バナメックスは、非常事態宣言がされた最初の週に、メキシコの個人消費が、330万ドル減少したと見積もっている。

政府は、全経済活動の停止を命じてはおらず、妊婦や看護婦の保護を含む、インフルエンザの蔓延からメキシコの労働者を保護するための限定的な手段を命じたが、いくつかの多国籍企業には、明らかに無視されている。労働省のメキシコ・シティ事務所は、水曜日、アメリカに本社がある衣料会社に対し、首都郊外Edomexにある工場の状態を巡り、訴訟を起こしたと発表した。

同省は、金曜日に予定されており、推計で120,000人の労働者が参加するはずだった13件のメーデー行進の中止も、発表した。

H1N1ウィルスとされている、豚インフルエンザ新ウィルスの発生源と、メキシコ政府がそれに対応したやり方にまつわる疑問が深まっている。

メキシコの保健当局は、この新豚インフルエンザの最初の患者は、湾岸東部の州ヴェラクルスの村ラグロリアに住む、5歳の男の子エドガル・ヘルナンデスだと特定した。

ラグロリアは、ペロテ町の一部だが、先月、そこで、インフルエンザと、呼吸器系の伝染病が発生し、町民3,000人のうち、少なくとも1,600人が罹患した。町当局は、メキシコ保健省に援助を求めた。町は交通遮断され、公衆衛生作業員の部隊が派遣されて、町民を治療し、町に群がっていたハエの群れを根絶した。

ペロテは、メキシコ最大の養豚場の一つ、グランハス・キャロルがある場所だ。同社の事業の50パーセントは、アメリカ、バージニアに本社がある企業、スミスフィールド・フードが所有している。同社は、年間、ほぼ100万頭の豚を生産している。

スミスフィールドは、アメリカにおける操業を巡って、再三、罰金を科され、訴訟を起こされてきた。ノース・カロライナで、同社の豚排泄物の沼が溢れ、川や小川を汚染した後、同社は、2000年、州に5000万ドル支払うことに合意し、環境保護訴訟に和解した。

ペロテ住民は、豚の排泄物と 有毒化学薬品の池がある養豚場が、環境を破壊し、住民の健康を損なっていると、長い間抗議してきたが、何の効果もなかった。現地および国当局は同社を擁護し、抗議する人々を威嚇し、告訴してきた。

メキシコの日刊紙ラ・ホルナダは、今月早々、社説でこう書いた。「廃棄物による公害に対し、キャロルの最大株主の有力企業は、アメリカ合州国では罰金を科された。ところが、この国では何をしてもお構いなしだ... だから、現地当局が、環境や健康のために戦う人々を告訴している様に注目すべきだ。」

インフルエンザが発生した後でさえ、アヘンシア・フェデラレ・デ・インヴェスティガシォン(AFI=アメリカのFBIに該当?)捜査官が、ペロテにやってきて、抗議参加者の一人、農民のグアダルーペ・セラノ・ガスパルを逮捕した。同社は、他の人々を、名誉棄損で正式に告訴した。

世界最大の豚肉メーカーである、スミスフィールド・フード社は、日曜日、同社のメキシコ養豚場の豚や、労働者の中で、豚インフルエンザの証拠を見いだしてはいなかったと主張する声明を発表した。「スミスフィールドとしては、ウィルスが、何らかの形で、メキシコにおける操業と関連していると信じる何の根拠もない」と同社は述べている。

しかしながら、ヴェラクルス州議会は、グランハ・キャロルの調査に乗り出し、同社に社内文書を提出するよう要求した。州議会環境委員会の委員長マルコ・アントニオ・ヌネス・ロペスは、養豚場が、この伝染病の「ホット・スポット」である可能性を語った。

メキシコ政府によるこの伝染病の処理に対する批判が高まりつつある。雑誌プロセソは、その最新号で、一連の疑問を報じている。なかに、「もしも4月2日以来、保健省当局が、ヴェラクルス州ペロテ町の四歳の男児を、最初の豚インフルエンザ症例だと確認していたのであれば、なぜ十分な対策をとらなかったのか?」というのもある。

メキシコの疫学機関の理事長オスワルド・メディンは、メキシコの日刊紙レフォルマメキシコの医療制度は、インフルエンザ発生に対処するには準備不足だったと語った。「病気の同定が遅れ、対応が遅れ、病気は抑制できなくなる」と述べている。

AP通信社が、政府は、この病気で亡くなった人々の家族への対応もできていないと報道している。コルドバ保健相は、月曜日、保健省には、そのような訪問をするだけの十分な資源がないと述べた。「我々には、まだ十分な人員がいないので、[インフルエンザの症状で苦しんでいる人々]全員には、薬を渡せていない」と彼は述べた。

世界保健機関や他の国際機関がメキシコ政府の対応について、口をつぐんでいる中、ブラジル厚生大臣アゲノル・アルヴァレスは、公然と批判し、月曜日、「遅れがあったと思うが、このような場合、告示が遅れてはならない。」と語った。

最も重大な疑問は、社会的不平等、貧困と搾取が目立つ、メキシコ社会の本質そのものに対するものだ。一体なぜ、メキシコが、これまで、新型の豚インフルエンザの結果、国民が亡くなった唯一の国なのだろう。

火曜日に記者からこれを質問されて、コルドバ保健相は答えた。「病院に行くのが遅すぎるためだ」言い換えれば、インフルエンザの症状で苦しむ人々は、病気が長引いて、病気がひどくなり、抗ウイルス薬では直せない重い肺炎をおこすまで病院に行かないのだ。

これはもちろん、なぜ彼らは、もっと早く治療をしてもらおうとしなかったのか?という問題をはぐらかしている。答えは、国民の大多数は貧しく、診療費を払ったり薬を買ったりする余裕がないからだ。これまでの一連の財政緊縮計画が、メキシコの医療制度を大きく悪化させたのだ。

言い換えれば、社会的な富を 国民大衆から、エリート支配者や、アメリカに本社を持つ企業や、共同出資者へと、組織的に、移転してきた制度に対して、メキシコの労働者が自らの命を支払う結果になっているのだ。

右派のPAN党出身のフェリペ・カルデロン・メキシコ大統領は、伝染病大流行への対処における彼の役割を、ますます激しく攻撃されるようになってきた。ロイター通信社が報道しているとおりだ。カルデロンは「土曜日以来、人前に現れておらず」また「テレビで、国民に直接呼びかけてもいない。」メキシコの日刊紙エル・ウニヴェルサルは、水曜日、メキシコを沈没しかかっている船として描いた漫画を掲載した。キャプションは「船長はどこだ?」

2000年に敗北するまで70年間この国を支配した、制度的革命党(PRI=パルティード・レボルシオナリオ・インスティトゥシオナル)が敗退したのは、メキシコ・シティーで、10,000人の命を奪った1985年の地震へのPRI政府によるまずい対応が、少なくともその原因の一部だったことに、マスコミの一部は触れている。

インフルエンザの発生に対するカルデロン政府の対応は、益々深刻化する経済危機を悪化させ、深刻な政治的疑念をひき起こし、メキシコにおける新たな社会的闘いの高まりに寄与することになるのかも知れない。

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2009/apr2009/mexi-a30.shtml

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Deja vue、デジャビュ、既視感という言葉がある。この出来事、まるで小説『ジャングル』の再現。

アプトン・シンクレアは、大作『ジャングル』で、シカゴの大手食肉業者による、不潔な食肉製造、移民搾取の実態、右翼によるスト破り、当局と企業の癒着等々を描き出した。出版は1906年。100年以上前のことだ。アメリカ版『蟹工船』ではないか?というのが、単純な読後感だった。世の中、「進歩」はせず、「変化」「退化」をするものかも知れない。翻訳本の入手はやや困難なので、まず下記の記事をどうぞ。

アプトン・シンクレアが100年前に描き出した、移民労働者に依存する、シカゴの巨大食肉工場の想像を絶する不潔さ、今に至っても変わっていないのだろう。嬉しいことに、新訳が出たので、是非ご一読を。

アメリカ古典大衆小説コレクション  5  ジャングル
アプトン・シンクレア著
松柏社
亀井 俊介監修
巽 孝之監修
大井 浩二訳・解説
税込価格: ¥3,675
2009.6

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アメリカの巨大食肉工場の実態をあばき、社会の不正を告発する名作『ジャングル』を書いたシンクレア、マスコミの対応のひどさに業を煮やし、1920年に『真鍮の貞操切符』(原題「ブラス・チェック」)を書いた。90年ほど昔の話。「ブラス・チェック」のごく一部を、『クリスマスの手紙』「百万長者対貧乏作家」として翻訳し、ブログに掲載してある。

本書の趣旨は、アメリカのマスコミは、公共の利益ではなく、私益を代表し、人間性ではなく、財産を代表するものであるということにある。

先月23日夜、タレントが、公園で裸でさわいで、つかまる事件ばかり怒濤の如く報道された。同じ日、庶民にとってはるかに恐ろしいことが起きていた。海賊法案の衆議院通過だ。アプトン・シンクレアの言葉をもじれば、そのまま。

日本のマスコミは、公共の利益ではなく、アメリカと日本の私益を代表し、人間性ではなく、財産を代表するものである。

タレントが裸になっても、庶民には害も危険もほとんどない。ソマリア派兵を口実に、憲法が破壊されれば、庶民は大変な被害を被る。そちらの方が、庶民には大事件のはずだ。実に不思議なことに、どうでも良い裸事件の話題の洪水で、大変な影響を受ける大事件については、マスコミでは全く報道されていない。(と思う。)ネットでは『デジタル紙の爆弾』が触れているという。(残念なことに、有料会員ではないので、本文は読んでいない。)タレントの裸事件だけでは、隠しきれない大事件なのだが、実に好都合なことに、豚インフルエンザが発生して、またもや、「ソマリアへの派兵を口実にした憲法破壊作戦」を、報道するマスコミは皆無。

2009年5月2日の朝日朝刊13面の記事、『憲法9条は日本人にもったいない』は、「マスコミ」らしくない良い記事。意表をつかれてびっくりした紛争屋・武装解除人、大学教授の伊勢崎賢治さんの談話。この記事だけで、一ヶ月分の購読料に値するくらいの価値があるかも?

「最大の違憲」ソマリア沖への自衛隊派遣に、なぜ猛反対しない?

デジタル紙の爆弾 2009/04/30
草彅逮捕! 永田町でささやかれる「漆間の仕業」

森田実のサイト、森田実の言わねばならぬ【382】
平和・自立・調和の日本をつくるために[381]に、裸事件と同じ日におきた重要な問題が書かれている。

ここでのヒーロー、民主党長島昭久議員、そもそも、ソマリアへの派兵を言い出したご本人。日本をNATOに引きずり込む策を推進している、ブレジンスキーのお弟子。これについては、「大西洋共同体(NATO)に日本を組み込む ブレジンスキー」で触れた。ソマリアの海賊問題というのは、単なる口実、本当は、憲法破壊のかくれみの。

「民主党、アメリカによる、日本支配のための手先でしかない」という確信、この森田氏記事で、ますます深まった。政権交代で、日本は、郵貯という国民資産が奪われるばかりでなく、戦争の泥沼に完全に引き込まれる。一体なぜ、多数のblogで、「政権交代」という言葉が、「錦の御旗」扱いされているのだろう。「郵政改革」という、小泉元首相と、マスコミによる、とんでもないデマゴギー宣伝が、今、単に、「政権交代」というキャッチフレーズとともに、民主党にふれているだけではないか?小泉元首相と、小沢代表、長島議員らは、同じあなのむじな、でしかあるまい。イスラエル、アメリカ、日本の支配者たちこそ、本当の悪の枢軸。民主党の存在、二大政党化を推進するための小選挙区制度や、税金を使って党内独裁を強化する巧妙な、政党交付金制度を導入した小沢一郎代表の罪は極めて重い。小泉元首相よりも重いくらいだろう。

属国日本のお手本となっている、宗主国における、「二大政党による政権交代」なるものでは、戦争や、搾取や、国家規模の振り込め詐欺が、決してなくならないという事実を、今、目にしているのではないだろうか?企業献金は、もちろん廃止すべきだが、それ以前に、まず、政党交付金制度を廃止すべきだろう。

以下、森田氏の記事を、全文引用させていただこう。

民主党の長島昭久議員は4月23日の衆議院海賊対処・テロ防止特別委員会において、こう発言した。

《今回のソマリア沖の海賊事案については、第一義的には海賊事案は海上保安庁の仕事でありますけれども、それでは困難だという場合においては海上自衛隊の出動もやむをえない、こういうことは、私ども民主党の立場でございます。これは、私ども民主党のコンセンサスを得ております。この点までは、実は与野党の間で一致をしています。》

 そうなのか。海上自衛隊のソマリア沖への出動について、自民党と民主党ははじめから一致していたのか。長島議員は、民主党の基本的立場が麻生内閣と同じだと正式に表明したのだ。

 このあと長島議員と政府側とのやりとりは驚くべきものだった。長島議員は内閣法制局長官に対して、武力行使が憲法違反ではないことを明言するよう執拗に求めたのだった。

 長島議員は内閣法制局長官に対して、こう迫った。長い引用をお許しいただきたい。

《ここでお尋ねをしたいんですけれども、結果として海賊行為を行っていたと判断されなかった船舶に対してそれまでの時点で行われていた警告射撃等の武器使用、これはさかのぼって違法になることはないのかどうか。一連のプロセスとして海賊行為に対処するために使う武器の使用、これは憲法九条に反するものではないということを、国民にわかりやずく簡潔に、内閣法制局長官、説明をしてください。お願いします。》

 長島議員は、内閣法制局長官に対し、拡大された武器使用が憲法違反にならないと明言するよう懇請しているのだ。

 長島議員は、内閣法制局長官の「違法性が生ずることはない」との答弁を得て「それでは確認させていただきます」と発言した。

 さらに長島議員は、次の二つの質問を行った。

《今まで法制局は、国または国に準ずる者、つまり反政府組織みたいなものに対しては、自衛隊は武力の行使に当たるからそういう武器の使用はしてはいけないとずっと今まで言ってきた。そういう基準を立ててきた。しかし、今回はその基準とは違う基準でやるんですか、こういうふうに申し上げているんです。お答えください。》

 内閣法制局長官の「正当」との発言を得て、長島議員は「今、これは非常に重要な答弁だったというふうに思います」と、あたかも勝ち誇ったように発言した。このあと麻生首相の「法制局長官の意見は正しい」との発言に対して長島議員は「ありがとうございました」と発言し民主党の質疑を終了した。長島議員は、武器使用の範囲の拡大をはかったのである。民主党は、「平和の政党」であることを捨ててしまったのだろうか。民主党はこはこれでいいのだろうか?!

2010/2/23追記:

この長島議員、今や防衛政務官!「自民党と民主党政権交代など、羊頭狗肉、同じ派閥間の交代に過ぎない」という、素人の理解、どこが間違っているのだろう。防衛、つまりは、戦争政策、国家の根幹だろう。マスコミ、大変興味深いこの議員先生の動向は、ほとんど報じてくれない。

もちろん、マスコミをいくら読み、見ても、決してわけはわからないはずだ。そして、ブロガーの多くの方々は、「政権交代」は有意義で、民主党・小沢氏・鳩山氏を支持すべきだと思われているようだ。

党名以外、何が違うのだろう。より「自由ではない」というところは、よく分かる。

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