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2009年4月

2009年4月20日 (月)

ソマリア沖で作戦活動中のドイツ海軍 09年1月14日記事

wsws.org

Marius Heuser

2009年1月14日 ←古い記事です。

二週間以上にわたり、ドイツは、国際航路を確保するため、アデン湾で海軍作戦行動を遂行している。

フランツ・ヨーゼフ・ユング国防相(キリスト教民主同盟、CDU)によると、これはドイツ戦後史上「最も堅固な任務」だ。フリゲート艦カールスルーエを見送るためユング国防相はジブチにまで飛んだ。もはや、これまでの作戦のような「援助、保護や仲裁」の提供にとどまらず、軍はきっぱり戦闘ができるのだと、ユング国防相は強調した。大多数の賛成で、12月に連邦議会を通った任務により、制裁として、ドイツ軍は、敵対する艦船を攻撃するのみならず、沈没させることもできる。

フリゲート艦カールスルーエの派遣は始まりに過ぎない。必要とされれば、フリゲート艦メックレンブルク・フォルポメルンも直接支援に使うことができる。この船は現在、同地域で、アメリカの指揮のもと、不朽の自由作戦という枠組みの中で、明らかに、より低い任務のもとで活動している。新たな任務のもとで、今や1,400人迄のドイツ兵士アデン湾に配備可能だ。

配備は、欧州連合のアトランタ作戦の一部であり、2008年11月10日 海賊対策として、欧州連合理事会で通過した。フランスとイギリスを含む5から10ヶ国が作戦に参加する。作戦本部はロンドンにあり、ギリシャ、スペインとオランダに、交代して移動指揮所を設置する。

ヨーロッパ諸国の軍に加え、ロシア、アメリカ、中国やイランの艦船もアデン湾に配備されている。

この地域への、外国軍隊の大規模な集中は、2008年6月2日に通過した国連決議1816によって可能となった。これにより、ソマリアの沿岸を巡るソマリアの統治権が撤廃され、世界のいかなる軍事大国でも、海賊とされるものに対し、ソマリア海岸から12マイルの内陸地域で、任務を遂行することを認める。これには空域も含まれる。

アメリカが支援した、エチオピア軍による同国の侵略以後、ソマリア沿岸で活動している海賊の数は、近年大幅に増加している。様々な情報筋が、100から300回の海賊攻撃とい数字を出しており、この地域を毎年通過する推計16,000-30,000隻の船舶のうち、39から200隻の船がだ捕されているという。船のハイジャックで、全体で約5000万ドルの身の代金がまきあげられている。

だが大規模軍事作戦は、単に海賊に対する戦いだけでは説明しきれない。経済危機の時代に、世界のどの大国も、大多数のアジア-ヨーロッパ貿易が依存しているこの重要な航路の支配権を、競争相手に委譲したがるはずがない。そのような商業用航路の地勢学的重要性は、石油やガス・パイプラインにも比肩するものだ。ドイツだけでも、原油の56パーセントを海運で輸入しており、ドイツの対外貿易の多くも海運によって輸送されている。

海賊との戦闘という旗印の下、商業経路である航路を巡って国際的な紛争が始まりつつあり、これは、激しい軍事紛争という結果を生じている。

既に、イラクとアフガニスタンの占領と「対テロ戦争」が、帝国主義者の政策を正当化するのに用いられてきた。今やドイツ政府は、「テロ」に対する戦いと、対海賊作戦との間に、密接なつながりをしたてあげている。

アトランタ作戦展開と、アフガニスタンにおけるアメリカの「不朽なる自由作戦」は、フリゲート艦メックレンブルク・フォルポメルンの例で見られるように、密接に関連している。キリスト教民主党議員集団の治安戦略報告書によると、 昨年の5月6日から、「弱小国家における組織犯罪の広まりが、テロの脅威を一層深刻化している。戦争、過激主義とテロは、犯罪行動による収益、特に麻薬取引によって資金を得ているが、違法な武器貿易、人身売買、不正資金浄化、あるいは海賊からも得ている。」

自由民主党 (FDP)のビルギット・ホンブルゲルは、このつながりを、さらにはっきりと表明し、彼女は連邦議会でこう語った「国境を越える国際テロは、もはや海賊や組織犯罪と区別できない。」アトランタ作戦と不朽の自由作戦は一体化すべきだと、彼女は要求している。

ドイツ海軍配備の背後にある経済的利害関係も、連邦議会であからさまに語られている。もっと以前のドイツ軍の配置に関する論議では、人道的、あるいは、少なくとも、安全保障政策論議が強調されていたが、現在の論議においては、「ドイツの利害関係」に関して力点がおかれている。

たとえば、12月17日、フランク=ヴァルター・シュタインマイアー外務大臣(社会民主党、SPD)はこう語った。「アトランタ作戦は、我々ドイツ人にも利害関係がある、民間航行地域における安全保障をも向上させるべきである。アデン湾は、ヨーロッパとアジア間の貿易物流の基幹だ。年間20,000隻の船だ。これらの多くは、ドイツに出入りする貨物を運ぶドイツの船会社に属している。」

ユング国防相も、「わが国は世界における輸出チャンピォンの一人なのだから」、「海上の治安を回復し、自由な海運を保証することへの貢献」をしようと、議員たちに懇願した際、ドイツの利害関係をひきあいにだした。

党の同僚ドロテー・バーは、この点を明確化している。「脅威を受けているのはアデン湾だけではない。世界貿易の自由も、脅かされているのだ。ヨーロッパ、アラビア半島とアジアの間の、最も重要な貿易路は、ソマリア沖の海上交通路を経由する。様々なドイツの輸出商品は、アフリカの角周辺の海を通過する船舶に載って、目的地に到着している。輸出国家として、民間海運に対する攻撃を、防いだり、削減したりすることに、重大な関心をもっている。これは我々ドイツにもあてはまるが、全ヨーロッパにもあてはまる。」

FDPは、政府の怠惰を責めた。海賊にはもっと早くから対処すべきだったと、ビルギット・ホンブルゲルは主張した。「この行為は、ドイツ海軍の体面を汚した。」 彼女はまた、海賊に対し、より厳しい対応をするよう主張した。「海賊を追い払うばかりでなく、海賊を追跡して捕らえることも必要だ」と彼女は語った。

この軍国主義的言辞や、様々な党が、ドイツ大企業の利害関係のための本格的な軍事任務をあからさまに支持していることは、ドイツ支配エリートが持つ帝国主義的野望のかなりの進展度合いを示している。支配層は、自分たちの利害を推進する上で、もはやドイツ国内における、軍国主義と戦争に対する広範な反対をも、織り込む覚悟ができている。

議会内の各政党が、これほど恥ずかしげもない行動をとれるという事実も、こうした政党のいずれも、軍事戦闘任務に対して、節操ある反対を唱えてはいないという事実と結びついている。左翼党は、政府の動議に反対投票する唯一の議会政党でありながら、同党はアデン湾の海賊に対する武力行使を、明確に支持している。

以下省略(四分の一程度)

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2009/jan2009/germ-j14.shtml

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フリゲート艦カールスルーエの派遣は始まりに過ぎない。必要とされれば、フリゲート艦メックレンブルク・フォルポメルンも直接支援に使うことができる。こ
の船は現在、同地域で、アメリカの指揮のもと、不朽の自由作戦という枠組みの中で、明らかに、より低い任務のもとで活動している。新たな任務のもとで、今や1,400人迄のドイツ兵をアデン湾に配備可能だ。

をもじれば、やがては

護衛艦さざなみさみだれの派遣は始まりに過ぎない。必要とされれば、P3C哨戒機も直接支援に使うことができる。新たな任務のもとで、今や1,400人迄の日本兵をアデン湾に配備可能だ。

ということになるのか。最初はさざなみの如く、さみだれ式の、過去の中国侵略の二の舞。ただし、今後は傭兵として。

同じことを、何度も書く。いくら書いても、マスコミにかなうわけはないが。

ソマリア派兵を言い出したのが、民主党長島議員であり、ISAFへの派兵を昔から主張しているのが、民主党の小沢代表。

現代日本の、救いようのない二大政党という方向を導くべく、小選挙区制度を導入したのも小沢代表。

第一次湾岸戦争時に、アメリカに莫大なつかみがねを払ったのも小沢代表。

たしか、血税を悪用する政党助成金なるインチキ制度も、小沢代表が関与してひねりだしたはずだ。「もらった金の配分は、幹部が決める」といって、議員を拘束するだけだろう。

そのご本人が、ぬけぬけと企業献金を受けている。企業が献金するのは、見返りを求めるからだろう。そうでなければ、株主に対する、不誠実だろう。(企業献金を、メセナのようなものとして、支持する方々がおられることが、全く理解できない。)こうした人々がトップにいる民主党による「政権交代」が実現すれば、庶民にとって、何か良い「チェンジ」が起きるがごとく、語っておられる多くのblogやマスコミ記事の不思議な論理、どうしても理解できない。

「別政党を名乗るだけの、八百長派閥間の交代だから、変わらないか、せいぜい、更に悪くなるくらいだろう」というのなら、理解できる。

民主党は、「自由」すらない、第二自民党だろう。宗主国におけるオバマの「チェンジ」で、アフガン・パキスタン戦争は拡大の一途。これと同じような困った「チェンジ」なら、属国日本でも、すぐに、簡単に、起きるだろう。

歴史の中の『洗脳』小田 晋(帝塚山学院大学教授)という記事の中に『蛙の王様症候群』という言葉がある。自分を滅ぼす王様をわざわざ選んでしまう人々の様子を描いている。このイソップの「蛙の王様」の話、昔は小泉元首相の顔を見るたびに思い出していたが、今は小沢待望論を見るたびに思い出す。

09/04/10のゲンダイネットには、下記エントリーがある。

不況で激減!ソマリア沖の日本船
一部を引用する。

麻生首相は国会で「年間2000隻、1日平均5、6隻の(日本)船がソマリア沖を通航している」と言ったが、実際は世界的な不況の影響で、日本関係船舶の運航は激減。麻生首相の説明の3割程度しか警護できていない。本来なら派遣そのものを見直すべきなのに、与党は海賊対処法案の修正協議で、護衛対象を外国船舶にまで広げ、海賊への射撃も可能にしようとしているからメチャクチャだ。

blog『薔薇、または陽だまりの猫』には、下記記事が転載されている。ご一読をお勧めする。

海賊対策」という罠.・栗田禎子/『信濃毎日』2009年4月5日「潮流」欄

憲法をふみにじるソマリア派兵法案が国会を通っても記事にはならず(載ってもごく小さな記事)放送もされず、タレントの奇行をはやしたてる。どちらが庶民に深刻な影響を与えるかを、よーく分かっていて、マスコミという名前の大本営広報部は、洗脳活動をしているとしか思えない。

関連記事翻訳:

オバマと海賊:国家暴力の賛美

なぜフランスは、 ソマリア沖で実力行使に及んだのか?

2009年4月17日 (金)

グルジア: 大衆の抗議デモ、カフカスにおける政治危機を浮き彫りに

wsws.org

Markus Salzmann

2009年4月15日

先週末以来、グルジアの首都トビリシでは、ミヘイル・サーカシビリ大統領の退陣を求める、数万人の抗議デモ参加者により、一連のデモが行われている。金曜日、グルジア最大の港バトゥミで、数千人が抗議デモを行った。

サアカシュヴィリと その親西欧政府を、アメリカとヨーロッパ大国の支持で、権力につけた2003年のいわゆる“バラ革命”以来、最大の抗議デモだ。

抗議デモ参加者は、国家の長には、昨年8月の対ロシア戦争の結果に責任があると考えている。アメリカ支援を得て、グルジアは、南オセチア共和国に軍隊を送り込み、in an action南オセチアの首都ツヒンバリを大きく破壊した作戦を遂行し、何百人もの死傷者を生みだし、何万人もの南オセチア人に、国境を越え、隣国ロシアへの逃亡を強いた。これに対応して、ロシアは軍隊を送り込み、グルジア軍を地域から追い出した。グルジアの侵略後、アブハジアと南オセチア地域は、モスクワにより、独立したものと承認された。

サアカシュヴィリは、今や旧ソ連共和国に全力で襲いかかっている経済危機に対し、不適切な対応をしていることも、反対派から、非難されている。更に、反対派は、グルジアという国のあらゆるレベルでみられる、おびただしい種類の腐敗も批判している。

野党側は、サアカシュヴィリが退陣するまで、抗議デモを継続すると発表している。大統領としては、2013年に予定されている選挙までは、職にとどまるという決意を明らかにしている。

サアカシュヴィリは、450万人のグルジア国民の間で非常に不人気で、いかなる反対も、厳重に取り締まる流儀をとってきた。2007年11月、政府は、平和的なデモを強制的に抑圧し、グルジア全土に戒厳令を発令した。国軍が政府に批判的な民営放送局イメジTVを含む幾つかの放送局を急襲し、閉鎖させた。およそ600人の抗議デモ参加者が、当時、警察によって入院させられた。昨年、グルジアの放送規制委員会は、マエストロ・テレビ局が、政治番組を放送するのを禁じた。

一方、貧困は国中に広まったままで、サアカシュヴィリが、前任者エドアルド・シュワルナゼから、政府を引き継いで以来、事態は進歩していない。国民のほぼ半数は、最低生活線以下で暮らしており、大半の家族が、外国に出稼ぎに出ている親戚からの送金に頼っている。年金の平均は、約20ユーロだ。この国は、近年9パーセントの経済成長という実績をあげながらも、失業率は高いままで、首都でおよそ40パーセントだ。

とはいえ、右翼的で、腐敗した政府に対する、国民の様々な層の正当な怒りには、抗議デモという歪んだ表現形式しか捌け口がないようだ。抗議の背後にあるのは、主として、サアカシュヴィリの元支持者から取り込んだ、反対する人々の同盟だ。

最も顕著な人物には、ニノ・ブルジャナゼ(元国会議長)、イラクリ・アラサニア(元国連大使)、サロメ・ズラビシビリ(元外務大臣)、ズラブ・ノガイデリ(元首相) そして、イラクリ・オクルアシビリ(元国防相)らがいる。

彼らは全員が、親西欧で、新自由主義的政策の支持者だ。サアカシュヴィリの政治に対する、彼らの主な批判は、大統領が、十分な気力をもって、グルジアの利害関係を守ることをし損ねているというものだ。

元国連大使で、アブハジア亡命政府の元首相は、この点を極めて明確にした。彼は公的にアブハジアと南オセチアという分離主義者の地域の喪失を非難し、モスクワに対するグルジアの妥協なき政策を要求している。

元国会議長ブルジャナゼは、また極めて反ロシア的な姿勢をとっている。「我々は、領土の20パーセントを失った。この国は経済と政治的困難に直面する国になってしまった。またもやロシア軍事基地だ。」オーストリアン・スタンダードとのインタビューで、彼女はこう発言した。抗議デモの時期すらも、グルジアの独立を求める抗議が、ソ連軍によって粉砕された20周年と重なるよう、仕組まれていた。

昨年まで首相で、グルジアの南オセチア侵略に際して、サアカシュヴィリ大統領の背後にしっかりと立っていたノガイデリも、今やかつての導師のことを、「犯罪人」。チャチバイア大将が最近辞任し、サアカシュヴィリが、軍内部からの反対にも直面していることが明らかになっている。

元アメリカ大統領ジョージ・W・ブッシュが、“デモクラシーの指針”だと称揚した「バラ革命」の本当の実態を、今の状況があからさまにしている。グルジアにおける最近の展開は、ワシントンとブリュッセルが、多くの東欧諸国でひき起こした、様々な名で呼ばれた革命が、デモクラシーとは無関係だったことを示している。そうではなしに、対抗する政治党派が、関連した国々の大衆に大変な犠牲を強いながら、影響力と権力を求めて戦ったのにすぎない。

アメリカ、欧州連合加盟諸国も、ロシアも、今や状況をなんとかエスカレートさせないように努めている。先週始め、ロシア外務省次官グリゴリー・カラシンと、在モスクワ・アメリカ大使ジョン・バイアリーが、グルジアの悪化しつつある状況と、高まる抗議の波について会談した。南オセチアとアブハジアとグルジア国境の治安を、いかにして確保するかが、この会談の重要な議題の一つだった。

ヨーロッパ大陸の東半分全域で高まる抗議を背景に、西欧の有力諸国とアメリカは、現在自制し、節度を求めている。彼らは、この抗議が、極めて急速に、この地域の脆弱な政府では統制しきれない大変な事態になりかねないことを十分承知している。先週も、モルドバ共和国で、警官と、政府の退陣を求めるデモ参加者の間で、暴力的な衝突があった。

グルジアにおける、政治状況の激化は、あきらかに、この国の悪化しつつある経済的衰退と結びついている。グルジアは、昨年末以来、経済の急激な悪化を味わっている。2008年の最終四半期、経済成長は、2007年の7パーセント以上から、わずか2パーセントへと落ち込んだ。

サアカシュヴィリの元で、外国人投資家をひき寄せることを狙った無数の改革が実施された。企業税は大幅に引き下げられ、外国資本に対する制限は、かなりwaived。世界銀行が行った、世界各国の「対事業-好意度」の度合いを測定する世論調査では、グルジアは、2005年の112番目から、2008年には15番目へと急上昇した。2007年、経済に対する直接投資は、国民総生産のおよそ20パーセントにものぼった。

国際的な金融危機の結果として、そうした投資が枯渇することにより、グルジアや、他の多くの東欧諸国における経済崩壊がひき起こされた。9月にIMFは、グルジアに対し、7億5000万ドルのクレジットを供与することに合意した。しかしながら、この金額は、経済の安定性を保証するのに十分ではないことは、既に明白だ。

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2009/apr2009/geor-a15.shtml

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タイや、東欧やら、フランスの大衆運動の記事を読むと、日本に暮らしている人々の多くは、ガラパゴス諸島の絶滅危惧種生物のような、特別な種族なのかもしれないと、妄想してしまう。遺伝子が違うのか、マスコミが強力なのか?中国古典にある、「朝三暮四」的な人種なのかもしれない。

名著『ゾウの時間、ネズミの時間』冒頭にある、「島の規則」と呼ばれる古生物学の法則なるものを読んで以来、頭にうかんだこの妄想が、ずっと消えずにいる。古来「島はガラパゴス化する」もののようだ。

2009年4月15日 (水)

血の国境 より良い中東とはどんな姿なのか

Armed Forces Journal 2006年7月号 ←以前に翻訳した記事

Ralph Peters

国境は決して完璧に公正ではありえない。だが国境が、国境によって統一させられたり、分離させられたりする人々の上にもたらす不公正の程度には大きな違いがある。自由と圧政、寛容と暴虐、法による統治とテロリズム、あるいは平和と戦争の違いだ。

世界で最も恣意的でゆがんだ国境はアフリカと中東のそれだ。(自分たちの国境を決めるにあたってすら問題山積だった)身勝手なヨーロッパ人連中が描いたアフリカの国境は何百万人もの現地住民の死を引き起こし続けている。だが中東の不公正な国境は、チャーチルの言葉を借りれば、現地で解決できる以上の多くの問題を生み出している。

中東は、機能不全な国境以外にも、恥ずべき不平等による文化的停滞から、破壊的な宗教的過激主義に至るまで、遙かに多くの問題を抱えているが、地域の総合的な失敗を理解しようと努力する上で最大のタブーは、イスラム教ではなく、我が外交官達が崇拝する、ひどいものながら、神聖犯すべからざる国家間の境界だ。

もちろん、いかに過酷なものであるにせよ、国境の書き換えで、中東の全ての少数派が幸せになるわけではない。場合によって、民族や宗教の集団が混住し、人種間結婚もしてきた。各地において、血縁や信仰に基づく再統一は、必ずしも現代主唱している人々が期待するほど楽しいものになるとは限らない。本記事の横に掲載している地図に描かれた国境は、クルド人や、バルーチー族やシーア派アラブ人のような最も大きな「裏切られた」人口集団が味わってきた過ちを改めてはいるが、中東のキリスト教徒や、バハーイ教徒、イスマーイール派信徒、ナクシバンディやその他多数の人種的少数派に対しては十分な配慮をしそこねている。それに、忘れがたい過ちは、領土という報償で決して償えるものではない。滅亡に瀕していたオスマン帝国がアルメニア人に対して犯した大虐殺だ。

とはいえ、ここで再考しているあらゆる不公正な国境が放置されている限り、大幅な国境の改訂が無い限り、より平和な中東を見ることはありえまい。

国境を変えるという話題を忌み嫌う人々にとってさえ、ボスフォラスとインダス川の間にある、様々な国境を、たとえ不完全なままであるにせよ、より公正なものへと改変する想像を試みる知的演習に参加することで得るものは大きかろう。国際的外交手腕を認めることからは、戦争を除いて、有効な手段は生み出されなかった。間違った国境を再調整し、中東の「有機的な」辺境を把握しようという知的努力は、我々が直面し、これからも直面し続けるであろう困難さを理解するよすがとなるだろう。改められるまで、憎しみと暴力を生み出すことをやめようとしない、人間が作り出したとてつもない奇形に、我々は立ち向かっているのだ。

国境は変更してはならない、あるがままにすべきだ、と主張して、「考えられないことを考える」ことを拒絶する人々にとっても、国境が何世紀もの間常に変動し続けてきたことを思い出すことは意味があろう。国境はこれまで決して静的なものではなく、コンゴ、コソボからコーカサスに至るまで、多くの国境は、(大使や特使が現実から目を背け、自分たちの靴先の輝きぶりを調べている間に)現代においてさえ変わり続けている。

そう、5,000年の歴史には薄汚いささやかな秘密が一つある。民族浄化は機能するのだ。

アメリカの読者方が最も気にする国境問題から始めよう。イスラエルが隣人達とほどほどの平和裡に暮らせるという希望を持てるようになるには、1967以前の国境にまで戻らねばなるまい。正当な治安問題解決には、現地での調整が不可欠だ。しかしながら、何千年もの間血塗られてきた都市エルサレムを取り巻く領土の問題は、我々が生きている間には到底解決が困難なのかもしれない。関係者全員が、それぞれの神を不動産の大立て者にしてしまっており、文字通りの縄張り争いは、石油の富を求める単なるどん欲さやら、民族的な口論とは比較にならない粘り強さがある。そこで、この研究されつくした大問題は脇に置いて、注意深く無視されてきた事柄に目を向けてみよう。

バルカン山脈とヒマラヤの間にある悪名高い不公正な諸国において、最も著しい不正は独立したクルド人国家の不在だ。二千七百万人から三千六百万人のクルド人が、中東内の隣接する諸地域で暮らしている(いずれの国家もこれまで正直な国勢調査を許しはしないため数字は不正確だ)。これは現在のイラクの人口よりも多く、少ない方の数字ですらクルド人は自分自身の国を持たない世界最大の民族集団だ。より悪いことに、クルド人はクセノフォンの時代から暮らしてきた丘や山を支配しているあらゆる政府によって迫害されつづけてきた。

アメリカと同盟諸国は、バグダッド陥落後に、この不正の改正を始めるという光栄ある機会をつかみ損ねた。ぴったりとはあわない部分を一緒に縫い合わせた、フランケンシュタインの怪物のような国家であるイラクは、即座に三つの小さな国家に分割されるべきだった。臆病さと展望の欠如から、我々はそれをし損ない、イラクのクルド人を新たなイラク政府を支持するよう追い込んだが、我が国の善意に対するお返しとして、彼らは切ないながらもそうしたのだ。自由な国民投票が行われていたなら確実に、ほぼ100パーセントのイラク・クルド人は独立に投票しただろう。

何十年もの残虐な軍事的圧政や、彼らの独自性を根絶やしにすることを狙って何十年間も「山岳トルコ人」としておとしめられて、じっと耐えていたトルコのクルド人がそうするであろうように。アンカラに支配されていたクルド人の窮状は過去十年の間に多少良くなったが、弾圧は最近またひどくなり、トルコの東部五分の一は占領地域と見なされるべきなのだ。シリアとイランのクルド人については、彼らも、もしも可能であれば独立クルディスタンに飛びつくだろう。世界中の正統な政権がクルド独立支持を拒否したことは、我がマスコミが常々犯している無様でささいな罪よりも、遙かに深刻な、怠慢による人権上の罪だ。そしてついでながら、ディヤルバキルからタブリーズまで広がる自由クルディスタンは、ブルガリアと日本の間に存在する最も親西欧的国家となろう。

この地域を公正に調整すれば、イラクのスンナ派が多数を占める三つの州は、沿岸地帯を、地中海指向の大レバノンつまり再生フェニキアに奪われてしまうシリアとの統合を、最終的には選択するであろう切り詰められた国家となる。古いイラクのシーア派南部は、ペルシャ湾の大半を囲むシーア派アラブ人国家の基礎となろう。ヨルダンは現在の国境を保持し、南方は現在のサウジ領土部分へと多少拡大することになろう。不自然な国家サウジ・アラビアも、パキスタン同様に大きな領土を失う悲哀を味わうだろう。

イスラム教世界が停滞している根本原因は、サウジ王家がメッカとメディナをその知行地として扱っていることにある。イスラム教の最も聖なる神殿が、世界で最も偏狭で圧政的な政権の一つである警察国家、膨大な石油の富という不労所得を支配している政権の支配下にあるのだ。サウジ人は、厳格で、非寛容な信仰である彼らのワハブ主義宗教観を国境のはるかかなたにまで及ばせることができてきた。サウジが富を得た結果としての影響は、イスラム世界全体に対し、預言者の時代以後、そしてオスマン征服(蒙古でなければ)以来、アラブ人に対しておきた最悪の事態だ。

非イスラム教徒はイスラム教聖都の支配を変えられる立場にないが、メッカとメディナが、世界の主流イスラム宗派の代表と、イスラム教諸国における運動の輪番制評議会、ある種イスラム教のスーパー・バチカンによって統治されたら、イスラム教世界がどれほどより健全になるか想像されたい。その場合、偉大な宗教の未来は、単に宣言されるのではなく、議論されるようになる。我々の好みではないかもしれない、本当の公正さから、サウジ・アラビアの沿岸油田をその区域に住むシーア派アラブ人に渡し、南東の四半部分をイエメンに渡すこととなろう。残ったサウジはリヤド周辺の独立領土という国に閉じこめられることとなり、サウジ家がイスラムと世界に及ぼす悪はずっと小さなものとなろう。

無鉄砲な国境を有する国家であるイランは広大な領土を、統合アゼルバイジャン、自由クルディスタン、シーア派アラブ人国家と自由バルチスタンに引き渡すことになるが、歴史的、言語的にペルシャに対して親近性を持っている現代アフガニスタンのヘラト周辺の州地域を得ることになろう。イランは事実上、再び民族に基づくペルシャ国家となるが、最も難しい問題は、イランがバンダル・アッバス港を保持すべきか、あるいはシーア派アラブ人国家に手渡すかだ。

アフガニスタンが西部でペルシャによって失う領土は、東で取り戻すことができ、パキスタン北西辺境の部族が自分たちのアフガン同胞と再統一するのだ(この実験のポイントは、我々の好きなように地図を描くというのではなく、地元住民が好むように描くという点にある)。パキスタンは、これももう一つの不自然な国家だが、バルチの領土を自由バルチスタンに引き渡すことになる。残りの「自然な」パキスタンはカラチ周辺西方の突出部を除けば、インダス川の東のみとなる。

アラブ首長国連邦の運命は、おそらく実際そうであるように、複雑なものとなろう。一部はペルシャ湾の多くを囲むシーア派アラブ国家に取り込まれよう(ペルシャ・イランの同盟者というよりは、対抗勢力として発展するであろう国家だ)。あらゆる禁欲的な文化は偽善的だから、ドバイは、必要上、豊かな放蕩者どもにとっての遊び場という立場を保持することが許されよう。クエートはオマーン同様に現在の国境内に留まろう。

どの場合も、この仮定上の国境引き直しは、民族的な親近性か、宗教的な共同体主義、場合によってはその両方を反映している。もちろん、もしも魔法の杖を振って問題となっている国境を改めることが可能なのであれば、我々は入念に選んでそうしたいところだ。けれども、改変した地図を、現代の国境を示す地図と比較して検討すると、フランス人とイギリス人が20世紀に描いた国境の大きな過ちが、19世紀の屈辱と敗北から抜けだそうと苦闘している地域に対して及ぼしたことがどれほどだったかが多少は理解されよう。

人々の意志を反映して国境を改めることは不可能かも知れない。今の所は。しかし時間がたったら、そして付随して生じる不可避の流血があったらどうだろう- 新たな自然の国境が現れるだろう。バビロンも一度ならず陥落したのだ。

その間、我が国の軍服を着た男女がテロリズムから治安を守るため、デモクラシーへの見通しと、地域の石油資源の入手を目指して戦いを続けるだろう。アンカラとカラチの間における現代の人々の分裂と、無理強いされた統一は、この地域が自ら招いた悲哀とあいまって、宗教的な過激主義、相手を非難する文化、そしてテロリスト補充の、完璧な温床となっている。男女達が自分の国境を悲しげに見つめるような場所では、熱心に敵を求めたがるものだ。

世界におけるテロリストの供給過剰からエネルギー供給の不足に至るまで、現代の中東のゆがみは、状況の改善ではなく、悪化を保証している。最悪の姿の民族主義だけが根付き、最も堕落した姿の宗教が、かなうことのない信仰を支配する恐れがある地域において、アメリカと同盟国と、何よりもわが軍隊は、果てしのない危機を予期できる。我々がこの土地から時期尚早に立ち去るのでないとすれば、イラクは希望の反証を提供してくれる一方で、この広大な地域の他の部分では、ほぼ全ての戦線で問題が悪化している。

大中東の国境を、血族と信仰という自然の紐帯を反映すべく改めることが不可能なのであれば、地域で流される血の一部分は、我々自身のものであり続けるということを、一つの信仰箇条として考えるべきなのかも知れない。

勝者と敗者

勝者(領土が増える国)

アゼルバイジャン

アフガニスタン

アルメニア

イエメン

イラン

シーア派アラブ人国家

自由クルディスタン

自由バルチスタン

聖イスラム国

ヨルダン

レバノン

敗者(領土が削られる国)

アフガニスタン

アラブ首長国連邦

イスラエル

イラク

イラン

カタール

クエート

サウジ・アラビア

シリア

トルコ

パキスタン

ヨルダン川西岸

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記事原文のurl:http://www.armedforcesjournal.com/blood-borders





 国名 黒 面積が増える国 赤 面積が減る国 グレー 面積は変化しない国

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タープレイの本「オバマ、危険な正体」のどこかで、バーナード・ルイス計画という言葉が出てきたような気がする。

また、オルタナティブ通信には、下記記事がある。(2024年月現在リンク切れ

オバマの人間奴隷化計画の深慮遠謀

そこにも「バーナード・ルイス計画」という言葉がある。

ところで、直接は関係ないが、ソマリアやアフガニスタンがらみということで、『世に倦む日日』の下記最新記事をお勧めする。座布団三枚!

因果はめぐる朝日新聞と小沢一郎 - 「政治改革」と「小沢信仰」

朝日の早野透なる人物の、ニュースステーションの久米宏なる人物の、大学教授の山口二郎なる人物の、評論家の内田健二なる人物の、そして、今人気の小沢一郎なる人物の、いかがわしさが気になっている人間として、「その通り!」と、思える文章。もちろん、これが日本で多数派の意見になるはずもないのは残念だが。そもそも、大本営広報部である新聞にもテレビにも、こういう意見は絶対に載らない。

2009年4月11日 (土)

水泡と帰したか、カラー革命?

Russia Today

2009年4月10日、03:54

過去十年間の多くの旧ソ連邦諸国とは違い、モルドバにおける野党側による騒乱の場合、何かが根本的に異なっていた。今週のキシナウ(ロシア語ではキシニョーフ)での出来事を、既に革命と見なしている専門家もいる。

専門家は、これを何と呼ぶべきか、今回は失敗ではあるが、もう一つのカラー革命なのかどうか、既に、決定している。

この情勢の変化に対する表現として一番評価が高いのは“Twitter”革命だ。抗議参加者が組織化活動をする上で、インターネットと、テキスト・メッセージ機能が、決定的な役割を果たしていた。名称こそ新しいが、パターンそのものはお馴染みのものだ。

その一: 選挙で、不正をされた-少なくとも、そういうことになっている。

その二: 投票の再集計- ソ連後の諸国で、今や必須の事後処理だ。

違いはなんだろう? 国際監視員たちは選挙は公正だと言い、今回は、指導部の交代だけでは不十分で、抗議デモ参加者は、主権の変更を要求している。

「デモ参加者ですと? 連中は、破壊者と呼びたいが、モルダビアの独立国家としての地位を崩壊させるという考えに取りつかれている」とロシア外務大臣セルゲイ・ラブロフは発言した。

暴動のさなか、ひるがえっていたのは、モルドバの隣国ルーマニア国旗だ。

「我々は、これについて、EUの注意を喚起したが、彼らはこれを非常に深刻に受け止めることを確約しており、ルーマニア国旗やスローガンが、モルドバ政府の状況を崩壊させるための口実に使われるような状況を防ぐべく、この暴力を非難したEUとルーマニア政府が対策をとってくれるよう期待している」と、ラブロフは補足した。

不思議なことに、EUはこの動きをほとんど無視した。過去10年間にわたって、多くの旧ソ連共和国で、カラー革命が起きた。ウクライナ、グルジアやキルギスタンでの革命では、新たなカリスマ的な「西欧指向」指導者が権力を握り、成功として称賛された。

ウクライナには二人もいた。"オレンジ革命"をかきたてた、ヴィクトル・ユシチェンコと、ユリア・ティモシェンコのデュエットだ。

しかし、一年の内に、この二人組は、革命精神を喪失し、対立して、これも問題であることが判明した。

四年後の今、ウクライナが債務不履行の地獄に直面する中でこの二人は、未だに誰が悪かったのか言い争いを続けている。

トビリシには、ミーシャが現れた。ミヘイル・サーカシビリと、彼のバラだ。大統領エドアルド・シュワルナゼの辞任を要求して、何千人ものグルジア国民が街頭にでての、穏やかなデモから始まった。

英語が流暢なサアカシュヴィリが紅潮してこう語った。「我々は平和的だったので、警察は我々を止めなかった。我々は暴力を用いなかった。武器をもっていないことを示すために、我々は両手をあげていたので、警察は我々が[政府の建物]に入るのを放置した。」

四年後、もう一つの穏やかなデモが行われ、何千人もの人々が、またもや大統領の辞任を要求したが、今度ばかりは、サアカシュヴィリも反抗的だ。

バラ革命は、しおれ、かつての仲間が、サアカシュヴィリの仇敵となり、今週の集会で、何千人もまとまり、辞職を要求した。

キルギスタンはビシケクのチューリップ革命の場合、計画通りに花開きはしなかった。

ソ連後の共和国諸国や他の国々で、革命というハンドルを操作していた西欧が、革命運動の指南をしていた、西欧から資金援助を受けているNGOに対し、厳しい措置をとったのだと、専門家は見ている。

ロシア雑誌プロフィール誌のフョードル・ルキャノフは、こう考えている。「これは、当時アメリカ政権の優先課題だった‘デモクラシーの推進’と称する大きな政策の一部でした。この考え方は、アメリカで衰退しはじめ、アゼルバイジャン、アルメニア、グルジアでも、カザフスタンや、モルドバのどこででも、もはや二度目の革命は成功できなくなっているのです。」

「この現象は、ブッシュ政権時代と、大いに関係していたと思います」とルキャノフは言い添えた。

記事原文のurl:www.russiatoday.com/Politics/2009-04-10/Colour_revolutions_come_to_nought.html

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2003年 グルジア・バラ革命
2004年 ウクライナ・オレンジ革命
2005年 日本・郵政911選挙

2009年4月 9日 (木)

KONAMIのファルージャ・ゲーム、攻撃を浴びる

gamesindustry.biz

James Lee

2009年4月8日

2004年のイラク戦争で、最も悪名高い戦闘の一つをもとにしたKONAMIのサバイバル・ホラー・ゲーム『ファルージャの六日間』が、イギリスの退役軍人、兵士の家族や、反戦団体による禁止の呼びかけをまき起こしている。

「イラク戦争における膨大な死者の数を思えば、この戦争をビデオゲームで美化することは、極めてまずい判断と、悪趣味の見本のようなものです」息子のトーマスが、イラクで憲兵として服務中に、群衆に殺害されたレグ・キーズは、デーリー・メールにそう語った。「ファルージャで一体何が実際に起きたのかを考えれば、実にとんでもないことです。」

「このような恐ろしい出来事は、歴史記録に残しておくべきで、スリルを求める連中がそれで、何度も繰り返し、永久に遊ぶために、矮小化したり、使われたりすべきではありません。さらにまずいのは、狂信的な若いイスラム教徒の手に渡るなどして、何らかの報復、仕返しを考えるよう駆り立てる可能性もあります。彼がそれにふれて、感情的になり、ゲームを本当に終えたくなるかもしれません。」

「私は、このゲームは禁止される様に呼びかけるつもりです。全世界ではないにせよ、確実にイギリスでは。」と彼は語った。

2003年の開戦前夜の演説(この演説の文章は、アメリカ大統領執務室にもかけられている)で有名な、大英帝国勲章授章者で元大佐ティム・コリンズも同意している。

「未だに継続中の戦争に関するビデオゲームの制作を始めるには、まだ早すぎますし、現代史上で最も重要な出来事の一つに対する、極めて軽率な対応です。」彼はこう語っている。「ファルージャで起きたことを考えれば、実に無神経であり、私は確実に、このゲーム発売に反対です。」

しかしながら、ベスト・セラー作家で元SAS隊員のアンディ・マクナブは、『ファルージャの六日間』を擁護している。戦争は、彼によれば、マスコミによって、もう長年にわたって、娯楽として広められてきたのだ。

しかも、「イギリス軍がイラクとアフガニスタンで失った人数全員を合計したよりも多くの兵士を[ファルージャで]」失った国であるアメリカと同じ様には、イギリスは、ファルージャの戦闘を理解していないと彼は主張している。

「文化的に、アメリカでは全く違うのです」マクナブは、TechRadarに語った。「アメリカでは、これは「ショッキングな恐怖」というわけではありません。これまで、誰もが、それを七年間ニュースで見てきたのです。マスコミが「ショッキングな恐怖」な物語が必要になると、何かこうしたものに焦点をあてようとする事実こそが偽善です。

「アメリカでは、90歳の老人も12歳の子供も、ファルージャで何が起きたか知っています。TVでも流され、それに関する書籍もあります。ゲームは、そうしたものの自然な延長です。民間伝承なのです。唯一の違いは、それが異なるメディアで提供されているというだけです。

「もしもゲームが良くできていて、アメリカ人に、こうした兵士たちの物語を提供してくれるのであれば、それよいではありませんか?」と彼は語った。

マクナブはさらに補足した。アメリカ陸軍は、現実の出来事を長年、シミュレーションをしてきています。実際、他のゲームで「ナチスや、麻薬の売人を殺す」のと大差ありません。バスラ遠征中、兵士達がラップトップ・パソコンでゲームをするのを彼は見てきた。「文化的に、そういうものに彼らはもっと乗り気です」と彼は結論づけた。

しかしながら、ファルージャの「虐殺」を美化するのは「悪趣味だ」と主張する平和団体ストップ・ザ・ワー・コアリションは、彼の見解に真っ向から対立する。

「アメリカとイギリス軍が、ファルージャで2004年に実行した虐殺は、違法で、不道徳な戦争の中で行われた最悪の戦争犯罪の一つなのです。」広報担当者のタンジー・E・ホスキンズはTechRadarにそう語った。

「侵略軍によって遂行された爆撃と戸別捜索で、最大1,000人の一般市民が亡くなったと推定されています。ファルージャで余りに多数の人々が亡くなったので、全ての遺骸に対処すべく、町のサッカー競技場を墓地に変えざるを得なかったほどです。」

「不当で残酷な占領に反対した人々の死に、祝うことなど皆無です。戦争犯罪をタネに、ゲームを作り、何千人もの死傷者につけこむのは悪趣味です。

「人々が残虐行為の遊びをするのに適切な頃合いなどあるわけがありません」とタンジーは付け加えた。「ファルージャの虐殺は、恥辱と恐怖とともに記憶されるべきであり、娯楽用に美化したり、糊塗したりしてはなりません。」

アントニー・クルーツ副社長は、ウォール・ストリート・ジャーナルに、KONAMIは「時事評論をしようとしているわけではありません。」と語った。

「我々は主戦論者ではありません」と彼は補足した。「私どもは人々に不快を感じさせようとしているわけではありません。我々は単に、人々を惹きつけずにおかない娯楽体験をご提供したいだけなのです... 要するに、これは単なるゲームなのです。」

『ファルージャの六日間』は、アトミック・ゲームズで開発中であり、来年アメリカで発売される予定だ。まだ、プラットフォームについては言及されていないが、PC、360およびPS3向けとなる可能性がありそうだ。イギリスの計画は、まだ発表されていない。

記事原文のurl:www.gamesindustry.biz/articles/konamis-fallujah-game-under-fire_8

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とんでもない会社だが、アメリカ軍はリクルート用に、以前からゲームを活用している。

島本慈子 ルポ労働と戦争-この国のいまと未来 岩波新書

を思い出した。

アメリカに連れられて、全面的に戦争にのめり込みつつある日本の、暗澹とした現在を克明に描き出している良い本だ。

この国の人々の多くは、テポドンに大騒ぎをしたようだ。それで、どんな被害があっただろう。(本当の、被害は、これを利用して、更に政治が右傾化したときに初めて目に見えてくる。その時には、もはや手遅れ。)

三沢基地から出撃した米軍戦闘機が、大遠征し(中近東の多数の人々を殺害したであろう)活躍しても、沖縄の嘉手納基地や、横須賀基地を経由して、同様に中近東やインド洋周辺で、無辜の民間人を殺害しても、騒がない。いくら距離が遠くとも、貧富の差、文化の違いはあっても、「無辜の民間人」ということでは、同じだろうに。

まずは「嘉手納等沖縄のアメリカ軍基地を廃止し」、それから、例えば、「北方領土」の返還を要求する、というのが、一般庶民が希望することではなかろうか?

日本の与党政治家(野党のごとき装いをしている与党分派の方々も含めて)諸氏は、「良い属国に生まれたものだ」とほくそ笑んでいるだろう。有権者、余りにも、騙すのが簡単。しかも何度だまされても懲りない。

属国体制、それでなくては60年も続かない。

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嘉手納基地で訓練飛行するラプター (嘉手納 道の駅で撮影)

ところで、ごくまれに、下記のような、素晴らしいテレビ放送もある。

ソマリアへ自衛隊、めちゃくちゃ違憲!伊勢崎賢治

『世界一受けたい授業』 伊勢崎賢治氏

2/1

世界一受けたい授業』 伊勢崎賢治氏

2/2 youtube

 

「戦争は儲かる」「平和産業を作らなければいけない」

2009年4月 7日 (火)

NATO、ウクライナをアフガニスタンへの経路として使用

2009年4月3日

ロシア・トゥデイ

ウクライナとNATOは、アフガニスタンの国際治安部隊を支援するため、非軍事的な貨物を、ウクライナ領土を通過させることに合意した。アメリカ合州国は既に幾つかの中央アジア諸国と同案件で合意していた。

3月25日の政府間での契約書草案承認を受け、書類は、木曜日、NATO本部でヤープ・デ・ホープ・スヘッフェル事務総長と、ウクライナのNATO特使イーゴリ・サガチによって署名されたと、ウクライナ外務省広報担当官ワシリ・キリリッチの発言を引用して、RIAノーボスチは報じた。

通過の正確な経路は特定されていない。

ウクライナが、そうした通過を認めた最初のCIS諸国というわけではない。2008年春、ロシアとカザフスタンも、同盟軍が、非軍事的な貨物を、ウクライナ領土を経由して、アフガニスタンへ送るのを助ける体制が整っていることを確認した。

ロシア外務省のアンドレイ・ネステレンコは、木曜日モスクワでの記者会見で、アメリカ側からの要求に従い、二月と三月、ラトビアから、中央アジア、ロシア領土を経由して、試行貨物が送られたことを指摘した。ロシア外交官は、ロシアは、アフガニスタンにおけるNATOの作戦を支援するいかなる軍事貨物も、通過させるという依頼は受けていないと指摘した。

他の中央アジア諸国で、アフガニスタンへの途上、NATOの非軍事的な貨物通過を認めている国々としては、タジキスタン、カザフスタンとトルクメニスタンがある。

金曜日、アメリカ合州国は、この件でウズベキスタンとも合意したと、あるペンタゴン代理人を引用して、RIAノーボスチが報道した。条約は、治安部隊の必要にあわせた、食料、医薬品および建設資材の通過を促進することを狙ったもの。

タリバン戦士の活動が増加しているのに対応して、アフガニスタン駐留兵士の人数を増強するという、オバマ政権の最近の計画渦中にあって、アメリカは特に契約締結を切望していた。

記事原文のurl:russiatoday.com/Top_News/2009-04-03/NATO_to_use_Ukraine_as_a_transit_route_to_Afghanistan.html

2009年4月 6日 (月)

アメリカ・ミサイル防衛網計画、プラハでのオバマ歓迎に水をさす

プラハ、4月4日(RIA ノーボスチ)

同国内におけるアメリカのミサイル防御網計画に抗議しようとチェコ人が待ち構える中、土曜日、アメリカ-EUサミットのために、アメリカのバラク・オバマ大統領がチェコ共和国に到着するにあたり、歓迎するようなしないような、中途半端な対応を受ける可能性が高い。

大統領と妻のミッシェルは、ロンドンG20サミットの目玉であり、NATO 60周年サミット前のストラスブールで、フランス大統領ニコラ・サルコジとカルラ・ブルニ・サルコジの花形ゲストだった。

チェコ共和国が、六ヶ月輪番制の欧州連合議長であるため、オバマは、EU会議のためプラハを訪問するわけだが、計画されているミサイル防御システムのレーダー基地が、チェコにとって主要な問題となる可能性が高い。

数千人の人々が、日曜日、計画に反対して抗議することが予定されているが、世論調査によるとチェコ国民の70%がこの計画に反対であり、オバマは、国会議員40名を含む、政治的、国民的有名人130人が署名した抗議状を受け取る予定だ。

基地とその人員問題に関する条約は、チェコ政府とブッシュ政権の間で締結されているとはいえ、国会はまだ条約を批准しておらず、先月チェコ政府が倒れて以来、この話題は、議題からはずされている。

チェコ社会民主党によると、党首イジー・パロウベクも署名者の一人であり、この元チェコ首相は、選挙民が新国会を選んだ後、首相の地位に返り咲く可能性もある。

とはいえ現在の指導部すら、煮え切らない歓迎の見込みしか表していない。

その政府が、三月に、不信任投票で破れた、ミレク・トポラーネク首相は、オバマの緊急経済対策を、"地獄へのハイウエイ"と呼んでおり、また、遠慮のないヴァーツラフ・クラウス大統領は、特に欧州連合と、気候変動を巡って論争を招いていることで有名だ。

従って、おそらくオバマが最近のアメリカ国内での作戦に沿い、プラハ城前での野外演説を利用し、アメリカ海外政策とアフガニスタンでの軍事協力について明らかにすべく、直接チェコ国民に話しかけようとしても驚くべきことではあるまい。

大統領がミサイル防御網問題に触れるかどうかは不明だが、チェコ国民は注意深く耳を傾けるだろう。アメリカ大使館から入場券を入手できない人々は、プラハ中心部の巨大画面で、イベントをライブで見ることができよう。

チェコ共和国内のレーダーと、ポーランド国内の10基の迎撃ミサイルによって構成されるミサイル防御システムは、長いこと論争の的になっている。プラハとワルシャワにとって中心的なものである、ロシアを怒らせてしまうという懸念にもかかわらず、この配備についての合意を得ようと、ジョージ・ブッシュ大統領は頑張った。

ロシアは、ロシアの国家安全保障に対する脅威だとして、ミサイル防御網に対して、一貫して反対しつづけており、一方アメリカ合州国は、イランなどのような"ならずもの国家"による攻撃の可能性を阻止するにはこれが必要だと主張している。

ロシア首脳は、繰り返し、アメリカの新政権が計画を最後まで完遂しないと良いという希望を表明してきた。またドミトリー・メドベージェフ大統領は、水曜日、オバマとの対談後、両国は"この難しい状況から脱する方法を"見いだすべく、あらゆる努力を払うつもりだと語った。

記事原文のurl:en.rian.ru/world/20090404/120919251.html

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関連翻訳記事の一部:
ワシントンとポーランドのミサイル防衛条約、世界を大戦へ一歩近づける

アメリカのミサイル網

これもまた「プラハの春」。くだらないテポドン騒ぎで、郵政カンポ施設譲渡の闇、すっかり消滅させられた。
まともに考えれば、本当に怖いのは、ゴミのような軍事予算しかない北朝鮮ではなく、日本の金と血をむしりとろうとする世界最大のならずもの国家、宗主国様だろう。

「アメリカのミサイル網」の記事に付記したコメントをそのまま複写しておく。

ヨーロッパでのMDをめぐる状況の展開と、東アジアでのそれとは実に対照的。

費用60億円の迎撃ミサイル発射実験、海自が失敗 読売記事

日本の軍・政治のトップは、第二次大戦の教訓を学ばず、かつての敵国の走狗となって、ごみ箱入りミサイル・システムに驚くほど巨額なむだ金を投じている。

陸では、パトリオット(愛国者)ミサイルPAC3なる売国的ミサイルが配備されている。

ミサイルで幸せになるのは、属国・宗主国のトップと軍需産業だけだろうに、さほど報道されずに、厚生省暗殺事件一辺倒。

昔攻めたアジア諸国との信頼関係がない、アパ論文が大手を振って通る日本には、ロシアに対するフランスのように、同調してくれる近隣諸国の声など決してあらわれない。

「属国でいてくれた方が安心」「余剰資金はごみ箱に捨ててほしい」と周囲の国々には思われているのかも知れない。今回の金融バブル崩壊で、宗主国に、10兆円既に献上したのだろうか、するのだろうか?

いや、そう思われるような特殊なイデオロギーを持っていればこそ、宣伝してくれればこそ、ごみ箱ゆきのミサイルを売りつけるのに便利なので、傭兵の「トップにしてもらえる」のだろう、と今ふと気がついた。

彼のトンデモ発言が宣伝されているのは、イラクでの安保条約・地位協定成立と並行する、対アジア諸国向けの日本属国恒久化の高等戦術のようだ。

「安保をなくして、独立したい」という異論反論を言うようでは、属国での出世はおぼつかない。

09/04/06補足:

孫崎亨という元外交官の方、出世を目指さない、素晴らしい方だと、彼の新著、『日米同盟の正体―迷走する安全保障』(講談社現代新書、2009年3月20日刊、798円)を拝読して思う。この本、安全保障政策について考える場合の、必読書だろう。

森田実氏も、ブログのエントリー記事4.5 その5で、同書、同氏を激賞しておられる。全く同感。田母神なる人物の暴論は新聞・テレビであきるほど報道される。孫崎亨氏の正論、新聞・テレビは全く触れない。

ところで、ちきゅう座の下記エントリー、今回のテポドン馬鹿騒ぎの狙いを明らかにしてくれている。
<09.04.04>
北朝鮮ロケットの「破壊命令」―真の標的は「血税と憲法9条」
<安原和雄> 安原和雄の仏教経済塾
同じ筆者で、
<09.03.20>
「生命線」・シーレーンの確保-あの「海賊対策」がめざす本音
も必読だろう。

ちきゅう座、本山美彦大阪産業大学経済学部教授、京都大学名誉教授記事他いずれも素晴らしい。
拝読を、日課にさせていただこうと思っている。

2009年4月 3日 (金)

アフガニスタンで、アメリカとNATO、世界最大、最長の戦争を遂行中

Rick Rozoff

2009年3月25日

Dandelion Salad

Stop NATO

10月7日に、この戦争は歴年で9年目に入り、今年、計画されている、最少30,000人のアメリカ兵士と数千人のNATO加盟国の軍隊を展開し、無期限に継続すると約束している。

これはアメリカ合州国の歴史の中で、空と地上戦線の双方で、二番目に長い戦争であり、果てし無く介入したインドシナが、これまでのところ、長さにおいて優るだけだ。

アフガニスタン戦争は、北大西洋条約機構として、ヨーロッパ外での最初の武力紛争であり、成立以来60年の歴史で、初めての地上戦だ。条約機構の第5条の相互軍事援助規定の初めての発動として、NATO加盟国全ての26ヶ国と、欧州・大西洋パートナーシップ理事会、平和のためのパートナーシップ、およびアドリア海憲章経由でNATOに繋がっている他のヨーロッパとカフカス諸国12ヶ国の軍隊の参加を得て遂行されている。

ワシントンと同盟諸国を支援するために、様々な人数の軍隊を派兵したヨーロッパのNATO加盟国12ヶ国の中には、かつては中立だった大陸の五カ国が含まれている。オーストリア、フィンランド、アイルランド、スウェーデンとスイスだ。

ヨーロッパのNATOと、パートナー諸国で軍を展開している国には、旧ソ連邦共和国の6ヶ国があり、アゼルバイジャン、グルジアとウクライナは、最近増派をも要求され、バルト海沿岸諸国の三カ国は、国民の人口数とは不釣り合いな人数の兵士を派兵している。 - 西欧の首脳やマスコミは、1980年代には頻繁に使われていた、侵略、帝国や、占領といった類の言葉を避けてはいるが。

この紛争で、ベトナム戦争以来、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドと韓国軍が、同一戦場における同一作戦の中で初めて戦闘したことになる。(2003年3月の後、この四カ国全てがイラクに派兵したが、アメリカ軍のみが戦闘した。しかしながら、アフガニスタンでは、特殊部隊を含む、1,000人以上のオーストラリア兵士が、対ゲリラ作戦に参戦し、そのうち10人が死亡した。)

合計で、42ヶ国が、北大西洋からは想像できないほど遥か彼方での戦争に、一握りの兵士から、数千人までにわたる派遣部隊を送り、NATOの元で服務させ、果てしのない参戦に巻き込まれているのは、西欧あるいは北米で紛争が起きた場合、お互いに、軍事援助を与えるという、主要西欧諸国による1949年の約束ゆえにだ。

バルト海沿岸三カ国、オーストラリア、および韓国の兵士を含む、千人以上の、アメリカ、NATOおよび、NATO加盟諸国の兵士が、この戦争の中で亡くなっている。

いわゆる「限りなき自由作戦」の御旗の元で、アメリカとイギリスの空爆とミサイル攻撃で始まった、2001年10月早々のアフガニスタン侵略と戦争の開始以来、このモデルは17ヶ月後に、イラクでも使われた。戦争はアフガニスタンそのものだけに限定されず、この国が、2001年9月11日のニューヨーク市、ワールド・トレード・センターのツイン・タワーと、ワシントンのペンタゴンへの攻撃に、極めて根拠があいまいなつながりがあるとされることを、アメリカと他のNATO軍を、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、パキスタンを含むいくつかの隣国や近隣諸国、およびインド洋 (ここで日本海軍は、限りなき自由作戦を支援している)への空軍基地や、兵士と海軍の展開をする口実に利用された。

ロシアの通信社イタル-タスは、120,000人のアメリカとNATO軍の兵士が、2008年にキルギスタンのマナス空軍基地を経由したと昨年12月に報じた。

2009年に、ペンタゴンとNATOに、キルギスタン政府が、アフガニスタン戦争で使用されている戦闘機の基地を閉鎖する可能性があるという、悪い知らせがもたらされた。この基地には、2001年以来、アメリカ合州国、オーストラリア、デンマーク、ノルウェイ、ニュージーランド、ポーランド、トルコ、オランダ、イタリア、スペイン、フランス、および韓国の軍事要員が宿泊した。

ペンタゴンは、限りなき自由作戦の担当地域を、15ヶ国を網羅すると公式に定義している。アフガニスタン、パキスタン、キューバ(グアンタナモ湾海軍基地)、ジブチ、エリトリア、エチオピア、ヨルダン、ケニヤ、キルギスタン、フィリピン、セイシェル、スーダン、タジキスタン、トルコ、ウズベキスタンとイエメンだ。

2001年10月のアフガニスタン侵略後、アメリカとNATO加盟諸国は、非常に協力的なコフィ・アナン国連事務総長(彼は1995年には、旧ユーゴスラビアへの国連事務総長特別代表やNATO特使を勤め、アメリカが、彼の前任者ブトロス・ブトロス-ガリを退任させ、1997年に、他の安全保障理事会メンバーの14ヶ国を脅しつけ、彼を受け入れさせ、事務総長にすえられた)から、国際治安支援部隊(ISAF)設立を承認する決議を獲得した。当初は、アフガニスタン占領を監督することになったいたが、後にはアフガニスタン国内で、本格的な対ゲリラ作戦を開始し、国境を越え、パキスタン。ISAFは、始めから国際的なものではなかったし、今でも国際的なものではない。丸ごとNATOの作戦だ。

2001年12月から2003年8月まで、ISAFの指揮は、主要なNATO加盟諸国による六ヶ月毎の回り番だった。この時期が終わった後、指揮は、集団的にNATOにまかされた。当初、その任務は首都カーブルに限定されていたが、2003年までには、任務は首都外に、そして2006年までには、アフガニスタンの全部の州にも拡張された。

爆撃され侵略された国に、戦闘部隊を展開し、その国中で空襲と地上攻撃を遂行するというのは、戦争と占領という単語の仮の定義として考え出せる限り、最上のものだろう。

アフガニスタンは、アメリカとそのNATO同盟諸国や加盟希望諸国に、新兵器を実験し、21世紀の対ゲリラ作戦をしかけ、42ヶ国以上からの、いわゆるニッチ配備軍隊を統合し、兵器とミサイル戦争の相互運用性を実現する機会を提供する、永久的な訓練所、射撃練習場と化した。

中でも、ポーランド軍幹部は、アフガニスタンで、NATOは、ポーランドに、第二次世界大戦開始以来、戦争地帯や、戦闘作戦に配備されたことがないポーランド軍を現代化するための条件を提供してくれたと、あからさまに語っている。NATOは、その焦点をヨーロッパの"防衛"に向け直すべきだというポーランドとバルト海沿岸諸国首脳による最近の発言とあわせて考えると、大アフガニスタン戦争戦域は、東欧や南カフカス諸国を、ロシアの東部、南部国境での作戦に備えさせるための実験場なのだ。

先月アメリカは、ポーランドと、ポーランドの特殊部隊を訓練する(ペンタゴンが既にグルジアで行ったことに匹敵する)条約を締結し、アフガニスタンが、共同実施のための最も喫緊の現場であると言及した。

NATO加盟諸国各国による派兵人数よりも、数万、おそらくは数十万人の、NATO軍兵士が、過去七年半にわたり、アフガニスタン、キルギスタン、タジキスタンとウズベキスタンに交代で駐留し、またその過程で、主要なNATO加盟大国の指揮の下で服務を経験したという事実の方が重要だ。

今年早々アメリカ中央軍司令官デビッド・ペトレイアスは、アフガニスタンでの戦争を拡張するための軍事補給路として、カフカス諸国のグルジアとアゼルバイジャンに目をつけはじめ、旧ソ連の中央アジア共和国である、カザフスタンとタジキスタンを訪問し、これらの国々を、益々拡張しつつある南アジア戦争の渦に取り込もうとしている。

昨年末ロシア軍参謀総長ニコライ・マカーロフ大将は、「アメリカ軍事基地は世界中に点在している。アメリカはルーマニアとブルガリアに基地を開設し、我々が得ている情報によると、カザフスタンとウズベキスタンにも基地を設置しようと計画している。」と警告した。

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アメリカとNATOがアフガニスタンを攻撃し、侵略し、ソ連時代の戦略的な空軍基地全てを(最近では、2005年にイラン国境近くのヘラート州にあるシンダンド空軍基地を)占拠し、言いなりの傀儡政権をしつらえて、国家と国民を支配する口実を、西欧の官界や、従順なマスコミは、盛んに繰り返している。

そもそも、2001年9月11日攻撃の記憶が、アメリカや世界中の記憶にまだ新ただった頃、限りなき自由作戦の論理的根拠は、オサマ・ビン・ラディン、ムラー・オマールや、彼らの首脳部の何人かを、ニューヨークの金融センターとアメリカ国防省本部への破壊的攻撃に対する復しゅう法的懲罰として、追跡して捕らえて"法に基づいて裁く"か、殺害するということだった。

年月が過ぎ行くうちに、ビン・ラディンとムラー・オマールらが逮捕されないばかりでなく、彼らの行方さえ定かでなくなり、焦点は、この両者を匿ったかどで、タリバンとの戦いへと移された。

この最悪の場合の代案は、事実 ワシントンで、ほかならぬドナルド・ラムズフェルド国防長官が、9/11直後に、ほぼ世界の三分の一、60ヶ国もの国々が、テロリストを匿っており、従ってミサイルや他の攻撃による格好の標的だと主張しながら、タリバンを承認し、財政援助をし、明らかに、武器を与えた三カ国、パキスタン、サウジアラビアとアラブ首長国連邦を、攻撃リストから、これみよがしに除外した事実から、偽りであることが分かる。

タリバンが悪いという主張も、アメリカの、ボイス・オブ・アフガニスタン(ラジオ・フリー・ヨーロッパ/ラジオ・リバティの支流)によって、アメリカがしつらえたハミド・カルザイ大統領が、「"わがタリバン"は"対ソ連の聖戦において、我々と協力して戦った。」と称賛するのを繰り返し引用されては台無しだ。

2003年に、アフガニスタン諸州に扇形展開するのを正当化するため(元々のカーブル司令本部に加え、NATOは北、南、東および西司令部を立ち上げた)アメリカとNATOの機転は、事後的に、人道的な装いを採用することだった。地方再建班(PRT)なるものも設立した。

侵略軍隊は、建物を建設するのでなく、破壊するよう設計されている、爆撃機、巡航ミサイル、15,000ポンドのデイジー・カッター弾や長距離砲を装備しており、地方再建班(PRT)は、1960年代初期の南ベトナムにおける、戦略村落計画をモデルとする地方宣撫班と呼ぶ方が正確だろう。

アフガニスタンやその周辺で西欧が駐留を継続し、拡大し、軍事作戦を強化するのを説明すべく、更なる理由をひねり出すことが必要となった。

タリバンは権力を握って4年で、少なくとも一つの目標は実現していた。タリバンはアヘン栽培を抑止したのだ。

ところが、NATOのアフガニスタン占領から数年後に、アフガニスタンは、世界最大のアヘン製造、輸出国となり、昨年秋、同盟は、アヘンや"麻薬密売人"に対し、武装襲撃を計画していると発表した。二つ目のものは、西欧が定義することに決めているのだが。

アフガニスタンで、そして今やパキスタンで継続中の果てしない戦争は、ビン・ラディン狩りから、対タリバン戦争、更には、1999年に開始された、アメリカの残忍な事業、プラン・コロンビアに範を取る麻薬戦争へと変身した。そのモデルを再現すべく、300人のコロンビア人兵士がアフガニスタンに展開される予定だという報道もある。

アメリカ大統領バラク・オバマによる、アフガニスタン出口戦略に関する最近の演説にもかかわらず、ワシントンと同盟諸国がアフガニスタンや、アフガニスタンがその中心となる、より広範な、南アジア/中央アジア/カスピ海盆地/南カフカス外周からいつか撤退するつもりがあるのか明らかではない。

二週間前、ロシアのノーボスチ通信のウエブサイトは、この見方の特集を載せた。「アメリカは、この地域の政権を、グルジアのサアカシュヴィリや、ウクライナのユシチェンコの類に置き換えるために、アフガニスタン戦争を始めたのであり、それは、アフガニスタン大統領ハミド・カルザイから始まったのだと、中央アジア諸国は考えている。イラン、中国とロシアは、この戦争は、自分たちの中央アジアに対する影響力を皆無にするためのワシントンの企みだと思いかねない。」

アフガニスタン侵略の四ヶ月弱前、中国、ロシアと旧ソ連邦の中央アジア共和国の四カ国、つまり、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタンとウズベキスタンが、相互安全保障集団の上海協力機構(SCO)を設立し、後にはインド、イラン、モンゴルとパキスタンをオブザーバーとして取り込んだ。

その目標は、地域の安定を実現し、麻薬密輸、武装過激派や分離主義を含む国境を越えた犯罪問題に対処することだ。

創立以来、この機構は、エネルギー、運輸、貿易そしてインフラストラクチャー分野における共同開発計画にも益々力を注ぎつつある。

ソ連の崩壊後、SCOの創立メンバー諸国も、オブザーバー諸国も、中央アジアを、中央アジア諸国と、ロシア、中国、イラン、インド、そして、最終的にはトルコさえも含む国々の間に相互に恩恵のある関係をはぐくむ構造とみなしてきた。

アフガニスタンは無限の混乱の中に投げ込まれており、何十万人もの国民が強制退去させられた。ほぼ連日の爆撃、無人機ミサイル攻撃、真夜中の奇襲攻撃、検問所での一般市民への無差別射撃。大規模な干ばつと飢饉。アヘン栽培と密売の激増。国の崩壊や分割や、核を持つ隣国インドとの緊張激化の可能性を伴って、パキスタンを燃え立たせることによる不安定化の拡大。

これがアフガニスタン侵略から七年半後の現在の深刻な状況だ。

更に30,000人のアメリカ兵士と、NATOからの更に数千人(最近、イタリア、ポーランド、グルジア、アゼルバイジャンと他の国々が増派を発表した)の配置により、西欧軍兵士の人数は、間もなく100,000人に達する。

これは火に油を注ぐものだ。タリバンは、アルカイダがそうであったような、不定形のものと化している。パシュトゥーン族地域でない同国北部および南部ですら、アフガニスタンにいる人間で、国内や、村落で、死と破壊をもたらす西欧の戦闘機や戦闘部隊に異議を唱える人々は、いまやタリブだ。敵なのだ。

より多くのアメリカとNATO兵士が、アフガニスタンにやってくればくるほど、一層の敵意と抵抗と暴力がおきるだろう。不可避的に。

アメリカとNATOは、上海協力機構や、ソ連崩壊後の集団安全保障条約機構からの、アフガニスタンの、長い間苦しんできた国民や、地域をひどく苦しめている無数の危機に非軍事的な解決をもたらすために、地域で協力するという申し出を、ごう慢にも拒否した。

NATOは、国づくり、平和維持、あるいは、人道主義的組織などではない。NATOは攻撃的な軍事同盟だ。NATOとその個々の加盟国の軍隊が、南および中央アジアを撤退して初めて、癒やし、再建と、永続する平和が始まろう。

記事原文のurl:dandelionsalad.wordpress.com/2009/03/25/afghanistan-us-nato-wage-worlds-largest-longest-war-by-rick-rozoff/

国連も、NATOも、ましてアメリカも、国づくり、平和維持、あるいは、人道主義的組織などではない。それぞれ自らの国益のために頑張っている。
カルザイ政府よりも卑屈な属国日本傀儡政権だけが、宗主国の国益のために頑張っている。

今、反自民ブロガーの皆様の間で人気沸騰中の小沢代表が主張している(た?)ISAFへの派兵、いかにインチキなものかは、この記事のISAFの説明でも一目瞭然。
ISAF派兵こそまだ実現していないが、ソマリア派兵を言い出したのはブレジンスキーの弟子長島民主党議員。
自民から民主に政権交代したとて、「オザワのチェンジ」?という属国体制「継続」が待っているだけ。

そして、今まさに、NATO首脳会議が開催中。

マスコミ報道の一例(サンケイmsn)をあげておこう。
(この記事に格別、同意、感心するものではない。)
暗証番号いらずのATM国家日本が、アフガニスタン警官の給料を払う話はどうなっているのだろう?

NATO首脳会議開幕へ「新戦略」概念を協議

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