中東でのアメリカ軍の優位は高価な神話であることが判明
Gareth Porter
2009年3月6日
Antiwar.com
イラクにおけるアメリカの主要戦闘部隊を、少なくとも2011年まで維持し、アフガニスタンにおけるアメリカ軍の関与を強化し、イランに向かって対決姿勢をとるという主張はアメリカ合州国が地域における支配的軍事勢力であり続けることを想定したものだろう。
しかし、地域における、最近の歴史におけるパターンや、現状の進展は、そうした想定を裏付けてはいない。アメリカ合州国は、アメリカの影響に対して抵抗することを固く決めた、強情な民族主義者や、宗派勢力を圧倒することができないばかりでなく、軍事的優位を活用して、イランに対する強制的外交を遂行することにも成功してはいない。
更には、イラクとアフガニスタンで軍隊を維持するアメリカ合州国の能力すら、アメリカ合州国に決して歩調を揃えているとは言えない政権に依存していることが明らかになっている。
6年前、アメリカ合州国が、アフガニスタンのタリバン政権と、イラクのサダム・フセインを排除した後、アメリカは、地域において、軍事上支配的であるかのように見えていた。イラクとアフガニスタンにいる、およそ200,000人の兵士の外にも、アメリカ合州国は、ペルシャ湾岸の首長国から、イラクやアフガニスタン、キルギスタンやウズベキスタンのような中央アジアの共和国までの地域に広がる空軍基地のネットワークと、ペルシャ湾を遊弋するアメリカ空母上の航空機とで、イランを包囲していた。
ところが、2003年以来、この地域における出来事が、全般的なアメリカ軍の駐留、特に地上軍が、この地域における実権であるという仮説に対し、一連の打撃を与えている。最初の一撃は、アメリカが、イラクで、スンナ派武装反抗勢力を鎮圧しそこねたことだった。2005年中頃までには、イラク駐留アメリカ軍司令官達は、アメリカ軍占領は、レジスタンを撲滅するというよりも、生み出している方が大きいことを公的に認めていた。
次なる打撃は、2006年のバグダッドにおけるスンナ派-シーア派の内戦で、アメリカ軍はブッシュの追加兵士の"増派"の後でさえも、それを防ぐことも、止めることもできなかった。政府の潜在的支援によるシーア派民兵によるバグダッドのスンナ派地域の"民族浄化"は、首都のスンナ派地域の広大な部分が占拠されてようやく、終わった。この事実は、"連合軍"が "イラクにおける宗派間暴力のサイクルを打ち破ったのだ"という、駐イラク・アメリカ軍最高司令官レイ・オディエルノ大将による後刻の自慢話とは矛盾する。
2006年と2007年に、スンナ派武装反抗勢力がアメリカ軍に協力することを決断したのは 、アメリカ軍の武勇による結果ではなく、シーア派民兵に対する敗北と、スンナ派は、同時に三つの敵(アメリカ、シーア派民兵と、アルカイダ)と戦うことはできないという自覚によるものだった。
それは、イランと密接な結びつきを持ったヌリ・アル-マリキ首相のシーア派政府が、権力基盤を固め、アメリカ合州国からかなりの程度の独立を実現することも可能にした。
ジョージ・W・ブッシュ政権とアメリカ軍司令部は、アメリカがイラクの米軍基地を無期限に維持できるような振りをし続けていた。2007年中頃、国防長官ロバート・ゲーツは、何万人ものアメリカ兵を何十年も駐屯させるという韓国モデルを、イラク向けの計画として打ち上げた。
しかし、2008年7月、アル-マリキ政府は、2010年末までに、全てのアメリカ軍がイラクから撤退するよう要求し始めた。当初、軍の撤退要求が真剣なものであることを信じることを拒否してはいたものの、ブッシュ政権は、全てのアメリカ軍を2011年末までに撤退させることに同意を強いられた。
イラク政治の進展は、デビッド・ペトレイアス大将が、まずい戦略から、アメリカの戦争を魔法のように救い出し、最終的に、イランを含むアメリカの"敵"に打ち勝ったのだという有名なお話が、本物ではないことを示している。
イランの核開発計画を巡る、イランとの紛争で、ブッシュ政権は、イラクでイラン人を捕らえ、イランの核施設に対する間接的な攻撃の脅威を振りかざし、テヘランを怖がらせようと試みてきた。だがアメリカやイスラエルの攻撃に対し、アメリカ基地と兵士に対し、おそらくはペルシャ湾地域の戦艦にすら、型破りな攻撃で反撃することを、イランが、きっちり脅かすことができるがゆえに、威圧的外交は功を奏しなかった。
一方、2001年から2005年にわたり、アメリカ合州国が支配しているかに見えた、アフガニスタンで、タリバンや他の武装反抗勢力集団は、それ以来急速に増大し、同国のパシュトゥーン族地域の大部分で、事実上の政府となっている。アメリカ軍の駐留も、こうした地方での武装反抗勢力の台頭を抑制することはできていない。
地域におけるアメリカ軍の優位というイメージに対するごく最近の打撃は、アメリカ合州国は、アフガニスタン駐留軍への補給用として確実なアクセス経路を持ち合わせていない事実が明らかになったことだ。アフガニスタンへのあらゆる補給の約80パーセントを輸送するのに、アメリカ軍はパキスタンのカイバル峠を通る経路に長らく依存してきた。
しかし、2008年に、タリバンの同盟勢力は、カイバル峠経由のアメリカ補給路を極めて効果的に破壊し始め、もはやアメリカ軍への補給路としてあてにできなくなってしまった。これはつまり、アメリカ合州国は、アフガニスタン駐留軍に補給をするための他のアクセス経路を見いださねばならないことを意味する。
CENTCOM(中東司令部)の新司令官デビッド・ペトレイアスは、ロシアの港から、陸上を、カザフスタン、更に ウズベキスタンをへて、北部アフガニスタンへと入るアフガニスタン向け新経路への約束を手に入れようとして中央アジアにまででかけた。
だが、この代替案は、ロシアの協力に依存するものであり、中央および南アジアのライバル勢力に、この地域へのアメリカ軍駐留に対する拒否権を与えるものだ。キルギス大統領は、二月早々のモスクワ訪問中に、マナス空軍基地のアメリカによる使用を認める条約を終了させるつもりだと発表した。これはロシアは、中央アジアにおけるロシアの優位性と一致する限りにおいてのみ、アメリカ軍に協力するという信号だった。
アフガニスタン駐留NATO軍用の補給輸送をウズベキスタンに依存することは、ペトレイアス計画の中でも、きわめて脆い部分だった。人権虐待で悪名の高いカリモフ政権は、イスラム教徒の武装反抗勢力に直面しており、これは同国経由の補給路を破壊しかねない。
ずっと短く、より安全なアフガニスタンへの輸送経路は、イランのチャバハール港から、アフガニスタン西部の都市ヘラートを経て、全ての主要なアフガニスタンの都市につながる環状ハイウエイへというものだ。駐アフガニスタンNATO最高司令官は、2月3日、イラン経由で軍に補給するというイランとの二者間協定にNATOは"反対しない"と語った。
ある情報通の元アメリカ軍幹部によれば、注目すべきは、ペンタゴンがイラン経路を利用するという緊急時対策を決定したということだ。これは、ロシア-中央アジアの経路が、確実なものとはほど遠いと見なされていることを示唆している。
一方、アメリカ軍が、中東での権力のために、この地域におけるライバルに依存することを、アフガニスタンにおける軍事駐留用の確固とした基盤と見なすとは考えられない。
オバマ政権の幹部は依然として、アメリカ軍の駐留が、この地域の発展にとって、あたかも決定的な影響力を与えているかのごとく、中東政策を語っている。しかしながら、過去6年間にわたる出来事が、それは偉く金のかかる神話であることを示している。これは、ワシントンの幹部たちには到底お気に召さない真実を、強調している。地理と現地の社会政治的な力学が、アメリカ軍の威力をねつ造したのであり、将来においても、そうであり続ける可能性が極めて高そうだ。
記事原文のurl:antiwar.com/porter/?articleid=14357
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アンポゆえに、搾取されるカンポ資産(郵政・小泉竹中問題)を脇において、オザワだニカイだ、国策捜査だとかまびすしい。マスコミが、わーっと単一の話題を設定するときは、必ず、もっと重要な話題が闇に葬られている。アンポゆえに、憲法を破壊する企みが着々進行中。オザワかアソウかより、アンポ、ケンポウ、カンポの方が庶民の暮らしにとっては重大だろうと素人は思う。マスコミの優先順位と、庶民の優先順位が一致するはずもないが。
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オザワだのニカイだのというマスコミ大本営垂れ流し記事に一喜一憂しておられる諸氏、大本営記事の解釈にふりまわされて、時間を潰すのはやめ、この集会でも発言されている半田滋氏の新刊「『戦地』派遣 変わる自衛隊」(岩波新書)を読まれてはいかがだろう。
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