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2009年3月12日 (木)

オバマ、アフガニスタン戦争の戦略を提示

wsws.org

James Cogan

2009年3月11日

先週金曜日のニューヨーク・タイムズとの大統領インタビューで、アフガニスタン戦争をエスカレートするというオバマ政権による計画の核心が、自暴自棄なものであることがあらわになった。

アメリカが主導する軍隊は、アフガニスタンでの戦争で勝利しているのかどうかと尋ねられて、オバマはぶっきらぼうに「ノー」と答えた。それしか答えようはなかったろう。アメリカとNATOの占領に対する武装反抗勢力は、過去数年間で大幅に増大した。

パシュトゥーン族が生活するアフガニスタンの広大な南部諸州と、パキスタンの部族地域は、イスラム教徒のタリバンか、占領に反対する軍閥司令官ガルブッディン・ヘクマティアルの率いるヘズビ・イスラミなどの勢力によって実質的に支配されている。

占領軍の死傷率は、今年になって、2008年同時期と比較して倍増し、アメリカとNATOの兵士54人が死亡した。アメリカ会計検査院によると、アフガニスタン政府の治安部隊に対する攻撃は三倍となった。50人以上のアブガニスタン人警官が、毎月、武装反抗勢力によって殺害されている。南部アフガニスタンの多くの地域では、警察官は警察署から外に出ない。

アフガニスタンでは、アメリカが主導する軍隊、国境周辺では、アメリカが支援するパキスタン軍による、既に7年以上にわたる弾圧と脅しを味わってきた貧困に苦しむ国民たちの遺恨と敵意によって、レジスタンスは増幅されている。イスラム教徒こそ、地域を支配しようという企みを持ったアメリカに対して戦っている唯一の人々だと見なされている条件の下、彼らは依然として支持を集め続けている。

タリバンとつながる細胞は、パキスタンのあらゆる主要都市で、積極的に活動しているように思われ、より広範な戦争の危険が増している。同国経由のアメリカ-NATO軍の陸上補給路は、既に頼りにならず、ワシントンは、ロシアや、ウズベキスタン経由の代替輸送路を探すよう強いられている。アフガニスタンへの補給路を巡るアメリカ軍周辺の懸念は強く、中国やイランに支援を求めてはどうかという提案さえ出されるにいたっている。象徴的に、アメリカ国務長官ヒラリー・クリントンは、今月末開催される、アフガニスタンに関するサミットに、イランを参加するよう招請している。

アフガニスタンにおける軍事的な現実は、占領軍は、国民からの大きな支持を得ている武装反抗勢力を抑制できずにいる。オバマが派遣しようとしている更に17,000人のアメリカ兵士増派後でも、90,000人以下のアメリカおよびNATOの兵士と、わずか80,000人のアフガニスタン政府兵士がいるにすぎない。アフガニスタンの規模、地理、人口から考えれば、500,000人以上の軍隊が必要だろうと軍事専門家は推測している。

パキスタンの部族地域では、100,000人以上のパキスタン兵士を伴う作戦も、タリバンによる支配を破れず、アフガニスタン人武装反抗勢力が利用している隠れ家を潰すこともできず、彼らの越境活動も抑止できてはいない。

こうした文脈の中で、オバマが概要を述べた戦略は、2006年後半から、2007年にわたりイラクで、"覚醒"とよばれた作戦を、再現する占領軍の能力いかんにかかわっている。

イラクにおけるアメリカの兵力を160,000人以上にまで押し上げた、更なる兵士30,000人の"増派"と同時に、アメリカ軍司令官デビッド・ペトレイアス大将は、武装反抗勢力の指導者たちや戦士たちに賄賂を渡して、攻撃をやめさせる政策を実施する権限を与えられた。対象とされた集団は、圧倒的多数がスンニ派アラブ人だった。最終的に、100,000人以上が、アメリカが給料を支払う民兵に加わり、特に、バクダッド郊外と西部のアンバル州では、アメリカ軍が、武装反抗勢力内部の少数派の過激派イスラム教徒達を壊滅させるのを手伝った。

オバマは、タイムズにこう語った。「もしも、ペトレイアス大将に質問をすれば、イラクでの成功の一因は、イスラム教原理主義者と見なされていても、イラクにおけるアル・カイダの戦術によって、完璧に疎外されたため、我々に進んで協力しようとする人々に働きかけたことによるところが大きい、と彼は答えると思う。」「アフガニスタンや、パキスタンでも、同じような機会の可能性があり得るだろう」と彼は語った。

しかしながら、アフガニスタン、あるいはパキスタン人が"覚醒"する見込みは、イラクにおける進展の背後にあった主要な要素を無視したものだ。アンバル州では、伝統的なスンニ派の部族指導者達と、アル・カイダに同盟する派閥との間で紛争があり、バクダッドのスンニ派武装反抗勢力は、アメリカが支援する政府を支配していたシーア派原理主義者政党に対する凶暴な宗派的内戦に敗北したがゆえに、変節したのだ。

何千人ものスンニ派の人々が、日々の無差別的な殺害から逃れるために、首都から脱出していた。スンニ派武装反抗勢力は、レジスタンスを止めることで、イラク軍と警察の刑罰が免れられる環境で戦っていたシーア派暗殺部隊から、自分たちの地域やコミュニティーを、アメリカによって軍事的に保護してもらうことを目指していたのだ。

今でさえ、状況はもろいままである。アメリカ占領はイラクの中に宗派的な対立を生み出し、サダム・フセイン政権を支配していたスンニ派の支配層が主な犠牲となり、シーア派エリートが恩恵を受けることとなった。長期的には、覚醒に賛成するしか選択肢がなかったと感じている連中の恨みと欲求不満が、アメリカ軍と、シーア派が主導する政府に対する新たな戦いをひき起こしかねない。

アフガニスタンと、パキスタンの部族地域では、タリバン、あるいはヘズビ・イスラミにとって、イラクで起きたように、占領に服従したり、アメリカが支援する政府を受け入れたりする明らかな理由は存在しない。はるかに装備の優れたアメリカとNATOの軍の手によって、大きな死傷者をこうむってはいるものの、彼らの戦略的な立場は、いかなる時より、遥かに強くなっている。

反タリバンのタジク族の軍閥司令官アフマド・シャー・マスードの元顧問ハロウン・ミルは、イギリスのガーディアン紙にこう発言している。「和解は、政府が優勢だった2003年なり2004年であれば良い考えだっただろうが、今や物事は万事タリバンに有利に進んでいる。連中はカーブル周辺におり、彼らにとって政府側につく誘因など皆無だ。」

戦争遂行に反対して軍を退役したイギリス軍特殊部隊元少佐セバスチャン・モーリーによる3月6日の発言は、主要な州であるヘルマンドの状況についての極めて無遠慮な描写だ。

モーリーはテレグラフ紙に対し、こう語っている。「我々が遂行している作戦は無意味だ。我々はヘルマンドのごくちっぽけな区域を保持しているにすぎず、我々の基地から500メートルより先に何らかの影響力を及ぼせるなどと考えることは、自分をごまかしているにすぎない。我々が現地を掌握できていて、基地の外部の物事に何らかの影響力を持っている等と考えるのは正気とは言えない。我々は作戦に出撃し、タリバンと殴り合いをし、それから基地に戻ってお茶を飲むだけなのだ。我々は現地掌握などできいない。

「タリバンは、我々がどこにいるのかを知っている。連中は我々がいつ基地に戻ったかをすっかり把握している。この紛争に関する限り、我々は上っ面すら撫でてもいないと思う。消耗と死傷者レベルはひたすら増えるだろう。これはベトナム紛争の始まりと同じだ。これからまだまだひどくなる。」

現時点では、オバマが提案した政治的解決は、タリバン諸派やらヘズビ・イスラミに、大半のパシュトゥーン族の諸州支配権か、アフガニスタン政府の大臣職を与えることによってのみ実現できるだろう。しかしながら、これはつまり、占領に協力したパシュトゥーン族反対派、特にハミド・カルザイ大統領周辺の連中を、脇に追いやることを意味する。

そのような政策が検討されているのは明らかだ。軍事的な状況が悪化するにつれ、カルザイ政権を、その腐敗と無能をめぐって、アメリカが逆襲する可能性が次第に高まっている。カルザイの支持者たちは、州の歳入を略奪したり、ヘロイン密輸業者から賄賂やリベートを取り立てたりすることで、かなりの財産を蓄財したと言われている。最も傑出しているのが、カルザイの弟アフメド・アリ・カルザイで、南部のカンダハール州における麻薬密輸を監視しているアメリカの機関から、公的に非難されている。

オバマ政権は、アメリカ帝国主義がアフガニスタンから追い出されてしまうのを防ぐことが、その最優先事項であることを明らかにした。カーブルに必要な政府の"現実的な"評価ができていると宣言した。 つまり、アメリカ占領は、アフガニスタンを「デモクラシーの繁栄する」国に作り替えることを目指しているのだというブッシュのプロパガンダを破棄したのだ。

カルザイを弱体化させ、追い落とそうという動きがすすめられている。彼の任期は5月21日におわる。アフガニスタン憲法では、大統領選挙は、任期の30から60日前に行うことになっている。ところが、アメリカとNATO諸国が支援する選挙委員会は、アフガニスタンの多くの部分で信頼に値する選挙を行えるような治安は、それより早くは実現できないという理由で、選挙を8月20日に決定した。

カルザイは、正当にも、この決定は敵対的な動きだと解釈している。彼は5月21日以後は引退し、"暫定"政府に地位を譲るべきだという要求に直面している。選挙は、憲法通りに行われるべきだという彼の布告は、選挙委員会によって先週拒否された。彼は今選挙までは大統領のままでいると主張しているが、任期は日程どおりで終わりだという運動は続いている。

カルザイに対する特に強い反対の声は、2001年にアメリカ軍とともに戦った北部同盟-民族的には、タジク族、ウズベク族と、ハザール族の軍閥司令官達から上がっている。彼らはまさに オバマ政権が、タリバンと、どのような共同政権構想を実現するにあたっても、声をかけざるをえない連中でもある。北部同盟の支持者たちは、アフガニスタン軍の将校団をも支配している。

暗黙の内に、オバマのアフガニスタン政策は、カルザイの政権に置き換わる新たな軍閥政権を生み出すこと基づくことを意味している。タリバン諸派や他のパシュトゥーン族の実力者達が、アメリカのアフガニスタン駐留の継続を受け入れる限りにおいて、オバマは、彼らと、また北部同盟の有力者達との間における勢力圏の分配を支持するだろう 。

この薄汚い政治的現実主義は、アフガニスタン占領の、反動的で、新植民地主義的な性格を浮き彫りにするものだ。ほかならぬ、中央アジアと中東の資源の豊かな地域への支配権を拡張するべく、アメリカ帝国主義のために運用される基地を確保するという目的のために、何万人ものアフガニスタン人と何百人もの外国兵が命を失ったのだ。

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2009/mar2009/afgh-m11.shtml

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マスコミによる関連記事もどうぞ。

AFP BBNews
英SAS元司令官「アフガニスタン派遣は無価値だ」

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警察署の外に出られないような状況もある国の警察官全員の給料を、半年分も進んでさしだす「暗証番号不要のATM国家」に、我々は生きている。銀行のATMの前には、警官が立っていて、「振り込め詐欺」防止活動をしてくれているが、国そのものが、「振り込め詐欺」宗主国に、気前良く支払っても、止める術はない。給料負担も、宗主国の帝国支配幇助でしかないだろう。

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