対テロ戦争はでっちあげだ
Paul Craig Roberts
2009年2月4日
Information Clearinghouse"
アメリカ政府のプロパガンダによると、テロリストの細胞が全米に広がっており、政府としては、あらゆるアメリカ人をスパイし、他の憲法による保護の多くに違反せざるをえなくなっているのだとという。ブッシュ大統領の退任演説の中には、アメリカが間もなくまたイスラム教テロリストに攻撃されるだろうという警告があった。
もしもアメリカにテロリストが侵入していれば、政府に教えてもらう必要はない。事件でわかるはずだ。何も事件が起きていないので、無意味な戦争、市民的自由の侵害、国民IDカードや、飛行機に乗るときの不便さといやがらせを、国民に受け入れさせている、この恐怖を維持するため、アメリカ政府は、それを警告で代用しているのだ。
テロリスト細胞など存在しないという最も明らかな徴候は、ネオコンは一人たりとも暗殺されていないことだ。
私自身は、暗殺なぞ認めず、わが国の政府が政治的暗殺に関与していることを恥ずかしく思うものだ。アメリカとイスラエルは、アルカイダが真似をするための非常に悪い見本を作ってしまっている。
アメリカは、アルカイダとタリバンに、彼らの指導者達を暗殺して対処しており、イスラエルは、ハマースに、その指導者を暗殺して対処している。アルカイダが、中東にいるアメリカの戦争扇動者や指導者に対し、同じように対処するだろうと考えるのは妥当だろう。
現在、あらゆるアルカイダのメンバーは、イラク、アフガニスタン、レバノンやガザのイスラム教徒が味あわされている死や荒廃に、ネオコンが連座していることは十分に承知している。しかも、ネオコン連中は、非常に目立つので、ハマースやヒズボラ指導者と比べれば恰好の標的だ。ネオコン連中は、マスコミでもう何年も特定されており、誰でも知っているように、彼らの名簿はオンラインで入手可能だ。
ネオコン連中は、シークレットサービスによる警護を受けていない。考えるだけでもぞっとすることだが、ネオコンの誰でも、また全員でも、アルカイダが暗殺するのは朝飯前だろう。ところが、ネオコン連中が自由に動き回っていることは、アメリカにはテロ問題などないという格好の証明ではないか。
ネオコン連中が絶えず主張している通りに、もしもテロリストが、アメリカの諸都市に大惨事をもたらす核兵器や有毒な放射性物質を撒き散らす爆弾をアメリカに密輸できるなら、テロリストは、どんなネオコンでも、また元政府幹部でも暗殺できる武器だって調達できるだろう。
ところが、イスラム教徒たちから最も憎まれているアメリカ人であるネオコン連中は、無傷のままだ。
“対テロ戦争”なるものは、アメリカによる石油パイプライン支配、軍-民間警備会社複合体のもうけ、警察国家を助長する連中による市民的自由への攻撃、そしてイスラエルの領土拡大等を覆い隠すための、でっちあげなのだ。
アメリカが侵略をして、アルカイダをイラクに入らせなかったサダム・フセインを打倒し、アルカイダを入りこませるまで、イラクにはアルカイダなどいなかったのだ。タリバンは、テロ組織ではなく、アフガニスタンをイスラムの法のもとで統一しようと狙っている運動だ。タリバンによって、脅かされている唯一のアメリカ人は、タリバンを殺害し、アフガニスタン国民に傀儡国家を押しつけようとして派兵しているブッシュだ。
イスラエルの違法な併合後、わずかに残された場所であるパレスチナで、ハマースは民主的に選ばれたのだ。イスラエル政府とアメリカ政府がテロ組織であるのと同じ意味では、ハマースもテロ組織だ。ハマースをイスラエルの覇権下に抑え込むのを目指して、イスラエルは、パレスチナ人に対して、テロ爆撃と暗殺を行っている。ハマースは、イスラエルのテロに対して、自家製の効果のないロケット弾で反撃している。
ヒズボラは、イスラエルが自国領土拡張をもくろんでいる中東地域の一つ南部レバノンのシーア派を代表している。
アメリカが、ハマースとヒズボラに“テロ組織”という烙印を押しつけているのは、紛争で、アメリカがイスラエル側についていること以外に何の理由もない。ハマースとヒズボラがテロ組織だというアメリカ国務省の「所見」には何ら客観的根拠はない。単なるプロパガンダ的発表に過ぎない。
アメリカ人もイスラエル人も自分たちの爆撃を、民間人へのテロとは呼ばない。アメリカ人とイスラエル人がテロと呼んでいるものは、自分たちの国が、弾圧者連中に忠実な傀儡によって支配されているがゆえに市民権がない、抑圧された人々の反撃なのだ。この人々は、自分たちの国を奪われ、国務省も、国防省も、国連議席もなく、大手マスコミで発言もできない。彼らができるのは、外国の覇権に屈伏するか、入手できる限られた手段を使って抵抗するかのいずれかだ。
イスラエルとアメリカ合州国が、この根本的な事実が悟られないように、果てしのないプロパガンダを遂行しているという事実こそが、間違っているのは、イスラエルとアメリカであり、パレスチナ人、レバノン人、イラク人、そしてアフガニスタン人が不当に扱われていることを示している。
フォックス“ニュース”なるものの戦争プロパガンダのために働いている退役アメリカ軍人連中は、イランが、イラクとアフガニスタンの反抗分子やハマースに武器を供与していると、いつまでも主張し続けている。しかし、どこに武器があるだろう? アメリカの戦車に対処するのに、反抗分子は、大砲の砲弾から、自家製の爆発装置を作り出すしかないのだ。6年間の紛争後でも、反抗分子は依然として、アメリカの武装ヘリコプターに対する武器をもっていないのだ。この“武装”を、アメリカが三十年前にアフガニスタン人がソ連を追い出すべく戦っていた時に供給した兵器と比較して頂きたい。
ガザに対するイスラエルの残忍な猛攻撃の映像は、膨大な数のガザ住民がイスラエルの爆弾から逃げたり、死者や不具になった人々を掘り出していたりする場面だが、こうした人々の誰一人武装していない。今頃までに、あらゆるパレスチナ人、あらゆる男性、女性、子供たちは武装しているはずだろうと人は考えがちだ。ところが、イスラエルによる攻撃についての全映像は、非武装の人々を映し出している。ハマースは、反抗のあかしにすぎない自家製ロケット弾の自製を余儀なくされている。もしもハマースがイランから兵器を供給されていれば、イスラエルのガザ攻撃で、イスラエルの武装ヘリコプター、戦車や、何百人ものイスラエル兵士の命が犠牲になっていただろう。
ハマースは小規模な組織で、防弾チョッキを貫通できない小口径ライフル銃の装備しかない。ハマースは、イスラエル入植者の小集団が、ヨルダン川西岸のパレスチナ人村を襲い、パレスチナ人を追い出し、パレスチナ人の土地を収用するのを止められないのだ。
大きなミステリーがある。60年間もの圧政後も、なぜパレスチナ人は依然として非武装のままなのだろう? パレスチナ人を非武装のままにしておくことについて、明らかにイスラム諸国がイスラエルやアメリカに加担しているのだ。
イランが高度な武器をパレスチナ人に供与しているという根拠のない主張は、サダム・フセインが大量破壊兵器を持っているという根拠のない主張と同じだ。こうした主張は、中東でアメリカとイスラエルの覇権を確保するために、アラブの民間人を殺害し、民間の経済基盤を破壊することの、プロパガンダ的な正当化だ。
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