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2009年2月 1日 (日)

アメリカで真実を語るのは首を覚悟のおおごと

Paul Craig Roberts

2009年1月26

"Information Clearinghouse"

「証拠は机上にある。これが拷問だった事実は否定しようがない。」

これは拷問事件を調査すべく、国連人権委員会から任命された国連職員マンフレッド・ノーワークの発言だ。ノーワークは、オバマ大統領は、ジョージ・W・ブッシュ元大統領と元国防長官ドナルド・ラムズフェルドを起訴する法的な義務があるという結論を出した。

もしもオバマ大統領の銀行家経済チームが、アメリカ経済のわずかな残りにとどめをさしてしまったら、自分の失敗とアメリカのいや増す困難さから、国民の注意を逸らすため、オバマはブッシュとラムズフェルドを告訴するという責任を果たすかもしれない。だが当面、興味深い疑問は、なぜアメリカ軍が違法な命令に屈伏したのだろうか?ということだ。

カウンターパンチの2008年12月号で、アレクサンダー・コバーンは、ハーバード大学法学大学院の歴史の恥ずべき一章についての記事に答えを書いている。ジョナサンとデイヴィドのルベル兄弟二人はハーバード大学法学大学院生で、朝鮮戦争に反対し、積極的に政治活動をしていた。マッカーシーの赤刈り時代のことで、兄弟は召喚令状を受けた。召喚令状は米国憲法修正第一項に違反するという理由で、二人は出廷を拒否した。

ハーバード大学法学大学院は、すぐさま学生たちに議会に協力するよう圧力をかけた。他の学生たちは二人を排斥した。学長と教授会からの圧力は威嚇に変わった。ルベル兄弟は準最優等で卒業したにもかかわらず、二人はハーバード・ロー・レビュー誌(訳注:オバマはこの雑誌の編集長をしたことがある)に近づくことが許されなかった。彼らの奨学金は止められた。ハーバード法学部教授会の過半数が二人の除籍に投票した(除籍には投票の三分の二が必要だ)。

一体なぜ、ハーバード法科大学院は、アメリカ憲法を擁護した二人の優等生を裏切ったのだろう?  政府(そして疑いなく資金供与者たちも)を不快にさせて、自分たちの立身出世が危うくなることがないよう、ハーバード大学法学部は憲法の原則を犠牲にしたのだ、とコバーンは結論づけている。

そうした個人的な臆病な行為を、我々は日々目にしている。最近、ユダヤ人学者でイスラエル評論家ノーマン・フィンケルシュタインの事件があった。彼の終身在職権が、自分の大学の学部のために、イスラエル・ロビーに立ち向かうことを恐れたデ・ポール大学の臆病な学長によって阻止された事件だ。イスラエル・ロビーは、カトリック教の大学に、イスラエルを批判する人間は大学における終身在職権を得られないという原則を押しつけることにまんまと成功した。

自己の利益を計算することで、アメリカ人ジャーナリストは、イスラエルとアメリカ政府のプロパガンダとアメリカ議会のサクラとなり、アメリカ以外の世界が非難している、イスラエルの戦争犯罪を是認させられている。

アメリカ軍当局者が、拷問は国のトップ層から下された政策だと理解した時、正しいことをすれば、自分たちの出世が犠牲になることはわかっていた。彼らは臨機応変に対応した。そうしなかった一人がアントニオ・タグバ陸軍少将だ。アブグレイブ監獄の拷問スキャンダルをもみ消さずに、タグバ将軍は正直な報告書を書き、自分の出世の道を閉じた。

内部告発者を保護する法律がありながら、苦しめられるのは常に内部告発者であり、悪事を働く者ではない。ブッシュ政権が、NSAを使って、アメリカ人をスパイするようにし、アメリカ法律の元で、重罪を犯していることがとうとう明らかになると、司法省(英語で「正義」省)は内部告発者を追求した。重罪については、何も行われなかった。

それでも、ブッシュと司法省(英語で「正義」省)は、“アメリカは法治国家だ”と主張し続けている。

ブッシュ政権は無法政権だった。これがオバマ政権が合法的なものになることを困難にしている。拷問審理は、当然に戦争犯罪審理へと至るだろう。タグバ陸軍少将は、ブッシュ政権は戦争犯罪を犯したと語っている。オバマ大統領は、パキスタンに対し、子供3人を含む20人を殺害した、違法な越境無人機攻撃を命じた就任三日目に戦犯となった。アメリカ軍やアメリカのNATO傀儡軍によるアフガニスタンの家や村の爆撃と機銃掃射も戦争犯罪だ。オバマは法を執行することができない。彼自身が既に法に違反しているからだ。

何十年にもわたって、アメリカ政府はイスラエルの領土拡大はいかなる国際法によっても制約を受けないという立場をとり続けてきた。アメリカ政府はレバノン、ガザとヨルダン川西岸におけるイスラエルの戦争犯罪に加担しているのだ。

イスラエルが、戦争犯罪を犯したことを、またアメリカ政府が武器や、外交上の支援によって、そうした犯罪を可能にしたことを世界中が知っている。イスラエルとアメリカがレバノンやガザで行ったことは、ナチスがニュルンベルク裁かれた犯罪と何ら異なるものではない。イスラエルはこれを理解しており、イスラエル政府は現在弁護の準備をしている。これはイスラエルの司法(英語で「正義」)大臣ダニエル・フリードマンが率いることになる。国連の戦争犯罪担当者リチャード・ファルクは、イスラエルのガザ住民虐殺を、ナチスによるワルシャワのゲットーにおけるユダヤ人の飢餓や虐殺になぞらえた。アムネスティ・インターナショナルと赤十字は、イスラエルが、戦争犯罪の責任を問われるように要求している。八つのイスラエル人権団体さえもがイスラエルの戦争犯罪の究明を要求している。

オバマのグアンタナモ監獄閉鎖命令などほとんど無意味だ。本質的に、オバマの命令なぞ広報活動の一環に過ぎない。裁判手続きは、アメリカの裁判所と、でっちあげられた事件を告訴することを拒否した軍の弁護士によって、既に停止されている。囚人の大多数はアフガニスタンの軍閥連中につかまり、金で愚劣なアメリカ人に“テロリスト”として売られた不幸な人々なのだ。ブッシュ政権が我々に“生存している最も危険な連中”だと語った囚人の大半は既に釈放されている。

オバマの命令は、CIAの秘密監獄を閉鎖したり、CIAが人々を誘拐し、彼らをエジプト等第三世界諸国に送り、拷問させる違法な引き渡し慣行を止めさせたりすることについては、何も語っていない。

アメリカが、特別な利害関係による狙いが法律を超越する国ではなく、法治国家になるため、オバマは日和見的な政治家では決してとれないリスクを引き受けねばなるまい。

アメリカでは真実を語ることはできない。大学では真実を語れない。マスコミでは真実を語れない。法廷では真実は語れない。それこそが、被告達や被告側弁護人が裁判に愛想を尽かし、警官が起きてもいない軽犯罪を訴える理由だ。

真実は決して政府によって語られることはない。ジョナサン・ターリーが最近言った通り、ワシントン“は原則が死に絶える場所なのだ。”

記事原文のurl:www.informationclearinghouse.info/article21847.htm

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アメリカの虐待・拷問にからんで、extraordinary renditionという言葉がある。

「特例拘置引き渡し」と訳すらしい。

テロリストとおぼしき人物を捕まえ、アメリカ法の及ばない第三国に引き渡し、拷問調査させるもののようだ。

Wikipediaを見ると、この言葉のあとに、わざわざ「アメリカによる」と書いてある。これを主題にした映画さえあるようだ。

「アフガニスタンの軍閥連中につかまり、金で愚劣なアメリカ人に“テロリスト”として売られた不幸な人々」、分かりやすく言えば「拉致」被害者ではないか?

北朝鮮は、日本人を多数「拉致」したとんでもない国だ。

だが、もし「特例拘置引き渡し」が「拉致」に近いものなら、アメリカこそ、北朝鮮と比較にならない世界最大のならずもの「拉致」国家ということになるだろう。

ほとんど詳細報道がないのは、北朝鮮は日本人を拉致したから「ならずもの国家」だが、アメリカはイスラム教徒を拉致しているのだから「ならずもの国家」でないという不思議な業界論理が、きっとあるのだろう。

西山記者の沖縄密約スクープ事件も、同じ性質の事柄だろう。

「苦しめられるのは常に内部告発者であり、悪事を働く者ではない。」

政府のみならず、大手マスコミも、いまだ沖縄密約の事実を黙してかたらない。アメリカ側では、公開されてしまっているのに。

宗主国で「真実は決して政府によって語られることはない。」のだから、まして属国においておや。

最近の事件では、NHKへの「従軍慰安婦」番組政治介入問題で発言したディレクターの方が退職されるという。悪いのは、彼ではなく、介入した側の、あの大物右翼政治家だ。

東京も“原則が死に絶える場所なのだ。”

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