ソマリア沖自衛隊派遣への疑問『世界』09年3月号
海賊対策にはソフトパワーを 前田哲男 軍事史研究家・評論家
ソマリア海賊の深層に迫る 竹田いさみ 獨協大学教授
狙いはアフリカの資源確保だ 谷口長世 国際ジャーナリスト
新聞広告で記事の題目を読み早速拝読。おかげで頭がすっきり。
ここでは、竹田いさみ教授の論文のごく一部を引用させていただこう。
海賊の正体
内外のメディアは、「海賊の正体は元漁民」というフレーズを繰り返し、外国漁船に漁場を奪われた「哀れな漁民」が、やむなく「海賊に転身」して犯行に及んでいるという報道を重ねた。
しかし本当にそうなのであろうか。結論を先取りして言えば、ソマリア海賊はプロの犯罪集団であって、単なる元漁民などではない。
そのプロの犯罪集団は、どのようにしてできあがったのだろう。
イギリスの陸軍特殊空挺部隊(SAS)出身のリチャード・ウエストベリー卿が作った海洋安全保障コンサルタント会社ハートセキュリティーが、そこにからんでいる。プントランド自治政府のコーストガードなるものに、この民間セキュリティ企業が、警備ノウハウを教えたのだ。習った側がこれを悪用すれば、立派な海賊ができあがる。ひどいマッチ・ポンプではないか?
同論文を再度引用しよう。
密漁や違法操業を摘発、漁船員を事情聴取して逮捕へと至る一連の法執行のノウハウを、約五〇~七〇人のソマリア人に教えたのは、言うまでもなく、あのハート・セキュリティである。
密輸シンジケートの話なども実に興味深い。
『狙いはアフリカの資源確保だ』も説得力十分の必読文献。
詳細は、「世界」2009年3月号をお買い求めの上、ご一読頂きたい。
特集「雇用の底が抜ける」も素晴らしい。湯浅誠、宇都宮健児他の方々が書いておられる。
『世界』09年3月号 定価は780円。
竹田いさみ教授論文、このブログで先に載せた下記記事の内容に対する正解なのだろう。
論文で指摘されている、哀れな漁民が、やむなく海賊に転身した趣旨の問題記述を引用しておく。
「村人たちからの、口からの出血、腹部の出血、異常な皮膚疾患や呼吸困難等いった多様な健康障害の報告がある」と国連は言っている。
およそ300人の人々が、有害な化学物質のせいで死亡したと信じられている。
2006年に、ソマリアの漁師達は、外国の漁業船団が、ソマリア国家の崩壊を、ソマリアの魚種資源を略奪するのに利用していると、国連に苦情を申し立てた。こうした外国船団は、往々にして、ソマリア人民兵を雇って、地元の漁師を恫喝していた。再三の要求にもかかわらず、国連は対応することを拒んだ。一方、戦略的に重要なアデン湾をパトロールする世界の大国の戦艦も、有毒化学物質を沖で投棄する船を沈没させたり、だ捕したりしてはくれなかった。
そこで、海域を汚染され、生計手段が脅かされて怒ったソマリア人は、自ら解決をすることにした。漁師たちは武装して、非公式な沿岸警備隊として活動しはじめた。」(ソシャリスト・ワーカー紙)
何度でも書くが、ソマリア沖の海賊対策として、軍隊を派遣しては、と国会で言い出したのは、民主党の長島代議士。今、ソマリア沖に軍艦を出している組織の中には、NATOもある。
軍艦は単独では行動できない。当然NATOやアメリカの海軍とも協力して行動する。ソマリアの海賊は、NATOに参加するための口実。上記論文『狙いはアフリカの資源確保だ』には、そうした軍事同盟の組織の詳細がかかれており、まさに、「海賊は森を隠す木」という言葉もある。日本の軍隊をNATOに参加させるのが本当の狙いだろう。オバマの本当の師であるブレジンスキーは『セカンド・チャンス』で、はっきりと書いている。日本を北大西洋条約機構に参加させよ。と。
そして、この話題を国会に持ち出した長島議員、アメリカ留学時に、ブレジンスキーの授業で良い成績を得たのが自慢だと、ご自分で書いている。覚えのめでたい生徒が、今、先生の書いたシナリオを日本で実行しているだけのことだろう。
追記:09/4/8
水島朝穂早稲田大学法学学術院教授(憲法・法政策論)による、下記記事のほうが、マスコミの垂れ流し記事より、重みがある意見だろう。
「海賊新法」は何が問題か ―― 海賊と日本(1) 2009年3月9日
海賊対策のもう一つの道 ―― 海賊と日本(2・完) 2009年3月16日
ゴンベイ様より、「マスコミの垂れ流しより重いだろう。」は、曖昧だというご丁寧な指摘を頂いた。たしかに、曖昧かもしれないので表現を変えた。
とはいえ、この部分を、罪が重い=良くない意見だ、と解読されるような方、おられるかもしれないが、こうしたマイナー記事をそもそも読みにはこられまい、と思う。
ゴンベイ様の貴重な御意見、毎回有り難く拝読している。ただ、悲しいかな、語学力、文章力、経済力がついて行けないきらいがありそうだ。この点、平にご容赦をお願いしたい。
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