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2008年12月12日 (金)

ごう慢と無知

イヴォンヌ・リドリー

2008年12月10日

"Information Clearinghouse"

ある有力なシンクタンクによる最新報告書によれば、タリバンは、今やアフガニスタンの72パーセントに、恒久的な勢力を確立している。

しかし、インターナショナル・カウンシル・オン・セキュリティ・アンド・ディベロップメント(ICOS)がこのニュースを発表してから数時間内に、アフガニスタン、アメリカやイギリスの様々な政治家や大使たちが、その内容を批判した。

旅行するのは安全ではないので、こうした連中の誰一人として、アフガニスタンの現地で何がおきているのか本当に知りはしないというのが真実で、仮に彼等の誰かが、あえて外出するとしても、カーブルという都市から外にでることはごく稀なのだ。

ICOS報告書が重要であるということを私が理解できる理由は、私自身がアフガニスタンから帰国したばかりであり、しかもアフガニスタンに行く大半の政治家、外交官やジャーナリストたちと違って、私は護衛なしででかけたからだ。

タリバンは、カーブルを巡る首吊り縄を形成しつつあり、ICOSが言うように、首都に入る幹線道路の四本のうち三本は、今やタリバンによる脅威にさらされている。

私がなぜ知っているのだろう? アフガニスタン中を、映画監督のハッサン・アル・バンナ・ガニと一緒にドライブし、証拠を自分の眼で見たからだ。うかつにも、私たちはカーブルから30分のガズニへの幹線道路上で、タリバン戦士とアフガニスタン警察との間の戦闘に車で入り込んで、すんでのところで頭を吹き飛ばされるところだった。

私たちは、ペシャワールから、劇的かつ歴史的なカイバル峠を通って、トルハムへと下り、更にそこから、ジャララバードから、カーブルへと直行した。

これは驚くべきドライブで、恐らくは世界で最も景色の良い道路の一つなのだが、この機会に、私がはっとせられたのは、背景をなすヒンズークシ山脈、あるいは前方に連なる険しい山頂から下がる、薄物のような朝霧に覆われた、豊穣な緑なす谷でもない。

それはアフガニスタンの首都までのドライブを特徴づける、道路脇の生々しい死体の山だった。タリバンの手中にあるロケット推進式の躑弾発射機の標的となった、およそ20輌の石油輸送車の残骸を見たに違いない。

これは、イギリス首相のゴードン・ブラウン、アメリカ次期大統領バラク・オバマ、あるいはハミド・カルザイ達自身が、まず目にすることがないだろう光景だ。なぜなら、カーブルに入る唯一安全な方法は空港に飛行機で入ることだから。

我々にはそういう贅沢な選択の余地がなかったので、この危険な経路をドライブするという私たちの判断は、飛行機の座席がとれるまで、イスラマバードで更に一週間ぶらぶらしているわけには行かなかったという事実に基づいている。

けれども、これを経験できたことを、私は嬉しく思う。おかげで、アフガニスタンの現場で何がおきているかを自分自身で見る機会が得られたからだ。くる日もくる日も、重装備の軍による護衛やら、しっかりと防備を固めた職場やら、さらに強固に警備された睡眠の場などという贅沢を許されずに生きている一般人と話す機会が得られたからだ。

その次の週は、他の外国人達があえて足を踏み入れない地域への道路を、自動車で、護衛なしで旅行し、先に書いたように、私たちは、素晴らしい映像のために、すんでのところで高い代償を払うところだった。

その経験のおかげで、西側の指導者や、顧問の全員には到底あり得ないレベルの知識の高見から書かれたICOS報告を読み取れる。

それこそが、今やタリバンが、一年前の54%から増え、アフガニスタンの72%に恒久的に駐留しているという、ICOSの主張を無視するのは愚行だという理由だ。タリバンは南部の中核地域から前進し、アフガニスタンの西部および北西部の諸州でも、カーブル北部の諸州でも多くの都市や村で、今や事実上の支配勢力だ。

ICOSの理事長で、主任現地調査員のノリン・マクドナルドQCは、ロンドンの記者会見で語った。「タリバンは、現在アフガニスタンで、政治的、軍事的な原動力を支配しています。

「アフガニスタンにおける治安レベルがここ数カ月の間、一層悪化しているにもかかわらず、驚くべきことに、国際社会の反応はほとんど変わっていません。武装勢力はNATOの弱みを、自分達の強みに変え続けています。」彼女はそう付け加えた。

「タリバンは、カーブルを巡る首吊り縄を締めつけつつあり、NATOの目の前で、タリバンが、アフガニスタンをあっさり制圧してしまう本当の危険性がある」とICOSの政策部長ポール・バートンは語っている。

駐アフガニスタンイギリス大使サー・シェラード・カウパー-コールズは、月曜朝BBCラジオ4トゥデイの番組のレポートでコメントし、軽蔑的な雰囲気で、こう語っている。「報告書の方法には、ひどい欠陥があるのではないかと懸念しています。つまり、例えば今私の目の前にある報告書のカーブル地図は、今ここに座って皆さんにお話していて、今朝もカルザイ大統領と会うためにあたりをドライブした地域を、タリバンの影響が極めて強い地域だとしているのです。

「実際は全く逆です。アフガニスタン人は街路を散歩し、断食明けの祭りイードを祝っています。ICOS報告書は、ヨークシャーと同じ広さの州における一つの出来事をとりあげて、その州が恒久的なタリバン支配のもとにあるとしています。報告書は大変に薄っぺらな代物です。」

サー・シェラードの傲慢さと無知は、まさに驚異的なものに他ならない。誘拐の恐怖があるため、外国人は誰もあえて護衛なしに、カーブルで外出して散歩などしない。そして彼は、重装備した護衛のもとで、インタビューに応じていることは私が請け合って良い。

カーブルのイギリス大使館を私は見てきた。大使館は、巨大なコンクリート・バンカーの土手と、鉄条網と重装備の警備員の背後に隠れている。2003年3月に私がそうしたように、大使館にぶらりと歩き寄ることはできない。

サー・シェラードについて、私は何も知らないが、彼はカーブルでどこにも散歩などには出かけはしないと賭けてもよい。けれども、私は報告書の著者ノリン・マクドナルドなら知っている。彼女は勇気のある女性で、カーブルでも、更にカーブル外へも、本当に現地に出向いているため、重要な知識をもっているのだ。

しかも私は、アフガニスタン内でもいくつかの最も危険な地域で、彼女がしゃがみこんで、アフガニスタンの男たちや、女性たちと、彼らの希望、要求や恐怖について話しているのを目撃している。

番組トウデイでは、アフガニスタンの議員シュクリア・バラクザイも話をしていたが、報告書について尋ねられると彼女はこう言った。「びっくりしました。これは本当ではありません。もしもタリバンがそれほど強力なら、連合軍やアフガニスタン政府自身が、どうして存続していられますか? 治安は欠如していますが、タリバンがそこまで強力だとは思いません。それが事実です。

「タリバンは依然として治安上と、連合国軍に対する多少の脅威ではあり、また場所によっては、特に民間人にとって、治安上の脅威です。しかし発表された数値には全く同意できません。」

私はシュクリアと会う光栄にも属したが、彼女は極めて裕福で、特権的な家系出身の素晴らしい女性だ。金持ちであること自体は犯罪ではないが、シュクリアは飛行機以外では、カーブルの外には出はしないだろうことは請け合える。

彼女は快活で、聡明な女性で、思いやりがあり、国を深く愛しているので、国会議員になった時には、私も嬉しかった。

アメリカとイギリスのアフガニスタン駐留を大幅に増強するという計画を私は本当に恐れている。「より大きな軍隊、より大きな標的、おもちゃの兵隊から奪い取れる更なるぴかぴかの新兵器」のように]思えるものを、タリバンは揉み手をして待ち構えているのが私にはわかる。

アフガニスタンおいて、タリバンの権力復帰を望まない人々の間ですら、アメリカの駐留はひどく嫌われている。これは様々なことに至るのだが、とりわけ、アメリカ兵のあらゆるごう慢さ、アメリカ軍の遅々とした車列を追い越そうとする運転手なら誰でも射撃する文化とアメリカ軍の習慣を、受け入れたり、理解しようとしたりすることへの拒否がある。

お考えいただきたい。前方の道路がすいている時に、一体なぜ、時速9キロ以下で進んでいる装甲兵員輸送車の集団の後ろで待たなければならないのだろう。

交通渋滞の中で、忍耐強く待っていると、自由に通行できる専用車線を作ろうと決めたアメリカ軍の車列に、自分の自動車が押しつぶされ、脇に押しやられてしまうという目にあう、アフガニスタン人運転手と話してみられたい。アンクル・サムの息子たちの振る舞いを彼がどう思っているかを具体的に語ってくれるだろう。

無辜のアフガニスタン人を虐殺した結婚式の祝宴に対するアメリカのミサイル攻撃の果てしないリストがある。こうした殺害の後で、お詫びがあることは極めて稀で、そうした事件は起き続けている。

ノリンは、自由で開かれたマスコミが必要だとも言っている。それは素晴らしいことだろうが、アメリカ占領に反対する記事を書く全ての人間は、アメリカ人の訪問を予期しなければならないという文書化された証拠もあるのだ。期限切れのアメリカ軍の軍用食がカーブルの闇市で売られていることを暴露した後に、誘拐され、打擲され、バグラムの独房に18時間放り込まれる結果となった、そうしたある若いジャーナリストと話したことがある。

お聞きいただきたい。カーブルの青空市場で売られている品物の間を歩き回って見つけた通り、その話は本当なのだ。そこでは本当にアメリカ軍の軍用食が売られていたし、それを証明するハッサンの映画もある。

西側の指導者は、自分たちのご主人たちが聞きたがるだろうと思うことだけを語る横柄な公務員、政治家や外交官の話を聞き、現実に目を背け、更に多くの兵士を送り込むことを選ぶか、あるいは腰を据え、ICOS報告を読み、それに対して行動することもできる。

アフガニスタンの危機には、解決策があり、ごう慢で無知なアメリカ軍を取り除き、更にイギリス人も排除することはその方法の一つだ。なぜなら、アフガニスタン人はもはや、この二者を区別できないのだから。

大砲の砲弾ではなく、本当の支援で人々を爆撃し、アフガニスタン政府に、条件付きの援助ではなく、本当の支援を与えるのだ。

まともな給料が払われる本当の仕事を生み出す計画というのも手始めとしては適切だ。また、まずは男性から始めて、カーブルの瓦礫からキャリア・ウーマンに出現してもらうのも良かろう。本当の仕事を与えることによって、威厳を取り戻してもらうのだ。

飢餓と、月におよそ40ドルの金でタリバンのために戦うのと、どちらを選ぶと言われたら、どういう結論を出すかは明白だ。お考え頂きたい。頭を使わなくてもよい非常に簡単なことだ。

イヴォンヌ・リドリーとハッサン・アル・バンナ・ガニのドキュメンタリー映画「In Search of Prisoner 650(囚人650号を探して)」は、Press TVで、2009年早々放映予定。

記事原文のurl:www.informationclearinghouse.info/article21428.htm

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AFPで下記ニュースが、この記事の話題。

タリバン、「アフガニスタン国土の7割に勢力拡大」 国際シンクタンク 

加藤周一が亡くなった。

加藤周一講演会 老人と学生の未来-戦争か平和か 2006年12月8日、東京大学駒場900番教室

後編の24:40付近に、興味深い発言があった。そのまま書きおこしておこう。

だから、この、あれですね、憲法を変えれば、アメリカのご機嫌をとるにしてもね、そう簡単にいかないと思いますね。で、だから、アジアでの孤立と、それから、アメリカとの間のギクシャクという問題が、つまり、外交的困難が増大する。で、その増大した外交的困難が、アメリカへの依存を強める。で、アメリカへの依存の強化が、外交的困難を増強する、ということで、その、いわゆる悪循環を起こす、だろうと思うんですね。
で、そのことを意識してやっているのかね、意識してやっていないのか、それは、私には分からない。
だけど、私が言っていることは、ちょっとその、実際にそうなった時に何がおこったかををご覧になったら、あの時加藤が言ったことは、口からでまかせだったか、そうでないかということは、すぐわかるんですよ。その時まで覚えておいて頂きたいんだな。政府の言ったことも覚えておいて頂きたい。記憶がなければ駄目ですよ、ね。だから、一つ一つの事件を、技術的な細かい所に入って行くことは、それは専門家でないと非常に困難だし、第一、そこに引き込むことは罠ですよ、一種の、ね。批判を封じる罠ですよ。そうじゃなくて、その、事件と事件とのつながりを見なければね。で、つながりは方向性を持ってるんだから。だからその、方向性に対して反応しなければいけないと思うんですね。
だから、それは非常に悪いね。ま、その外交的な技術で言えば、タイミングですね。時間を、今やることということは、その言語道断な愚挙だと思う。それで、そういう風に思っている人は沢山いるんですよ。あの日本の中に何人いるか知らないけれども。アメリカにも沢山いるんですね。
だから、あの、英語をお読みになる方は、あの、英会話をしないでね、で英会話をすることより、その英語の新聞に、あの何が書いてあるかということをご覧になった方が良いと思う。それで、もし日本の新聞に書いてあることの誤差があれば、その差が何を意味するかということを見極める必要があると思うんですよね。

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小学校での英語教育の必修化、つまりは植民地化の一歩に違いない。主眼は、英会話におかれるだろう。決して、健全なリテラシー教育という方向には行くまい。

だいたい、現場に詳細をまかせるなどという科目が、一体他のどの科目であるだろう。そもそも、導入する前に、教師のレベル・アップ、養成・強化が先決だろう。それは本来、中学校の英語教師のレベル・アップ、養成・強化から始めるべきだろう。属国の文部科学省、独立を目指す教育方針をたてるはずがない。

12/26補足:小学校に続いて、高校の英語でも、同じようなことを言い出した。教師皆様の実力向上強化策もなしに。

結論は、アメリカ青年男女を税金で日本に招き、知日派(ジャパン・ハンドラーの卵)を、税金で育てあげるだけに終わるだろう。早い話、日本調査・洗脳部隊の養成用支援金を支払うようなものではないか。そういう人々に学んで、英語のアメリカ式発音だけ巧くなっても、それに何の意味があるだろう。

本当は、加藤の言う様に、英会話などしないで、メディア・リテラシーを養う教育を、日本人が自前で行えばよいだろうに。

属国の傀儡政権・官僚は、決して独立は目指さない。従属強化を、60余年継続しただけのこと。与党が来年変わっても、本質は全く同じ。従属政策の継続あるのみ。宗主国オバマの「チェンジ(変化)」が、じつは顔だけで、実質は「コンティニュー(継続)」なのと変わらない。

2010/2/21追記:

同じ筆者が、まさにこうした苦労をしながら制作した映画の主人公を巡って、下記記事を書いている。

アメリカの司法の真実

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